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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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フライの雑誌 第118号
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 「フライの雑誌」最新号となる第118号!の特集は「シマザキ・マシュマロ・スタイル」だそうです。




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 末席にて、
 お恥ずかしながらワタシの駄稿と与太話も掲載していただきました。

 道内各地のいろんな釣り場を舞台にした、
 マシュマロ・ビートルと野生のニジマスたちとの濃密な数年間のまとめとして、
 良い機会を与えていただきました。
 ほんとにありがとう。

 そんなわけで、
 その記事に添えたいナとおもった写真のなかから、
 どれをつかおうか迷いに迷っていくつか候補を挙げて、
 そこからさらに絞りに絞って「コレでいこ」と決めて、
 またもやさらにそこから、
 誌面の都合で割愛された写真たちを以下に……。

 題して 「鱒たちの口許でこそ雄弁に語りたい」

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 フライの雑誌に書かせてもらうのは16年ぶりです。

 

 
 
 
秋のイロとカタチ
 ついほんの数日まえのこと。 
 毎日のように通りかかる桜並木を見上げて、
 
 …近所の桜並木がほんのり色づいてきましたよ…

 なんてブログに書いたらオシャレかなとおもって
 すっきり晴天となった翌日、
 カメラをもっていくと、
 もはやがっつり紅なっとるやんけ。

 そしてまたほんの数日後のきょう。

 今やもはや落葉のてい。

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 オホーツクの秋は駆け足というよりフルスロットル全力ダッシュで冬までまっしぐら。


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 エゾジカのヘアカディス13番。
 冬のあいだに巻き貯めた一本。
 
 スレッドをマーカーで着色してボディ末端に真っ赤な極小アクセント。
 それが、
 春から幾度となく水面に浮かんで水を吸って変色。
 いまやすっかりワイン色。

 しかしむしろ、
 新品ホヤホヤの春のころよりも、
 ずっとムシっぽい生命感が宿っているような……、

 今後は大事につかいたい気持ちになる、
 さんざん使い古した一本。

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 川の流れのように……、
 ではなく、
 ハックルの流れに浮かぶマダラ模様の蜂蜜色のセッジ。

 ハニーダンのサドルで巻いた。

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 ファーネスの水面に浮かぶレッドセッジ。

 エゾジカの毛にハマッたおかげで、
 超ビギナー・ドシロート時代以来ウン何十年ぶりかにヘアカディスがじぶんのなかで大復活。
 そのあげく、
 ヘアカディスの原型というかアイディアの源泉となったとされる、
 古典トビケラ・フライにまで興味と関心がおよび……、

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 晩春のころ、
 ご近所の農家さんが我が家の裏庭をトラクターでガガガと耕してくださって、
 そこに簡単な畑を作ってタネを蒔いて育てた枝豆。

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 丹精込めて育てた、
 とはけして言いかねるけど、
 たわわに実ってくれました。

 おかげさまで、
 今月はまいにち枝豆三昧。

 手前みそながら、
 たいへんおいしゅうございます。

 食っても食って食ってもすこしも飽きることなく……。

 来年は、
 さらなる収穫と品質向上を目指したい。

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 と、
 そんな我が家の畑のまえにある朽ちかけた廃屋を根城にしているノラネコ。

 こいつは、
 この春にうまれたばかりの三兄弟のなかのイッピキ。

 以前から我が家周辺の野山を縄張りにしている、
 漆黒の毛並みがとても美しいクロネコ・ママからうまれたブルーダン・ベイベ。
 ほかの二匹の兄弟は母親同様に真っ黒なんだけど、
 こいつだけこんな色してんの。

 この引き締まった不敵の面構え見たって。
 凛々しいというかふてぶてしいというか。
 もはやすでに猛獣のオーラをまとった子ネコ。

 目の前は、
 シカもキツネもヒグマも闊歩する豊かな大自然。
 ライバルも強敵もそこらじゅうにひしめいている。
 
 厳しい酷寒の冬ももうすぐそこ。

 そりゃあ生まれたとたんにワイルドやないと生きられません。

 野性なんだよなあ。

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 そしてコイツもまた、
 野性なんだよなあ。

 

