BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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Over the Rainbow
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 考え込みすぎて脳が煮えてしまうんだったら、
 考えるのやめたらいいじゃん、
 そうすればあとはやりぬくだけじゃん?

 という「気づき」は、
 自分にとってちょっとした革命だったかもしれない。


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 「無我」をこそ意識するという自己矛盾に蓋をして、

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 脳内にひろがる極彩絵図に導かれるように、
 曲線の美学に酔いしれたい。


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 無機質な金属の棒のうえに縛りつけた種種雑多な羽根たちは、
 まるでそこから生えているかのような一体感で、
 それぞれに艶美な曲線を描き、
 丸みと厚みを帯びてふくらみ、
 のびのびとひろがって、
 すべて本来あるべき姿で光を受けて輝いている。





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 便宜上、
 フルドレス・サーモンフライのカテゴリーに置くが、
 もはや、
 そのようなジャンル分けは意味をなさず……、

 しかし、
 ここで展開させた手練手管のすべては、
 フルドレス・サーモン・タイイングの世界に没頭することで、
 誰に教わることもなく、
 誰に聞くでもなく、
 独り長い年月をかけてすこしづつ積み上げてきたもの。



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 まるで、
 無垢な幼児がまっさらな未完の感性の衝動に逆らうことなく描いた、
 自由で無邪気で混ざりけのない「お絵描き」のような、
 
 それでいて、
 その舞台裏では、
 無秩序であるがゆえに、
 ほんのわずかな乱れがすべてを台無しにしてしまう、
 そんな「綱渡り」のうえに成り立っているような……、

 目指したいのは「計算されつくした無我と忘我の羽根絵図」



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 ぬわ~んちって、

 このカピパラ涅槃像写真は、
 お江戸在住のいくつになってもSっ気ムンムン小悪魔な人妻みよちゃんが、
 「これサイコーじゃね?でもホンモノかな?」
 と、
 インターネットでひろって送ってきたものでえ~す拾い画像。

 はっきりゆうて、
 仮にこの写真が合成であったとしても、
 オラまったくかまわねえだ。

 ちゅ~か、
 わざわざこんな写真を作りたいとおもって、
 コツコツ時間をかけて合成した方がいたとしたら、
 その方のセンスと「無駄ごと」にかけるお人柄を想って、
 ますますこの写真が愛おしいやんけ。

 そして思い出した、
 とある事件のことを話そうじゃないか聞いとくれ。

 むかしむかし、
 オレ様が30歳くらいのころじゃった。
 
 舞台はスキー場や温泉観光地としても有名な、
 飛騨の高原川の支流の蒲田川上流にて。
 現在はどうなってるのかしらんけど、
 その当時は、
 ちょうど蒲田川の禁漁区間の橋のたもとのところに、
 無料の混浴露天風呂があった。

 あれは、
 まだ解禁間もない早春のころ、
 雪がちらついておった。
 いや、
 というよりもちょっとしたプチ吹雪。

 早々に釣りをあきらめて、
 我々は混浴露天風呂に飛び込んだのじゃった。

 で、
 天才のオレ様は、
 湯船のなかで四つん這いになり、
 背中だけお湯からだして、
 ポカ~ンと水面に浮かんでいるような姿勢でジ~ッとしておった。

 こうすると、
 お腹は温泉でぬっくぬく、
 背中と頭にだけ冷たい雪がヒタヒタふりそそぎ、
 たいへん気持ちがエエ。

 そうやって、
 ジッとたたずんで温泉に浸っておると、
 いきなりとつぜん、
 温泉につづく階段のところでガヤガヤッと年配の女性らしき話し声がした。
 かとおもうと、
 いきおいよく、
 温泉の開き戸がバーンと開いて、
 関西方面から来たらしいオバハン五人グループが、
 ドヤドヤッと一気になだれ込んできた。
 どいつもこいつも全身ヒョウ柄がバッチリ似合いそうな、
 厚かましさでは誰にも負けまへんと顔に書いてあるような、
 バリ関西弁のいかついオバハンたちじゃった。

 そして、
 その開き戸のちかくで、
 スッポンポンフルチン四つん這いでジ~ッとしていたオレ様が、
 こともあろうにオバハン軍団の足元で見下ろされるようなカッコウになってしまったのじゃ。

