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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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パンプキン・トーク
201124 (1)1

 対向車が走って来ると「オッ」とおもうほど山深くてヒト気のまったくない峠道。

 広大な樹海のなか、
 急こう配のクネクネカーブが連続する、
 おおきな峠道をふたつ越えて橋を渡ると、
 とつぜんちいさな街に出る。

 その街を抜けて、
 これまたヒト気のまったくない原野の一本道をしばらく走る。
 すると、
 ほどほどの交通量がある国道に合流する。
 そこからさらに、
 ひたすらまっすぐな国道を走って、
 ちいさな峠道をひとつ越えたところにある、
 ちいさな街の老舗「喫茶店」

 我が家からクルマでひた走って2時間弱というところか。

 この喫茶店が、
 もうすこし近所にあれば、
 常連面して毎日のように通うのになあ。

 それくらい珈琲も食事も抜群においしい。
 そしてなによりも居心地がすこぶるいい。
 

 ことしの夏の終わりころ、
 良いご縁があって、
 このお店の釣り好きマスターと知り合うことができた。
 そして、
 幸運にも地元の川を案内していただけることになった。

 そんなマスターのいつもの相棒は、
 若き血潮をギンギンにたぎらせた熱血フライフィッシャーのイトーくんだ。

 …あした、そっちに行きたいねんけど、どない?…
 とイトーくんに打診して、
 断られたことが一度もない。
 アナタ、
 いつ仕事してんのよ?みたいな。

 けして人のことは言えませんけれど。

 ところが、
 ヤツはフライロッドをふりまくるのみならず、
 若き血潮ギンギンにフライパンをふりまくるイタリア料理のシェフでもあらせられるのだった。

 かくして、
 60代のマスターと50代のじぶんと40代のイトーくんの3世代で、
 晩夏から初秋にかけて、
 何度か皆さんのホームグラウンドを釣り歩いた。

 おりしも、
 我が左目の白内障の症状が進行して、
 もはや完全になにも見えなくなっていたころ。

 それが引き金となって、
 なにごとにも意欲を失い、
 釣りに行くのさえ億劫にかんじるようになっていた今夏。

 そんなとき、
 釣り場やマスターのお店で、
 ワタシ好みの話題が豊富な御二人と、
 とりとめもなくおしゃべりをするのはほのぼのたのしかった。

 そんなわけで、
 サカナを釣りたいというよりも、
 つねに落ち込んで波立っている気持ちを穏やかにしたくて、
 遠路はるばる通っていた。


 あれは、
 秋も深まって、
 そろそろ紅葉まっさかりというころ。

 川におりられる農道脇のクルマ止めにて、
 三人で落ちあい、
 いつものようにペチャクチャと世間話をしながら、
 着替えて釣りの準備をしていたとき。

 クルマを止めた農道の反対側に、
 カボチャ畑がひろがっていて、
 農家のおばさんが収穫の準備をしていた。

 ウェーダーを履きながら、
 それを見るともなく眺めつつ、
 …うちの畑のカボチャもそろそろ収穫するか…、
 なんておもっていると、
 イトーくんがいきなり唐突に言った。

 「しかしカボチャってすげーよなあ、
 見た目はあんなに硬くて美味しくなさそうなのに、
 煮ても焼いても揚げても、
 どうやったってホックホクになって甘いんだもんな~」


 ちょっとちょっとちょっとちょっとイトーくん!

 こんな朝っぱらから、
 そんなホットな話題を出されたらワシ困るやんけ。

 オレにカボチャ話しさせたらアンタ、
 めっちゃ濃ゆくて長いんやで。
 それ話しだしたら、
 きょうは釣りどころやあれへんがな。

 なので、
 ここはあえてグッとこらえて、
 その話しはまたの機会にすることにした。


201124 (2)2

 ここオホーツクの過疎集落に越してきて4年目、
 ワタシはこの地に胃袋をつかまれてしまった自覚がおおいにある。

 ここに来て、
 大好物になった食材や料理がいくつかある。
 それらについて
 「ほとばしる愛と賛美のポエム」を高らかに謳いあげたい気持ちがある。

 そのなかにあってカボチャは、
 その筆頭格といってもいい。

 とはいえ、
 ここに越してきた最初の秋、
 近所の農家さんに実ったばかりのカボチャをたくさん頂いたときは、
 内心…エエ~どうしよ~~…なんて、
 途方に暮れたものだった。

 こんな石みたいに硬いもん、
 どないして料理したらええん?

