BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
201705<<123456789101112131415161718192021222324252627282930>>201707
TRINITY Red, Green & Gold
 もうだいぶまえの話、
 細部の記憶はもはや曖昧なんだけど、
 すごく心に残っている。

 とあるラジオ番組に谷村新司さんがゲスト出演していて、
 谷村さんの昔からの大ファンだというリスナーの方からの手紙がとりあげられた。
 いわく、
 「私は谷村新司さんが創られた、あの歌がとても好きです。
 若いころからその歌にどれほど励まされ、また勇気づけられてきたことでしょうか。
 私はこの歌の歌詞の内容を、私なりにこのように解釈して、
 こんな物語を夢想しながら、それをじぶんの人生に重ね合わせつつ、
 いまも変わらず愛聴いたしております。
 そこで谷村さんにご質問です。
 私のこの歌の解釈は正しいですか?それとも間違っていますか?」

 というような質問だったはず。

 そして谷村新司さんいわく、

 「まず素晴らしいお便りをありがとうございます。
 あの歌の歌詞には、もちろん私自身の当時の体験とその想いが投影されています。
 しかしそれは、リスナーさんが語ってくださった解釈とはまったくちがいます。
 でも、だからといって、それが誤りであるかというと、そうではないのです。
 良い歌というものは、多くの方々の耳に触れたとき、
 それぞれの方が、各自それぞれの想いや感性でその歌に共感し、
 それぞれの人生や生き方を重ね合わせることで、
 その歌は作者の手を離れて独り歩きしていくものだとおもいます。
 なので、作者がその歌の歌詞を書いたときの想いや背景と異なっていても、それはそれでまったくかまわないのです。
 むしろ、だからこそ尊いのです。
 つまり、どの解釈が正しいとか間違いとか、そういうことではなく、
 いうなれば音楽というものは、
 その曲に感動したそれぞれの方々がそれぞれにイメージした「美しい誤解」によってこそ、
 輝きを増すのではないでしょうか」

 というようなお話を、
 あのジェントルなドスケベエ・ヴォイスで訥々と語られて……、

 中学生のころ、
 谷村新司さんのエッチなラジオ深夜放送を夢中で聴きながら、
 「性の芽生え」を迎えた世代としては、
 格別の感ありだった。



 
 そして嗚呼グレゴリー・アイザックス、
 このアルバムをはじめて聴いたのはじぶんが浪人生だったころだ。
 もはや、
 30年以上もの月日が流れてしまった。

 にもかかわらず、
 いまだその輝きは失せず、
 というよりも、
 そのまばゆい光は今だからこそますます美しいものとして私の琴線にとどく。

 ホンマ、
 齢50を超えて世の中ナナメにしか見れなくなったオッサンの純情を、
 まるで恋する乙女のように胸焦がしてくれちゃって、
 どないしてくれるねんゆう話しやで。

 それくらい、
 前回とりあげたユーチューブの81年BBCラジオ・ライブレコーディングは衝撃的だった。
 はたしてあの録音はレコードとして発売されていたのだろうか?
 情報を切に望む。
170408(1)1.jpg
 アレ若さま、キンケイの頭髪にちいさな虫がたかっておりまする……




170408(2)2.jpg
 案ずることはない、羽化寸前のオオマダラカゲロウじゃ……

 黒ずんでパンパンに膨らんだウイングケースは、
 キンケイの首羽根をハサミでV字に切って巻き止めたのじゃ。

 脚が一本ちぎれちゃったのはご愛敬じゃ。


170408(3)3.jpg
 「その時」がいつやってくるかはわからない。
 どのようなキッカケでそうなるかもわからない。
 めったにあることではない。

 天空に舞い上がっていくような創作意欲に突き動かされて、
 まるで自分ではないなにかが自分に憑依したかのような集中力で、
 他者の評価や、
 自己顕示欲や、
 見栄やハッタリの俗とはほど遠い高みにのぼって、
 ひたすら自己満足のためだけに、
 そのとき本当に自分が創作したいものに没頭できるあの時間の濃密な至福には、
 「まさにこのときのために生きている」と仰々しく言いたい醍醐味がある。

