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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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とんでとんでとんでとんでまわってまわってまわる
 元旦から二日ほど、
 関西の実家に帰省した。

 久々の里帰り。

 実家で、
 両親ととりとめもない世間話をしていたとき、
 かけっぱなしになっていたラジオから、
 夏目漱石の学生時代の成績表が見つかった…という話題が流れた。

 女性アナウンサーが「成績優秀だったそうですよ」
 と話しをひろげると、
 男性パーソナリティが「なんやあ、普通やったらおもしろかったのにね」
 と言った。

 そのとき、
 ぼくらはラジオとはまったく関係ない話しをしていたけれど、
 父も母もじぶんも同時にハハハとしばし笑って、
 さっきまでの話しのつづきに戻った。

 ついついおもわず言っちゃう余計な一言が憎めない。

 つくづくじぶんは浪速の子。

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 年が明けて最初の土日、
 和歌山県は紀伊田辺という海辺の小さな街にあるプロショップにタイイングデモに呼んでもらって、
 よろこび勇んではりきって出かけていった。

 ご挨拶がすっかり遅れてしまいましたが、
 当日お集まりくださった皆さま、
 呼んでくださったオーナーさま、
 本当にありがとうございました。

 で、
 そのデモのとき、  

 「このビートルはねえ、
 ココのところがこうなっていて、
 コレをこうしてこうやって巻くと、
 このようなフォルムとバランスになって、
 いまのところ自分的に中小型サイズでは必殺中の必殺ビートル・フライになってます」

 「そんなわけで、
 コガネムシ大国の我が北海道では、
 いまやこのフライはまさにビートル革命や~なんちゅうて、
 2年ほどまえから空前の大ブームになってんですよ」

 なんつって、
 煽りまくっといて、

 「ぼくをいれて、いまのところ約3名のあいだで……」

 とオチつけて、
 そして皆さんでワハハと笑っていると、

 デモにご参加くださった方のひとりが、
 「おしいなあ、4人やったらビートルズ革命やったのにねえ」
 と誰にいうともなくボソッとおっしゃった。

 うまい!お見事!脱帽です。

 いまだに、
 どうかしたときにクククと思い出し笑い。

 ダジャレはしょうもなければしょうもないほどにオシャレ。
 センスいりまっせ。

 つくづくじぶんは浪速のオッサン。

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 実家から出発するとき、
 父の本棚から失敬してきた。

 今回の帰省と出張では、
 飛行機、
 長距離バス、
 ローカル線などなど、
 乗りモノに乗り継いだり、
 喫っ茶店などでの待ち時間がたくさんあった。

 なので、
 この二冊をめくって時間をつぶした。
 有意義な時間になった。


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 紀伊田辺に滞在していたときのホテルの入り口にて。

 毎朝、
 人影まばらな正月の商店街を眺めながら、
 ここで珈琲を飲んで、
 プロショップの店主さんが迎えに来てくださるのを待った。
 その時間がちょっといいかんじで……。

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 無事にデモが終わって、
 次の目的地にむかう日の朝、
 商店街をブラブラ歩いて、
 紀伊田辺の駅前からそう遠くない漁港に来てみた。

 よく晴れた冬の朝。
 寒いには寒いんだけど、
 和歌山の空気はぬるかった。

 パリッと凍てついた空気がキーンと身体に突き刺さるかんじがしない。
 それがなんだか違和感。

 もはやじぶんはつくづく北海道のヒト。

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 じつはこの場所に来るの、
 はじめてじゃない。

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 1998年の早春号となる「フライの雑誌」第41号から……。

 21年前のちょうどいまごろの深夜、
 まさにこの場所に立ってフライロッドを振っているじぶんの後ろ姿が載っている。

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 この当時、
 じぶんは飛騨高山にすんでいた。

 タチウオが釣りたくてはるばる紀伊田辺まで来て、
 4日間だったか5日間だったか、
 夜行性のタチウオを狙って、
 夜な夜なひたすら釣りつづけたんだけど、
 とうとうイッピキも釣ることができなかった。

 そのうえ、
 未曾有の寒波がやってきて、
 散々な目にあった。

 その紀行文をフライの雑誌に載せてもらったのだ。

 やたらと長いのに、
 ただのイッピキも釣れなかった釣り紀行。

 華々しさのカケラもない。

 カケラもないけど、
 いや、
 カケラもないからこそなのか、
 いまも忘れていない記事のひとつ。

 打算や計算とは無縁のところで、
 ただ「書きたい!」という衝動に駆られて書いたものだからだ。

 まさか、
 またここに来るとは、
 しかもこのようなカタチで再訪するとは、
 あのころ、
 よもやおもいもしなかった。

 もちろん感慨深くもあったし、
 懐かしいな甘酸っぱいな、
 ともおもった。
 けれど、
 「あのころはよかった」
 というのとはちょっとちゃうねんな。

 だって、
 いまがサイコウなんだもん。

 と、
 言ってしまいたい。

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 和歌山から大阪に戻って来て、
 次の目的地までいく飛行機の時間まで、
 まだちょっと余裕があった。