 と、
 おもっていたのだが、
 クックパッドやらなんやら検索しながら、
 おそるおそる料理してみればアナタ、

 なんなのよ、
 この野菜だか果実だかわからんけどミラクルな食材は……。

 ドシロートがおぼつかない手つきで、
 いい加減な味付けで、
 煮ようが、
 焼こうが、
 揚げてみようが、
 さらには潰して濾してスープにしようが、
 甘~くしてスイーツ的なものにしようが、
 なにをどうやっても、
 カボチャに熱を加えたその時点で、

 もうどうしようもなく、
 ものすご~くおいしくなることが確約されているではないか。

 いまや、
 初秋のころに収穫の時期を迎えるカボチャの季節を心待ちにしている。

 もはや、
 カボチャのおかげで冬を越していると言っても過言ではないくらいに、
 まったく飽きることなく、
 むしろ、
 月日を重ねるごとにますます……、
 
 というぐあいで北国のカボチャ・ライフを堪能している。

 あのなあ、
 自慢するけどなあ、
 オレさまの畑で育てたカボチャは、
 そんじょそこらのカボチャとちゃうねんで。

 時代の最先端の最高品種のカボチャなんやで。

 常日頃、
 なにくれとなくものすごくお世話になりっぱなしの近所の農家さんが、
 毎年春の訪れとともに、
 我が家の裏庭をトラクターでががーっと耕してくださって、

 「いまはこの品種のカボチャがおいしいから」と、
 ピチピチの苗をたくさん分けてくださって、
 それを植えたものなんやで。

 そして、
 近所のおばあちゃんやおじいちゃんが、
 「ビゼンさんとこの畑、いつ雑草むしりするんだろう?」
 と、
 かってに気を揉んでくれて心配されるくらい、
 ひと夏のあいだ我が畑はほったらかしにされて雑草ボーボー。

 それでも秋が来れば、
 鬱蒼と生い茂る雑草のジャングルに埋もれて、
 最高級カボチャはたわわに実ってくれるのだった。

 ほったらかしても勝手にぐんぐん逞しく育ってくれて、
 そのうえ味は保証付き。

 なんなの?この未来志向な食材は。

 さらに!
 これまたご近所の皆さんが、
 この季節になると、
 商品として出荷用に育てたオフィシャル・カボチャやら、
 家で食べるために育てたプライベート・カボチャやら、
 いろんな品種のカボチャを差し入れてくださる。

 なので、
 たくさんのいろんなカボチャを、
 いいかげんな調理ではありながら、
 すべて、
 あますところなく、
 おいしくいただいているのだ。

 うらやましがってもいいよ。


 あれは、
 そんなめくるめくカボチャ・ワールドに開眼して、
 ノリにのってる3年前の晩秋のころだった。

 ちょうどこのころ、
 カボチャを煮るのにドハマっていて、
 来る日も来る日も飽きもせずカボチャを煮ていた。

 調理するたびに調味料の配分をちょっとづつ変えてみたり、
 煮る時間を変えてみたりして、
 おおいにたのしみながら、
 いろいろ試して自分好みの味を探っていた。

 その日も、
 (…きょうはおもいきって味醂の量をグッと多めにしてみよかな~…)
 などと思い巡らせながら、
 釣りから帰宅してウキウキワクワク準備して、
 コンロに火をつけようとしたら……、

 あろうことか、
 半年前に購入したばかりの高級コンロの火が着かないではないか。

 着火させようとすると、
 ピーッと警告音が鳴って、
 一瞬だけ着いた火が消えてしまう。

 なんでやねん?

 いまさらながら取説をとりだして熟読。
 故障の原因を探って修復しようとするが、
 なんともわからない。

 なんでやねん?

 イライライライライライライライラしながら、
 このコンロ・メーカーのお客さまサービスセンターに電話。

 電話口に出た沢口さん(もちろん仮名)という女性の方に、
 …かくかくしかじかでコンロの火が着かないんだけど、
 これはどういうことなのか?
 どうやったら修復できるのか?……、

 と聞いてみても、
 夜半のことで故障に詳しい担当者が帰社してしまい不在だと。
 そして、
 ガスのことなので、
 お客様個人でのシロート修理は避けてほしい。
 明日の朝いちばんで現地の修理担当者をそちらに差し向けるので、
 どうかそれまでご辛抱ください。
 との旨を、
 ものすごく申し訳なさそうに繰り返すばかりの沢口さん。

 そりゃそうだろうけど……、

 憤懣やるかたないワタシ。

 常日頃、
 見苦しいクレーマーになんか絶対なりとうない、
 と思っていながら、

 ムッとした口調でついつい口走ってしまったのだった。

 「おっしゃることはよくわかりますし、それに従いますけど、
 購入して半年も経ってないのにもう故障するって、いかがなものかとおもいますよ」

 「お怒りごもっともです。ほんとにただただ申し訳ございません」
 と、
 沢口さん。

 「それじゃあ明日の朝、修理の方が来られるの待ってますので!」

 と、
 ビックリマークがつくようなきつめ口調で言って、
 ガチャンと電話を切ったのだった。

 明けて翌朝、
 近所のガス屋さんのお兄さんが来てくれて、
 なんとなくワケ知り顔でコンロをひっくり返して開口一番。

 「あ、やっぱりこれ、ネズミがコード齧ってしまっています!」

 うっそ~~~マジで?

 「年回りにもよるんですが、この周辺のこの季節、このようなネズミによる被害が多発する年があるのです」
 と、
 ガス屋のお兄さん。

 「どうも今年はネズミの当り年のようで、このあたりの皆さん、かなりやられてますね」
 と、
 つづけてガス屋のお兄さん。

 うっそ~~マジで?