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 ちじれた太い繊維のクリンクルジーロンをスペントウイングにあしらった真っ黒15番。

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 ストレートな細い繊維のマイクロジーロンをスペントウイングにあしらった真っ黒15番。

 ヒグマの柔毛をマッチ・ザ・ハッチ・パターンや小型のフライに活用することにも没頭した今シーズン、
 そんな興味は化学繊維をふたたび見直す課題にも多方向に幅をひろげて現在進行中。

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 そのモデルとなったムシのひとつがコレ。

 筋肉の塊で丸々肥え膨らんだニジマスたちが、
 水面に浮かぶこのムシを「コプッ」という水音をたてて吸い込んでいる。
 なんと甘美で誘惑に満ちた響きであることか。

 「天高く、
 マス肥ゆる秋」

 
 あと半月ほどですかね?。

 嗚呼くるおしい。
 

 
 
ユスリカの園
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 お盆がやって来る数日前のこと、
 この日も朝からいきなりカッカと暑い日だった。

 北海道に越してきて10有余年をへて、
 コチラではじめて「熱帯夜」を体験した。
 今年の夏は辛かった。

 夕方、
 陽が陰ってくるのを待って、
 自宅からすぐ近所の釣り場に行くと、

 駐車場にコムロさんとイシザキくんのクルマが並んでいた。
 
 「お、ラッキー。来てる来てる……」

 なんつって、
 その横にじぶんのクルマをとめ身支度を整えて、
 釣り場に通じる林の小道を小走りに抜けて水辺に出ると、
 案の定みんないた。

 ふたりとも、
 水深が腰くらいのところまで立ち込んで、
 20メートルほど間隔をあけて並ん釣っていた。

 岸から、
 「まいど~~~」
 といきなり叫ぶと、
 ふたりとも同時に振り返って、
 「あー、来たーー」
 と言った。

 「おふたりの真ん中に割り込ましてもろてもよろしいでっか?」

 「もちろん割り込んじゃって~~」
 とコムロさん。

 60代半ばのコムロさん、
 50代半ばのワタシ、
 40代半ばのイシザキくん、
 三人仲良く並んで釣った。

 「今日もキケンな暑さでしたね」
 というと、
 「いや~、もうさ~暑くて暑くて家にいられないから、ここに来て立ち込んで涼んでるところ~」
 「でもここもさ~、水に浸かってる下半身は涼しいけど、上半身は暑くて暑くて……」
 とコムロさん。

 いっさい殺気をかんじさせないけど、
 「やる気」もかんじさせないコムロさん。

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 そしてコムロさんが、
 「さっきイシちゃんがすごいの掛けたんだよ」
 と言った。

 「うっそマジで!」

 「ひっさびさにものすごいファイトでした!」
 
 「やる気」と「釣る気」を常にムンムンムラムラ全身全霊で発散させつづけているが、
 けして自己主張や誇張はしないイシザキくんが、
 興奮を抑えきれない口調でそのように言った。
 めずらしいことだ。

 それだけに、
 掛けたニジマスは相当のヤツだったのだなとおもわれた。

 「ホンマかあ~、それメッチャ見たかったわ~~」
 と悔しがると、

 「どっぼ~ん!ダッバ~ン!って、ものすごいジャンプもしたしね!」
 と横からコムロさん。

 「マジか~~~、え~~な~~~。つこたフライなに?」

 「ユスリカのピューパです。」

 「うっそマジ?けっこう沈めてたん?」

 「いや、それがですねえ、ライズはすごく散発だったんですけど、
 さっきユスリカがものすごくいっぱい水面に浮いてたんですよ。
 それで、おもいきってタナをすごく浅くして30センチくらい沈めてゆっくり流したらすぐ、
 ツーーンッとインジケーターが引き込まれたんです」