 ものすごくしかたがないので、 
 そのままの姿勢で、
 オバハンたちを見上げながら、
 コクンと会釈すると……、

 オレ様のあられもない羞恥をエンリョもなくジ~ッとガン見凝視したババ~(あえてそう呼ばせてくれ)のひとりが、
 おもむろにこう言ったのじゃった。

 「あら~、カピパラみた~い」

 つぎの瞬間、
 「ほんまや~、カピパラやカピパラや~」
 「おにいちゃんカピパラみたいやんか~」
 「えらいお肌白いカピパラやん、ピチピチやな~」

 真っ白な粉雪がシンシンと宙を舞っている、
 幻想的で静かな蒲田川の谷間に、
 オバハン軍団の嬌声とバカ笑いが絶えることなくカピパラカピパラとこだましたのじゃった。

 おもえばあの当時、
 朝のニュース番組なんかで「温泉に浸かって暖をとる冬のカピパラ」が放映されて、
 ちょっとした話題になっていた良き時代だった。

 そしてオバハン軍団もドボンと湯船に飛び込んだ。

 ウレシハズカシ、
 ではなく、
 うれしくはないし、
 あまりはずかしくもなかった混浴温泉の思い出じゃ。


  
フラミンゴの迷宮
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 フラミンゴの羽根は、
 背中や胸や翼の付け根、
 どの部位をとってもそれぞれ純白のうえに紅色と桜色がほんのり交差して、
 そこはかとなく奥ゆかしくもめでたきかな「和」のテイスト。
 
 品がありますよ。

 で、
 そんな羽根を手にとって眺めているぶんには、
 なんともいえず癒されながら創作心が奥底からジワ~ッとうずいてくるような……、

 そんなわけで、
 羽根ゴコロときめきつつ、
 それじゃあこの羽根をひとひら釣り針に縛りつけましょうと、
 ステキな紅白の毛鉤に仕立てましょうと、
 いそいそ作業にうつると……、

 とたんに豹変するんですわこの羽根。

 フラミンゴの紅白模様って、
 その色調といい質感といいあまりにも独特すぎて、
 ほかの鳥の羽根との親和性や協調性が皆無。
 どのような羽根とあわせようとも……なんかちがう、
 ぜんぜん調和して映らない。
 
 ほかの羽根と並べたり重ねたりすると、
 どうしてもフラミンゴの羽根だけ浮いて見える。

 脳内イメージにしたがって、
 アレヤコレヤとっかえひっかえするんだけど、
 なんちゅうかこうどれもピンとこない。

 フライを巻く机の上はアレコレの秘蔵の羽根でたちまちとっ散らかるんだけど、
 どれもこれもボツぜんぶボツ。
 たちまちグッツグツ煮えたぎるんですわ~タイイング脳が……。

 そしてしかも、
 フラミンゴの羽根のイケズっぷりはそのストークにこそあり。
 通常、
 鳥の羽根のストークは例外なく釣り竿のように先細り構造で、
 かつ内側に湾曲している。

 もちろんフラミンゴの羽根も例外ではないのだが、
 コヤツのストークは根元付近はえらい極太でカチカチのくせに、
 先端に向かって中間付近から急にテーパーがかかって先っちょだけ柳の木のようにヘニャヘニャ。
 と、
 そのような構造で、
 かつ放物線のように豪快に湾曲している。

 これがどういうことかというと、
 ピタッと左右ペアで羽根をあわせてフックに縛りつけても、
 ちょっとズレるとズルッとすべってグネッとねじれまくり。

 可憐で清楚な見た目とは裏腹に、
 なんと底意地の悪いイジワルっぷり。

 過去、
 この羽根を主役に据えたフライがほぼ見当たらない、
 というのもさもありなん、

 というところなんですけど、

 このフライの製作ご依頼をいただいたとき、
 いろいろ御希望のイメージを拝聴し、
 また、
 お世話になった大切な方へのおめでたいお祝いの御贈答にするために、
 なんと光栄にもワタシのフライを選んでくださった格別の想いを伺うにつけ、

 今回はフラミンゴでいこう、
 コレしかない、
 と勝手におもってしまったのでした。

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 テイルはまず真っ赤なクレストをドーンと据えて、
 そのうえにヒヤシンス・マコウの尾羽根とヴァルチェリンギニアのラベンダー・クイル、
 そしてアマゾン・パロットのクイルをそれぞれツノ状にのせてみた。