 そんな蜜の時間に浸りながら巻いた私的フリースタイルな3本。

 突き詰めれば突き詰めるほどに、
 フルドレス・サーモンフライというものはゴールデン・フェザント(キンケイ)のトッピングを映えて魅せるための土台ではないか、
 という僭越かつ生意気な持論をカタチにして表現したかった3本。
 
 フライそれぞれに巻いた年代が異なっており、
 くしくも自分のサーモンフライ・タイイングの足跡の一端をたどる3本にもなった。

170408(4)4.jpg
 エメラルド・パイレーツ
 函館に越してきてすぐに巻いたものだから、
 じつに9年前のフライ。

 鮮やかな緑色に輝くヒマラヤ・モナル・フェザントのネック・フェザーを整列させたボディのうえに、
 おなじくモナル・フェザントのクレスト・フェザーを左右合計3ペア、
 ブワッとひろげたトッピングに並べた。

170408(5)5.jpg
 さまざまな色が細かく重なったシルクボディは、
 はるかヒマラヤ信仰の象徴でもある「祈りの布」にインスパイヤされた。

 ちなみにこのシルクボディ製法は、
 もう10年以上もまえに思いついて、
 当時喜び勇んで巻き倒していたスタイル。

 ここ数年はおもうところもあって封印していたけれど、
 つい最近になってコレをまたさらに進化前進させたのをおもいついて、
 キャッキャとよろこんで調子に乗っている。

170408(6)6.jpg
 ファイヤー・バード

 一昨年のじぶんのフルドレス・タイイングを象徴する一本。

 血のような真紅に染められたキンケイのクレスト・フェザーを計8本、
 ウイングとしてひろげた。

170408(7)7.jpg
 で、
 そこに深い紫色に輝くリッフル・バードの首羽根を一輪。

 眺めていると、
 まるでブラックホールのようにこの紫色に吸いこまれていくよう。
 パプア・ニューギニアの至宝の羽根。

170408(8)8.jpg
 ゴールデン・パーソン・ヴァリエイション
 昨年のちょうどいまごろに巻いたもの。

 ぶっとい金の延べ棒のうえにキンケイの羽根を飾ったら、
 きっとすごく愉しいだろうナきれいだろうナ、
 という単純明快な思いつきとそれを具現化していく作業の時間は、
 スレッスレのオッサンを無垢の子供時代にタイムスリップさせてくれたのでございました。

170408(9)9.jpg

 と、
 そんな自分にとってこそスペシャルなフライたちをとっておきの額におさめて、
 昨年の忍野の美術館でのイベントにて展示させていただいたのだった。
 で、
 こんどはそれを来たる新居お引っ越しの記念に、
 我が家の一番良い場所に飾って毎日眺めようとおもっていたわけです。

 仕事柄、
 じぶんが巻いたフライはどんなものでも、
 もし購入してくださる方がおられれば、
 もうなんでもかんでも喜んで!
 という態勢で待ち構えている。
 けれど、
 これだけは自分の手元に置いておこうと、
 なにせ自分が世界で一番好きな羽根のひとつを題材にした、
 あるいみ自分の歴史でもあるわけだから。
 
 そのようにかんがえておったわけですが……、
 「これは販売しませんから」などと偉そうに公言もしておったわけですが、

 にもかかわらず、

 先日、
 忍野でのイベントでこのフライたちを見てくださった方がご連絡をくださって、
 とても気に入ったので購入を検討しておりますがどうでしょうか?との旨、

 「ありがとうございます。ぜひよろしくおねがいします!!」
 もうねえ、
 即答です。

 ひたすら自己満足で、
 他者の目などなにもかんがえず、
 じぶんの技量と想いのたけを精一杯ぶつけた、
 あまりにも個人的なフライたちを、
 その方の感性で解釈して気に入っていただいて、
 手元に置きたいとおもっていただけるなんて……、

 その奇跡にもおもえる光栄と、
 はてしない喜びのまえでは、
 じぶんのために巻いたじぶんが愉しむためのどうのこうの…なんていうちゃっちい感慨など、
 一瞬にして霧散してしまいました。