 お兄さんは、
 慣れた手つきでチャチャッとコンロを修理してくれて、
 ネズミ対策についても簡単なレクチャーをしてくれて、
 「またなにかあったら今度はワタシに直接連絡をください」
 と言い残して帰っていった。

 かくして、
 コンロは無事に火が着いた。

 問題は解決した。

 ところがだ、
 ここでワタシの胸に暗雲のごとくひろがる後悔と反省の気持ち。

 昨夜の、
 沢口さんとの問答が重く切なく、
 そして痛々しく思い出される。

 先方にはなんの落ち度もない、
 これこそ冤罪でありながら、
 一方的に責められて、
 心底申し訳なさそうに謝罪の言葉を繰り返してくださった沢口さん。

 きっと昨夜、
 沢口さんはワタシの暴言によって計り知れないストレスを抱えたまま、
 どんより重い気持ちで過ごされたことだろう。
 そして、
 そんな気分のまま朝を迎え、
 辛い気持ちで出社されたことだろう。
 さぞ、
 しんどかったやろなあ……。

 うわ~どないしよ……。

 こんな悶々とした気持ちのまんま、
 カボチャを煮たっておいしくないやんけ、
 ましてや、
 こんな気分で釣りなんか行ってられへんやんけ。

 さんざん迷って、
 おそるおそる、
 またもやお客さまサービスセンターに電話する。

 電話口に出たのは沢口さんではなく、
 森田さん(もちろん仮名)という女性の方だった。

 昨夜とはうって変わって、
 とことん低姿勢な態度で、

 「お忙しいところお電話してほんとに申し訳ございません。
 わたくし、ビゼンという者ですが、御手間おかけいたしますが、
 そちらにおられる沢口さんという方にお取り次ぎをお願いできませんでしょうか?」

 なんて、
 丁寧に言ってはみたけれど、

 その瞬間、
 電話口からありありと伝わって来る、
 いたたまれないほどに緊迫してピーンと張りつめた空気。

 「申し訳ございません。沢口はいま席を外しておりまして、
 ご用件はワタクシ森田(もちろん仮名)がうかがいます」
 と、
 かたい口調の森田さん。

 「おそれいります。じつは、昨夜沢口さんと、かくかくしかじか、このようなお話しをさせていただいたのですが、
 コンロの故障はネズミの仕業が原因だったことが判明いたしました。
 知らぬこととはいえ、沢口さんにはなんと失礼なことを言ってしまったのかと申し訳なくおもっております。
 また、
 にもかかわらず真摯に対応していただいて感謝もしております。
 なので、
 できれば沢口さんに一言お詫びとお礼を言わせていただきたいと、
 失礼ながらお電話させていただいた次第です」

 受話器を握って、
 ペコペコとエアお時儀を何度も繰り返しながら、
 平身低頭のていで、
 しどろもどろ口調でそのように話していると、

 最初はガチガチに硬直していた森田さんの「ハイ、ハイ」という相槌が、
 話しの中盤あたりから、
 なんだか温もりをかんじさせる柔らかな響きに変化してきた。

 さっきまでビンビンにはりつめていた空気が、
 どんどん緩んでくるのが伝わってきた。

 「あの、お忙しいときにこんな不躾なお電話さしあげて、ほんとに申し訳ありません」

 お詫びの最後をそのような文句で締めくくると、

 森田さんは間髪をいれず、
 「とんでもございません!わざわざご丁寧なお電話をいただき、ほんとうにありがとうございます」
 と言ってくださった。

 そのありがたいお言葉に力を得て、
 「あの、沢口さんにビゼンから昨夜の失礼をお詫びしたい電話があったこと、お伝えいただけますでしょうか?」

 とお願いしてみれば、
 「もちろんです。ありがとうございます」
 と、
 きっぱりと力強く、
 そして弾んだ口調で快諾してくださった森田さん。

 ホッとして、
 こういうとき、
 いつもついつい一言多いアホの子のワタシ。

 「あの、購入させていただいたコンロ、すごく気に入ってます。
 これからもず~~っと御社のコンロを愛用させていただきます。
 今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

 なんて調子のいいことをまくしたて、
 「それでは失礼いたします」
 と電話を切ろうとしたときだった。

 「あ、ビゼンさま、うれしいお電話をいただいた旨、沢口にかならず伝えますので、
 どうかくれぐれもご安心くださいませ」

 森田さんは、
 さっきまでワタシのことをずっと「お客さま」と呼んでいた。
 はずなのに、
 このときはなぜか名前で呼んでくれた。
 それが、
 胸にズキッと響いた。

 日々、
 神経を擦り減らし、
 ストレスばかりが積み重なっていく、
 たいへんな仕事をされていることが、
 そのときの森田さんの声の響きから窺えるようだった。

 じぶんの所業を棚にあげて、
 頭の下がる思いだった。

 と、
 
 3年前にそのような一幕があって、
 月日は流れてつい最近。

 どうも、
 あとからおもえばたしかに、
 かすかに気配はあったんだよなあ……。

 朝、
 コンロの火をつけようとしたら、
 ピーッと鳴り響く警告音。
 そしていったん着いた火がすぐに消えてしまった。

 やられたやんけワレ~!