 ので、
 この際センチメンタル・ジャーニーのつづきを、
 としゃれこんだ。

 むかしむかしの大昔、
 オレ、
 この界隈でブイブイいわせとったんやで。

 スイマセンうそつきました。

 この街がかつて少年時代の遊び場のひとつだった。
 が、
 こうしてまともに再訪したのはいつ以来だったのか、
 もはや定かではない。

 そしていま、
 あたりまえだけど街はすっかり様変わりしていた。
 なにもかもかわっている。
 右も左もわからない。

 オホーツク在住の浦島太郎参上。

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 所在なげにしばらくウロウロして、
 真新しいビルの隙間にスッポリはさまって、
 ものすごく肩身せまそうな佇まいの食堂にはいった。

 「肉うどん」450円。
 すさまじい価格。

 年配のご主人が独りでお店を切り盛りしておられるようだ。
 エプロン姿で、
 熱いお茶と冷たいお冷の両方を運んできて、
 目のまえのテーブルに置くやいなや、
 開口一番「あけましておめでとうございます」と挨拶された。

 意表をつかれた。

 おもわず「肉うどんください」と言ってしまって、
 あわてて「あけましておめでとうございます」と返した。

 御主人は意にも介さず、
 「ハイ、肉うどんですね」
 と言って奥の調理場にひっこんだ。

 ほどなくして出てきた肉うどんは、
 玉ねぎと生姜で一緒に炒めた豚肉がチョロッとのっているだけ。
 うどんは箸で持ち上げるとたちまちブツッと切れそうなコシのなさ。
 オツユはひたすら薄い。
 そこにダシの深い旨味やコクがあるのでなくストレートにただ薄い。

 そんな、
 昭和の関西の大衆食堂のお手本のような安もんの肉うどん。

 はっきりゆうてこのご時世、
 意識高い系の高級うどんなんかそこらじゅうに溢れとる。
 こんな安もんのうどんの古典、
 探したってなかなかあれへんでえ。

 オレは心のなかで喝采をあげた。
 「そうなんや、オレはいま、こんなうどんをこそ求めてたんや!」

 満足して、
 「ごちそうさまでした」
 といって、
 御主人に500円玉を差し出すと、
 「ありがと~」
 といって50円玉を返してくださった。
 それを財布に仕舞って、
 じぶんも「ありがと~」といって、
 ガラガラッと戸をあけ暖簾をくぐって店の外に出た。
 その背中に、
 もういちど「ありがと~」と、
 やわらかな関西なまりの御主人の声が、
 やさしく染みわたるように届いた。

 そやねん、
 こどものころ、
 こんな大人の「ありがと~」を聞いて、
 オレはおおきなってん。

 ああ、
 やっぱエエなあとおもった。

 つくづくじぶんは浪速の子。

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 すっごい遠くまで来ちゃったけど。

 流れ者の浪速の子。

 円広志 夢想花

虹の里
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 きのう、
 我が集落での新年会の打ち合わせがあった。

 自治会長さんのお宅にお邪魔して、
 じぶんも会議に参加させてもらった。

 ここではいつも、
 年が明けて最初の日曜日に新年会をやるのが恒例なのだそうだ。

 じぶんはここに引っ越してきて来年で二年目を迎えるペイペイの新入り、
 それは知らなかった。

 「じつはその日は和歌山にある釣り具店で毛鉤作りの講習会に呼んでもらっているのです。
 なので残念だけどワタシは欠席になります」

 というと、

 「あ、それじゃあ来年の新年会はその次の週の日曜日にしようか」

 と自治会長さんがあっさり提案されて、
 皆さんも衆議一決で同意してくださった。

 「そんなそんな、わたしひとりの都合なのに、それは申し訳ないです」

 と遠慮すると、

 「なに言ってんの、ビゼンさんが来ないとおもしろくないでしょ~」

 と自治会長さんがおっしゃってくださって、
 皆さんワハハと笑って新年会の日時が決まった。

 すごくありがたくて、
 そしてうれしかった。

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 ケタ外れに酷寒な土地に住んでいるのに、
 おかげでいつもあったかく暮らしている。
 