 「うっは~~~マジか~~~。めっっちゃエエやん。で、いまは状況どうなの?」

 「いま、さっきからずっとシーーーンとしてます。ライズもピタッと止まりましたね」

 「んがくっく……」
 とワタシ。

 それでも、
 ビシッバシッとするどく竿を振って、
 めぼしい場所すべてにフライを打ち込み丁寧に流しつづけるイシザキくん。
 集中してはる。

 その横で、
 立ちこんだまま釣りそっちのけで、
 終始どうでもいいようなご近所の噂話に熱中するワタシとコムロさん。

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 陽がかんぜんに暮れようとしているころ、
 静まり返った水面でいきなりザババッ!と激しい水しぶきの音がして、
 ハタとイシザキくんのほうを見やれば、
 良い型っぽいサカナを掛けたけれど惜しくもバラシたところだった。

 その瞬間、
 さっきまで弛緩していた釣りゴコロがシャッキーーン。
 渇はいりましたー。
 時は来た。

 「イシザキく~ん、フライはなに?」
 
 「ドライです~。ポワ~ンってちいさなライズがあったんで、そこに投げてチョンチョンッてフライをうごかしたらガバッ!と出ました」

 「マジか~。チョンチョン作戦いけるね~」

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 真っ暗になる直前、
 じぶんの道具立てでもなんとかフライが届く距離のところで、
 ポワ~ンポワ~ンと2回連続してライズした。

 確実におなじサカナが浮遊物をついばみながら移動している。

 3回目にライズしたとき、
 進行方向が予測できたので、
 ライズ地点よりも2メートルほど横にフライを浮かべて……、

 一呼吸待ってツ・ツ・ツ・と、
 パラシュートハックルに薄く一回転だけ巻いたレオンの長いファイバーをプルンと揺らす……、
 みたいなイメージで水面のフライをうごかすと……、

 ガボッと出てくれてしてやったり。

 おそらく、
 水面あるいは水面直下に無数に漂っているユスリカの脱皮殻や溺れたスペントなどに執心して、
 そんなちっちゃいのばかりせっせとついばんでいるけれど、
 視界の先でなにかムシっぽいのがツツツとうごいたので、
 おもわず飛びついちゃった……という反射喰いだろう。

 ムチャクチャ引いた。
 このサイズのニジマスでさえ、
 ひとたび走り出すとフライラインがギュギュギュギュギューッと音を立て水を切りながら弧を描く。
 そしてその先でドーンッ!バーンッ!と水面高~く見事な連続ジャンプ……おもわず拍手しそう。

 きょうはこのイッピキで満足。

 帰り道、
 林の小道を歩きながら、
 
 「昼間に掛けたごっついの、写真に撮った?」
 とイシザキくんに聞くと、
 「いや~、それがですね、手元まで寄せてきて、さあリーダーをつかもうと手を伸ばしたとき、
 スコッとバレちゃったんです」

 「そうなんや~。まあ、それやったら釣れたことにしたらええやん」

 「そうだよ~、もうほとんど手元に寄せてたし」
 とコムロさん。

 「……いや、やはり、自分の手でサカナの口からハリ外してリリースしてこそ完結なので…それはダメです」
 
 「アンタよ~ゆうた!それでこそ釣り師やで」

 すっかり真っ暗になった駐車場で三人ウハハと笑いころげて、

 「じゃ、またね~」

 なんでもないような、
 なにがあったわけでもない、
 めずらしくもなんともない、
 いつもの日常のような一日。

 なんだけど、
 ほのぼのと穏やかで平和で、
 気持ちがあたたかく満たされた一日。

 これがかけがえのない一日というものなんだな~と、
 しみじみおもったりする……ようになっちゃった50歳半ばの夏です。

 なんなんやろ?このかんじ。

 そ・し・て・
 帰宅して風呂からあがって夕ご飯を食べて、
 さっそく巻いた。

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 アカムシちっくなユスリカ・ピューパ2019キラキラ。


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 大学1年生のころ、
 いつもつるんでいた仲間内3人のあいだで空前の筒井康隆ブームが巻き起こり、
 アレよんだコレわろたヤレよめソレよめと…夜な夜な熱く語り合いながら、
 とにかくどれもこれも貪り読んだ。
 