 ガス屋のお兄さんにさっそく電話。

 「やられましたか~。今年は多いみたいですよ。これからすぐ行きます~」
 と、
 いつも頼りになるガス屋のお兄さん。

 そしてオレさまは、
 あのときのウブなひよっ子ではないのだ。
 「百戦錬磨」と呼んでくれ。
 すぐさま、
 チュ~太郎撲滅にむけて必殺大作戦を決行。

 ここから先はグロ注意なので詳細は語らない。
 が、
 我が家に侵入したネズ公は、
 たちまち満身創痍で生け捕りにされ、
 囚われの身のまんま寒空に放り出されて捨て置かれ、
 哀れ一夜のうちにキツネかノラネコの御馳走になったとさ。

 ワイルド……ですか?

 ちなみに、
 ネズミを罠におびき寄せるために、
 ワタシはカボチャの種を活用している。
 効果絶大。

 かんがえてみれば、
 我が家でのネズミ被害は、
 コンロのコードを齧られた以外に、
 しいて挙げれば生ゴミとして捨て忘れたカボチャの種を齧られたことしかない。

 当地のネズミは、
 よほどカボチャの種が大好物のようだ。
 ほかには目もくれた様子もない。

 なので、
 こんな笑い話半分で済んでいるわけだが、

 それにしても、
 コンロさえイタズラしなければ、
 ほっといたるのになあ……。
 
 チュー太郎…おぬしもアホよのう。

201124 (3)3

 フライは、
 フルドレス・サーモンフライの登竜門でもある有名古典スタンダード「グリーン・ハイランダー」

 サイズ7/0 のビッグなので、
 グッと迫力満点。

 プライス・タナットのレシピで、
 額装して華やかな見映え重視のマリッド・ウイング・スタイル。

 ウイング最上段に据えた、
 ゴールデン・フェザントの尾羽根の蛇の目模様を、
 めいっぱい強調した。

201124 (4)4

 そしてコチラ、
 クラシック・ムードな雰囲気重視の「グリーン・ハイランダー」

 ケルソン・スタイルなフリーファイバー・ミックスドウイング。
 なんだけど、
 ケルソンが推奨したグリーン・ハイランダーとは、
 レシピもスタイルもぜんぜんちがう。

 上のマリッドウイング・スタイルと比較して面白がるために、
 つかった素材はタナット版「グリーン・ハイランダー」とあえてまったくおなじにした。

 とってもマニアックなグリーン・ハイランダーのパロディというわけ。

 と、
 そんな小難しいマニア・トークは今夜はほどほどにしておこう。

 写真のカボチャのように、
 表皮の一部が淡いオレンジ色に変化してブツブツしているやつ、
 見映えがちょっとナニやけど、
 コレは熟し過ぎてるのとちゃうねんて。

 「いま、最高においしいですよ~」
 という、
 カボチャからのサインなんですってよ奥さま。

 そしてちなみに、
 今夜の我が家の晩御飯の一品はカボチャのポタージュ・スープ。
 なみなみ作ってグビグビ飲んだ。

 いつものごとく、
 たいへんおいしゅうございました。

  
金色の亜成虫
202209 (1)1

 2020年版の柴野さんのカレンダー。
 四季折々、
 季節ごとそれぞれの心象釣り風景画を、
 たいへん気に入って毎月愉しんでいる。

 11月にはいった最初の日、
 いつものようにカレンダーをめくると、
 まるで、
 ここ数日のじぶんの釣り姿を写生してもらったような絵になってるではないか。
 しみじみ眺めながらクスッとなった。

 この数日間、
 まさにこんな釣り場の冬枯れの景色のなかで、
 ひたすら貪るように釣っていた。
 釣っても釣っても飽きることなく、
 溢れてしまいそうな釣り気分に浸りきって釣りきった満足の数日間だった。

 連日、
 朝から夕暮れまで吹き荒れる冷たい北風のなか、
 チャンスを信じてライズを待ち、
 全身で集中して竿を振り、
 恍惚としてリールを鳴らした。

 すばらしかった。

202209 (2)2

 ケルソンの「ランド&ウォーター」図説より、
 
 左側がダーティ・オレンジ。
 ヘッドを淡いブルーに染めたオストリッチで巻くように指定されているところが異端。

 右側がゴールデン・キャナリー。
 スロートに小麦色のアラビアン・バスタードの襟首羽根をハックリングするよう指示されているところが異端。

 今夏から延々つづいているクラシック・サーモンフライ・タイイング熱。
 まだ醒めてはいないけれど、
 といって、
 そればっかやっているのも芸がないよなと……。
 ていうか、
 クラシック・サーモンフライお約束の、
 お決まりの、
 いつもの定番素材ばかりつかうのはもう飽きた。

 インディアンクロウとチャテラー、
 それにトッピングとブロンズマラードとブルー・イエローマコウ、
 そして青と黄色と赤の組み合わせ、
 もうしばらくお腹いっぱい。

