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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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梅雨の晴れ間の大物自慢
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 つい先日、
 いつものように我が家に遊びに来てくれた、
 函館のいつもの吉田さんと笹尾さん。

 函館から高速道路をひたすら走って約7時間!
 深夜、
 皆さんが我が家に到着して、
 さあ明日はいずこの釣り場へ、
 という話題になったとき、
 現在の状況だとあの川が有望ですが、

 「じつはいま、このへんの釣り場の新規開拓に励んでいるのです」
 という雑談をすると、
 それじゃあ明日はぜひとも未知の釣り場に行ってみようじゃないですか、
 と吉田さん。

 はるばる7時間かけてやって来て、
 当たりか外れかどっちかの「賭け」を愉しんじゃう吉田さん。
 やっぱスゲ~なとおもった。

 その提案をコレ幸いに、
 かねてよりたいへん気にはなっていたものの、
 あまりにもヒグマの気配が濃厚過ぎて、
 独りで奥に入るのはさすがにちょっとな~、
 とおもっていた釣り場に三人で行ってみた。

 三人ならへっちゃらだ。

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 じぶんが函館に住んでいたころから、
 何度も三人で釣りにでかけていた。
 そのときからずっとおもっていたことがある。

 フツ~の規模の渓流を、
 三人がかりで抜きつ抜かれつ交互に釣りのぼっているにもかかわらず、
 負担を感じない丁度よいペースで、
 阿吽の呼吸でポイントをゆずり譲られしながら、
 お互いにまったくストレスをかんじないで、
 リラックスした気分で好き勝手に釣りに没頭できるのって、
 かなり稀有なことではなかろうか。

 そのようなお付き合いをさせていただいているので、
 お二人が帰られたあとは、
 いつもなんだかちょっぴりセンチな気分。

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 サイズはTMC9300 の8番。
 ボディはヒグマのアンダーファー。
 ハックルはヒグマのガードヘアーをハックリング。
 見た目ソフトハックル的なヒグマの毛だけで巻いたシンプルなフライ。

 名前は「キンクマ」
 姉妹品「クロクマ」と「チャクマ」もあります。

 フックシャンクにリードワイヤをグルグル巻きにしてウエイテッドにしたのと、
 ノーウエイトの2種類がある。
 ドライフライとしてもニンフとしてもウエットとしても、
 水面から川底までコレ一本で探っちゃう、
 どのようにでもつかえるファジー系。

 そんなフライをつかって……、
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 森の奥の小渓流でひっそりと暮らすオショロコマももちろん大好き。
 
 なんだけど、
 開けた渓流で、
 大胆に早瀬やプールのヒラキに出てきてバンバン餌食ってる、
 コンディション抜群のオショロコマはもう格別。

 萌え萌え。

 ヒグマの森を流れる川で、
 ヒグマの毛で巻いたフライをつかって、
 ヒグマの森の川で太古から命をつないできた美しいサカナを釣る。

 なんという贅沢な釣り。

 そんなとき、
 美しい渓をそぞろ歩きながら、
 優雅にほどほどに竿を振って、
 紳士にほどほどのサカナと戯れて満足。

 それでこそナチュラリストなフライフイッシャーマン。

 などとおもったら大間違いなのじゃ。

 無垢なコマっちゃんをズッコンバッコン釣りたい。

 ひとつのポイントで、
 まず「キンクマ」をドライフライとしてフロータント塗布してフツ~に流すやん、
 そんで首尾よくヒラキとか流芯脇で二~三匹釣れるとするやん。

 そっからが本番でっせ。

 濡れそぼってすぐ沈んじゃうようになってしまった「キンクマ」を、
 そのまま沈めて表層あるいは中層を流すと……、

 ハマるとここでゴンゴンくる。
 カイカン。

 ポイントの水深が浅いばあいは、
 ここらへんでゆるしたるけど……、

 ココはでかいのおるやろ~、
 とおもえる深場のポイントならば、
 ウエイト入りの「キンクマ」登場。

 落ち込みとかに叩きつけて、
 さらに深く沈めてしつこくねちっこく流す。

 水面から川底までぜんぶくまなく探って、
 「あんた根絶やしにする気?」
 くらいの勢いで夢中で釣っちゃう。

 なんかハマっちゃって、
 釣っても釣ってもまだ釣りたい、
 中毒みたいになるときがある。

 とはいえ、
 歳とったからなのか、
 醒めるのも早くなりましたけど……。

 それはさておき、

 このとき、
 フライを沈めるからといって、
 わざわざいちいちティペットやリーダーを変えたりはしません。
 ドライフライを結んでいたそのまんまのリーダー。
 なので、
 手軽にこまめに浮かせたり沈めたりできるというわけです。

 「キンクマ」にいたっては、
 浮かせるのも沈めるのも自在なので、
 フライすら交換しない。

 下の写真は、
 コレ一本を数日間ず~っと使いつづけて、
 いったいぜんたい何十匹のコマっちゃんを釣ったのか、
 もう定かではない状態の「キンクマ」
 ボディにダビングしたヒグマの剛毛がバサバサ突き出してきて、
 それがまたいかにもムシの脚みたい。
 釣れば釣るほどに、
 どんどん釣れそ~な雰囲気を醸し出すのも「キンクマ」の特徴。

 そして、
 この「コマっちゃんにかじられまくったキンクマ」は、
 ワタシにさらなるシアワセと興奮を連れてきてくれたのであった。

 さ、
 以下イヤミな釣り自慢をくどくど延々語りまあ~す。

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 話しはちょいズレるんだけど、
 函館の皆さんが我が家に来られる数日まえ、

 遠来の友人の希望で、
 一発大物巨ニジマス狙いで川を案内していた。
 そして、
 その川のこの区間ではもっとも実績のある深瀬のポイントにやってきた。

 おりしも川はどこもかしこも大渇水。
 しかも真昼間。
 この状況でドーンと大物の可能性があるならば、
 自分の知るかぎりココしかない、
 とおもっていた超A級ポイント。

 なので、
 他のポイントは極力ほったらかしで好きなように釣ってもらっていたけれど、
 この場所は確実にいるはずなので
 「ここはちょっとアドバイスさせてね」と一言ことわってから、
 必殺のフライもわたして、
 太いティペットに変えてあげて、
 「あそこに投げて」だの、
 「こんどは向こうに投げてみて」だの、
 横に立って事細かに指示した。

 しかし反応はなし。

 そそくさと上流に向かおうとする友人に「もうちょい粘ったほうがいいよ」と声をかけて、
 ニンフの仕掛けに変えてあげて、
 もしアタリがきたら声に出すから安心しといてと励まして、
 いろんな流れの筋にニンフを沈めたんだけど……、

 反応はなし。

 ほとんどドライフライしかやったことのない友人はいまいち釣れる気がしないらしく……、

 疑心暗鬼丸出しの視線で、
 「ちょっとビゼンさんやってみてよ」
 「なんでやねん、オレがやってどうするねん」

 などといいつつ、
 さっきからティペットに結んでいた「キンクマ」を、
 白泡をたてて流れ込む落ち込みの流芯にぶつけるように叩きこんで、
 そのままリーダーにおもいきりスラックいれて弛ませて、
 フライを流れに揉ませながら深く沈めて……、