 ボディは、
 黄色と緑のシルクをピーコック・ハールで仕切り、
 そこにゴールドティンセルを一回転させながら、
 ボディハックルとしてイエロー・マコウとアマゾン・パロットを交互に一回転ハックリング。
 そしてこのハックルをスレッドワークですべて急角度に倒しつつ、
 葉巻型の重量感のあるボディに呼応させて、
 ボディ全体のテーパーを強調させた。

 スロートハックルはフラミンゴの超ロングファイバーな肩羽根の片側を削いで、
 それをハックル・セパレーターでほぐしてバラバラにしてハックリング。
 フックのポイントのぎりぎりの長さにセッティング。

 ここまではもうノリノリ。
 もんだいはここから。

 さいしょは、
 フラミンゴの肩羽根をつかったホールフェザーウイングのうえに覆いかぶせるようにして、
 ウイング上部全面にぶあついマリッドウイングをおおきくカーブさせて屋根のように沿わせてみた。

 けれど、
 なんかイメージとちがう。
 厚化粧すぎてフラミンゴの清楚な印象が薄れてしまう。

 つぎに、
 そのマリッドウイングを五本ほどのセグメントにわけて、
 それをウイングの横に放射状に散りばめてみた。

 おっ、
 なんだかとってもイイ感じ?
 深夜、
 悦に入って「明日はいよいよ最終仕上げだ」とウキウキ床につき、
 そして翌朝、
 (……これでいいの?ホントにいいの?……)
 自らに問いかけてみれば、

 (なんかコレ、苦労したわりにフラミンゴの羽根の存在感が霞んで見えるんやけど)
 という意見が脳内会議の多数決で決まり、

 やっぱ最初からやりなおし。

 最終的に、
 2本の太めのマリッドウイングをグイッと曲げてウイングに巻き止め、
 まるでウイングが風になびいているような、
 動きというか生命感を連想させる造りでいってみようじゃないかと、
 このフォルムに落ち着いたのだった。

 で、
 最終的に「日の丸模様」のフラミンゴのウイングカバーをサイドに据えて、
 「幸せの青い鳥」ことフェアリー・ピッタの肩羽根をチョコンとつけて、
 チークはインディアンクロウで〆ようと目論んでいたけれど……、
 フラミンゴのピンクにインディアンクロウの紅色って、
 いかにも相性良さそうなんだけど……、
 だいぶまえに同じこと散々試して失敗したのを思い出し苦笑。

 またもや紅い小さな羽根をアレやらコレやらあわせてみてはウ~ンと唸り、
 ようやくこれいいかも、
 とおもえたのがハイブリット・マコウの胸の紅い羽根のうえに、
 パラダイス・タナガーのグラスちっくな血の色のような半透明の羽根をのせて、
 光に反射するように細工した必殺裏技小羽根重ね。

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 そして完成。
 でっかいフラミンゴの羽根をスックと立てた#8/0特大サイズ。

 いかにも苦心惨澹しまして…みたいにエラそうに書いてるけど、
 苦労したというよりも、
 完成に至るまでの寄り道だらけのアプローチと工程を、
 失敗することで得られたいろんな発見をこそ糧にしながら、
 愉しみつつ堪能しまくりました、
 というところでしょうか。

 釣りも額装フライの製作も、
 愉しみや喜びはその過程にこそあり。
 求めるところはつくづく一緒ですね。

雑感
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 フックサイズはウエットフライ用の4番。

 全長で小指よりもやや短いくらい。
 そんなマグナムをライトタックルでも快適に投げられて、
 かつ水面でのバランスと姿勢が安定していて、
 さらにラクラク水面からひっぺがして軽快にピックアップできる、
 
 というところを目指して、

 キャスティング時の空気抵抗が悩みの種だったフロントハックルを細工したら、
 こうしたドスコイ・クラスのドライフライの泣き所だった水面での姿勢とバランスも飛躍的に改善されて、
 してやったり感満載だった。
 だけでなく、
 倒木のキワッキワや草の生い茂るバンク際ギリギリなど、
 奥に突っ込むのに躊躇したくなるピンを狙う際、
 立て巻きハックルのウィードレス効果を実感するというウレシイおまけ付きだった。
 