 なので、
 最近はもうちょいマイナーなやつ、
 そのパターンならではの独特な素材がフライの核となるような、
 古典スタンダード・マイノリティの異端児ばかり選んでせっせと巻いていた。

 という、
 なんだか武者修業のような様相を帯びてきた我がクラシック・サーモンフライ・タイイングの日々。

 おかげで、
 指先も多少なりこなれてきたようだ。
 
 なので、
 これから冬のあいだは、
 かねてよりご注文をいただいているアレコレの額装サーモンフライ製作にこそ集中したい。

 っていうか集中する。

202209 (3)3

 そのまえに、
 ほんとうにじぶんが作りたいもの、
 じぶんが表現したいもの、
 まずはじぶんこそが眺めていたいもの、

 を巻いてみた。

202209 (4)4

 フリースタイルで巻いたサイズ7/0

 フライの名前は即興で「エピオーラス」
 
 名前の意味と由来は、
 マッチ・ザ・ハッチの釣りにのめりこむあまり、
 水生昆虫たちの名前を学名でも記憶してしまうような方ならすぐわかるパロディ。

202209 (5)5
 
 河原で拾ったアオサギのウイングカバーのクイルを、
 極細ゴールド・ワイヤーで捩じってボディを巻いた私的スキューズ型ニンフ。

 昨シーズン終盤直前の晩秋のころヒメヒラタカゲロウのイマージャーとして巻いたもの。

 この数日間でさらに何匹ものマスたちに齧られて、
 すでにボディはささくれ毛羽立っている。

 けれど、
 ボディ材をキツキツに捩じって巻いてあるので、
 クリッパーでボディのささくれをカットしてしまえば、
 まだまだぜんぜん余裕でつかえる。

 というよりも、
 このテのフライは
 このようにささくれ毛羽立って、
 疲れはてて枯れた風情に変貌してからのほうが、
 心情的にも見映え的にもなにか生命感をかんじさせる「効く要素」が宿るような気がする。

 そして実際効く。

 で、
 話しは戻って、
 この金色のゴージャスなフリースタイル・フライのモチーフというか、
 たたき台となったのは、
 じつはこのように簡素に巻いたイマージャー・フライがアイディアの源泉。

 このフライから、
 イメージをどんどんふくらませつつ、
 デフォルメしていったのだった。
 
202209 (6)6

 この2週間、
 こんなイマージャーを中心につかって、
 こんな晩秋のニジマスやアメマスを相手に、
 昼間は濃厚に充実したマッチ・ザ・ハッチの釣りに没頭。

 その余熱冷めやらぬまま夜は、
 このフリースタイル・フライの製作に没頭。

 しかも連日、
 釣りに行くたびにどんどん妄想がひろがり、
 創作意欲が高まってしまう。

 夜は夜でお盛んよ。
 
 そして、
 釣りに行くたびに、
 あの羽根でこうすれば、
 この羽根でああすれば……、
 となってしまう。

 ので、
 帰宅後に昨夜せっかく巻いたものを解いてまた巻き直し、
 その翌日、
 もうこれでフィニッシュ。
 とおもいながらも、
 その日の釣りからの帰宅後、
 またもや懲りもせず解いて巻き直して……、

 昼間の釣りと並行しながら、
 夜は夜でそんなことばかりやっていたので、
 完成までじつに丸々2週間もかかってしまった。

 といっても、
 それほどまでに困難な製作過程だったとか、
 それほどまでに一世一代の入魂作とか、
 そういう労をねぎらうかんじではまったくなく、

 深夜、
 悲しくなるほどええ歳をした50代半ばのオトナが、
 作業机のまえに背中を丸めて座って、
 「この羽根はどうかな?」
 「こうして巻き止めればステキかも?」
 「それともいっそぜんぶコッチの羽根に変えてみちゃう?」
 などと、
 いろんな羽根を組み合わせて、
 終わりなき妄想にワクワクドキドキときめきながら、
 ず~~っと夢見る夢子さんでウフフと頬を緩め胸キュンキュン瞳ウルウルしていただけ。

 幼女の着せ替え人形遊びと、
 求めるところも、
 本質もなにも変わらない。

 むしろ、
 純粋無垢なぶん、
 少女の遊びのほうがよほど高尚におもえる。

 自己顕示欲ほど創作の足枷になって邪魔なものはない。
 
 昨夜、
 ヘッドのところに4回目となるラッカーを重ね塗布していよいよ完成とした。
 まるで、
 丹精込めて彫りあげた達磨さんに、
 さいごのさいごに瞳を描くがごとく、
 気持ちを高め、
 集中してラッカーを塗布した。