 そして、
 おおきく湾曲して流れるリーダーが完全に水中に沈んでいったとき、
 ブルッとリーダーが揺れるように震えた気がして……、

 半信半疑ながらグイッと力強くあわせてみれば……、

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 「な、おったやろ」

 とうそぶきつつ、
 あれだけフライを流したあとで出てくれるとは思いもしなかった。

 それも一投目で。
 
 下アゴしゃくれ系のオスのニジマス。
 しかもめちゃくちゃオトコマエ。

 落ち着きはらって対処いたしましたけれど、
 内心は万歳三唱スカーッと抜けまくりパーフェクト!
 ……あ~このイッピキでもう充分。これでガイドに徹することができるわい……
 などと溜飲下がりまくりの午後でございました。



 というようなことがあった10日後くらいに函館の皆さんがやってきて、
 初日はヒグマの気配プンプンの渓流に行って、
 じぶんもまだ釣ったことのなかった区間を三人で釣り歩いて、
 「キンクマ」投げまくって良型オショロコマの入れ食いを堪能。

 その夜、
 さて翌日の釣り場はどうしましょうか?
 となったとき、
 我が家の壁に貼ってある地図を眺めながら吉田さんが言った。

 「どうせならビゼンさんがまだ釣ったことのない川に行こうよ」

 さすがでございます。
 願ったりかなったりでございます。

 そして翌日、
 「この川のこのあたりが気になってたんですよ」
 なんて、
 ワクワクドキドキで勇んで川に降りてみれば……、

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 なんか、
 チャラッチャラの大渇水なんですけど。

 全体的にしょぼい。

 それでもフライを投じてみれば……、
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 どこに投げようとも、
 どのようにフライを流そうとも、
 新子ヤマベのピン子ちゃん軍団ピチピチパチャパチャ大猛攻。

 萎えまくり。
 
 この川、
 おもいきり外したかんじ?

 笹尾さんとともに、
 吉田さんに場所変えを提案してみたところ、

 「いや、せっかくだからここで釣りましょうよ」
 きっぱりおっしゃった。

 吉田さんのこの決断が、
 ワタクシのこの日の釣りをマンモス・メガ・ハッピーなものに変えてくれるとは、
 この時点では夢にもおもわず……、

 じぶんでこの川を提案しておきながら、
 むしろ内心、
 「ええ~、この川を釣りのぼるの~。萎えるなあ」

 流れはしょぼいし、
 釣れるサカナはみなピン子ちゃん。
 そのうえ蒸し蒸しと湿気ムンムンの不快な陽気。

 グデグデダラダラと、
 しばらく釣りのぼっていて……、

 この川にしては、
 ほんのすこし水深があって、
 支流の沢からの流れもドーッと流れ込んでいて、
 水量があるっちゃああるかも…それでもしょぼいかんじ。

 みたいなプールにさしかかったとき、
 前を歩いていた吉田さんが立ち止まって、
 流れのなかをジッと凝視しはじめた。

 (あ、サカナ見つけたな…)とおもって、
 「なんかいますか~?」
 なんつって近寄っていくと、
 「ホラ、あそこ……」
 と吉田さんが指さした方角の川底に、
 40センチほどのサカナが定位していた。

 きょうは手の平に納まるようなサカナしか釣っていないので、
 なんだかやたらとでっかく見えるぞ。

 しかし、
 この季節のこの状況で、
 こんな貧弱な流れにそぐわないような大きさのサカナがいるということは、
 アナタ…海からはるばる遡上してきはったんちゃうの?

 すごくあやしいぞ。

 「これ、チェリリンとちゃいます?」

 「ああ、そうかも。もうこんな上流にもあがってきてるんだねえ」

 チェリリンとは、
 チェリーなお名前のご法度マスのこと。

 おっきなサカナをみつけて、
 一瞬色めきたったけれど、
 なんだよチェリリンかよと意気消沈。

 ところが、
 ふたりでよ~く観察していると、
 どうもチェリリンにしては色とか影とかヒレの具合とか、
 なんかちがう。

 「やっぱこれ、ニジマスだよね」
 と吉田さん。
 「ですよね」
 とワタシ。

 即座に、
 「吉田さん、ぜひやってみてください」

 ところが、
 「いや、ここはビゼンさんがやりなよ」
 と吉田さん。

 この吉田さんの一言がワタシの運命を……以下略。

 川底に定位しているサカナの目前に沈めるために、
 さいしょはちょい重めのニンフを投げてみた。

 フライがチャポッと着水した瞬間、
 微動だにしなかったサカナがスパーッとフライにむかって一直線。
 「よっしゃ!」
 とときめいた瞬間、
 あろうことかサカナはフライの直前でUターン。
 そして元の位置に戻ってしまった。

 「だ~めだこりゃ」

 それでも立ち去り難く、
 しつこく狙っていると、
 その様子を背後でしばらく見守っていた吉田さんと笹尾さんが、
 こりゃダメだなと判断されたのか、

 「我々、上流に行ってるよ」
 「どうぞどうぞ~」
 なんつって、
 お二人が同時に河原を歩いた瞬間、
 目のまえの川底にいたはずのサカナが脱兎のごとく消えてしまった。

 二人とも気をつかって、
 水際から極力離れて歩き出したにもかかわらず……このありさま。

 なんたってこの超渇水。
 そりゃあサカナも神経質になるって。

 「ダメダメじゃん」

 と、
 そのつぎの瞬間、
 目のまえにいたやつよりもはるかにでっかくてぶっといのが、
 ズイ~ッと対岸沿いに泳いでいるのが視界に映った。
 そしてそのサカナは、
 対岸の倒木のエグレの奥にはいっていった。

 ドッキーン。

 あまりにおどろいて、
 しばらくそのまま立ちすくんでいると、
 その極太のサカナがソロ~ッとした様子でエグレから出てくるではないか。
 そして、
 またもやゆっくりプールの流れ込みのなかに消えていった。

 あんなのいるんだ……。

 そのとき、
 ふとひらめいたのだった。
 
 何十匹ものオショロコマにかじられてボディがボッサボサになっているだけでなく、
 彼らの怨念ものりうつっているかのようなボッロボロの「キンクマ」を、
 慎重に流れ込みに落として沈めてナチュラルに流してみた。
 
 ウエイトのはいったフライだと、
 着水音に怯えそうな気がしたからだ。
 そして、
 一気に川底に沈めるよりも、
 なるだけナチュラルに繊細に流したほうが良さげにおもえた。
 
 ダメ元でやってるけど、
 あんなごっついのいるんだったら、
 おもいついたことは全部ためしてみたいじゃん。

 そして、
 ちょうど流れ込みのヒラキのあたりにフライが流れていったとおもわれたとき、
 水中に突き刺さっているリーダーが、
 微かにククンッと……、

 「え?」
 とおもってグイッと竿を立てた瞬間、
 6フィート3インチ2~3番の短竿が有無を言わせないパワーでなぎ倒されて、
 まるで葦の茎をポキッと折り曲げたかのようになった。
 竿のバットというよりもグリップのところからお辞儀をしたまま動かない。
 動かせない。