 そして、
 獣毛ウイングを扇状にバッサ~とひろげて巻き止め、
 かつ使用中にウイングがしぼまずそのフォルムが維持できるように、
 ウイング基部にプラットホーム(土台)を据えて、
 かつドッサ~と大量に巻きこんだ獣毛が抜け落ちないように、
 ヘッド基部にちいさな突起を突き出してストッパーにしたら、
 それが虫のアタマを連想させる生命感を醸し出してほど良いアクセントになるだけでなく、
 フラッタリングさせるときの引き波やピックアップ時のスムーズ感といった機能面でもうれしい効果を発揮した。

 さ~らに、
 ロイヤル・コーチマン型に巻いたボディは、
 ピーコックハールが濡れてもふっくらしたヴォリューム感が維持され、
 むしろ濡れてハールのフリューがつぶれてからこそ良い感じのフォルムになるように巻いてある。

 そしてまたさ~らに、
 計4枚のコックとヘンのハックル各色をハックリングしたフロントハックルは、
 こうしてLEDライトに照らして見ると黒っぽい印象なんだけど、
 陽の光に照らされればアラ不思議。
 なんともいえない透明感のある赤っぽい黒焦げ茶ビカリに変化。

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 ほらね、
 ゴンぶとアメマスの口元にご注目を……。

 ハックルっておもしろいね。

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 とまあ、
 このようにフライのすみずみ細部にわたるまで、
 こだわりとか目論見とか計算とか気分とかセンスとか、
 自分らしさを目いっぱい反映させたフライをティペットに結んで、
 かつ、
 ほんとに自分が気に入って心酔している血が通った道具をつかって、
 そのうえで、
 忘れられない水辺での興奮と感動のストーリーを経て、
 こういうサカナが釣れてくれる豊かな喜びやシアワセにばかり浸っていると、

 その甘美で秘めやかで麻薬的な蜜の味のまえには、

 効率と能率をこそ最優先して、
 何センチだ~とか、
 ナンビキ釣れた~とか、
 そういう結果だけを追い求めるドヤ顔作業は、
 ぶっちゃけどこか空しくなっちゃうんですよ。

 それだけだと、
 オレの心は満たされないコノ欲張りさんめ。

 もちろん、
 「愉しみと喜びをどこに求めるか」というのは各人の嗜好なので、
 それを否定するような野暮を言いたいわけでなく、

 ときとして、
 じぶんの進んでいきたい方向は、
 これからの時代にそぐわなくなるんかな~とか、
 一抹の寂しさを感じたり感じなかったり……。

 ま、
 小難しいことは考えず、
 己の快楽に忠実にあるしかないんですけど。

 座右の銘は「ケセラセラ」

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 唐突に、
 現在はどうしておられるのか知らないけれど、
 アメリカでは知る人ぞ知る人気プロ・タイヤーであらせられる、
 かの御大A.K.ベストが80年~90年代ころに販売していたハサミ。

 いまも販売しているのですか?

 ハサミの脇のところにニードルも装備されているんだぜ。

 なんだけど、
 見てわかるとおり、
 現在の高品質ハイエンドな高級ハサミと同列おなじ土俵では語れない、
 あえて言葉悪く言えば「小中学校の家庭科の裁縫箱」のお裁縫セットですよ。

 じゃあ、
 使っていないかというとその逆で、
 ここ近年とくにものすごく使用頻度の高いハサミのひとつ。

 たとえば車中泊の遠征釣行で、
 クルマのなかやホテルなどにて、
 深夜とか雨の日とか時間つぶしの戯れにフライを巻いてみようとか、
 期待感で胸いっぱい明日の釣りのためのフライを巻くとか、
 そんな贅沢な独りの時間のお供にはなんてったってこのハサミが気分。

 あったかいんだよね、
 このハサミ。

 「A.K.sタイイングツール」なんてカッコイイ刻印もはいってるしさ。

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 と、
 このA.K.ベストの活躍がよく見聞された、
 80年代~90年代のアメリカのフライフイッシング事情といえば、
 まずスパークルダンを筆頭格にして、
 良くも悪くも効率重視の、
 化学繊維の特性にたよりきったようなフライが続々誕生した。

 そしてそこにCDCフェザーが加わって、
 さらに簡素かつ画一化されたようなフライが右ならえするようにズラ~ッと横並びに並んでいた。

 などと書いているじぶんもまた、
 勇んでその列にくわわった。

 その渦中にあって、
 A.Kベストの巻いていたフライは、
 クイルボディとヘンハックルのウイングを素材の核にして巻いた、
 最先端とは一線を画するようなフライだった。