 30年以上ぶりにコレ読んだ。
 うわ~我知らず…よろず直球で影響受けててんな~自分…とおもって感慨深かった。

 いま読んでもやっぱおもろい。
 しかも、
 懐かしい回顧でなく今の視点でおもろかった。

 



セミセミセミシカ
 これは、
 一週間ほどまえに体験した実話であります。

 真夏日をおもわせる晴天好天がしばらくつづいていたけれど、
 それから一転。
 どんよりと曇って小雨交じりの鉛色の空、
 そして底冷えのする寒々しい天気になったころのこと。

 ワタクシは、
 ちょい山奥の川を独りで釣りのぼっておりました。

 午後おそく、
 両岸ともに雑草の生い茂る小高い崖にはさまれた区間にさしかかったころ、
 どうも妙なかんじがしてならない。

 瀬音のせせらぎの音、
 小鳥たちのさえずる声、
 木々が微風に揺れて葉っぱが擦れ合う音、
 そんな、
 いつもの自然の音のなかに、
 消え入るようなほどちいさく、
 しかし断続的に、
 なんだか、
 妙な不協和音が……背後の崖のうえから聞こえてくるような……しかし気のせいのような……、

 ペキッ、
 ポキッ、
 枯れた小枝を踏みしめたような微かな足音。

 ザザッ、
 ザザッ、
 風ではなく、
 何者かがクマザサの葉に擦れたような音。

 それらが、
 さっきからずっと、
 聞こえてくるような……。

 ペキッ……、
 ザザッ……、
 そのたびに、
 ちょっと、
 いや、
 だいぶビビりながら、
 ハッとなって背後の崖のうえを見あげるんだけど……、

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 なんにも見えない、
 なんにもいない。

 気のせいやろか?

 しかしまたしばらくすると……、
 
 パキッ、
 ズザッ。

 これは気のせいじゃない。
 なにかがいる。
 ぜったいいる!

 そういえば昨年の夏、
 とあるダム湖畔で釣りをしているとき、
 背後の森のなかに潜んでいたらしい野性のミンクにつけ回されて、
 その足音にびびりまくった思い出がある(昨年の8月くらいの当ブログ参照)。

 でもねえ、
 今回のはちょっとちがう。
 ミンクごときの小動物がたてる足音とはだいぶちがう……気がする。

 音はとっても微かなんだけど、
 明らかに、
 確実に、
 うたがいようもなく、
 なにかとってもおっきな生き物が、
 抜き足差し足忍び足で……ぼくのあとをつけている……としかおもえない。

 ものすご~~~く、
 とっても、
 イヤだよ~~~ユルシテオネガイ。

 こんなとき、
 かんがえることはただひとつ。

 こんな釣り生活をおくっていれば、
 いつか、
 あのお方と、
 野外で、
 丸腰で、
 生身のまんま、
 ご対面してしまう……かもしれない。
 このような出会い方をしてしまう……かもしれない。

 そんなときが、
 とうとうやって来てしまった……かもしれない。

 おそるおそる、
 奥底からビビりたおしながら、

 背後の崖のうえを目を凝らしてジ~ッと凝視。

 そして凝視。

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 わかった?
 いちばんうえの写真のどこかにも、
 コイツ写ってんだよね。

 擬態とは、
 まさにこのこと。

 こんなん、
 目のまえにいたとしても、
 その気になって探さないと、
 周囲の木々や草に完全に溶け込み紛れ込んでしまって、
 ちょっと見ただけではぜんっぜんわからんど。
 
 正体がわかったその瞬間、
 食べられちゃうかもしれない恐怖や、
 ぶち殺されるかもしれない恐怖とは、

 まったく別の、
 もっと得体のしれない、
 現実的ではない恐怖で、
 マジちびった。

 腰から下に力が入らなくなって、
 ガクンと砕け落ちそうだった。

 あのさ、
 シカって真正面からの姿を遠目に見ると、
 パッと見なんていうか、
 人間じゃないけど二本足で立ってる二足歩行のナニモノかに見えるんやで。

 「千と千尋の神隠し」あるやん、
 アレに黒装束の「アッ」しか言わん無表情なモノノケでてきたやん。
 得体のしれない恐怖でいっぱいになってたワタシの目には、
 あの感じ的な妖怪というか精霊というか……そういうものを連想せずにはいられなかったのだった。