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 冬でも夏でも、
 野外でも屋内でも、
 水辺でもタイイング机でも、
 あたまのなかに虹がかかっていると、
 ハイになれる。
 毎日がとても満たされる。

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 そんなわけで今夜のフライ。

 以前も何度かとりあげたはず、
 我がお気に入り「チッチフルーティ・ベンフランクリン」の2018年ヴァージョン。

 毎年毎年飽きもせず、
 チマチマとマイナーチェンジを重ねてきたけれど、
 いまは当分コレでいきそう……って必殺の気分。
 なので、
 来シーズンの予告がてらチラッととりあげてみる年の瀬。

 ちいさな扇子状のスライダーヘッドが水面で引き波を立て、
 そのうしろでレオンのヘニャヘニャのサドル・ハックルが勝手に自律的にブルブル震える、
 ちょっとイカしたナウなヤングのカジュアル系パステルカラー・ダンシング・カディスのファンシー&マダラ模様モジャモジャ。
 

 
フライフィッシング
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 今シーズン、
 ハルゼミの流下時期から夏にかけてつかっていた、
 セミ型テレストリアル系ビッグサイズのひとつ。

 マシュマロ・ボディの内側に高浮力でソフトそしてヴォリュームがあり、
 かつ淡い橙色のセミの腹色をした素材を仕込んである。
 で、
 湾曲したラバーレッグとともに、
 ボディのクビレのところにコック・デ・レオンのチカブーをグルグルッとハックリング。

 なんせ柔毛のフワフワ羽毛なので、

 つかいはじめでボディがポッカリ浮いた状態だと、
 水に接していない羽毛が微風にサッと撫でられただけで、
 まるでセミの翅のようにフワフワブルブル自然に震える。

 そして、
 何度か打ち返して羽毛が水面膜にヘタッとはりつくと、
 水面でセミの脚のように鈍重にウネウネ自然に揺れる。

 そしてさらに、
 フライが水を吸って水中に沈むと、
 流水の抵抗を受けた羽毛がユラユラザワザワ自然になびく。

 という、
 ハックルが水面あるいは水中で勝手にふるえたり揺れたりなびいたりと、
 素材の自律的なうごきの効果に期待した、
 あざとい下心満載のフライの作例。

 そのうえ、
 水面高くポカッと浮いてもいいし、
 逆にベチャッとボディ半沈みでかろうじて浮いててもいいし、
 あるいはユラ~ッと水中に沈んじゃってもいいよ…そのまま流すから、
 というような、
 フライの体裁もアプローチの姿勢も、
 ものすごくファジーなドライフライ?ソフトハックル?ニンフ?……。

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 これがワイの最新最先端のケバリや~。

 ハックルは鉄錆色のコックネックをひと巻き。

 ウイングはレモンウッドダックを数本だけスッカスカに、
 しかしフワ~ッと放射状に開いて拡げて……。

 ボディはトドの毛をコッパーティンセルで捩じってダビング。
 水分をたっぷり吸収するように、
 細身のボディでもファーの量は多めでギッチギチにダビング。
 そして透け濡れるとダビングボディのしたからティンセルが血管のように浮き出て見える。

 ヘッドにもコッパーティンセルをひと巻き。

 銅色に輝くダークヘンドリクソン8番ロングシャンク。

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 フライを水面に浮かせるとか、
 水面のフライが見えるようにとか、
 フライが着水したとき水面でひっくり返らんように巻くとか、

 ドライフライにはそんな制約があるからこそ、
 いろいろ思い悩み考え試すおおきな愉しみがある。

 が、
 その一方で、
 水面に浮いていてもいいし、
 沈んだらなおよし。

 という姿勢で、
 そういう足枷から解放されると、
 やれることや、
 やってみたいことが、
 とめどなくウワ~~~ッと湧いてでてきて収拾がつかない。

 そして、
 もはや古女房のような付き合いだったいつものカタチのフライたちが、
 とても新しく斬新なものに映る。

 巻くたびにときめく。

 そしてそして、
 本来はドライフライを浮かせるための素材だったコックハックルの旨味を、 
 水面膜の下にちょい沈めるだけで、
 これほど濃く深くハックル熱が再燃するとは思いもしなかった。

 とても痛快で健全な皮肉?