 当時の最新に浮かれきっていた視線で見れば、
 ぶっちゃけ時代に取り残された感さえもあった。

 にもかかわらず、
 フライフイッシングのショーなどでは、
 なみいる有名著名最先端タイヤー連がズラリと並んでいるタイイングデモのなかでも、
 彼のブースの前だけはいつも常に人だかりでごったがえしていたそうだ。

 

 その理由と秘密の一端を、
 じぶんはこの映像から垣間見れたようにおもう。

 彼のタイイング・デモはピープルズ・チョイスだとおもった。

 じぶんも時としてタイイングデモなんて仰々しくも人前で恥を晒す立場として、
 他人様のタイイングを拝見するときには、
 そこから実用的ななにかを学ぶというよりも、
 巻いている方がどのように解説しながら物事を伝えるのか、
 というところにこそ興味があり学びがある。

 そうした視線からみれば、
 多からず少なすぎない解説の言葉数、
 なによりもその言葉の明解かつ簡潔さ、
 そしてそこにおもわずトキメいて共感するような装飾句を挿入するおしゃれ言葉テクニック。
 そんな語りの間とタイミング、
 見ている方の視線をフライを巻く手元に集中させてしまう天性のエンターテイメント性、
 なによりも「フライを巻くことは難しくないよ愉しいよ」という一貫したメッセージ。
 さらに、
 親しみやすい容姿から口調や声の響きまで、
 これがプロの仕事なんだな~と、
 今さらながら、
 というより今だからようやくわかった気がする。

 フライタイイングの愉しさや創作の喜びを万人に伝えるプロとして、
 別格中の別格のプロタイヤーにあらためて敬意と尊敬をこめて……。


  
気分
 たとえばタイイングデモなんかで、
 昔から使っているような定番的スタンダードフライとか巻いたとするでしょ。

 すると、
 参加してくださった方から、
 以前の雑誌記事やDVDではこのように巻いていたのに、
 今回はぜんぜんちがう方法になってますね、
 というご指摘をいただくことがたま~にある。

 ときにはそれを揶揄するような響きでおっしゃる方もいるけれど、
 気を悪くするどころかむしろメッチャクチャうれしい。

 とりもなおさず、
 熱心に読んだり観たりしてくださっただけでなく、
 それを実践してくださっているということだから。

 どんだけありがたいことか。
 (……んも~~アナタめちゃくちゃヒイキしちゃうZO……)

 で、
 そういうときには、
 「より良い方法やより機能的なスタイル目指して日々邁進しながら進化させていくことこそが、
 職人としてのあるべき姿なのではないでしょうか」
 などと、
 カッコエエことをしたり顔してもっともらしくエラそうにこいちゃったりするわけですが……、

 あとでものごっつハズカシイわけですが……、

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 オリジナル・レシピで巻いたクイル・ゴードン。
 フックはTMC5210の10番。
 
 クイルボディにご注目を。
 本来ならば20番以下のミッジピューパなんかのボディに巻くような、
 ほっそ~いストリップド・ピーコック・クイルを、
 10番のフックにびっちり巻いてある。

 なので、
 ピーコックのクイルボディ独特の縞模様がものすごく密に浮き出ていて、
 いつもの見慣れたクイルゴードンとはどこか印象が違って見える。

 とうぜん、
 極細のクイルは全体の長さも短いので、
 10番のフック全体に巻くことはできない。
 なので、
 都合2本のクイル材を継ぎ足して巻いてある。

 わざとその継ぎ足した部分が見えるように写真に撮ってみたけどわかるかな?

 というわけで今夜は「縞々模様のフォーマルダンディなクイルゴードン」

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 パートリッジのバックフェザーをフロント・ハックルに巻いたイングリッシュ・マーチブラウンの12番。

 パートリッジの腰付近のひょろ長くて細いファイバーを、
 ハックルセパレーター処理したのちに、
 ダイレクトハックリングで巻き止めた。

 ので、
 若干カールしたパートリッジのファイバー先端があっちこっちバラバラに向きつつ、
 テンカラ逆さ毛針のように前方を向いている。

 水面に浮かべれば、
 ボディに巻いたワシミミズクのケバケバ質感と相まって、
 翅をひろげてジタバタもがくフラッタリング状態のシマトビケラ的ファジー感。

 というわけで今夜は「ボサボサファジーな着崩しマーチブラウン」

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 淡~いピンクのシルクでほんのりほてった湯上りボディ色に巻いた、
 ロイヤル・コーチマンならぬヒト肌艶色コーチマンの12番。