 崖の上と下で、
 見つめあうエゾジカとワタシ。

 ぼくが「ウワッ」と声に出しておどろいて慌てふためいたとき、
 シカの野郎もズザッと一瞬ヤブのなかに消えかけたんだけど、
 またすぐ戻って来て、
 またもやジ~ッとコチラを見下ろしている。

 「どないしたん?なにしてるん?」
 「あっち行ってくれる?」

 心底ホッとして、
 声をかけた。

 シカはなんにも言わないけれど……、

 見つめあいながら、
 タバコに火をつけた。

 すると、
 シカの鼻がヒクッとなった。
 一瞬、
 顔をしかめたようにも見えた。

 愛煙家は、
 こんな場所でも肩身が狭い。

 気を取り直して晴々と釣り再開。
 
 するとまた背後でペキッザザッと微かな音がして、
 しばらくぼくのあとをつけていたようだけど、
 シカはいつのまにか消えていた。 

 なんだったんだ?

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 そのときつかっていたフライ。

 エゾジカの毛で巻いたエゾハルゼミなフライ。

 エゾシカに監視されながら、
 エゾシカの毛で巻いたフライで釣る。

 それをシュールというべきか、
 それとも浪漫というべきなのか……。

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 各メーカーいろんなタイプのフロータントをドサッと大人買いして、
 あれこれゴシゴシ擦り込みながらつかっている、
 ワタシの2019年度版ハルゼミ。

 コレ一本で、
 大中小特大幼魚あわせて、
 もはや何匹釣ったか定かではないけれど……、
 つかうたびに、
 いろんなフロータントをモミクチャに擦り込んでいるけれど……、

 まだまだぜんぜんイケるかんじ。

 それがどれだけウレシたのもしニヤけることかは、
 ディアヘアー系のフライをフロータント塗ってドライフライとして多用しておられる方なら、
 きっとわかってくださることでございましょう。

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 ちなみに、
 野山で生身ではぜったいお会いしたくはないお方の、
 とある部分のオケケをウイングにあしらったハルゼミも、
 お日さまの陽の光を浴びてギランギランと金色に輝いております。

 これが水面に浮かぶと、
 金色の後光に包まれて、
 なんだかとっても霊的で幻想的。
 ポ~ッと魂が抜けちゃうような夢見心地

 それがいきなりグワバッ!水飛沫けちらして炸裂。

 魂が、
 魂が、
 もっていかれちゃう~~~~。

 もちろんこちらにも、
 さまざまなフロータントを塗布して……、

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 そして、
 それだけでは飽き足らず、
 挙句の果てに……。

 瞑想中、
 じゃなくて迷走中……ですね?

 感動と刺激と発見に満ち満ちて、
 まことに濃厚な、
 こゆ~い初夏の毎日です。

シャガァル
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MAXI PRIEST ~ IN THE SPRINGTIME

 …オレの街にもようやく春がやって来て、
 陽差しを浴びながら小鳥たちがさえずっている。
 平和の歌をうたっている。

 だけど、
 あいかわらずオレのポケットには小銭もはいってない。。
 仕事もない。
 いつも職なし。

 オレの両手に手錠はかかっていない。
 オレの足首に鎖は巻かれていない。

 だけど、
 オレは自由じゃない。
 ヒトとしての尊厳なんてなにもない。

 嗚呼、
 小鳥たちと一緒に歌いてえなあ……。

 と、
 そんなサファラズ・チョイスでレベルミュージックな春の歌。

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 令和元年初日に記念撮影。

 倉庫のなかで山積みに積みあげられたエゾジカの毛皮のなかで、
 燦然と光り輝いて見えた一枚。
 「これだ!」
 とおもった。
 自宅に届いて、
 あらためて眺めてみれば、
 またさらに奥底から込みあげてくるものがあって……、

 北海道ってスゲエなあ。

 大型連休はこのエゾジカとともに。

 
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 収集欲はすでにもう充分満たされました。
 アタシャもうひと段落しましたよ、
 という気分になったとたん、
 なぜだかとんでもないブツがまるで導かれるように我が家にやって来てくれる、
 この不可思議ば現象はなんなのか?
 