 我が家のそこらじゅうに転がっている、
 あったりまえの存在になっていたハックルやダビング材が、
 まるで夢の玉手箱から飛び出してきたピカピカのオモチャのようだ。

 すごく新鮮。
 
 手にとって眺めているだけでイメージが膨らんでウワ~ッとなる。

 まるで、
 見るもの聞くものなんでも目新しくて光り輝いていた、
 夢見る駆け出し時代に戻ってしまったかのようだ。

 しかし、
 あのころとは決定的にちがうことがある。

 若かったころ、
 口から手が出そうなほど焦がれる想いを抱きながらも、
 あのハックルもこの素材も、
 そんなものがどこにあるのかと、
 ただ指をくわえて憧れているだけだったアレコレ、
 だけでなく、
 当時は思いもしなかったような絶品珍品さえも、
 時の流れの魔法のおかげでじぶんが望んだものは、
 いまや溢れんばかりになんでもある。

 そのうえ、
 門前の小僧なんとやら、
 石のうえにも三年なんとやら、
 時は流れ、
 技術の深さも視点の広さもまた、
 あのころとはなにもかもまったくちがう。
 
 どないせえゆうねん?

 フライフィッシングはおそろしい。

 
 

 
五勝手屋羊羹 from 函館
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 まだ雪代水がガンガン流れていた春のころ、
 ヘビーウエイトなニンフの釣り中心だった季節に、
 あくまでも手駒のひとつとして、
 ヒジョーに気楽に「お戯れ」に巻いたフライのひとつ。

 が、
 フト思い返してみれば、
 本流でも渓流でもダム湖でも湖でも、
 今年の春から現在までに釣りあげた、
 大物と呼べるニジマスのおそらく半数以上は、
 このフライで釣りあげることになった。

 ぶっちぎりなのでございました。

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 もちろんヤングなチャイルドもズコバコいじめたった。

 そんなわけで、
 このフライの目的であった
 「沈没して水面下を流下するビートルを模したナニソレ」という当初のスタート地点からも遠く離れて、
 現在では、
 なにを模したというわけでもないけれど、
 サイズやウエイトやバランスなどをマッチさせれば、
 当地オホーツク地方の各釣り場で季節や条件環境問わず、
 たいていどこでも良く釣れる、
 ときにメチャ効きの水面下ファジー系アトラクター・フライとして急成長急発展したのだった。

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 ちなみにコチラは、
 初夏のころからダム湖や湖でつかっているヴァリエイションのひとつ。

 もともとコガネムシの類を表現していたはずのフライが、
 ところ変われば湖底を蠢くヒルや水生昆虫やカジカ的イメージに変身するとはコレいかに?

 これをさあ、
 湖流を読んで湖底の変化を把握しながら、
 ポチャッと水面に落としてフワ~ッと狙ったピンポイント目指して沈めていくわけ。
 沈むフライに引っ張られるカタチで、
 水面に張り付いているリーダーがジワジワッと沈んでいく。
 んで、
 読みとイメージが的中す・る・と・・・・・、
 水面をジワジワしていたリーダーがいきなり「ツーンッ」と鋭く引きずり込まれて・・・・・・・、
 このアタリをビシッとあわせてドンッ!とくるの…もう最高に快感。

 が、
 ヒジョーに悩ましい問題がひとつあって、
 ジーロン系のヤーン素材をつかったフワトロ・ボディなソフト質感は、
 あまりに口当たりが良すぎるのかツルッと飲み込めちゃうのか、
 とかくフライが口中奥深くに飲み込まれてしまいがち。

 リーダーでアタリをとるスタイルならまだマシだけど、
 インジケをつけたルースニング的アプローチだと、
 かなり頻繁にガッポリやられちゃう。
 なのでときどき後味がとても悪いこともある。

 それにくわえて、
 いろんなヴァリエイションをせっせと作って、
 いろんな釣り場でさまざまなアプローチでつかっているとはいえ、
 このフライにばかり頼っているとマンネリ感も漂ってきて……、

 そんなこんなで、
 このフライはここ最近ちょっと封印気味。

 だったのだが……、

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 おそらく、
 数日まえにこの場所を歩いたのであろう、
 足跡の大きさから察するにまだ若いヒグマの足跡の横を通り過ぎて、
 上流へと歩くいつもの函館の吉田さん。

 話しはガラッと変わるけど、
 オレ、
 さいきん常々ひそかに思ってたんスよ。

 ウェーダーとウェーディングシューズの「早脱ぎ早着替え世界選手権チャンピオンシップ」ぜったい出場したいなって。
 オレ、
 誰にも負けねえぞと、
 「世界のてっぺん、獲ったるデ!」なんて、
 内心めっちゃ自負してたんスよ。