 ハックルも濃厚なコーチマン・ブラウンをいつものスタイルで厚めにハックリングするのではなく、
 小麦色ジンジャーを狭い範囲にキリリと密にハックリング。

 というわけで今夜は「ツンとおすまし小粋なお洒落女子コーチマン」

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 JUNIOR BYLES & THE UPSETTERS - The Thanks We Get [1974]

 というように、
 たとえスタンダードフライであっても、
 いや、
 スタンダードフライだからこそ、
 (……きょうはこんな感じで巻いてみようかな~ウフフ……)的な、
 そのときの「巻き気分」や「イタズラ心」こそがとても重要。

 変化は進化……なのか?
メモリアル・デイズ2016
 夏の終わりから初秋にかけての爆裂台風あとの、
 ちいさな決闘の物語。
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 えげつない下あご。
 しゃくれるにも程があるっていうか、

 これまでにも、
 道内各地にて下顎が異様に突き出た爬虫類系のオスと闘わせてもらえる幸運が何度かあって、
 そのたびにメチャクチャ感動してきたけれど、

 厳つい顔つき、
 狡猾さ、
 孤高のたたずまい、
 高貴なオーラ、
 アナタぶっちぎりでシャクレ・チャンピオン。

 ヤツはホンマモンのサムライだった。

 こんなのが、
 物音ひとつしない深い森のなかのちいさな山上湖で、
 波ひとつない静まり返った湖面の片隅で、
 コプンッ、
 コプンッと、
 胸がキュッとなるようなライズ波紋を微かに響かせながら、
 密かに隠れるように、
 水面に浮かぶちっちゃなちっちゃな甲虫を吸いこんでいたんですよ。

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 私家版ブラック・ビートルの16番tied on TMC9300。
 こうしてみると、
 とってもありがち月並みなビートルなんだけど、
 ひとひねりもふたひねりも細工してある。

 なんといってもテントウムシ型のコロンと円形フォルムで、
 かつ水平姿勢を保つバランスかつシンプル構造などなど、
 
 おいしいですよ!

 と、
 このフライでこのサカナとはじめて対峙したときの模様と、
 このフライのタイイングの話題は、
 釣りたてホヤホヤのアドレナリンだばだば状態で、
 先月号のフライフイッシャー誌に書き殴らせていただいたわけですが、

 じつはまだこのサカナとの物語にはつづきがあって……、


 さいしょにこのサカナを釣りあげた日からかぞえて五日後くらいだったか、
 また同じ釣り場に行って、
 ヤツがライズしていたポイントに行ってみたら、

 午後遅く、
 湖面をなでていた微風がピターッと止まってしばらくしたら、
 またもやコプンッコプンッとはじまった。
 しかも、
 最初の遭遇のときよりもはるかに高活性。

 さ~らに、
 その日は朝から釣り場全体が高活性。
 オレ様特製コロコロ・ビートル大活躍ぼくノリノリ……。

 で、
 このときはよもや前回と同じサカナだとはおもわず、
 もう釣れる気満々自信満々でフライを投じたわけですよ、

 それでさあ、
 聞いてくれる?

 ゆ~っくりクルージングしながらコプコプいわせてるサカナの回遊コース予想して、
 何投目かにタイミングもサカナとの距離もドンピシャ!
 とおもわれる地点にフライが浮かんで……、

 こ~れはイッちゃうでしょ~気持ちがビーーーンとはりつめて心臓バクバク。

 が、
 が、
 が、
 フライの真下まで来たサカナが、
 「おっとヤバイヤバイ…」みたいな態度で反転してUターンしたときの残り波がユララ~ンとたって、

 フライが水面でフワッと揺れて、
 それでおしまい。

 「え?ウソ?見切られた?なんで??????」

 あとは、
 いくら待っても水面はシーンと静まり返っちゃってサカナの気配も消えて……、

 (ひょっとしてアレ、このまえのシャクレ・サムライやったんか?)

