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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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ビギマム祭に参加してきました。
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 11月16~17日の土日、
 大阪の帝国ホテルでおこなわれたビギマム祭にて。

 初日、
 イベントがはじまってほどなく、
 会場の入り口からすぐのところにある自分のブースで、
 数人のお客さんが取り囲むなか、
 このウエットフライを巻きながら、
 なんだかんだ解説していたときのこと。

 会場の奥に据えられたステージで、
 「サクラマス レストレーション」代表であらせられる安田龍司さんの講演がはじまった。
 銘川「九頭竜川」でのサクラマスをとりまく環境保全への取り組みや、
 資源保護と増殖への試行錯誤の過程のご報告などなど、
 たいへん意義のある興味深い話題を簡潔明瞭にまとめてお話しされていた。

 安田さんの快活なお話しぶりに聞き耳をたてながら、
 その一方でじぶんもフライの巻き方を解説していたのだが……、

 おりしも、
 フライの製作は、
 これからがクライマックスですよ、
 って工程にさしかかったところ。

 いかにして理想的なフォルムのクイルウイングをキレイに巻き止めるか、
 そして頑丈な極小ヘッドをどのように仕上げるかってとこ……、
 さあ、
 いよいよここからが最大の見どころ。

 ってところで、
 フライを巻く手をピタッと止めて、
 ワタシの手元を熱心に覗きこんでくださるお客さん数人のお顔を見渡して、
 「安田さん、さっきからずっとエエお話しされてはりますねえ」
 というと、
 皆さんうなずきながら笑った。

 そこで提案。

 「あの、フライはタイイング途中だけどここでいったん止めといて、
 安田さんの講演をぜんぶ聴き終わってから続きやりませんか」

 というと、
 皆さんおおいに賛同してくださって、
 ステージのほうに小走りに向かっていかれた。

 そしてワタシも、
 末席から安田さんの講演をじっくり拝聴した。

 安田さんの講演が終了してすぐ、
 ダダダッとお客さんたちがまたワタシのブースに駆け戻ってくると、
 元気いっぱい、
 「つづき、おねがいしま~す」
 
 「よっしゃ!ぼくの最新クイルウイング・テクご披露しちゃうよ~~~」

 超はりきった。

 今回のこのイベント、
 きっと楽しくなりそう……という予感は見事に的中した。
 
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 初日のイベント後に行われた懇親会にて。

 ご参加されたメーカーさんや、
 クラフトマンの方々のご厚意による、
 豪華景品の当たる「お楽しみ抽選会」が盛りあがった。

 その景品のひとつに、
 このワッペンがあった。

 アメリカのヴァーモント州にある「フライフィッシング博物館」が、
 今を去ることかれこれ20数年前に、
 なにかの記念に限定で配った公式ワッペン。

 当時のこの博物館は、
 フライフィッシングとフライタイイングの足跡と遺産と財産が凝縮されたかのような一大資料館だった。
 まさにフライフイッシングのおとぎの世界であり夢の国だった。

 そんなわけで、
 このワッペンはそれはそれは由緒正しい、
 知る人ぞ知るいわくつきの一品。
 同好諸氏には垂涎必至のレア物。

 といいつつ、
 このワッペン、
 かつてじぶんも所有していた。
 けど、
 いろいろあって、
 20数年前に捨ててしまったのだった。

 博物館にはなんの罪もないのに、
 申し訳なく胸が痛い。

 だもんで、
 このワッペンの出処もヨ~~~ク知ってる。
 この場にコレがでてきた経緯も聞かずともわかる。
 なんでもかんでもぜんぶ知ってる。

 いや、
 知っているというよりも、
 
 若かりしころの辛い記憶とともに、
 よ~く憶えている。

 じつはこのワッペンは、
 じぶんにとって長いあいだフタをして閉ざしていた苦い思い出を象徴する記憶の断片のひとつ。

 な・ん・だ・け・ど・

 ぶっちゃけ、
 も~こんなに年月が経ってしまえば、
 そんなこたあもはやどうでもいいことでしょ……、
 
 当時あれだけ苦しんだり恨んだり悔しかったりした記憶なんか、
 いまじゃ若気の至りの一言で笑い飛ばしちゃいますよ。

 そんなわけで、
 ものすごく久々にこのワッペンを見て……、

 20数年前にタイムスリップして落ち込むのではなく、
 現在たった今の充実したフライフィッシング・ライフの視線で独り勝手に盛りあがり、

 うわ~やっぱカッコエエな~コレ欲しいな~……、

 っていうか、

 ぜったい欲しい!