 でもスイマセン調子こいてました。

 函館にいたころ、
 吉田さんとはあんなにあちこち釣りにご一緒させてもろたというのに、
 コチラに越してきてから一緒に行くのひさしぶりだったもんで、
 このお方の超早技、
 すっかり忘れてました。
 
 釣り場に到着して、
 クルマを降りたとおもうと、
 アレと気がついたときには、
 もはやすでにお着替え身支度完了の吉田さん。
 悠々と釣りざおのガイドにラインを通して、
 さっさとティペットにフライを結んでおられます。

 しかも、
 バタバタ急いでいる様子なんか微塵もなし。
 むしろのんびり。
 
 このヒトにはかなわねえ……。

 常日頃、
 どんな世界でも、
 どんな分野でも「上には上が必ずいる」
 そう確信していたつもりなのに……。

 井戸の中のカエルと厚顔無恥を晒すほどイタイタしいものはないって、
 いつもつくづくおもっていたのに、
 調子こいて思いあがっていた自分がトテモハズカシイ。

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 ちょっと来ないあいだに、
 川はすっかり初秋の様相。

 森のたたずまいも、
 川の流れも、
 夏から秋へと移り変わろうとしていた。

 川面には、
 水面にも水中にも落ち葉が絶え間なく延々と流れており、
 それが浅瀬に堆積しつつあった。

 「このポイント、見た目はショボイけど、ヒラキのところにいつもやる気満々のおっきいのが定位してます。
 ソ~ッと近寄って、あそこらへんにバーンと大胆にフライ投げ込んで果敢に流してみてください」

 「わかりました。フライはコレでもいいですか?」
 と、
 シマシマ模様なラバーレッグ搭載のタランチュラ的パラシュート8番くらいのを差し出された笹尾さん。

 「バッチリです!ここのサカナ、ラバーレッグ大好きですから。それ、ぜったいイケます!」
 自信を持って太鼓判を押した。

 ものすごい期待して、
 三人して固唾をのんで水面を流れるフライを凝視。

 その殺気が伝わってしまったのか、
 何度も狙ってみたけれど、
 水面を流れる枯れ葉のあいだを漂い流れたフライには、
 残念ながら反応はなかった。

 そんなわけで、
 このピンスポットをあきらめて、
 上流に向かおうとしたのだけれど、
 いちおう念のために……、

 まったくおなじポイントに、
 しばらく封印していた例のフライをジワ~ッと沈めてフワ~ッと流し込んでみた。

 すると、
 水中に沈んで流れていたリーダーが「ブルンッ」と震えて……、


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 まるで翼のような胸鰭をめいっぱいひろげてカンカンに怒っている美人さん。

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 すべてのヒレがスラリと伸びてシュッとした凛々しいモデル体型。
 この川のニジマスの特徴でもあるゴマ模様をビッシリ全身に散らしてお肌ツヤツヤ傷ひとつなし。

 釣りあげられちゃってプリプリ怒っているところ申し訳ないけれど、
 ほんのちょいの間辛抱してもらって、
 落ち葉のベッドに横たわっていただいてポーズ決めてもらって、
 我が最愛のキュートで小悪魔な6フィート3インチ4番の竹竿とともにツーショット萌え写。

 大満足なイッピキとなった。

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 良き友ありて
 遠方より来たる。


 函館に住んでいたころ、
 筆舌に尽くしがたいほどにお世話になった。
 仲良くしていただいている友人でもあり、
 じぶんにとっては人生の大先輩でもあり、
 そのくせ腹を割って素顔で付き合っていただいている悪友、
 でもあるお二人が、
 連れだって遠路はるばる我が家に遊びに来てくださり、
 この連休を三人でめいっぱい愉しんだ。

 睡眠不足のまま一日中釣り巡ってもうヘロヘロ。

 なんだけど、

 積もる話しと愉しい話題が汲めど尽きない泉のごとく湧いてきた。
 そして川の流れのように、
 あとからあとから言葉が流れ流れて終始ペチャクチャおしゃべりは止まらず、
 軽やかな瀬音のように気持ちが弾んだ。
 そしてなにより、
 小春日和の日の陽だまりのように心がポカポカしていた。

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 フライフイッシングがとりもってくれた大切なご縁。
 
 年齢も、
 環境も、
 社会的立場も、
 なんなら考え方も、
 なにもかもがちがう。

 なにもかもがちがうのに、
 どうしてこんなにも近しい気持ちなんだろう?