 そのつぎの瞬間、
 グググググーーーンッ!と竿がのされて、
 ものすごいのがドッパーンと空中高く跳んだ。
 ドッボーンと水面に落ちて、
 ダッパーンッ!とプール中に水飛沫をまき散らした。
 そして、
 そのまま対岸の倒木めがけて力任せに疾走。
 ものすごい重量感。

 竿はもはや常にグリップのなかから曲がっている状態。
 どうにも止められません。

 しかも最悪なことに、
 つかっていたティペットは昨日からずっとつかっていて、
 そのまま結びっぱなしになっているフロロ5Xという体たらく。

 もう絶体絶命の負け戦。

 なので、
 どうせやられちゃうなら勝負や、
 なんておもって、
 倒木のエグレにサカナのアタマが突っ込まれる直前に、
 竿先が川辺の砂利にこすれそうなくらい竿を寝かせて荷重をかけプレッシャーをかけた。

 なんと幸運にも、
 そのおかげでサカナがいやがって向きを変えてくれた。

 よっしゃコレはひょっとしたらイケるかも。

 もう強気で攻めるしかありません。
 このような華奢な竿とイトで長期戦なんかしたら、
 いずれやられちゃうに決まってる。

 短期決戦あるのみ。

 サカナの走る方向とは逆に竿を寝かせて常にプレッシャーをかけつづけ、
 とにかく右に左に絶えず竿をうごかしながら、
 めまぐるしくサカナをひっぱる方向と向きと角度を変えつづけていると、
 パニックになってグオオーッとコチラ岸の浅場で魚体を激しくよじったサカナが、
 ついバランスをくずしたような横向き姿勢になった。

 このチャンスのがしてなるものか。

 いちかばちか、
 そのまま後ずさりしてサカナを強引に水際に引きずりあげた。
 その瞬間、
 リーダーのつなぎ目からティペットがブツッと切れた。

 間一髪。

 そして、
 まだまだぜんぜん疲れていなくて余力ありまくりの巨体が水際でドッパンドッパン跳ねまわり。
 取り込まれちゃって勝負がついたことにしばらく気がついていないようなかんじだった。

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 この貧弱な流れにいたとはおもえない、
 おそらく本流からのぼって来たのであろうメスのニジマス。

 ニシキゴイみたいな幅広の体高も、
 グッとひろがった横幅も、
 なにもかもボンボンのパンパンのパッツンパッツン。

 豊満という言葉がピッタリな熟女。

 でもねえ、
 このでっぷりしたお腹を、
 そっと指先で撫でてみれば、
 もうカッチカチの筋肉なんだよね。

 すげえや。

 20センチほどのオショロコマを釣るのにピッタリの竿でこのニジマス。

 ぼく……ほんとはとってもこわかった。

 半ば放心状態でこのニジマスを見つめるワタシにむかって、
 「いや~、これぞ執念だねえ」
 と吉田さん。

 吉田さんにいただいたそのお言葉、
 ワタシのこの夏の勲章です。
 
 「なんか、五月みどりみたいに熟しきった豊満ニジマスでしたね」
 というと、
 笹尾さんがプハッと吹きだしてウハハと笑った。

 そして、
 お二人は7時間かけて函館に帰っていった。

 また来てね。
  
梅雨の道北初夏のマイブームな渓流ドライフライズ
 7月のあたまから一昨日まで、
 各地の友人が遠路はるばる入れ替わり立ち替わり釣りに来て、
 にぎやかな我が家だった。

 ハイシーズンの風物詩。

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 まずはこのひと。

 たぶん5年ぶりくらいの再会。

 初日の夜に、
 むちゃくちゃ仲良くしてもらっている近所の割烹和食屋さんの閉店間際にムリくり飛び込んで、
 わざわざご飯炊いてもろて小皿アレコレ出してもろて夕ご飯を堪能した。
 お腹いっぱい。
 大満足。

 けれど、
 あとはす~っと朝昼晩セイコマート。

 だってご飯食べに行く余裕なかったんだもの。

 朝から晩までガッツリ釣って、
 釣りながらしゃべって、
 セイコマートで弁当買って、
 食いながらしゃべって、

 晩は晩でおそくまでしゃべった。

 数日間、
 ず~っと釣ってるかしゃべってるかだった。
  
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 そのつぎに我が家に来たのは、
 ほとんど初対面にちかい和歌山のテンカラさん。

 初日、
 釣り場にむかうクルマのなかではよ~しゃべってはったのに、
 準備して川に下りるなり豹変したかのように言葉少なになって、
 えらいかたい表情でビュンビュンてんから竿振ってはるんやわ。

 はじめて見たテンカラ釣りの第一印象は、
 「えっらいせわしない釣りやな~」

 だいたい、
 3.6メートル4.5メートルの竿が渓流でヒュンヒュン振りまわされるなんて、
 7フィート前後の竿に慣れた目には、
 ものすごいインパクト。
 
 ご本人の人柄などまだよく知らないだけに、
 そんな長竿がビュンビュンいそがしく振りまわされるのを眺めておりますと……、
 キュッと引き締まったテンカラさんの表情とともに、
 なんだかお機嫌悪いのかな?

 なんか、
 テンカラさん、
 この釣り場じゃ物足りないのかな?とか、
 勝手に邪推したりしてしばし悶々……、
 あ~気ぃつかうやんけ!
 しんどいのはイヤじゃ、
 とおもって、

 「あの、ひょっとして、怒ってはる?」
 と聞くと、

 「……いや、ものすごいたのしいです。もうメッチャたのしい!」
 なんか、
 「いまボクすっごい夢中です」気分がこちらにグッと迫ってくるような力強い返答をいただき……、

 なんだあ、
 そっかあ、
 堪能してたのかあ。 

 いっぺんで気が楽になった。
 そしてじぶんもおおいにたのしんだ。

 しかもテンカラさん、
 釣りもさることながら、
 フライタイイングにかける情熱もまたハンパないことが、
 もう隠しようもなく伝わって来た。
 ビンビンに。

 そんなわけで、
 夜は夜で我が作業場にて、
 あれやこれやとお楽しみの時間はエンドレス。

 そんなわけで、

 先月の末くらいまで、
 なんやかんや流下している昆虫たちを気にして観察しながら、
 どちらかといえば、
 独りで、
 ムシさんやマスさんと語らいココロで問いかけながら釣るような、
 ひたすら深く没頭するボッチな釣りが中心だった。

 わけですが、

 ここでちょっとリフレ~ッシュ。

 愉快な釣りバカさんといっしょに初夏の渓流で陽気に弾けちゃおう。

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 そんなわけで、
 ここ数日そんな釣り気分の渓流釣りでつかっていた、
 気楽につかえるシンプルでユニバーサルなドライフライたちのご紹介です。