 っておもっちゃったワ・タ・シ。

 ところが、
 幸運にもこのワッペンを当てたのは、
 ことし38歳になられたピチピチの若者くん。

 しかし、
 そないなことでカンタンにあきらめるワイやおまへん。

 会場内の公衆の面前で、
 あろうことかマイクを握りしめ壇上から、
 恥も外聞もなく渾身の想いで叫びましたがな。

 「なんでも言うこと聞きますぅ~。お願い事あるならなんでもかなえます~。
 だから、このワッペンとぼくの持ってるなんかと、とりかえっこしてぇぇぇ~~~~」


 「じ、じゃあ、ビゼンさんのフライと交換していただけますか?」

 「え?うそっ?マジ?そんなんでエエの?」

 「いいです。っていうか、むしろボクにとってはそのほうが嬉しいです」

 「あ~~~りがと~~~~~!」

 この、
 自分勝手で有無を言わせない強引な取り引き。
 それを、
 なんでかほのぼのハートフルなやりとりと解釈して、
 ほほ笑みながら拍手までくださる公衆の皆々さまがおやさしい。

 あまりにうれしくって調子こいちゃってマイクにぎって……、

 「あんなあ、ボク、ほんまに欲しいとおもったもんはぜったい手に入れるし、
 ほんまに釣りたいとおもったニジマスはぜったい釣ったるねんで~メッチャねちゃこいんやで~」

 皆さんドン引き。

 でも、
 ほんとに釣りたいとおもってるニジマスはさておき、
 もはや、
 ほんとに欲しいもんって……なんだろう?
 パッと浮かんでこなくなってしまったお年ごろ。

 ほんの数年前までは、
 アレもほしいコレもほしいって、
 ひしめいていたのに……。

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 イベントでは、
 こんなハックルを持参して、
 ほんのちょこっとだけ紹介する時間もいただけた。

 元祖オリジナル・ヒーバートのコックネック。

 我が家にある何百枚かのハックルのなかでも、
 文句なしとびっきりの希少かつ貴重な珍品。
 でありながら、
 ドライフライの歴史を語るうえでけして避けては通れない、
 キャッツキル・ドライフライ・ハックルの最重要カラーのひとつ。

 20数年前、
 夢や希望に溢れながら、
 当時ミシガン州にあったヒーバート社の養鶏農場を訪問したとき、
 創始者のテッドさんがお土産にもたせてくださった思い出のハックル。

 あのとき、
 テッドさんはこのハックルを、
 「これをキミに託そう」
 というような表現で手渡してくれたのだった。

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 カリフォルニア・コンドルのセカンダリークイルをクイルボディに巻いた、
 名づけて「ブラックコンドル・クイル」 on the TMC900BL の10番。

 そして、
 我が敬愛するテッド・ヒーバート氏のサイン。

 こうしてみると一見、
 ナチュラル・ブラックなハックル。

 天然の真っ黒のヒーバートのコックハックルっていうのも、
 まあ珍しいっちゃ珍しいけれど……、

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 これ、
 おなじハックルだから。

 光を当てる角度をずらすと、
 こんな色合いになる。

 鉄が錆びたような色調。

 パッと見は濃厚な、
 ほとんど黒褐色のラスティダン。
 ところが、
 陽の光に透かすと茶褐色な鉄錆色が、
 すごく鮮明に浮かびあがってくる。

 このハックルをいただいたとき、
 「うわ~ナチュラルのブラックもろた~」
 なんつって無邪気に喜びながらも、
 内心では、
 ほかのもっと斬新な色柄色調のハックルもほしかった。

 どうしてわざわざコレを託されたのか、
 当時のじぶんにはその本当の意味がまったくわかっていなかった。

 あれから、
 見慣れた定番レギュラー・ハックルはもちろん、
 超レアとされるものから、
 最新ハイテク改良種から、
 往年の歴史上のものまで、
 世界のいろんなハックルをありったけ見たり触ったりするだけでなく、
 もはや数え切れないほど巻きたおして、
 そしてなによりもとにかく実践しまくって……、