 「類は友を呼ぶ」っていうのは、
 つくづく真理だと自分はおもう。

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 なんでも、
 吉田さんが小学生だったころにも、
 道内で記録的な大地震があったのだそうだ。

 そしてその地震がおきたとき、
 おりしも学校で授業中だったのだそうだ。

 「あのとき、先生がイの一番にスッとんで逃げちゃったんだよなあ、生徒全員そのままにして……」
 と吉田さんが言った。

 「そうですかあ、それじゃあ吉田少年はそのとき、大人の身勝手や社会の不条理を学んだんですね?」

 「そういうことだね……」

 釣りを終えて公衆浴場にむかう道すがら、
 そんな話しをした。

 風呂上がりのソフトクリームが、
 たまらなくおいしかった。

 
納涼ゲゲゲのオホーツク
 8月のはじめ、
 ここオホーツク地方も、
 想定外の連日の酷暑にうんざりしていたときのこと。

 そのダム湖のクルマ止めの対岸は、
 うっそうと生い茂る森が、
 崖のような急斜面の湖岸ギリギリまで迫っている。

 湖岸には、
 夏のいまを盛りにワッサワサ葉っぱを茂らせた木々の枝が湖面に低く高く張り出している。
 
 竿を振れる場所はおろか、
 足場が狭すぎて湖岸を移動することもままならない。
 
 はるか遠目に見える岸際ぎりぎりの重々しく激しいライズの水飛沫が、
 いつもなんとも切なく恨めしかった。

 ……行きたい……あそこまで行ってフライ浮かべたい……。

 切実にそう願いながら、
 その湖岸は長らく難攻不落かつ未知の領域であった。

 この日、
 そのダム湖がかなり渇水していた。
 いつもの釣り場となるインレット付近に立ち込んで、
 静かな水面にフライを浮かべたり沈めたり軽くひっぱったりしてみた。

 渇水して浅くなって勢いのなくなった流れ込みはとても貧弱。
 サカナの反応は皆無だった。

 しかし、
 はるか彼方の湖岸はたいへんにぎやかだ。
 岸際ぎりぎりの倒木の際や水面にはりだした大木の枝の下で、
 かなりの頻度で水飛沫があがっている。

 ザバッ!なんつって……。

 切ないっていうよりも、
 なんかこのナマ殺し状態に業を煮やしてしまった。

 テレッと流れる減水した流れ込みは、
 ベストの裾を濡らすだけで無事に対岸に渡ることができた。

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 ライズ地点を目指して、
 おっかなびっくり湖岸を歩きだしてみる。
 岸際は足元からストーンと切れ込むようにほぼ垂直の岩壁でドン深。
 青々とした水の底はまったく見えない。
 
 岩盤質の湖岸はでこぼこで、
 ちいさな岩のでっぱりとか、
 埋まった石なんかが水際に点在している。
 そこに足をかけて、
 湖面にはりだしている枝につかまりながら進んでいくと……、

 なんか、
 けっこう行けちゃうかんじ?

 これは大発見だと枝をかき分けながら奥に突き進んでいくと、
 なんだか周囲の雰囲気というか空気がガラッと変わった。

 湖面にはりだした木々のトンネルのしたは、
 風通しがすこぶる悪く、
 さらに炎天下の熱射にカッカと照りつけられている。
 薄暗い日陰なのに、
 ナマぬる~く熱気と湿気を含んだ空気が澱んでいる。
 
 水際に堆積した泥がズルズルネチャネチャ足元をすくいヒヤッとさせられる。

 しかも、
 ズルッと滑ってヒヤッと冷や汗をかいたところに、
 蚊とかアブとか無数の微細なウザくて痒い虫がブワンブワンたかってくる情け容赦なく。

 なんしかイロイロものすごく不快。

 しかし、
 こうして湖岸をじりじりと進んでいるあいだにも、
 あそこの倒木の下の水面では、
 ザバッ!
 ザバッ!
 と水飛沫。

 奮い立つじゃん、
 行くしかないじゃん、
 まっとれよ、
 と思うやん。

 かくして、
 しゃがんで背中丸めてサイドキャストすれば、
 左利きならどうにかアプローチできそう……かも?
 という地点にまで近寄ることができた。

 そ~っとしゃがんで、
 リールからラインだして、
 チャンスをうかがう。

 とつぜんグワボンッ!!とすごい水音がして、
 水面がグワッとへこむように揺れながら、
 ドバッと水飛沫があがった。

 遠目に焦がれるような気持ちでずっと見ていたこのライズ。

 目と鼻の先で、
 射程距離から見たそのライズは、
 そりゃあもう迫力満点だった。

 そして、
 これは出る……そうおもえた。

 が、
 いざ勝負、
 と勇んでみれば、
 案の定、
 頭上ぎりぎりに高く低く張り出した木々の枝が、

 ブチ切れるほど邪魔!