 ヘッドは、
 ものすごい重要なパーツだ。

 そうして、
 完成したばかりのこのフライをずっと眺めながら、
 夜更けまで、
 ここ数日の至福の釣りの場面を反芻して甘い蜜に浸った。

 グッと冷え込んだ今朝、
 目が覚めると雪。
 本格的な冬の到来を予感させる、
 けっこうな降り方。

 フライの完成と同時に、
 今シーズンの釣りもこれでひとまず終了。

 なにかとままならない今シーズンだったけれど、

 「終わりよければすべてよし」
 とはこのことだ。

202209 (7)7

 川底から、
 流れに翻弄されつつ、
 ようやく水面膜の下に浮上して、
 いままさに羽化せんと脱皮するヒメヒラタカゲロウのイマージャー。

 ほんのり火照った人肌を連想させる淡いピンク色と、
 くっきりした体節の縞模様が印象的なボディが、
 脱皮殻となる薄皮一枚のしたに透けて見えているヒメヒラタカゲロウのイマージャー。

 そんな神秘の瞬間を、
 いろんな鳥の羽根をつかって、
 実際の釣りとはまったく異なるベクトルで表現してみたい。
 それも、
 生まれたての柔肌のように透明で、
 指先で摘まんだだけで潰れてしまうような、
 ちっちゃくて可憐な羽根たちを組み合わせ、
 そして重ね合わせ、
 一枚一枚丁寧に巻き止めながら、
 じぶんならではの作品がつくれれば、
 どんなにか満足するだろうとおもっていた。

 ささやかな夢想がかないました。

 自己満足ほど創作意欲を高め前進させてくれるものはない。

  
ナポレオンとエゾリス

 お知らせです。

 明日26日から29日まで所用にて、
 ご注文メールなどの返信ができませんが、
 落ち着き次第すぐ対応させていただきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。



201025 (1)1



201025 (2)2



201025 (3)3

 ご注文いただき、
 本当にありがとうございました。

 スベスベピチピチのエエやつ、
 まだ在庫あります。

 ひきつづき、
 ご注文お待ちしております。

 どうぞよろしくお願いいたします。

201025 (4)4

 アイリッシュなスタンダードクラシック・サーモンフライのひとつ「ナポレオン」
 ケルソンのレシピとスタイルに準じて巻いたけど私的ヴァリエイション。

 もともと、
 このフライのボディは「シルバーモンキー」のファー、
 希少なサルの毛がオリジナル素材。

 アフリカのエテこの毛を、
 北海道のリスの毛で代用したら質感も雰囲気もばつぐんムチャクチャはまって悦に入る。

 ファーをブワ~ッとハックル状に巻き拡げて、
 まるでライオンのたてがみのように、
 勇ましく巻いてみた。
 
 なんちゅうてもナポレオンなんだから。

201025 (5)5

 しかしそもそも、
 なんでこのフライがナポレオンと命名されたのか?

 赤ワインを象徴するクラレット色を強調しているところと、
 赤いウールをダビングした独特のタグ、
 そしてなにより、
 パンパン鳩胸ファーボディなどが、
 そんな素朴な疑問の空想をふくらませる。

 クラレット、青、黄色とナチュラルな灰色の組み合わせは、
 タータンチェックとモコモコのウールのセーターの国ならではの発想と配色だなとおもう歴史の一品。

 そして、
 2020年晩秋エゾリス・スキンどっさり販売記念の一品。

 それそれ~~、
 ナポレオンはんが商売繁盛の笹ふって踊ってはるでえ~~~。
 みなさんまだまだご注文メールお待ちしてまっせ~~。

 …………すいません…調子にのりました。

 クイズです。
 ところで、
 こうしてフライの左右両側を掲載しましたが、
 左右でチョイちがうところがあるねんけど…わかる?


 10月26日朝 追記。

 おじゃまるさんへ

 コメント欄にてクイズの解答をいただきました。
 フライ左右のチークにつかったイミテーション・インディアンクロウとホンモノの使い分け、
 大当たりです!
 っていうよりかおじゃまるさん正解よりも正解。

 フライの写真じっくり眺めて観察してくださったこと、
 コメントからものすごく伝わりました。
 感激です。

 おかげで本日、
 幸先すこぶるよく、
 すばらしく良い気分で入院できます。

 本当にありがとうございました。
 
 
リメイク
 前回からのつづきを書きます。 

 もうずいぶん昔の話し。

 水産大学の学生のころ、
 おなじ研究室の同級生に「北関東の養鱒場のせがれ」がいて、

 卒業後かれは実家の養鱒場を引き継いだ。

 育てたマスを食用として出荷するだけでなく、
 釣り堀に卸したり、
 解禁日に近隣河川に成魚放流したりと、
 たいへんな肉体労働。

 イヤでもマス漬けの仕事。

 生まれながらにそんな環境で育ったがゆえに、

 水産大学の在学中、
 ヤツはしばしば「釣りなんかやるやつの気がしれね~」と、
 …おまえ~オレにケンカ売っとんか?…
 というような発言をしていた。
 
 ところが、
 学校を卒業してしばらく経って、
 彼はもはやすでに立派な養鱒の職人であり管理人。
 
 あたしゃ場末のしがなさすぎる職業フライタイヤーとしてまだ駆け出し数年。

 という時代、
 なぜだかとつぜん、
 彼は熱心なフライフィッシャーになった。

 かぎられた休日をフル活用して、
 じぶんでフライを巻いてマスを釣りに行くのをなによりたのしみにしながら、
 日々各種のマスを育てて出荷する仕事に忙殺されるヒトになった。