 そんなこんなを飽きもせず、
 ず~っと繰り返しながら、
 
 そのうえで、
 20数年もかかって、
 ようやく、
 このハックルの本当の価値がわかった。

 身をもって実感として理解出来た。

 そんな、
 振り返ってみれば我知らず、
 いつのまにか積み重ねていた経験をこそ背景にした発見。
 
 そこのところにこそ深い喜びを見出すお年ごろ。

 その豊かな感動は何物にも代えがたい。

 歳月を重ねるのは、
 切ないことばかりでも、
 悪いことばかりでもない。

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 オスのエゾジカの背中の毛をスレッドでギュッと絞るように巻き止めたときの、
 ダウンウイングの拡がり方がたまらなく絶妙でカイカン……、

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 そんなわけで、
 簡素に巻いたヘアウイング・カディス熱はぜんぜんおさまらず……、

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 ビギマム祭で購入したトラウトお守り。

 住吉大社の「お清めのお塩」が封入してあるねんて。
 タイイング机のまえの壁の大事なもんお飾りコーナーにぶらさげました。

 御利益にまみれたいです。

 そしてカリフォルニア・コンドルのセカンダリークイル。
 お買い上げいただき本当にありがとうございました。

 みなさまのオフシーズンの手慰みのお供として、
 はたまた楽しかったイベントの思い出として、
 クイルとしてボディに巻いたり、
 スレッドに捩じってボディに巻いたりしてネ。

 来シーズン、
 水面に投じてみれば、
 きっとさらに愉しんでいただけるものとおもっております。

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 カリフォルニア・コンドルのセカンダリークイルのファイバーの長いほうをスレッドに捩じってボディを巻いて、
 オスのエゾジカの背中の毛をウイングに据えたウルフ・スタイルの8番。
 ハックルはさっきのダーク・ラスティダンとグリズリーのミックス。

 充実していた大阪出張、
 先週末に帰宅すると、
 エゾジカ・スキンのご新規のご注文やら追加のご注文とかいただいていて、
 ボクもうニッコニコで返信して梱包して発送。

 エゾジカ・スキンのご注文くださった皆々さま、
 どんなにかありがとうございました。

 そして、
 オスメスともにまだまだエエとこたくさん在庫しております。
 どうぞお気軽に、
 ご注文お待ちしております。

 なにとぞよろしくお願いいたします。

 


フライの雑誌 第118号
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 「フライの雑誌」最新号となる第118号!の特集は「シマザキ・マシュマロ・スタイル」だそうです。




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 末席にて、
 お恥ずかしながらワタシの駄稿と与太話も掲載していただきました。

 道内各地のいろんな釣り場を舞台にした、
 マシュマロ・ビートルと野生のニジマスたちとの濃密な数年間のまとめとして、
 良い機会を与えていただきました。
 ほんとにありがとう。

 そんなわけで、
 その記事に添えたいナとおもった写真のなかから、
 どれをつかおうか迷いに迷っていくつか候補を挙げて、
 そこからさらに絞りに絞って「コレでいこ」と決めて、
 またもやさらにそこから、
 誌面の都合で割愛された写真たちを以下に……。

 題して 「鱒たちの口許でこそ雄弁に語りたい」

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 フライの雑誌に書かせてもらうのは16年ぶりです。

 

 
 
 
秋のイロとカタチ
 ついほんの数日まえのこと。 
 毎日のように通りかかる桜並木を見上げて、
 
 …近所の桜並木がほんのり色づいてきましたよ…

 なんてブログに書いたらオシャレかなとおもって
 すっきり晴天となった翌日、
 カメラをもっていくと、
 もはやがっつり紅なっとるやんけ。

 そしてまたほんの数日後のきょう。

 今やもはや落葉のてい。

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 オホーツクの秋は駆け足というよりフルスロットル全力ダッシュで冬までまっしぐら。


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 エゾジカのヘアカディス13番。
 冬のあいだに巻き貯めた一本。
 
 スレッドをマーカーで着色してボディ末端に真っ赤な極小アクセント。
 それが、
 春から幾度となく水面に浮かんで水を吸って変色。
 いまやすっかりワイン色。

 しかしむしろ、
 新品ホヤホヤの春のころよりも、
 ずっとムシっぽい生命感が宿っているような……、

 今後は大事につかいたい気持ちになる、
 さんざん使い古した一本。

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 川の流れのように……、
 ではなく、
 ハックルの流れに浮かぶマダラ模様の蜂蜜色のセッジ。