 もはや、
 チンピラを相手にする気にはなれず、
 水面に浮いてるムシ探しに没頭し……、

 ショートシャンクの18番かでかめの20番くらいの、
 極小ハムシ的甲虫の仲間が点々と水面に浮いているのを確認。

 シビアなライズ攻略のキモは、
 なんちゅうてもまずフライのサイズと確信しているワタシとしては、
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 アジトに帰宅して、
 アンデス・コンドルのブラッククイルをねじって巻いて、
 ソッコーこんなん拵えて、
 出撃の機会を待ったのですが、

 翌日から雨風ビュービューで……、
 仕事も溜めちゃってハラハラで……、

 ようやく出かけられたのは一週間後くらいだったかそのくらい。

 で、
 他のポイントでも釣りながらも、
 このサカナが陣取っているであろうピンスポットが気になって気になって……、

 で、
 また微風がとまって湖面がビターーッとなるやいなや、
 そのピンスポットに行ってず~~っと一点見つめながらヒマ過ぎてタバコ何本吸ったやら。
 吸い過ぎてえずいてしもたがな。

 で!
 まるで周囲の森があらゆる音を吸いこんでしまったかのような、
 シーーーンと静まり返ったなかで、
 午後おそくコプンッて微かな音が響いてドッキーン。

 さいしょは、
 写真左側の小さいほうのフライをドッキドキで投げたわけですよ。
 先週観察した極小ハムシのぴったりサイズ。
 しかも倒木だらけのこのポイントではデンジャラスな6Xのティペットに結んで。
 
 もうとにかくまずは掛けたい一心下心丸出しですね。

 ところがさあ、
 クルージングコースにフライを浮かべると、
 サカナのやつ、
 ライズはやめないけどスーッと回遊コース変えちゃうの。

 そしてまた、
 予想外のところに浮上してコプンッコプンッ。

 (ダメだこりゃ……)

 そのころにはなんか根負けしてしまい、
 負け戦ならいっそ実験してみたろと、

 ティペットを5Xに変えて、
 フライも写真右のおおきいほうに変えて、
 濡れた指先でフライのボディだけグリグリ揉み倒して濡らして、
 目の前の水面に浮かべてみれば……、

 フックのシャンク中央に立てたCDCだけが水面に突き出て、
 ボディもヘッドも水面膜の直下に張り付くような姿勢。
 そして、
 ヘッド部分が水面下に突き刺さっているので、
 とうぜん結び目から数センチくらいだけ、
 ティペットも水面下に沈んでいる。
 で、
 そのうえでフライは水面直下にぶら下がるのではなく、
 水平姿勢を保って水面直下にはりつくように浮いている(←ビートルのバランスこれすっごい重要だとおもう)

 先につかった小さいほうは、
 フライのサイズが小さすぎるのと、
 構造上どうしてもティペットがフライの結び目から水面に張りつくように浮いてしまう。

 フライのサイズが異なるだけでなく、
 この浮き方が両方のフライの一番大きな違い。

 で!

 サカナが立て続けにライズするたびに、
 投げたくなる気持ちをグッと抑えながら、
 もっともアプローチしやすい地点に回遊して来るまで待ちに待って……、

 一投入魂。

 コプンッ

 奇跡だとおもった。

 掛った瞬間、
 前回はダバダバダバッと水面ではげしく身をよじらせてからギューンと走ったので、
 こちらもなんとか冷静に態勢を整えられたんだけど、
 今回はフッキングするやいなや、
 ギュギュギュギュギューーーンッと倒木めがけて爆走して、
 そのままズズズッとティペットが倒木にスレている感触があって、
 口から心臓を半分出しながらヒイヒイハアハアで強引にいなした。

 6Xのままやったら、
 ひとたまりもなかったんとちゃうやろか?

 この一幕で、
 ティペットの影にこそ警戒していたのだと結論付けるのはナニやけど、
 これほどあからさまにサカナの態度が変わるとは……。

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 おもったとおり、
 前回釣りあげたのと同じニジマス。

 このお顔ですもの、
 見間違いようがない。

 うえから見てもすんごい下アゴ。

 じつに挑戦しがいのあるイッピキのサカナと長い時間をかけてじっくり対峙させてもらって、
 フライフイッシングのエッセンスここに極めり的な至福で至高の濃厚な時間を、
 なんと三日間にわたって堪能させてくれたニジマス。

 フライフイッシングの神様が、
 ぼくに遣わしてくれた最高のイッピキ。

 って、
 言っちゃってもいいですか?
 
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