 丈夫で長く使えるけど、
 どこかに引っかけて失くしてもシンプル構造ゆえにあまり惜しくなくて、
 濡れてもすぐ復活して頼もしくポカッと浮いてくれるやつ。

 そ・し・て・
 よしんば流れに巻き込まれて沈んじゃったらそれもまた良し、
 なんならそのままスイングさせて逆引きググッとくるのも一興。

 みたいな、
 どのようにでもつかえるテイク・イット・イージーなフライたち。

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 「ホーナーズ・ディアヘア」

 TMC900BLの10番。

 ディアヘアー類をつかったドライフライとして、
 アーバンに洗練されたアメリカ東海岸から派生したウルフ・パターンとはまたべつの流れで、
 ワイルドド田舎なアメリカ中西部発ディアヘアーをつかったドライフライの元祖。

 まさに質実剛健の手本のような、
 素朴で簡素で野性味あふれるテイストのドライフライ。

 ディアヘアーの束をフックシャンクに添えて、
 ぶっといモノコードのスレッドでボンレスハムみたいに縛って、
 その余りのヘアーをそっくり返して背中にして、
 さらにその余りのヘアー先端をウイングにするというディアヘアー完全一体型構造。

 もちろんエゾジカの毛をつかって巻いた。
 ヘアーは短いけれどバリッとハリがあって、
 ダンがかった小麦色をした部分のヘアーをつかった。

 ハックルはグリズリー。
 考案者ジャック・ホーナーいわく、
 「ウイングの前後に二回転。合計四回転だけハックリングするのが大事なコツ」との由。
 これがむかしからず~っと不思議だった。
 もっとグリグリぶ厚くハックリングしたほうがよく浮くでしょうに。

 現に、
 このフライのアレンジ版「ロイヤル・ハンピー」で一世を風靡したジャック・デニス御大のハンピー・シリーズは、
 これでもかといわんばかりにびっしりハックルが巻いてある。

 この素朴な疑問、
 6フィート3インチ3番の竿にフロロ4Xリーダ全長13フィートくらいの道具でこのフライを投げていて、
 ハタと思い至ったけど、
 ハックル4回転だと空気抵抗がすごくほど良い。
 かっ飛びすぎず、
 投げてる最中のフライに過剰な抵抗がかからず、
 かつディアヘアーのバルキーなボディ重量との相乗効果でもって、
 ピンスポット狙いがじつに快適でたのしい。

 西部のでっかい川で、
 ドライフライをバーンと投げてロングドリフトするようなジャック・デニス的ハンピーの釣りに対して、
 ホーナーズ・ディアヘアは段差のある山岳渓流で、
 大小のピンスポットに叩きこむためのフライ。

 いまから70年くらいもまえに、
 ジャック・ホーナーがそのように意図してこのフライのハックルを4回転に指定していたとしたら、
 先見の明ありというか斬新というか10歩くらい先行ってるというか、
 ご本人きっとものすごい釣りが上手だったんだろうな~と想像しちゃう。

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 ふつ~のディアヘアー・カディス。

 今月に発売される「季刊フライフイッシャー」誌の連載記事に、
 「エゾジカの毛のおかげで、このお馴染み定番フライに惚れなおす」的記事を掲載させていただいております。

 このようなヘアウイング・スタイルのドライフライのためにあるような、
 エゾジカの小麦色のナチュラルカラーにも、
 各部位いろんな色調や質感など種類があって、
 どれもこれも使い勝手がよい。

 ただ、
 エゾジカだったらどれでもいいかというと、
 ここがややこしいところで、
 とくに個体の年齢や産地、
 さらには生育環境によって毛質がぜんぜんちがう。

 なので、
 個体によってはまったくダメダメじゃん、
 ていうのゴロゴロある。

 なんだけど、
 タイイング視点できちんと吟味して優良個体を探してきて、
 しかるべき処理を施したものは、
 もうほんとにすばらしいとおもう。

 で、
 そのようなヘアーをこそドバーッと売るほど収集中。

 ちなみに、
 我が家の作業場を裸足で歩くとエライことになるど。
 足の裏にエゾジカやヒグマの毛がベタベタひっつくど~。
 
 掃除しても掃除しても、
 すぐまた元に戻るので、
 もうあきらめた。
 

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 マッキンキンのヒグマのガードヘアーをウイングに据えたヘアカディス風のサイズ10番。

 たま~に、、
 このようなヒグマの毛をつかったサイズ10番以下のドライフライについて、
 クレーム?のお便りが寄せられる。
 タイイングデモなんかでも、
 かならず話題になる。

 いわく、
 「ヒグマの毛を購入してみたけれど、どうしたってこのようなフォルムに巻けないんだけど、いったいどういうことなのか?」

 ごめんなさいね、
 じぶんが販売したものに関してはアレコレ言えるけど、
 巷に出回ってるやつはボクちょっとわかんない。

 ヒグマの毛は個体ごとにものすごい個体差がある。
 そして、
 獲れた季節や状況によってもぜんぜん別物のように毛がおおきく変化する。
 さらに、
 このような常用サイズにマッチする毛は、
 とある季節に獲れたヒグマのとある部位の限られた範囲にしか生えていない。

 しかも、
 フライとしてつかえるハイクオリティのものとなると、
 じぶんの体感的に何十頭のヒグマの毛皮を仔細観察して一頭みつかるかどうか、
 といった確率。

 さらにしかも、
 昨今のいろいろな事情をかんがえると、
 今後そのようなプレミアム・クオリティのものが出回ることはますます困難になるばかり。

 なので、
 今年の春ごろまでは、
 「もう今後の入荷は見込めなさそう」
 みたいな未来のない消極的なモノ言いをしていた。

 な・ん・だ・け・ど!
 ヒトのご縁というものはかくもありがたいものなのか。
 つくづく自分は周囲の方々に支えられております。

 ヒグマの毛をとりまく自分の状況がガラリと変わりつつある。

 海千山千で生え抜きな方々の多大なご理解とご協力をいただき、
 これ以上はない超強力なバックアップを得て……、

 同好諸氏のみなさま、
 もうほんのちょい待っててくださいね。

 手にとった瞬間、
 絶句してポワ~ッと見惚れちゃって魂もってかれるようなやつ、
 イメージが膨らみまくってタイイングごころ掻き毟られるようなやつ、
 たまらないヒグマのスキンたちが何頭か我が家に集まって来てくれてます。

 あとはまず自分がさんざん使い倒して確信に満ちた自信を得て、
 きちんと整理して細かくカットしてキレイにパッキング。

 なんだけど、
 当社はいつも使い倒すところまではものすごく迅速なんだけど、
 そのあとの肝心な作業がノロイんだよな~ナメクジ野郎です。

 くれぐれもお気軽に、
 「はよせんか」とケツ叩いてくださいね。

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 今年の晩春から、
 ゼンブリの必殺フライとしてつかいはじめたけれど、
 センブリの季節が終わってもずっとつかってるサイズ10番。

 だって、
 すっごい使いやすくて、
 すっごい釣れるんだもの。

 なんといってもウイング素材がこのフライのすべてのキモ。
 今シーズンつかいはじめた素材としては、
 個人的にひさびさのホームラン級大ヒットなった。

 これもまた、
 ウイングもボディもヒグマの毛。

 そしてこれもまた、
 とある季節のとある年齢のヒグマのとある部位に、
 ほんのわずかな期間だけ生えている期間限定の貴重な柔毛。

 これまでさんざんヒグマの毛を見てきて、
 いっぱしの目利きになったつもりだったのがハズカシイ。
 こんなの今まで見たこともなかった。
 ひたすら感動。

 ヒグマの毛は底なしに奥が深い。

 細かく絡み合った濃厚な毛が、
 陽光をバンバン透過して艶ダン色に輝きながら、
 とにかく釣っても釣ってもひたすら水面高く浮きつづける不思議な魅力満載の柔毛。

 この柔毛をつかったハネアリやビートルで、
 秋の激シビアなライズの釣りをはよやりと~てやりと~て……。

 そのまえに、
 お仕事もいっしょうけんめいがんばる……つもり……かも?