 ハニーダンのサドルで巻いた。

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 ファーネスの水面に浮かぶレッドセッジ。

 エゾジカの毛にハマッたおかげで、
 超ビギナー・ドシロート時代以来ウン何十年ぶりかにヘアカディスがじぶんのなかで大復活。
 そのあげく、
 ヘアカディスの原型というかアイディアの源泉となったとされる、
 古典トビケラ・フライにまで興味と関心がおよび……、

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 晩春のころ、
 ご近所の農家さんが我が家の裏庭をトラクターでガガガと耕してくださって、
 そこに簡単な畑を作ってタネを蒔いて育てた枝豆。

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 丹精込めて育てた、
 とはけして言いかねるけど、
 たわわに実ってくれました。

 おかげさまで、
 今月はまいにち枝豆三昧。

 手前みそながら、
 たいへんおいしゅうございます。

 食っても食って食ってもすこしも飽きることなく……。

 来年は、
 さらなる収穫と品質向上を目指したい。

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 と、
 そんな我が家の畑のまえにある朽ちかけた廃屋を根城にしているノラネコ。

 こいつは、
 この春にうまれたばかりの三兄弟のなかのイッピキ。

 以前から我が家周辺の野山を縄張りにしている、
 漆黒の毛並みがとても美しいクロネコ・ママからうまれたブルーダン・ベイベ。
 ほかの二匹の兄弟は母親同様に真っ黒なんだけど、
 こいつだけこんな色してんの。

 この引き締まった不敵の面構え見たって。
 凛々しいというかふてぶてしいというか。
 もはやすでに猛獣のオーラをまとった子ネコ。

 目の前は、
 シカもキツネもヒグマも闊歩する豊かな大自然。
 ライバルも強敵もそこらじゅうにひしめいている。
 
 厳しい酷寒の冬ももうすぐそこ。

 そりゃあ生まれたとたんにワイルドやないと生きられません。

 野性なんだよなあ。

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 そしてコイツもまた、
 野性なんだよなあ。

 

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 ちじれた太い繊維のクリンクルジーロンをスペントウイングにあしらった真っ黒15番。

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 ストレートな細い繊維のマイクロジーロンをスペントウイングにあしらった真っ黒15番。

 ヒグマの柔毛をマッチ・ザ・ハッチ・パターンや小型のフライに活用することにも没頭した今シーズン、
 そんな興味は化学繊維をふたたび見直す課題にも多方向に幅をひろげて現在進行中。

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 そのモデルとなったムシのひとつがコレ。

 筋肉の塊で丸々肥え膨らんだニジマスたちが、
 水面に浮かぶこのムシを「コプッ」という水音をたてて吸い込んでいる。
 なんと甘美で誘惑に満ちた響きであることか。

 「天高く、
 マス肥ゆる秋」

 
 あと半月ほどですかね?。

 嗚呼くるおしい。
 

 
 
ユスリカの園
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 お盆がやって来る数日前のこと、
 この日も朝からいきなりカッカと暑い日だった。

 北海道に越してきて10有余年をへて、
 コチラではじめて「熱帯夜」を体験した。
 今年の夏は辛かった。

 夕方、
 陽が陰ってくるのを待って、
 自宅からすぐ近所の釣り場に行くと、

 駐車場にコムロさんとイシザキくんのクルマが並んでいた。
 
 「お、ラッキー。来てる来てる……」

 なんつって、
 その横にじぶんのクルマをとめ身支度を整えて、
 釣り場に通じる林の小道を小走りに抜けて水辺に出ると、
 案の定みんないた。

 ふたりとも、
 水深が腰くらいのところまで立ち込んで、
 20メートルほど間隔をあけて並ん釣っていた。

 岸から、
 「まいど~~~」
 といきなり叫ぶと、
 ふたりとも同時に振り返って、
 「あー、来たーー」
 と言った。

 「おふたりの真ん中に割り込ましてもろてもよろしいでっか?」

 「もちろん割り込んじゃって~~」
 とコムロさん。

 60代半ばのコムロさん、
 50代半ばのワタシ、
 40代半ばのイシザキくん、
 三人仲良く並んで釣った。

 「今日もキケンな暑さでしたね」
 というと、
 「いや~、もうさ~暑くて暑くて家にいられないから、ここに来て立ち込んで涼んでるところ~」
 「でもここもさ~、水に浸かってる下半身は涼しいけど、上半身は暑くて暑くて……」
 とコムロさん。