 そんなわけで、
 自分の感性を愉しんでくださって、
 それを愛でていただける方がいてくださるという、
 えもいわれぬシアワセに浸っている今日この頃です。

 昨年から事情があって気ぜわしく、
 時間的にも気分的にも、
 なかなか釣り竿片手に水辺にも立てず、
 ともすれば腐りきってしまいそうな沈殿した気分を持て余す日々。

 あともうちょっとだけ、
 このような状態がつづくかとおもわれますが、
 これで耐えられそうです乗り越えられそうです。

 天下一の果報者。

 しつこいようですが、
 本当にありがとうございました。
 
 
アーガス・セレナーデ
170322(8).jpg
 レオン雄のコンプリートウイングのセカンダリークイルの根元に生えている、
 ウイングカバー部分を水に濡らして半裂きにしてセパレーター処理したものをボディハックルに巻いた小型ディーウイング。

 つかったフックはTMC202SP の6番。

 バリッというかブルンッというか、
 ハリとコシのある適度な長さのファイバーで、
 タイガーヘロンもかくやの鮮明な霜降りマダラ模様。

 なんちゅうか、
 一歩先行くモダン・ハックル的未来感?


170322(6).jpg
 そしてジュラシックな妖鳥アーガス・フェザントのセカンダリークイル。
 

170322(7).jpg
 かつて、
 私の家にはアーガス丸ごと一羽分のセカンダリークイルがありました。
 というか、
 一羽丸ごとおりました。
 それはそれは壮観だった。
 圧倒的でした。
 「こんなん一生かかっても使い切れへんなあ」
 とつくづくおもっていた。
 
 が、
 お世話になった友人にセカンダリーを一組進呈したほかは門外不出。
 後生大事にがっつり抱えておりました。

 そしてあれからもう早10年あまりの時が流れ……、

170322(1)1.jpg

 

170322(2)2.jpg




170322(3)3.jpg




170322(4)4.jpg




170322(5)5.jpg

 バッツンバッツンてかんじでザクザク切っていると、
 やっぱなくなるんですねアーガスといえども。

 気がついてみれば確実に、
 終わりが見えてきた在庫量。

 が、
 自分のフライタイイングにおいて、
 この羽根との出会いがなければ……、
 くらいに感謝したい勢いで後悔はまったくないんですよ。

 でもヤッパこれからはチョビット計画的にネ。


  
JOCK SCOTT に捧げる愛のポエム
161216(1)1.jpg
 トラディショナル・ジョックスコット#7/0

 いまさらながらハタと気がついたのですが、
 意識していたわけでも意図的でもなく、
 フライのジャンル問わず当ブログにおいてブッチギリ最多登場しているのは、
 期せずしてこのジョックスコットだったというのが、
 我ながらなんとも感慨深いです。

 おもえば、
 フルドレス・サーモンフライのタイイングに本腰入れて取り組みだしたのが、
 このブログをはじめたのと同時期。

 んで、
 その当初からなんだかんだ毎年ジョックスコット巻いては掲載しているはず。
 ということは、
 それらのジョックスコットを年代ごとに並べれば、
 それはそのまんま「ミツグのフルドレス修練日記」になるわけで……。

161216(2)2.jpg

 ただキレイに巻きたい…と渇望してひた走っていた道からは、
 いつのころからか知らず知らずおおきくそれて、
 気分のおもむくままにたくさんの曲がり角をまがってダラダラと寄り道をこそ愉しみながら、
 そして得たひとつのゆるぎない結論。

 「なんであれ自分らしく巻きたい」

 なんだかんだゆうて、
 興味と目的のすべてはここにこそ集約されるわけで……。

 ということは、
 終着点もしくは着地点あるいはゴールなど、
 いわゆる到達の域というのはもはや意味がなくなってしまったわけで……。

 父さん、
 ミツグはいまだ迷宮です。

 From 羽根の国から

161216(3)3.jpg
 みんな見て見て~、
 今回のジョックスコットは、
 ウイング素材もスロートも、
 ぜ~んぶヘッドぎりぎりのとこに一点集中でピンスポットのまったく同じ位置に縛りつけてみた。
 スレッド4~5回転数ミリ幅が土俵ですキャハ。