 そのへんのヤツの心境と嗜好の変化や言動もまた、
 なかなかオリジナルでおもしろいんだけど、
 
 それはまあいいとして、
 とある年の北関東地方の渓流解禁日の夜、
 ヤツから電話。

 「ちょっと聞いてくれよ~アッタマきちゃってさ~」
 かなりオカンムリのご様子。

 なんでも、
 解禁日早朝、
 トラックにヤマメを満載して成魚放流業務にむかったそう。
 で、
 トラックに積んだ活魚水槽に連結したホースから、
 いつものようにヤマメをダダーッと一気に川に撒いて放流した。
 だが、
 その川の放流地点で早朝未明から待機して、
 放流のときを待っていた輩な釣り人どもの態度が目に余る悪行だったそうだ。

 「なにされたんだよ?」

 「あいつら、釣りもしね~でホースに直接タモ網突っ込んで我先にサカナ盗んでやがんの」

 「マジかよ。アッタマくるなそれ」

 「だからさあ、おもわず怒鳴ってやったんだよ、

 テメーら!遊びでやってんだろ!だったらちゃんとやれよ!って」

 「まったくだよな~」

 「でもさあ、そういうふうに考えないヤツもたくさんいるんだぜ」

 はたして、
 盗んだサカナを釣果として誇って釣りは楽しいだろうか?

 はたして、
 盗んだり違法に取り引きしたり、
 そんなうしろめたい羽根をつかってキレイなフライを巻いて自己顕示欲を満たして、
 それで満足できるだろうか?
 
 そんなん、
 生涯の趣味としてつづけられるの?

 きわめて単純で素朴でヒトとして根源的な疑問。

 好きなことして遊ぶのに、
 どこかに陰りがあると、
 その一点の曇りだけで台無しじゃん?いろいろと。

 正義感や倫理観よりもまず先に、
 じぶんが大切におもっている趣味をめいっぱい楽しんで、
 最大限の快楽を得たいのに、
 楽しみつくせないのって…じぶんにとってすごく損だ。
 
 200914 (1)1
 
 レッド・サンディ サイズ4/0

 7年~8年くらいまえに巻いたやつ。

 当ブログでも拙著「ハッピータイヤーズ」でも、
 一昨年につくったカレンダーでも取りあげた憶えのある、
 個人的に想い入れ度数高めのイッポン。

 なぜなら、
 このフライにつかった素材の核になっているインディアンクロウの羽根購入の記念として巻いたモノだから。
 つまり、
 この羽根が我が手元に来てくれるまでの、
 紆余曲折の物語や、
 この羽根が私を選んでくれたことへの感謝や縁や運にまつわる、
 いろんな思い出もまた、
 このフライにギュッと封印しているというわけ。

200914 (3)3

 でありながら、
 なぜだかいまごろ、
 そんなフライをかんぜんに分解~解体しちゃったよ。

 このように、
 ヘッド付近に切れ込みを入れて、
 スレッドをひっぱっていくと、
 巻き止めた素材がパラパラパラ~ッとキレイなままほどけていく。

 そして、

200914 (4)4

 ガットアイと下巻きを残して裸にしたフックに、
 ファウンデーションをふたたび施しておいて、

200914 (2)2

 いったんほどいた素材をまたもや、
 そっくりそのままフックに縛り直して……、

 現在たったいまの、
 私のレッド・サンディ。

 おもうままたのしみつつ、
 インディアンクロウにどっぷり浸りきって、
 ありったけゴージャスに再構築してみました。

 大満足。




 
大英自然博物館珍鳥標本盗難事件…なぜ美しい羽は狙われたのか。 化学同人社刊。
200827 (10)10

 邦題のつけかたが秀逸だなとおもった。
 丁寧な装丁も凝っていてうつくしい。
 

 2009年、
 とあるサーモンフライ・タイヤーが大英自然史博物館所蔵の貴重な鳥標本を多数盗み出した。
 そして、
 あろうことかオークション・サイトや掲示板で、
 その羽根を販売までしていたことが発覚。
 犯人は逮捕された。
 そんな犯罪に至った経緯は、
 そしてその判決結果は……、
 またその後の顛末は……、

 この本は、
 そんな盗難事件をめぐるドキュメンタリーだ。

 以下、
 本のトビラのところに書いてある解説文より引用。

 「2009年6月。ロスチャイルド家がヴィクトリア時代に創設した博物館から、
 約300羽の鳥の標本が消えた。
 世にも美しい鳥がいきついた先は、
 希少な羽で毛針を制作する愛好家たちの世界だった!」

 「羽毛をとりまく科学史と文化史、
 毛針愛好家のモラルのなさと違法取引、絶滅危惧種の保護問題、
 そして未来へのタイムマシンとなりうる標本と、
 それを収集、保存する博物館の存在意義」