 
きょうもきょうとて
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 昨夜はおそくまでフライボックスやらベストの中身やらの整理。 

 ここ数日、
 フタスジモンカゲロウの羽化の釣りに没頭。

 気心の知れた友人たちと、
 ワイワイしながらエキサイティングな釣りを堪能した。

 そして、
 おとついの深夜、
 その日に撮った釣りの写真を眺めていると、
 なんだかとてもこみあげてきて、
 我が脳内でもフタスジがスーパーハッチ。
 そんなとき、
 ハタとおもいついて巻いたフタスジモンカゲロウの羽化直後のダンのフライ。
 完成した時点で、
 (うわ~コレ釣れそ~)
 ニタッとホッペがゆるむ自画自賛っぷり。

 そして昨日、
 そんな期待の新作フライをボックスに忍ばせて、
 このフライをあのフタスジのダンが花びらみたいに浮かんでいる水面にはよ~浮かべと~て浮かべと~て、
 逸る釣り気分ムンムンムラムラでフタスジの釣り場に出かけてみれば……、

 なんか、
 本日休業?てかんじ。
 
 ドヨ~ンと鉛色の陰鬱な曇り空のした、
 水面はシ~~~~ンと静まりかえり、
 寒々とひっそりと、
 生き物の気配がキレイさっぱりぴったりすっかり消えている。

 な、
 なんで?

 という、
 このテの釣りにはきわめてありがちな展開。

 まともに竿も振らずに帰宅。

 気が納まらないので、
 今朝は別の川へ……。

190703 (5)5

 今シーズンもまた、
 このムシのミステリーな流下と、
 それにライズするどでかいマスたちとの攻防戦をたっぷり愉しんだ。

 もうそろそろこのムシの季節も終わろうとしている。
 きっとおそらく、
 このムシの流下に絡んだライズの釣りも、
 きょうでおしまいってかんじがする。

 このムシと巨マスたちとの関係を発見した昨シーズンは、
 とにかく釣りたい一心で、
 CDCや化学繊維やフィルム素材をつかったマッチ・ザ・ハッチ的なフライばかりつかって、
 機能的なフライでひたすら効率を求めていたけれど、
 今シーズンは趣向をガラリと変えて、

190703 (2)

 このムシにライズしているサカナを狙うとき、
 つかうのは各種のクラシック・パターンのみ。
 そして、
 フライのサイズがちいさくても細い糸はつかわない。
 フックサイズ問わずすべてフロロ4Xでガチンコ勝負。
 もちろん、
 ヤワなフックもつかわない。

 という縛りを自らに課して愉しんだ。

 本日のチョイスはコレ。
 F.Mハルフォードのカディス・パターンをソレっぽく巻いた14番。

190703 (4)

 たとえば、
 放流されたサカナや、
 湖やダム湖で暮らすサカナたちが、
 このようなちいさなムシに執心するのはモロモロの理由でよくわかる。

 なんだけど、
 普通の川や渓流で生まれ育った、
 無垢の野性のでっかいマスが、
 いったいどういう理由で危険を冒してまでこんなムシに執着して、
 呆けたようにライズするのか不思議で不思議でたまらない。

 フラットな水面で、
 でっかいヒレをひろげて、
 ムワッムワッと鼻先を突き出してライズしているのを発見するたびに、
 なんだか奇跡の光景に遭遇してしまったような面持ち。

 で、
 そんな奇跡の巨マスを、
 機能ばかり優先される昨今ではいまや誰にも振り向かれない、
 もはやシーンから消え失せてしまったような、
 過去の遺物のような往年の古典フライたち、
 しかし、
 「これこそがフライの花道というものでしょ」と言いたくなる美しい正統派フライで狙えるなんて……、

190703 (3)

 今朝の奇跡。

 そしてまたさらに不思議なことに、
 このムシにライズしているニジマスは、
 どれもこれも溜息が漏れるような抜群のベストコンディションのサカナばかりなのは何故?。

 期せずして、
 記憶に残るイッピキとの一発勝負に勝利できて、
 満たされすぎた帰り道、

 どうせなので、
 実績度数高めの深瀬のポイントにも寄っていく。

 マドラーミノーやジェロニモなど、
 でっかい毛虫を意識した巨大ドライフライをしつこく流したけれど反応はなし。

 なので、
 ものはためしにコレを沈める。
190703 (6)6
 黒いオストリッチとピーコックハールをボディに巻いたクロカワムシ風。

 なんだけど、
 むしろ毛虫として効いているのではなかろうか?
 
 まあどっちでもいいんだけど……。

 このフライに重いオモリを噛ませて、
 アウトリガー風ミャク釣りスタイルで川底をゴロゴロ転がすのではなく、
 あるていど遠くに投げて流れの表層あるいは中層をフワフワと自然に漂わせみた。
 まるで流れに揉まれた毛虫のように……。

 でっかいウエイテッドニンフをつかってはいるけれど、
 とても軽快で繊細でテクニカルでドライフライちっくなニンフの釣り。

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 お試し感覚でカル~ク投げた一投目から狙い的中。

 まずは瀬のヒラキのところでリーダーがツーーーッと勢いよく引き込まれて……、
 つぎに瀬頭の落ち込みに叩きこんでみればヌンッとリーダーが張るような感触……、

 ドライフライで水面を探ったときには寒々しいほどシーンとしていたというのに、
 じつは川の中はとっても賑やかお食事タイム真っ最中だったご様子。

 アタリはどれもこれもバッチリ明確。
 バレやすいロングシャンクのフックにもかかわらず、
 掛けたサカナはすべてがっちりフッキング。

 あきらかに、
 毛虫の流下にこそ鋭く反応している様子。

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 ガンッとアタリとった瞬間、
 水中からゴンゴンゴンゴンッと魚体を捻り狂う重みがズシンッと伝わってくるの、
 ほんとたまらん。

 ケムンパス、
 ばくばく食われて
 マス肥ゆる初夏。

 ああ釣りたい。


 
いもむしゴーロゴロ
190629(1).jpg
 
 お日さまはいつかえってくるの?