 そして、
 幾多の素材を巻き止めたヘッドのところは、
 なにか金物のキャップをパカッと嵌めたみたいな、
 円盤型のコーティングヘッド。

 このように巻くことで、
 スロートハックルが一糸乱れず、
 フライの喉元ギリギリからスパーンと鋭角的に整然と並んで生えている、
 というのが今回のジョックスコットに掲げたテーマのひとつ。

 で、
 そんなギニア・フォウルをつかったスロートハックルは、
 通常みんながつかっているギニアの背中のところの霜降りの羽根じゃなくて、
 あえて翼の下にはえているシンプルな白黒スポット模様の羽根をつかう、
 というへそ曲がりっぷりだ。

 とうそぶきつつ、
 とくに肩肘張ってこだわっているわけでもなく、
 この部分の羽根をハックリングしたときの鮮明なモノトーン・ゼブラ模様チョ~いかしてんじゃん、
 というのが、
 ボディとスロートハックルの造作がものごっつ「フライのかなめ」に映るワタシの今の気分。

161216(4)4.jpg
 本来、
 ボディ・ヴェイリング素材のオリジナル指定は「トウキャン」の胸の羽根。
 
 これはまえにもきっと書いてるとおもうけど、
 個人的にこのパーツにはゴールデンフェザントの頭のうなじのところに数本生えている、
 短くて幅の広いクレストフェザー……その形状を指してスプーンフェザーと呼ばれている小羽根をメチャクチャ気に入っている。

 この羽根はもともとトウキャンの代用品としてつかわれていた素材。
 なんだけど、
 ぶっちゃけたこというけど、
 トウキャンの消え入るようなバター色をしたフワフワのファイバーをつかったボディ・ヴェイリング、
 まるでハワイアンの腰蓑みたいな健康的お色気もそりゃ~たまらん。

 ねんけど、
 スプーンフェザーの金黄色にギラッと反射しながらゆるやかな曲線をえがきつつ、
 スッケスケに透けてるピッチピチのタイトスカートばりのシャープなボディコン的妖艶さにワシたまらんくらいグッとするねん。

 この素材に関しては、
 もはやトウキャンの代用品などとはまったくおもっておりません。
 最高のエキゾチック・フェザー・マテリアルのひとつ。

 あと、
 これも私見なんだけど、
 この素材をボディ・ヴェイリングにつかったジョックスコットを額装して照明をあてると、
 この部分がトッピングやテイルと絶妙に調和しながら光を反射して、
 まるでフライが後光に包まれているかのようにより映えて見えるところも素晴らしいとおもう。

 と、
 そんな魅惑の小羽根をやねえ、
 タグの末端からギュ~ンと急テーパーをかけた存在感ムンムンの特製極太つるっつるシルク艶ボディのうえに、
 フワ~ッとかぶせるわけですよ……いや~んもう自画自賛。

161216(5)5.jpg
 とかなんとかマニアック・トーク全開ですが、

 そんなメチャメチャ好きです~とか、
 マイ・モ~スト・フェイヴァリットですう~とか、
 そんなふうには全然おもってもないっていうか、
 あくまでもほかのトラディショナル・クラシックと並んでどれもこれも大好きです、
 という位置づけのジョックスコットなんですけれど、

 これまで、
 こんなにたくさん掲載しているのに、
 毎回毎回飽きもせず、
 これでもかといわんばかりにこのフライに関して妙に饒舌なワ・タ・シ。

 これって、
 もしかしてホンモノの恋?……なんですか?
 
 この冬もまだまだジョックスコット巻くで~あ~だこ~だと自己満足炸裂の能書きつけながら。
 また見てネ。

Over the Rainbow
161129(1)1.jpg
 考え込みすぎて脳が煮えてしまうんだったら、
 考えるのやめたらいいじゃん、
 そうすればあとはやりぬくだけじゃん?