 いっさい殺気をかんじさせないけど、
 「やる気」もかんじさせないコムロさん。

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 そしてコムロさんが、
 「さっきイシちゃんがすごいの掛けたんだよ」
 と言った。

 「うっそマジで!」

 「ひっさびさにものすごいファイトでした!」
 
 「やる気」と「釣る気」を常にムンムンムラムラ全身全霊で発散させつづけているが、
 けして自己主張や誇張はしないイシザキくんが、
 興奮を抑えきれない口調でそのように言った。
 めずらしいことだ。

 それだけに、
 掛けたニジマスは相当のヤツだったのだなとおもわれた。

 「ホンマかあ~、それメッチャ見たかったわ~~」
 と悔しがると、

 「どっぼ~ん!ダッバ~ン!って、ものすごいジャンプもしたしね!」
 と横からコムロさん。

 「マジか~~~、え~~な~~~。つこたフライなに?」

 「ユスリカのピューパです。」

 「うっそマジ?けっこう沈めてたん?」

 「いや、それがですねえ、ライズはすごく散発だったんですけど、
 さっきユスリカがものすごくいっぱい水面に浮いてたんですよ。
 それで、おもいきってタナをすごく浅くして30センチくらい沈めてゆっくり流したらすぐ、
 ツーーンッとインジケーターが引き込まれたんです」

 「うっは~~~マジか~~~。めっっちゃエエやん。で、いまは状況どうなの?」

 「いま、さっきからずっとシーーーンとしてます。ライズもピタッと止まりましたね」

 「んがくっく……」
 とワタシ。

 それでも、
 ビシッバシッとするどく竿を振って、
 めぼしい場所すべてにフライを打ち込み丁寧に流しつづけるイシザキくん。
 集中してはる。

 その横で、
 立ちこんだまま釣りそっちのけで、
 終始どうでもいいようなご近所の噂話に熱中するワタシとコムロさん。

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 陽がかんぜんに暮れようとしているころ、
 静まり返った水面でいきなりザババッ!と激しい水しぶきの音がして、
 ハタとイシザキくんのほうを見やれば、
 良い型っぽいサカナを掛けたけれど惜しくもバラシたところだった。

 その瞬間、
 さっきまで弛緩していた釣りゴコロがシャッキーーン。
 渇はいりましたー。
 時は来た。

 「イシザキく~ん、フライはなに?」
 
 「ドライです~。ポワ~ンってちいさなライズがあったんで、そこに投げてチョンチョンッてフライをうごかしたらガバッ!と出ました」

 「マジか~。チョンチョン作戦いけるね~」

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 真っ暗になる直前、
 じぶんの道具立てでもなんとかフライが届く距離のところで、
 ポワ~ンポワ~ンと2回連続してライズした。

 確実におなじサカナが浮遊物をついばみながら移動している。

 3回目にライズしたとき、
 進行方向が予測できたので、
 ライズ地点よりも2メートルほど横にフライを浮かべて……、

 一呼吸待ってツ・ツ・ツ・と、
 パラシュートハックルに薄く一回転だけ巻いたレオンの長いファイバーをプルンと揺らす……、
 みたいなイメージで水面のフライをうごかすと……、

 ガボッと出てくれてしてやったり。

 おそらく、
 水面あるいは水面直下に無数に漂っているユスリカの脱皮殻や溺れたスペントなどに執心して、
 そんなちっちゃいのばかりせっせとついばんでいるけれど、
 視界の先でなにかムシっぽいのがツツツとうごいたので、
 おもわず飛びついちゃった……という反射喰いだろう。

 ムチャクチャ引いた。
 このサイズのニジマスでさえ、
 ひとたび走り出すとフライラインがギュギュギュギュギューッと音を立て水を切りながら弧を描く。
 そしてその先でドーンッ!バーンッ!と水面高~く見事な連続ジャンプ……おもわず拍手しそう。