 ひと雨来るのか来ないのか、
 煮え切らない曇り空の日がけっこうつづいている。

 台風一過の荒れようだった昨年の今ごろとは真逆。
 今年はいま現在まとまった雨がぜんぜん降らない。

 なので川ははやくも減水。
 夏の渇水期のような流れ。

 190629(2).jpg
 ジェロニモ参上。

 サイズ4番。

 つい五日ほどまえ、
 まだときどき晴れ間がのぞいていたとき、
 釣り場にむかう道すがら、

 お日さまにあっためられたアスファルトの道を、
 焦げ茶色のぶっとい毛虫がウネウネ這っているのを二回も見た。

 今年はじめて。

 ケムンパスきーーーたーーーーーーー!

 まってました。

 おそらく、
 川のなかはすでに種種雑多な毛虫が流れに揉まれておることでしょう。

 今シーズンは毛虫の釣り検証をなにより楽しみにしておったのじゃ。

 ジェロニモの出番がやって来た。

190629(3).jpg

 五日ほどまえ、
 おなじ釣り場のちがう区間では、
 大中小のニジマスたちの口中奥深くに飲み込まれたジェロニモ。

 ジェロニモすっかり人気者。

 きょうもまた、
 そのときつかったのとおなじやつを自信満々で特Aクラス実績の深瀬のポイントにブッ込む。
 ダーダー白泡を立てている瀬頭の流芯脇で出るとおもいきや、
 瀬尻のヒラキの深みからスパーッと垂直にジェロニモめがけてサカナが浮上してきた。

 のだが、
 フライに鼻先が触れたんとちゃうか?
 というところでクルッとUターン。

 え~そんな~。

 まあ、
 五日ほどまえに来たときよりもさらに減水してるし、
 足元の砂地には夢追い人たちの真新しい足跡がいっぱい。

 そら神経質にもなるわな~。

 とおもったけど立ち去り難く、

190629(4).jpg

 時間をおいてフライを交換して再チャレンジ。

 コレを選んだ。
 黄金のウルフ爆裂サイズ4番キンカムイ・スタイル。

 ハックルはファーネスの短いファイバーと、
 レオンのサドルのものすごく長いファイバーのミックス。

 というお品書きはさておき、
 ここでは、
 ものすごくヴォリュームのある存在感ムンムンのモジャモジャしたフォルムのフライから、
 フライのサイズはまったくおなじだけど、
 全体的にスカスカした毛羽立ちのスパースで透明感のあるモジャモジャ・フライに変えて、
 どちらもファジーで毛虫っぽいモジャモジャだけど、
 受ける印象はまるでちがうよ…どない?
 という作戦なんですよ。

190629(5).jpg

 サクセス!!

 さっきとまったくおなじようにヒラキの深みからスパーッと一直線に飛び出してきて、
 こんどは躊躇なくバクッとくってンギャギャギャギャーとリールを鳴らして突進した。

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 3Xのフロロをタールノットで結んで。
 
 サカナの口から外して、
 シャバシャバッとかるくゆすいで、
 フッと息を吹きかけて水気を飛ばした状態。

 これでバッチリ復活。

 さいしょにジェル状フロータントを丁寧に塗布しておくと、
 あとはほとんどメンテ・フリー。

 さ、
 つぎいこか~。

 このポイントからしばらく上流に行くと、
 いつもは川岸の藪をこいでスルーしているなが~いプールがある。
 砂利底で水深は浅く平坦、
 流れはテレッとゆるく、
 この季節だとサカナが居つくような場所ではない。

 浅いといっても最深部で胸くらいの深さがあるので、
 川通しには歩けず、
 いつも面倒な藪こぎを強いられていた区間。

 しかし減水しまくっている今日は、
 川のなかをず~っと上流まで歩いて行けそう。

 そんなわけで減水中の幸いと、
 夏草の生い茂る岸沿いに腰くらいの深さのところをゆっくり歩いていたとき、
 ものすごいの発見。
 アレは倒木が沈んでいるのか?
 とおもいきや、
 プール最上流のゆるやかな流れ込みの対岸のいちばん深いところの川底べったりに……、
 えげつないのがドッテーンと横たわっていた。

 こんなところにおったんか~。

 というか、
 ぜんぜん意識していなかったので、
 気がついたときにはサカナとの距離はもはや目と鼻の先。

 丸見え。

 とはいえ、
 水深がけっこうあるのでさほど警戒されていない様子。
 しかも!、
 微動だにせず直立不動でジッと凝視していると、
 どでかいのが二度三度と魚体をかるく右左に揺らすようにうごいて、
 白いクチがパフッと開いてなにかを捕食した。

 丸見え。

 ……パフパフしてんじゃんなんか喰ってんじゃんアレ釣れるんじゃん?……

 そのようにおもったとたんバックバクドッキドキ。

 迷うことなく、
 エゾリスの毛で巻いたモジャモジャのニンフを結んで、
 ジーッと頃合いを見計らって上流にチャポンと投げて沈めて、
 サカナの目前にフライを誘導。

 すると、
 巨まっちゃんのやつ、
 フライの流下にあわせるようにジリジリジリジリあとずさりすると、
 そのままクルッと下流にむかってどこかに消えてしまった。

 マンモス落胆。

 立ち去り難く、
 そのまましばしたたずむ。

 タバコを吸いおわって、
 携帯灰皿に仕舞って、
 もう行こうかな~どうしようかなと逡巡していると巨まっちゃん、
 スーッとまた元の位置に戻ってきたではないか。

 またもや心臓バックバク。

 おそらく、
 チャンスはあと一回。

 戻って来た巨まっちゃんが、
 再び流下している「なにか」を捕食するまで、
 そのまま延々ジーッと待つ。

 ようやく、
 グラッと魚体をゆらして真っ白な口をパフッと開いてなにかを食ったのを確認して、
 まるで「坊さんが屁をこいた」のように、
 サカナの様子を確認しながら、
 ジリッジリッとすこしづつサカナの定位している位置よりも上流に移動。

 横方向からのアプローチだと、
 この状況ではどうしてもティペットが先にサカナの視界にはいってしまう。
 おそらく、
 サカナの様子から察するに、
 フライに警戒したのではなく、
 ティペットに怯えたかんじ。

 なので、
 すこしでも上流から流しこんで、
 フライ先行で流したい作戦。

 かつ、
 一度見られたフライにはまず反応しないとおもわれたのでフライも交換。

 長い時間をかけて、
 ナメクジのように上流に移動して、
 それからサカナの様子をジーッとうかがい……、

 満を持して再挑戦。

 こういうピリッピリにはりつめた勝負のときに、
 ぜひとも習得しておきたい、
 「いいこと」教えたげようか。

 「ぜったい釣ったる!」なんておもってギンギンになっちゃダメ。
 その殺気、
 ぜったいサカナに伝わってます。

 そうじゃなくて、
 釣りたい気持ちにむりやり蓋をして、
 「まあダメ元でやってみよかな~」
 くらいのかんじでかる~く、
 しかし慎重に……。

 これ、
 ものすごいコツやとおもてます真剣に。

 んで、
 上流側からスーッと流し込んだフライが沈んで、
 サカナの視界に入ったかなとおもった瞬間、
 これまでほとんど同じ位置に定位してエサくってた巨まっちゃんのやつ、
 わざわざ上流にスッと魚体を移動させて、
 フッとエラふくらませ、
 でっかい胸ヒレふわっとひろげて、
 プファッてかんじで真っ白なクチを開けて、
 ばっくりフライを吸いこんだ。