 という「気づき」は、
 自分にとってちょっとした革命だったかもしれない。


161129(2)2.jpg
 「無我」をこそ意識するという自己矛盾に蓋をして、

161129(3)3.jpg
 脳内にひろがる極彩絵図に導かれるように、
 曲線の美学に酔いしれたい。


161129(4)4.jpg

 161129(5)5.jpg
 無機質な金属の棒のうえに縛りつけた種種雑多な羽根たちは、
 まるでそこから生えているかのような一体感で、
 それぞれに艶美な曲線を描き、
 丸みと厚みを帯びてふくらみ、
 のびのびとひろがって、
 すべて本来あるべき姿で光を受けて輝いている。





161129(6)6.jpg

161129(7)7.jpg
 便宜上、
 フルドレス・サーモンフライのカテゴリーに置くが、
 もはや、
 そのようなジャンル分けは意味をなさず……、

 しかし、
 ここで展開させた手練手管のすべては、
 フルドレス・サーモン・タイイングの世界に没頭することで、
 誰に教わることもなく、
 誰に聞くでもなく、
 独り長い年月をかけてすこしづつ積み上げてきたもの。



161129(9)9.jpg

161129(8)8.jpg
 まるで、
 無垢な幼児がまっさらな未完の感性の衝動に逆らうことなく描いた、
 自由で無邪気で混ざりけのない「お絵描き」のような、
 
 それでいて、
 その舞台裏では、
 無秩序であるがゆえに、
 ほんのわずかな乱れがすべてを台無しにしてしまう、
 そんな「綱渡り」のうえに成り立っているような……、

 目指したいのは「計算されつくした無我と忘我の羽根絵図」



161129(0).jpg
 ぬわ~んちって、

 このカピパラ涅槃像写真は、
 お江戸在住のいくつになってもSっ気ムンムン小悪魔な人妻みよちゃんが、
 「これサイコーじゃね?でもホンモノかな?」
 と、
 インターネットでひろって送ってきたものでえ~す拾い画像。

 はっきりゆうて、
 仮にこの写真が合成であったとしても、
 オラまったくかまわねえだ。

 ちゅ~か、
 わざわざこんな写真を作りたいとおもって、
 コツコツ時間をかけて合成した方がいたとしたら、
 その方のセンスと「無駄ごと」にかけるお人柄を想って、
 ますますこの写真が愛おしいやんけ。

 そして思い出した、
 とある事件のことを話そうじゃないか聞いとくれ。

 むかしむかし、
 オレ様が30歳くらいのころじゃった。
 
 舞台はスキー場や温泉観光地としても有名な、
 飛騨の高原川の支流の蒲田川上流にて。
 現在はどうなってるのかしらんけど、
 その当時は、
 ちょうど蒲田川の禁漁区間の橋のたもとのところに、
 無料の混浴露天風呂があった。

 あれは、
 まだ解禁間もない早春のころ、
 雪がちらついておった。
 いや、
 というよりもちょっとしたプチ吹雪。

 早々に釣りをあきらめて、
 我々は混浴露天風呂に飛び込んだのじゃった。

 で、
 天才のオレ様は、
 湯船のなかで四つん這いになり、
 背中だけお湯からだして、
 ポカ~ンと水面に浮かんでいるような姿勢でジ~ッとしておった。

 こうすると、
 お腹は温泉でぬっくぬく、
 背中と頭にだけ冷たい雪がヒタヒタふりそそぎ、
 たいへん気持ちがエエ。

 そうやって、
 ジッとたたずんで温泉に浸っておると、
 いきなりとつぜん、
 温泉につづく階段のところでガヤガヤッと年配の女性らしき話し声がした。
 かとおもうと、
 いきおいよく、
 温泉の開き戸がバーンと開いて、
 関西方面から来たらしいオバハン五人グループが、
 ドヤドヤッと一気になだれ込んできた。
 どいつもこいつも全身ヒョウ柄がバッチリ似合いそうな、
 厚かましさでは誰にも負けまへんと顔に書いてあるような、
 バリ関西弁のいかついオバハンたちじゃった。