 「スピーディに展開する犯罪ルポルタージュ」

 とある。

 …毛針愛好家のモラルのなさと違法取引…

 表紙に添えられた各界著名人の煽り文章のひとつには、
 …毛針作りにとりつかれた者たちが巣くう地下世界…
 とまで、
 ずいぶんぶっそうな書かれよう。

 表紙冒頭ののっけから、
 まるでフライタイイング愛好家の大半は羽根にとりつかれた悪の秘密結社かのような言われ方。
 だが、
 本を読めば、
 それは著者の視点とは少しズレがあることがわかる。

 が、
 端的にそのような表現をされても反論に力を込められない盗難事件の真相究明が、
 この本の題材になっている。

 先々月、
 お客さんに教えていただいて、
 すぐに読んだ。

 一昨年、
 この本が「Feather Thief 羽根泥棒」という原題でアメリカで出版されたのは知っていた。
 そしてもちろん、
 この本で取り扱われた事件が世間に明るみになった2010年当時、
 おどろきあわてふためいて、
 関連するニュース・サイトやサーモンフライの掲示板サイトなど片っ端から検索した。

 しかし当時は、
 犯人はどこそこの誰で、
 盗まれた標本はどんな鳥がどれだけか、
 など表面的なことしかわからず、
 肝心の経緯や背景はまったくわからずじまいだった。
 なので、
 長いあいだずっと気になっていた。

 良きにつけ悪しきにつけ、
 もっとも読みたかった本。
 翻訳されてうれしい。

 一気読了の勢いで貪り読んだ。

 おもしろかった。

 なんたって、
 じぶんがもっとも関心のある分野での事件を題材にしたノンフィクション。

 おもしろくないわけがない。

 けれど、
 じぶんにとっては、
 これほど重いものもない。

 200827 (8)8

 アークロイド。

 15年ほどまえに巻いたもの。

 このころ、
 イントルーダーとともに「リア」の羽根が紹介されて脚光を浴び注目されはじめた時代だった。

 それもあって、
 ブラック・ダイドの「リア」をボディハックルにハックリングした、
 クラシック・スタイルのアークロイド。

 なんて、
 ひさびさにこのフライを眺めていると、
 「あ~、あのころ、こんなこと考えながらこのフライ巻いたよな~」
 とか、
 このフライを巻いていたとき、
 あんなことやこんなことがあったなあと、
 当時の記憶があれこれ甦る。

 ひと巻き入魂の姿勢で巻いたので、
 コレを巻いたときの心境や思い出もまた色褪せず鮮明。
 スペシャルなフライのひとつというわけだ。

200827 (9)9

 と、
 ちょうどこのフライを巻いていたころ、
 毎日アクセスしていたフライタイイング・フォーラムがあった。
 そのフォーラムのサーモンフライ掲示板はとくに熱心に見ていた。

 おりしも、
 じぶんにとってはサーモンフライ・タイイングの深みに、
 これからどんどんハマろうとしていたころ。
 いまにしておもえば一大過渡期。

 当時この掲示板には、
 感嘆そして敬服するような技術とセンスのタイヤーさんが常連として何人かおられて、
 おおいに刺激を受け、
 また参考にもさせてもらった。
 そんな方々が新作や力作フライ写真を投稿してシェアしてくれるのが楽しみで仕方がなかった。

 この本には、
 その当時このフォーラムで活躍されていた方々が何人も登場する。
 そんな皆さんの当時の胸中をどんなにかお察ししたい。

 そして、
 この盗難事件の発覚当時、
 こまかい断片でしか知り得なかった事件の経緯やその後の詳細を、
 この本によっていま、
 仔細知ることにもなった。
 それはじぶんにとって、
 点と点が一本の線でつながった……といった感慨。
 
 そんなわけで、
 じぶんは蚊帳の外でありながら、
 もうどっぷり当事者のような気分で犯罪ドキュメンタリーを読むという、
 はじめての読書体験にもなった。

 臨場感もリアリティも生々しさがハンパない。
 
200827 (12)12

 ゴールドフィンチ。

 1850年、
 ペンネーム「エフェメラ」ことエドワード・フィッツギボンのレシピで。

 このフライは、
 この本を読んだあと、
 とめどない逡巡と葛藤の渦中にあって、

 あるいみどこか開き直ったような面持ちで、
 読後さいしょに巻いたクラシック・サーモンフライ。

 じぶんにとって、
 その意味はけしてちいさくはない。
 ささやかな挑戦でもあり、
 意思表示でもあるからだ。

 そして、
 このフライも何年かしてしみじみ眺めたとき、
 (あ~、このフライ巻いたとき、こんなことがあって、あんなこと考えてたなあ……)
 なんて、
 この数日間の答えなき独り禅問答を思い出すことになるんだろうな。

 印象に残るイッポンになりそう。
 
 この本を読んで以降ずっと、
 いつも、
 なにをしていても、
 どこか冷や水を浴びているような心境で、
 ともすればフタをして見ないふりをしておきたかった自己矛盾と向き合い、
 葛藤?
 問答?
 しながら迷走する日々がつづいている。

 なんだけど、
 読むことができて本当によかったとおもっています。

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