 四苦八苦してどうにかこうにかフライを水面に浮かべたが、
 ライズ地点よりやや手前。
 だが、
 これがいっぱいいっぱいなので、
 このまま待つ。
 ジーッと待つ。

 まったく出ない。

 そして、
 あれほど頻繁にドバッ!とライズしていたのに、
 フライを投げだしてからは一回もライズしてくれない。

 近寄りすぎて警戒されたのだろうか?

 しかし、
 ここからしか投げられる場所はない。

 ヤツがまたライズするまで、
 待つしかない。

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 背後に生えているフキの葉っぱを泥の湖岸に敷いて、
 そのうえに座って、
 夏草とフキの葉っぱのなかに埋もれて、
 膝を抱えるような格好で、
 背中を丸めて待つ。

 一心に水面を見つめながら、
 ……来い……来い……とひたすら念じながら、
 息を殺して待つ。

 そのときだった。

 背後の、
 鬱蒼と生い茂る深い森の奥で、
 カサ・・・カサ・・・カサ・・・とかすかに何者かの足音がきこえる。

 耳をすませると、
 なんか、
 なんか、
 なんか、
 こちらに近寄って来てるんですけどウッソマジで?

 おそるおそる背後をうかがっても、
 森の奥はなんにも見えない。
 草木も揺れない。
 でも、
 カサ・・・カサ・・・カサ・・・
 足音は確実にこちらに近づいている。

 もちろん一瞬クマ?とおもいキンタマがキュッとちじみあがった。

 が、
 足音はとても軽い。
 重量感は感じさせない。

 シカ?
 それなら脱兎のごとく逃げていくはず。

 なんだこれ?
 キツネ?
 タヌキ?
 そ~だそれなら納得そうに決まった。
 ボク、
 ゼ~ンゼンこわくないもん。

 にしても、
 カサ・・・カサ・・・カサカサカサ・・・

 もはやほとんど自分の背中の真後ろで響く足音。
 こんな、
 身動きすらままならない場所で、
 なんか、
 薄気味悪さがどんどんつのってくる。

 ちょっとお…しつこいのとちゃう?

 いいかげんムカつくでアッチいってんか。

 いや、
 ムカつくのとおなじくらいメッチャうすら怖い。
 しばくどワレ~…もうこのへんでゆるしてくださいませんか?。

 「あの~、ボクここにいるんですけど~」

 たまりかねて、
 森の奥に大声で呼びかけてみた。

 すると、
 竿先でつつけそうな、
 ほんのすぐ目の前の草藪のなかで、
 カサカサ……
 と足音がして、
 何者かが森の奥に消えていった気配がした。

 うっわそんなとこにおったんや!とブルッと軽くトリハダがたった。

 しかし姿は全く見えない。
 これがもう不気味で不気味で……。

 そして、
 足音はようやく消えた。

 とはいえ、
 ライズはまだいっこうにない。
 サカナの気配もない。

 でも、
 ボクもう悠長におサカナがまた来てくれるの待ってらんない。

 せっかく苦労してここまで来たんやから、
 釣れないまでもせめて水面にフライを浮かべたい…、
 という切なる釣りごころと、

 もうヤダこんなとこ…はよ撤退したい。
 というヘタレごころが、

 胸の奥ではげしく交錯しせめぎあう。

 せめぎあったが、
 けっきょく、
 フライは水面に浮かんだ。

 この状況ではむやみやたらにフライを打ち返すのはトラブルの元。
 そしてサカナを警戒させるだけ、
 とにかく待つのだ……と肝に銘じて、
 水面のフライをひたすら凝視。
 視線と気持ちと欲望のすべてを集中させる。

 そうやって、
 どれくらい待っただろうか?
 
 なんの変化もなく、
 フライはひたすら水面を浮き漂っている。

 打ち返そうかな、
 どうしようかな……、

 心が揺れていたときだった。

 背後に、
 なんかほのかな気配がして……、

 ハッとうしろを振り向くと、
 ほんのすぐ目の前の湖岸に、
 全身をサランラップでくるんだようなテカテカ艶光りしている真っ黒な塊りがドテッと横たわっていた。
 
 大きさは、
 キツネほどもあっただろうか。

 え?
 なにこれ?

 そのとき、
 その物体からヌ~ッと長い首が伸びたかとおもうと、
 唖然としている自分とバッチリ目と目があった。

  うっっわっ!!