 コレすごいの。

 ファイバーの芯には濃いめのダン色のラインが一筋くっきり走っている。
 ハックル中央はダークジンジャーよりもっと金色がかって暖かみのある蜂蜜色。
 そしてファイバーの先端がほのかに淡いライトダンに変化している。

 なんじゃコリャ。

 光に透かすとポ~ッと夢見心地。

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 タップス・インディスペンサブル。

 英国産コカゲロウの仲間の小さなイマージャーやスピナーを暗示した、
 R.MオースチンやG.E.Mスキューズの繊細可憐なオリジナル・タップスではなく、
 そこから派生した、
 ハックルをがっちり巻いたアメリカンなキャッツキル・スタイルの武骨タップス、
 このスタイルがいまのボクの気分。

 サイズも10番~12番と、
 このパターンとしてはやや大型サイズ。
 当地ではあと半月ほどではじまるかと予想される、
 ヒラタカゲロウやミドリカワゲラの羽化流下に合わせたい目論見。

 それにしても、
 あらゆるスタンダード・ドライフライのなかで、
 ウイングのない縦巻きハックルと、
 リビングのないシルクボディほど、
 見映え良く巻くのにやっかいなものはない。

 キャッツキル・スタイルなタップスはその典型だ。

 指定通りに巻くと、
 どうやったってだらしない印象で締まりがなく、 
 そして生命感に欠けるズンベラ・フォルムになってしまう。

 淡い中間色の色調のユニバーサル・ドライフライとして効果てきめんにもかかわらず、
 当時もいまひとつブレイクしなかったのは、
 もしかしたらこのような理由によるところ大かもしれない。

 そこで、
 全体のフォルムを引きしまった印象に見せるために、
 微細なリビング状の凹凸をつけながらシルクをボディに巻く小細工を思いついた。
 試してみれば「してやったり!」とご満悦。
 そしていよいよ真打ちハックル登場。
 ハックルの芯が濃いダン色になっている蜂蜜色のハックルをびっしりハックリング。
 鮮明な濃淡のコントラストに見惚れる。
 芯のダン色のところが虫のソラックスのようだ。
 これらのアレンジによる印象的なアクセントよって、
 見違えるように虫っぽさムードむんむん。
 自己満足なニヤニヤがとまらない。

 ささいな、
 ちいさなことだけど、
 満たされ度数は無限大。

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 話しはガラリと変わって、
 このスピーカーは岩手の大学を卒業して、
 上京してすぐの1988年に購入したもの。
 昭和63年、
 平成元年の前年ですね。

 あれから31年のあいだに、
 このスピーカーを連れて都合7回引っ越したけど、
 まだまだぜんぜん健在。

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 かんがえてみれば当たり前の話で、
 マンションやアパートやコーポ、
 それに長屋のような一軒家、
 これまでの住環境では、
 隣近所を気にしながら、
 せいぜいこのスピーカー本来の力量の半分以下で鳴らすのが関の山。

 そりゃあ壊れようがない。

 スピーカーもさぞや物足りなかったことでしょう。

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 30年も経って、
 現在の住居にて、
 ようやくこのスピーカーのパワーをいかんなく発揮させることができるようになった。

 こんなに良い音するなんて、
 いままで知らんかった。

 空気がブゥォンブゥォン震える重低音でも、
 誰にも迷惑をかけないっていうよりも、
 だ~れもいなさすぎて迷惑かけようがない住まいと環境って素晴らしい。

 深夜、
 どこぞの都会のクラブなんか蹴散らすフルパワーで、
 好きなだけレコードを鳴らせるシアワセ。

 我が家周辺を縄張りにしているシカやキツネやノラネコたちは、
 夜な夜なこのあたりを徘徊するたびに、
 マニア垂涎のレアなレゲエのレコードを大音量で聴いている世にも稀有なケモノたち。