 丸見え。

 ドンッとあわせた瞬間、
 グワンッと魚体をひねらせて、
 そのまま一度も止まらずバッキングが吹っ飛ぶように出ていった。

 ギュワーッと狂ったように下流に走っていったそのお姿から、
 サカナの「しまったああ~~~~」という叫びが聞こえるようなかんじだった。

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 ドーンてかんじ。

190629(11).jpg

 あれだけの激闘のあと、
 水辺に横たわってなおでっかい背ビレをバビーンとおっ立てて、

190629(10).jpg

 全身で怒り狂っている巨まっちゃん。

 野性やわ~。

 はよとっとと逃がして余韻に浸りたい。
 でも、
 もうちょっとだけ魚体を眺めさせてほしい。

 いつも気持ちが焦りながらせめぎあう。

190629(8).jpg

 つかったフライは……、

 アオムシきーたーーーー!

 今年もまた、
 インチワームの季節がやって来た。

 これから初秋の季節まで、
 黄緑色のちいさなイモムシは、
 ときとしてスレッスレの百戦錬磨を、
 ウブな食いしんぼうに変えてしまうことが多々ある。

 最重要くらいの感覚で要チェックですよ。

190629(12).jpg

 オケツに血がにじんでいて、
 黄緑色の表皮のしたに血管が透け見える、
 朱色のアクセントを強調したブラッディなインチワーム。

 これ、
 ありがちなヤーン素材ではなく、
 アクリル繊維をマシュマロ・エクステンション・スタイルに巻いて、
 このような体裁に巻いている。 

 このように巻くと、
 流れに揉まれるイモムシの棒みたいな沈み方によく似ている。

 今シーズンは、
 またもやイロイロアレコレ改良を施して、
 さらなる進化をめざしたい。

 満たされ過ぎてお腹いっぱい。

 午後おそく、
 川からあがってクルマに戻って、
 車内に置きっぱなしにしている携帯を見ると、
 里川の大プールに行っている友人から、

 「モンカゲいいかんじ」

 と一言ライン。

 「これからいくわ~」

 とお返事して、
 いつもの仲間たちの社交場的釣り場に向かいます。

 到着してみれば、
 アレなんだか水面はとっても静か。
 友人たちも釣りモードではなく岸辺で談笑中。

 「いや~、ついさっきまでモンケゲばんばんハッチしていてライズも凄かったんだけど……」

 アラマアあとの祭りのご様子。

 こんなとき、
 いつもならハンカチのカドくわえてウッキーッと悔しがるところ。

 なんですけれど……、

 「いや~、きょうさあアソコの川行ってたんだけど、こんなことがあってさあ」
 
 な~んちゃって両手広げてアツ~ク語っちゃってキャハ。

 でもせっかく来たので、
 モンカゲのフローティングイマージャーを水面にポツンと浮かべてはみたけれど、
 それよりむしろ友人たちと談笑。

 しておりますと、
 モンカゲ羽化の残り香のように、
 チャポッと……、

190629(15).jpg

190629(16).jpg

 やったー釣れたー。

 エゾリスの毛とワシミミズクの羽根で巻いたモンカゲの新作パラシュート・イマージャーで釣れてくれてウレシイ。

 そんな一日。
 
 
輪廻転生
180912(3)3.jpg
 サヨナラのまえに手尺でパパッとはかって60センチにすこし足りないかんじ?
 泣きのロクマルってとこ。
 
 ひっきりなしに釣り人が往来する人気河川にもかかわらず、
 魚体に傷や欠損がまったくない完璧無比のメスのニジマス。
 も~たまりまへん麗しのベッピン絶品筋肉マダム。

180912(1)1.jpg

 この場所にいた。

 一見しただけだと素通りしてしまいそうな、
 見た目いかにもショボイ岩盤滑床の瀬にいた。

 だが、
 マダムがここを根城にしていたのには、
 ちゃんと理由があった。

 対岸の雑木生い茂るバンク際が、
 畳二畳分くらい岩盤がガバッとはがされたように深みになっていて、
 川底には大小の岩や石が転がっている。
 そして、
 そこに適度な流圧の流芯が流れ込んでいる。
 そのため、
 ここを流下する昆虫たちは、
 ほとんどこの深みを通過することになる。
 しかも、
 雑木林のバンク際は深くえぐれていて、
 剥き出しになった木の根っこが張り巡らされた洞窟のようになっている。

 狭い空間ではあるけれど、
 巨体を忍ばせる深みや障害物の隠れ家あり~の、
 エサは追わずとも勝手に目のまえに流れ込んでき~の、
 釣り人はほとんど素通りし~の、
 彼女にとっては理想の棲家だったにちがいない。

 が、

 今年7月半ばのこと、
 そんな彼女の安住の地に、
 下心ムンムンの邪悪な魔の手が忍び寄ったのじゃ。

 上流にある人気ポイントを目指して、
 この瀬をザバザバと急ぎ足で歩いていた魔の手は、
 ふとこのバンク際が気になった。
 それで、
 行きがけの駄賃とばかりに、
 なんの気なしに、
 まったく期待もせず、
 ダラけたムードで、
 2Xのティペットに結んでいたフォーム製の特大フライを、
 ポーンと投げ込んだのじゃった。

 重量級のでっかいフライがベチャッと着水したその刹那、
 揺れ流れる波間のしたで、
 グラッと赤紫色に見えたでっかいのがフライにむかって浮上しそうになったかとおもうと、
 スッと魚体をひるがえしてまた深みに消えていった。

 フライを投げ込んだ立ち位置がすこしでもちがっていたら、
 光の加減や角度で水中のその魚体は見えなかったかもしれない。
 ビミョ~なかんじだった。

 魔の手はつくづく幸運だった。

 …おるやんけおるやんけおるやんけ!!

 しかも、
 サカナのその反応と挙動から察するに相当スレてるっぽいけれど、
 反面かなり喰い気が立ってるっぽい。

 イケル…コレハイケル…ゼッタイイケル…キットデル…

 アレハゼッタイデル!