 おもわずずっこけ腰が抜けたようになって尻がズルッとすべった。
 ウェーダーも竿も両手もたちまち泥まみれ。

 その瞬間、
 真っ黒な塊もまた、
 のけぞるような態勢になって驚愕の表情を浮かべると、
 そのままズルンッと身体を滑らせるように音もなく水中に潜っていった。

 キミは、
 くっそビッチなミンクの驚きふためいたナマ顔を間近で見たことがあるだろうか?、
 まるでムンクの名画「叫び」そのもの。
 わろてまうでホンマ。

 ふってぶてしいっちゅうかクッソ生意気ちゅうか、
 わっるいツラ構えしとんでミンク。
 それがクワッと口あけてアホみたいなビックリ顔晒して、
 そのくせこちらを小馬鹿にしたような態度で、
 ズルルルルンッとウナギ犬みたいな身体を滑らせて、
 水飛沫もたてず一瞬で水中に消えていった。

 そして全身脱力、
 なんだよミンクかよ~。

 そのときだった! 

 背後でガボンッ!

 え?

 ふりかえってみれば、
 大きな波紋とともに、
 我がフライが水面から消え去っておるではないか!

 うっっわ!

 おもわず竿をグイッとあおった。
 ググンッとたしかな手ごたえ。
 やった!

 が、
 リールや竿についた泥がビチャビチャッと飛び散り、
 顔や首にベチャッとかかった。

 それはまあいいとしよう。

 最悪なのは、
 事前にあれほど掛ってからのシミュレーションをしていたにもかかわらず、
 おもいきり竿を立ててしまったので、
 頭上の木の枝に竿先とラインがガッツリ絡みついてしまった。

 ど~すんのコレ?
 ラインが絡んだ小枝がサカナにひっぱられてグングン曲がって揺れている。

 なんとかしなければ……、
 立ち上がった瞬間、
 ズルッとすべって泥のうえにモロに尻もち。

 もはや全身グッチャグチャのドッロドロ

 負けるもんか、
 ラインをガガガと力任せにひっぱって、
 木の枝ごとむしりとり、
 ロッドを背後に放り投げて絡んだラインをほどこうとするも、
 グルグルに絡みついてにっちもさっちもいかない。
 
 ラインの先は水中深くに突き刺さっており、
 もはやダルダルにたるんでいる。

 嗚呼無情。
 せっかく掛けたのに外れてしまったか……、
 
 が!
 そのラインがギューンと水中を走っていくではないか!

 まだ掛ってる!!!!!

 無我夢中でラインを両手でにぎってそのまま引っ張る。
 グイグイくる手ごたえ。

 まだ掛ってる!!!!!!!

 が、
 さっきまで指をくわえて眺めているだけだった激しく重い水飛沫のライズから想像していた手ごたえとは、
 なんかちがう。
 ものすごい闘いになると予想していたけれど、
 なんか、
 えらい簡単に手元に寄ってくるんですけど……。

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 サカナに罪はない。
 むしろ、
 釣れてくれたことに感謝。

 なんだけど……、
 
 きっとおそらく、
 狙っていた巨マスは、
 ぼくの存在にすぐ気がついて、
 さっさとどこかに消えてしまったのだろう。
 そして、
 そんなボス不在の一級ポイントに、
 育ち盛りのヤングがコレ幸いにやって来て、
 ぼくのフライに喰いついちゃったのだろう。

 180901(4)4.jpg

 泥まみれで脱力のイッピキにサヨウナラ

 ドロドロのラインと竿を洗って、
 絡んだラインをほどいていると、
 ちょっと離れた場所の水中から唐突にミンクがポカッと浮かんでズルンッと湖岸にあがってきた。
 そしてコチラをチラッと一瞥すると、
 スルスルと森のなかに消えていった。

 ミンクか消えていった木々と藪の奥で、
 カサ・・・カサ・・・カサカサ・・・
 という乾いた軽い足音がしばらく響いていた。

 アホミンクめ。

 アイツのせいでもうふんだりけったり。

 ではあるけれど、
 クククと忍び笑いが気持ちの奥からとめどなくこみあげてきて、
 あ~オレいますっげえたのしい。
 シアワセだな~~とおもった。

180901(5)5.jpg

 この夏の、
 忘れがたい小さな冒険をこのフライとともに……。

 名作中の名作ファンシー・スタンダード「レッドタグ」サイズ10番。

 18世紀の英国で生まれた夢見るファンシーフライは、
 ここ北の大地のサカナたちにも評判すこぶるヨロシ。

 浮かせても、
 沈めても、
 漂わせても、
 軽くひっぱっても、
 夏のボクらをシアワセにしてくれるフライ。

 

 
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