 きょうはこのイッピキで満足。

 帰り道、
 林の小道を歩きながら、
 
 「昼間に掛けたごっついの、写真に撮った?」
 とイシザキくんに聞くと、
 「いや~、それがですね、手元まで寄せてきて、さあリーダーをつかもうと手を伸ばしたとき、
 スコッとバレちゃったんです」

 「そうなんや~。まあ、それやったら釣れたことにしたらええやん」

 「そうだよ~、もうほとんど手元に寄せてたし」
 とコムロさん。

 「……いや、やはり、自分の手でサカナの口からハリ外してリリースしてこそ完結なので…それはダメです」
 
 「アンタよ~ゆうた!それでこそ釣り師やで」

 すっかり真っ暗になった駐車場で三人ウハハと笑いころげて、

 「じゃ、またね~」

 なんでもないような、
 なにがあったわけでもない、
 めずらしくもなんともない、
 いつもの日常のような一日。

 なんだけど、
 ほのぼのと穏やかで平和で、
 気持ちがあたたかく満たされた一日。

 これがかけがえのない一日というものなんだな~と、
 しみじみおもったりする……ようになっちゃった50歳半ばの夏です。

 なんなんやろ?このかんじ。

 そ・し・て・
 帰宅して風呂からあがって夕ご飯を食べて、
 さっそく巻いた。

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 アカムシちっくなユスリカ・ピューパ2019キラキラ。


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 大学1年生のころ、
 いつもつるんでいた仲間内3人のあいだで空前の筒井康隆ブームが巻き起こり、
 アレよんだコレわろたヤレよめソレよめと…夜な夜な熱く語り合いながら、
 とにかくどれもこれも貪り読んだ。
 
 30年以上ぶりにコレ読んだ。
 うわ~我知らず…よろず直球で影響受けててんな~自分…とおもって感慨深かった。

 いま読んでもやっぱおもろい。
 しかも、
 懐かしい回顧でなく今の視点でおもろかった。

 



セミセミセミシカ
 これは、
 一週間ほどまえに体験した実話であります。

 真夏日をおもわせる晴天好天がしばらくつづいていたけれど、
 それから一転。
 どんよりと曇って小雨交じりの鉛色の空、
 そして底冷えのする寒々しい天気になったころのこと。

 ワタクシは、
 ちょい山奥の川を独りで釣りのぼっておりました。

 午後おそく、
 両岸ともに雑草の生い茂る小高い崖にはさまれた区間にさしかかったころ、
 どうも妙なかんじがしてならない。

 瀬音のせせらぎの音、
 小鳥たちのさえずる声、
 木々が微風に揺れて葉っぱが擦れ合う音、
 そんな、
 いつもの自然の音のなかに、
 消え入るようなほどちいさく、
 しかし断続的に、
 なんだか、
 妙な不協和音が……背後の崖のうえから聞こえてくるような……しかし気のせいのような……、

 ペキッ、
 ポキッ、
 枯れた小枝を踏みしめたような微かな足音。

 ザザッ、
 ザザッ、
 風ではなく、
 何者かがクマザサの葉に擦れたような音。

 それらが、
 さっきからずっと、
 聞こえてくるような……。

 ペキッ……、
 ザザッ……、
 そのたびに、
 ちょっと、
 いや、
 だいぶビビりながら、
 ハッとなって背後の崖のうえを見あげるんだけど……、

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 なんにも見えない、
 なんにもいない。

 気のせいやろか?

 しかしまたしばらくすると……、
 
 パキッ、
 ズザッ。

 これは気のせいじゃない。
 なにかがいる。
 ぜったいいる!

 そういえば昨年の夏、
 とあるダム湖畔で釣りをしているとき、
 背後の森のなかに潜んでいたらしい野性のミンクにつけ回されて、
 その足音にびびりまくった思い出がある(昨年の8月くらいの当ブログ参照)。

 でもねえ、
 今回のはちょっとちがう。
 ミンクごときの小動物がたてる足音とはだいぶちがう……気がする。

 音はとっても微かなんだけど、
 明らかに、
 確実に、
 うたがいようもなく、
 なにかとってもおっきな生き物が、
 抜き足差し足忍び足で……ぼくのあとをつけている……としかおもえない。

 ものすご~~~く、
 とっても、
 イヤだよ~~~ユルシテオネガイ。

 こんなとき、
 かんがえることはただひとつ。

 こんな釣り生活をおくっていれば、
 いつか、
 あのお方と、
 野外で、
 丸腰で、
 生身のまんま、
 ご対面してしまう……かもしれない。
 このような出会い方をしてしまう……かもしれない。