 確信した。

 そして、

 …まず、
 ここからフライを投げるよりも、
 あっちに立って、
 あそこに投げて、
 フライをこう流して……、

 …さらに、
 掛かっても下流の轟々流れる荒瀬に下られて走られたらおしまいだ。
 きっと岩盤のカドでティペットが擦り切れるか、
 激流に揉まれてバレてしまいそう。
 それはなんとしても阻止したい。
 そのためには、
 あ~してこ~して掛けたらあそこに走ってってサカナを上流に追いやって走らせて……、

 めまぐるしく脳内シミュレーションしながら、
 ジリジリと立つ位置を変えティペットを4Xに変え、
 フライのサイズも落として地味目なのに交換した。

 で、
 一投目。

 岩盤のくぼみにフライが流れていくと……、

 水面のフライにスーーッと一直線に浮かびあがってきた巨体が、
 迷うことなくグボンッと鈍い水音を立てて、
 もうなんとも理想的なかんじでフライを吸いこんだ。

 フライに出た瞬間、
 喉元奥にがっぽり飲み込まれるのがわかるようなかんじ。

 よっしゃ!こ~れはバレない絶対バレない。

 掛かった瞬間、
 二度三度ダッダーンダッダーンッ!と魚体をくねらせながらド派手に跳んだけれど、
 ハリが外れる気はまったくしないので、
 めっちゃ強気の勝負。

 すぐさま下流に回り込んでザッバザバ水を蹴散らしてサカナを上流に追いたてた。

 あっぱれ素晴らしい闘いだった。

 いつもはけして意のままにはなってくれない、
 高根の花と恋焦がれる絶倫筋肉美女をあいてに、
 狙い定めた細心のアプローチも、
 掛かってからの丁々発止なファイトも、
 すべてが計算ど~り!ぱーふぇくと!!

 こんなこと、
 そうめったやたらとあるもんじゃない。

 ムッハーッてかんじ。

 天狗の鼻はにょきにょき伸び放題。
 ボクはいま、
 調子こきまくりのピノキオ状態。

 ゼペット爺さんに叱られそうだ。

180912(4)4.jpg

 ほんとにありがとう。

 ヒグマの金毛だけで巻いた、
 我が最愛の、
 絶大な信頼の特製ドライフライが、
 美熟女の口許で鈍い金色(←ココ、キンイロと読むんやなくてコンジキと読んでくれたまえ)に輝いている。

 たまらんなあ……。

 ほんとにほんとにありがとう。

 万物の長すべてに感謝。
 ありがとうありがとう。

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 気持ちがおちついて、
 ふと我に返ってみれば初夏の季節。

 命あるものすべてが輝き、
 生と性を謳歌する初夏の季節。

 深い森のなかを流れる美しい川には澄んだ水が流れ、
 さまざまな鳥たちが盛んに歌いさえずり、
 大中小の蟲どもはひっきりなしに飛び交い、
 木々の緑は鮮やかに色濃く我が胸に迫ってくる。

 すばらしいな美しいな……。

 満たされすぎたココロを持て余しながら、
 夢遊病のように、
 野性の自然にこのまま埋もれていくかのように、
 川のほとりをただそぞろ歩いた。

 もはや釣りなんかそっちのけ。
 きょうはもう充分なのです。

 ワタシ、
 これいじょう釣っちゃったら、
 もうどうにかなっちゃいそう……。

 世俗に戻れなくなったら、
 ボク困っちゃうワハハハハハハ。

180912(5)5.jpg

 鳥のさえずりに耳を澄ませながら、
 この岩壁をゆっくり歩いていたときだった。

 木の根っこのところから、
 なにか小さな茶色いものが、
 カサカサと音を立てて、
 崖をころがるように落ちてきた。

 さいしょは落ち葉かとおもった。

 のだが、
 それは小鳥の雛だった。
 幼い未成熟な翼をひろげ、
 ふるえるようにもがきながら、
 崖から落ちてきた。

 …うわ~かわいそうに…

 そうおもって、
 頭上を見上げると、
 目と鼻の先の枝にオオルリ(←wiki)がいた。

 …うっわすげえ!…

 当地ではさほど珍しくはないという話しも聞いたが、
 じぶんははじめて見た。
 いつか見てみたいとおもっていた憧れの小鳥。

 きょうはなんと幸運な日であろうか。

 これ以上はない幸運をかみしめているときに、
 シアワセの青い鳥がすぐ目の前で盛んにさえずっているなんて。

180912(6)6.jpg

 だが、
 様子がへん。
 
 目のまえに自分がいるのに、
 まったく逃げない。
 というよりも、
 ぼくの存在に気がついていないかのようだ。

 すぐそこの木の根っこや枝に飛び移りながら、
 さえずるというよりも、
 甲高い声で鳴き叫んでいる。

 そして、
 数羽のオオルリのメスとおぼしき茶色の小鳥もまた、
 その周囲でさわがしく鳴いていた。

 なんだなんだ?

 不思議におもって、
 その様子を眺めていたとき、
 視界の隅に映っていた木の根っこが、
 ズルッとうごいたような気がして、
 ハッとそちらを注視すると、
 そこに大きなアオダイショウが這っていた。
 こんな太くて長いヘビは久々に見た。

 とつぜん崖から雛鳥が落ちてきたこと、
 オオルリが逃げもせず鳴いていること、
 これで謎は解けた。

 オオルリの雛を襲うべくジリジリ巣に近づいているアオダイショウ。
 それに驚き恐怖した雛鳥が巣から転がり落ちてしまった。
 親であるオオルリは盛んに警戒音をだしているが、
 アオダイショウのまえにはなすすべもなく……。

 これはたいへん、
 すぐにヘビをどかしてやろうと、
 アオダイショウに近寄って手を伸ばした。

 が、
 ズリッズリッと木の根っこのうえを這うアオダイショウを見た瞬間、
 掴もうとした手をおもわず引っ込めてしまった。

 マムシなどの毒蛇は別として、
 ヘビを掴むことなんか自分にとって子供のころから造作もないことだった。
 むしろヘビを見つけたら嬉々として捕まえたい爬虫類大好きっ子。

 だが、
 オオルリ同様に、
 ぼくの存在などまったく無視して、
 ゆっくりと這っていくこのヘビを捕えることは躊躇してしまった。

 まじまじとヘビを見た瞬間、
 じぶんの奥底にあるなにかが射抜かれてしまったようだった。
 魂が抜かれてしまったようだった。
 心底ゾクッとくるものがあって立ちすくんでしまった。
 触れられない…とおもった。

 それほどまでに美しいとおもった。
 
 いや、
 その表現は適切ではない。

 いつ出会えるとも知れない久々の獲物をまえにして、
 興奮の極に達しているアオダイショウの身体は、
 深く暗い玉虫色にギラギラ底光りしていた。

 その輝きはどこまでも妖艶で、
 得体のしれない妖気と精気に満ち満ちていた。

 山仕事にいそしむいにしえの昔人が、
 伝説の大蛇をまえにして、
 大蛇が発する妖気のオーラにあてられて気がふれてしまった、
 などという昔話の源泉を見た気がした。

 おとぎの世界に迷い込んでしまったようだ。

 もはや、
 大切な雛をアオダイショウに喰われるしかないオオルリも必死。
 だが、
 アオダイショウもまた、
 生きるために必死だった。
 
 そんな光景を、
 生きるのにまったく必死ではない自分が、
 なにもせず、
 どうすることもできず、
 ただ、
 呆然と眺めているだけ。

 外の世界など、
 なにも知らなかっただろう雛鳥が、
 ぼくの足元で立ちすくみ、
 ただ震えていた。

180912(7)7.jpg

 そして、
 夏の陽が、
 ゆっくり暮れていった。

 いつもとおなじように。


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