 そして、
 その開き戸のちかくで、
 スッポンポンフルチン四つん這いでジ~ッとしていたオレ様が、
 こともあろうにオバハン軍団の足元で見下ろされるようなカッコウになってしまったのじゃ。

 ものすごくしかたがないので、 
 そのままの姿勢で、
 オバハンたちを見上げながら、
 コクンと会釈すると……、

 オレ様のあられもない羞恥をエンリョもなくジ~ッとガン見凝視したババ~(あえてそう呼ばせてくれ)のひとりが、
 おもむろにこう言ったのじゃった。

 「あら~、カピパラみた~い」

 つぎの瞬間、
 「ほんまや~、カピパラやカピパラや~」
 「おにいちゃんカピパラみたいやんか~」
 「えらいお肌白いカピパラやん、ピチピチやな~」

 真っ白な粉雪がシンシンと宙を舞っている、
 幻想的で静かな蒲田川の谷間に、
 オバハン軍団の嬌声とバカ笑いが絶えることなくカピパラカピパラとこだましたのじゃった。

 おもえばあの当時、
 朝のニュース番組なんかで「温泉に浸かって暖をとる冬のカピパラ」が放映されて、
 ちょっとした話題になっていた良き時代だった。

 そしてオバハン軍団もドボンと湯船に飛び込んだ。

 ウレシハズカシ、
 ではなく、
 うれしくはないし、
 あまりはずかしくもなかった混浴温泉の思い出じゃ。


  
フラミンゴの迷宮
161121(1)1.jpg
 フラミンゴの羽根は、
 背中や胸や翼の付け根、
 どの部位をとってもそれぞれ純白のうえに紅色と桜色がほんのり交差して、
 そこはかとなく奥ゆかしくもめでたきかな「和」のテイスト。
 
 品がありますよ。

 で、
 そんな羽根を手にとって眺めているぶんには、
 なんともいえず癒されながら創作心が奥底からジワ~ッとうずいてくるような……、

 そんなわけで、
 羽根ゴコロときめきつつ、
 それじゃあこの羽根をひとひら釣り針に縛りつけましょうと、
 ステキな紅白の毛鉤に仕立てましょうと、
 いそいそ作業にうつると……、

 とたんに豹変するんですわこの羽根。

 フラミンゴの紅白模様って、
 その色調といい質感といいあまりにも独特すぎて、
 ほかの鳥の羽根との親和性や協調性が皆無。
 どのような羽根とあわせようとも……なんかちがう、
 ぜんぜん調和して映らない。
 
 ほかの羽根と並べたり重ねたりすると、
 どうしてもフラミンゴの羽根だけ浮いて見える。

 脳内イメージにしたがって、
 アレヤコレヤとっかえひっかえするんだけど、
 なんちゅうかこうどれもピンとこない。

 フライを巻く机の上はアレコレの秘蔵の羽根でたちまちとっ散らかるんだけど、
 どれもこれもボツぜんぶボツ。
 たちまちグッツグツ煮えたぎるんですわ~タイイング脳が……。

 そしてしかも、
 フラミンゴの羽根のイケズっぷりはそのストークにこそあり。
 通常、
 鳥の羽根のストークは例外なく釣り竿のように先細り構造で、
 かつ内側に湾曲している。

 もちろんフラミンゴの羽根も例外ではないのだが、
 コヤツのストークは根元付近はえらい極太でカチカチのくせに、
 先端に向かって中間付近から急にテーパーがかかって先っちょだけ柳の木のようにヘニャヘニャ。
 と、
 そのような構造で、
 かつ放物線のように豪快に湾曲している。

 これがどういうことかというと、
 ピタッと左右ペアで羽根をあわせてフックに縛りつけても、
 ちょっとズレるとズルッとすべってグネッとねじれまくり。

 可憐で清楚な見た目とは裏腹に、
 なんと底意地の悪いイジワルっぷり。

 過去、
 この羽根を主役に据えたフライがほぼ見当たらない、
 というのもさもありなん、

 というところなんですけど、

 このフライの製作ご依頼をいただいたとき、
 いろいろ御希望のイメージを拝聴し、
 また、
 お世話になった大切な方へのおめでたいお祝いの御贈答にするために、
 なんと光栄にもワタシのフライを選んでくださった格別の想いを伺うにつけ、