 きっとヤツらも耳肥えてるとおもうよ。
  
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 岩手の大学を卒業して、
 渋谷のセンター街にていきなりレゲエのレコード専門店をまかされることになったとき、
 まず最初に府中のマンションに住んだ。

 ちょうど平成元年のその当時、
 仕事に行くまえ、
 ほぼ同じ時間にほぼ毎日通っていた喫茶店がシャガァル。

 といっても常連客でもなんでもなく、
 マスターとも奥さまとも、
 きょうは暑いですね~とか寒いですね…とか、
 挨拶以上の話はしたことがない。

 したことはないけど、
 毎日行くからすっかり顔見知りで気安い。

 そこがよかった。

 全体として暗めで煤けて古めかしく、
 それでいて高級感のない木造りの店内は敷居が低くて入りやすく、
 そしていつもそこそこ空いていてすこぶる居心地がよい。

 だからかよった。
 
 珈琲の味は普通。
 いつも頼んでいたランチセットの「エビピラフ」はたぶん冷凍もん。

 それでよかった。

 しかし、
 その翌年、
 府中から調布に引っ越して、
 それ以来シャガールには足を運んでいない。

 近所だったから毎日通ったけれど、
 じぶんにとってはそれ以上でもそれ以下でもなんでもない喫茶店だった。

 そんな喫茶店。

 だからこそよかった。


 ことしの2月、
 仕事で上京していたとき、
 所用で府中にでかけた。

 京王線の府中駅は、
 もはやじぶんの記憶の片隅にある駅ではなく、
 こじゃれたデパートが併設された要塞のような立派な駅ビル。
 まったく知らないはじめての駅に変貌していた。

 あったりまえだのクラッカー、
 なんたって30年ぶりの府中。

 お客さんに指定していただいた待ち合わせ場所の喫茶店も、
 その駅ビルのなかにあった。
 駅構内から出ないままに用事が済んだ。

 のだが、
 どうせ此処まで来たんだし、
 こんな機会でもなければもう来ることはないかもしれないし……、

 昔住んでいたマンションを見に行こうとおもって、
 駅前から歩き出した。

 この街並みの変わりよう、
 遠い昔の淡い記憶のまま、
 はたして辿りつけるのだろうかとおもいきや、
 駅前からマンションへとつづくちいさな商店街にはいったとたん、
 なんだかタイムスリップ?
 ちょっぴりセンチメンタルやんけワレ~。
 ここらへんだけ、
 びっくりするほど当時と変わっていない気がするやんけ~どないなっとんねん?

 そしてその商店街に、
 シャガァルがまだあった。

 おどろいた。

 店内もまた見事にそっくりそのまんま。
 テーブルも椅子もその配置も、
 薄暗い煤けたかんじもそのまんま。
 木造りのイスに座ったら、
 その座り心地までそのまんま。
 薄暗い店内の窓から見える電線だらけの風景もそのまんま。

 きわめつけ、
 「エビピラフ」のランチセットまでもそっくりそのまま当時のまんま。

 あのころすでに年配だったマスターは代替わりしたのか、
 おられなかったけれど……、

 おいおい蘇るやんけどないするねん甘酸っぱい思い出とか消し去りたい恥とか忘れたい失敗とか……若気の至り。
 なんでそういうことばっか次から次に思い出すねんどないしてくれるねんホンマいたたまれない。

 そんなマジメになっちゃう甘辛くて重いのやなくて、
 アレとかコレとかソレとか、
 もっとたのしく笑えるアホアホおもしろ思い出話しかてメッチャぎょ~さんあるやんけ~~~。

 そっちを思い出して面白おかしく盛って語りたいのに。

 トーキョーは大好きだけどキライだ。

 平成元年に通っていた喫茶店に、
 30年も経って平成最後の年に再訪するて、
 なかなか一興やろ?
 オシャレやろ?
 ロマンチックやんけワレ~。

 でもなあ、
 そんなことするもんやないで。

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 嗚呼セニョリータ、
 皆さんおシアワセでありますよ~に。

 Dennis Brown - Senorita



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