 そんなときが、
 とうとうやって来てしまった……かもしれない。

 おそるおそる、
 奥底からビビりたおしながら、

 背後の崖のうえを目を凝らしてジ~ッと凝視。

 そして凝視。

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 わかった?
 いちばんうえの写真のどこかにも、
 コイツ写ってんだよね。

 擬態とは、
 まさにこのこと。

 こんなん、
 目のまえにいたとしても、
 その気になって探さないと、
 周囲の木々や草に完全に溶け込み紛れ込んでしまって、
 ちょっと見ただけではぜんっぜんわからんど。
 
 正体がわかったその瞬間、
 食べられちゃうかもしれない恐怖や、
 ぶち殺されるかもしれない恐怖とは、

 まったく別の、
 もっと得体のしれない、
 現実的ではない恐怖で、
 マジちびった。

 腰から下に力が入らなくなって、
 ガクンと砕け落ちそうだった。

 あのさ、
 シカって真正面からの姿を遠目に見ると、
 パッと見なんていうか、
 人間じゃないけど二本足で立ってる二足歩行のナニモノかに見えるんやで。

 「千と千尋の神隠し」あるやん、
 アレに黒装束の「アッ」しか言わん無表情なモノノケでてきたやん。
 得体のしれない恐怖でいっぱいになってたワタシの目には、
 あの感じ的な妖怪というか精霊というか……そういうものを連想せずにはいられなかったのだった。

 崖の上と下で、
 見つめあうエゾジカとワタシ。

 ぼくが「ウワッ」と声に出しておどろいて慌てふためいたとき、
 シカの野郎もズザッと一瞬ヤブのなかに消えかけたんだけど、
 またすぐ戻って来て、
 またもやジ~ッとコチラを見下ろしている。

 「どないしたん?なにしてるん?」
 「あっち行ってくれる?」

 心底ホッとして、
 声をかけた。

 シカはなんにも言わないけれど……、

 見つめあいながら、
 タバコに火をつけた。

 すると、
 シカの鼻がヒクッとなった。
 一瞬、
 顔をしかめたようにも見えた。

 愛煙家は、
 こんな場所でも肩身が狭い。

 気を取り直して晴々と釣り再開。
 
 するとまた背後でペキッザザッと微かな音がして、
 しばらくぼくのあとをつけていたようだけど、
 シカはいつのまにか消えていた。 

 なんだったんだ?

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 そのときつかっていたフライ。

 エゾジカの毛で巻いたエゾハルゼミなフライ。

 エゾシカに監視されながら、
 エゾシカの毛で巻いたフライで釣る。

 それをシュールというべきか、
 それとも浪漫というべきなのか……。

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 各メーカーいろんなタイプのフロータントをドサッと大人買いして、
 あれこれゴシゴシ擦り込みながらつかっている、
 ワタシの2019年度版ハルゼミ。

 コレ一本で、
 大中小特大幼魚あわせて、
 もはや何匹釣ったか定かではないけれど……、
 つかうたびに、
 いろんなフロータントをモミクチャに擦り込んでいるけれど……、

 まだまだぜんぜんイケるかんじ。

 それがどれだけウレシたのもしニヤけることかは、
 ディアヘアー系のフライをフロータント塗ってドライフライとして多用しておられる方なら、
 きっとわかってくださることでございましょう。

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 ちなみに、
 野山で生身ではぜったいお会いしたくはないお方の、
 とある部分のオケケをウイングにあしらったハルゼミも、
 お日さまの陽の光を浴びてギランギランと金色に輝いております。

 これが水面に浮かぶと、
 金色の後光に包まれて、
 なんだかとっても霊的で幻想的。
 ポ~ッと魂が抜けちゃうような夢見心地

 それがいきなりグワバッ!水飛沫けちらして炸裂。

 魂が、
 魂が、
 もっていかれちゃう~~~~。

 もちろんこちらにも、
 さまざまなフロータントを塗布して……、

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 そして、
 それだけでは飽き足らず、
 挙句の果てに……。

 瞑想中、
 じゃなくて迷走中……ですね?

 感動と刺激と発見に満ち満ちて、
 まことに濃厚な、
 こゆ~い初夏の毎日です。

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