 今回はフラミンゴでいこう、
 コレしかない、
 と勝手におもってしまったのでした。

161121(2)2.jpg
 テイルはまず真っ赤なクレストをドーンと据えて、
 そのうえにヒヤシンス・マコウの尾羽根とヴァルチェリンギニアのラベンダー・クイル、
 そしてアマゾン・パロットのクイルをそれぞれツノ状にのせてみた。

 ボディは、
 黄色と緑のシルクをピーコック・ハールで仕切り、
 そこにゴールドティンセルを一回転させながら、
 ボディハックルとしてイエロー・マコウとアマゾン・パロットを交互に一回転ハックリング。
 そしてこのハックルをスレッドワークですべて急角度に倒しつつ、
 葉巻型の重量感のあるボディに呼応させて、
 ボディ全体のテーパーを強調させた。

 スロートハックルはフラミンゴの超ロングファイバーな肩羽根の片側を削いで、
 それをハックル・セパレーターでほぐしてバラバラにしてハックリング。
 フックのポイントのぎりぎりの長さにセッティング。

 ここまではもうノリノリ。
 もんだいはここから。

 さいしょは、
 フラミンゴの肩羽根をつかったホールフェザーウイングのうえに覆いかぶせるようにして、
 ウイング上部全面にぶあついマリッドウイングをおおきくカーブさせて屋根のように沿わせてみた。

 けれど、
 なんかイメージとちがう。
 厚化粧すぎてフラミンゴの清楚な印象が薄れてしまう。

 つぎに、
 そのマリッドウイングを五本ほどのセグメントにわけて、
 それをウイングの横に放射状に散りばめてみた。

 おっ、
 なんだかとってもイイ感じ?
 深夜、
 悦に入って「明日はいよいよ最終仕上げだ」とウキウキ床につき、
 そして翌朝、
 (……これでいいの?ホントにいいの?……)
 自らに問いかけてみれば、

 (なんかコレ、苦労したわりにフラミンゴの羽根の存在感が霞んで見えるんやけど)
 という意見が脳内会議の多数決で決まり、

 やっぱ最初からやりなおし。

 最終的に、
 2本の太めのマリッドウイングをグイッと曲げてウイングに巻き止め、
 まるでウイングが風になびいているような、
 動きというか生命感を連想させる造りでいってみようじゃないかと、
 このフォルムに落ち着いたのだった。

 で、
 最終的に「日の丸模様」のフラミンゴのウイングカバーをサイドに据えて、
 「幸せの青い鳥」ことフェアリー・ピッタの肩羽根をチョコンとつけて、
 チークはインディアンクロウで〆ようと目論んでいたけれど……、
 フラミンゴのピンクにインディアンクロウの紅色って、
 いかにも相性良さそうなんだけど……、
 だいぶまえに同じこと散々試して失敗したのを思い出し苦笑。

 またもや紅い小さな羽根をアレやらコレやらあわせてみてはウ~ンと唸り、
 ようやくこれいいかも、
 とおもえたのがハイブリット・マコウの胸の紅い羽根のうえに、
 パラダイス・タナガーのグラスちっくな血の色のような半透明の羽根をのせて、
 光に反射するように細工した必殺裏技小羽根重ね。

161121(3)3.jpg

 そして完成。
 でっかいフラミンゴの羽根をスックと立てた#8/0特大サイズ。

 いかにも苦心惨澹しまして…みたいにエラそうに書いてるけど、
 苦労したというよりも、
 完成に至るまでの寄り道だらけのアプローチと工程を、
 失敗することで得られたいろんな発見をこそ糧にしながら、
 愉しみつつ堪能しまくりました、
 というところでしょうか。

 釣りも額装フライの製作も、
 愉しみや喜びはその過程にこそあり。
 求めるところはつくづく一緒ですね。

copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.