BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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郷愁のRenegade浪漫
 20代後半のバブルのころに東京で働いていたとき、
 仕事場の近所のアパレル・ショップのオーナーさんとつるんで、
 よく東北や北関東の渓流に釣りに行っていた。

 その方は、
 良くも悪くも「生まれながらのせっかちさん」で、
 一緒に谷に下りて準備して「さあ釣りはじめましょう」となるやいなや、
 ヨーイドン!と号令がかかったかのように、
 渓流を釣りあがるというよりも駆けあがっていった。
 
 フライを流すというよりも、
 ひとつのポイントをペシペシッと二回くらい叩くと、
 また次のポイント目指してダダダーッと小走りに駆けていった。
 まるでなにかに追われているかのようだった。

 で、
 そんなだから、
 あとからゆっくり釣りのぼってもサカナ残ってんだよね。
 むしろダダダーッといってくれるおかげで、
 その区間は他の人にアタマはねて先行されたりとかしないので、
 コッチは落ち着いてゆっくり釣れるの。

 で、
 あるときその方がなぜかコッソリした口調でこう言っていた。

 「ビゼンちゃん、あのね、ボク、はずかしいんだけどフライはレネゲイドしかつかわないの」

 「え?どして?」

 「だってレネゲイドって浮いてても沈んじゃっても、どっちでもよく釣れるじゃん。
 だからいちいちフロータント塗らなくていいしさ、一回ティペットに結んだらず~っとそれ一本でいけるじゃん」

 このお方は、
 フライの交換はおろか、
 フロータントを塗る手間ヒマさえも惜しんでおったのかと……。

 おもえば、
 その方は仕事も食事も会話もなにもかも、
 「いったいなにをそんなに急かされているの?」
 と問いたいほどにいつも小走りでテキパキしていた。

 なににつけ牛歩の歩みなナメクジ野郎の自分とはまさに対照的。

 そのくせ、
 一緒にいるといつもたのしかった。

 いまも元気でセカセカ走り回ってはるやろか?

 そんなわけで、
 レネゲイドとくれば反射的にその方のことを想う。
 
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 レネゲイド tied on TMC102Y#9

 数ある定番スタンダード・パターンや有名クラシック・パターンのなかで、
 個人的にレネゲイドほどミステリアスなフライはない。

 なんてったって、
 どんなに調べても原作者の名前や詳細がわからない。
 なのでとうぜん、
 その出身地や生まれた背景なども皆目わからない。

 70年代アメリカ中西部を中心に活躍された職業タイヤーのテリー・ヘリクソンによれば、
 「ロッキーマウンテン・エリア」から広がっていったパターンとのことだが、
 それも真偽のほどは定かではない。

 にもかかわらず、
 浮かせても沈めてもイケる万能型アトラクター・フライとして、
 現在でも一部では熱烈な愛好者がいる。
 しかも、
 ピーコック・ボディから容易に連想できるとおり、
 ビートル系テレストリアルとしてだけではなく、
 アメリカ西部などではユスリカが集団もしくは何匹かかたまっている状態を表現したクラスター・パターンとして、
 そのようなハッチ・マッチ・パターンが雑誌や本などで取り沙汰されるずっと以前から、
 知る人ぞ知る必殺クラスター・パターンだったそうな。

 そういえば30数年前の駆け出し時代、
 「レネゲイドは蟻が二匹向かい合わせにくっついて抱き合いながら流れている状態のフライなんだよ」と教えられて、
 なるほどー!といたく納得して感動した思い出がある。

 またさらに!
 NZでは水面膜の下にぶらさがるようにして、
 水面付近を移動しているスネイル(小型の巻貝)のイミテーションとしても紹介されていた。

 そしてまたさらに、
 アメリカ西部の激流の深瀬を釣るためにティペットに重いオモリをかませた、
 超ヘビーウエイト・ニンフをつかったアウトリガー・ニンフィングの伝道者チャック・ファザギルがこよなく愛用したニンフ?
 のひとつにもレネゲイドが取りあげられていた。

 まだまださらに!
 やはりアメリカ中西部のスチールヘッド用ウエットフライのクラシック・パターンにもレネゲイドが挙げられていた。

 このように、
 単によくある万能型アトラクター・フライとしてだけではなく、
 個々の解釈や釣り方やつかわれる状況によって、
 ドライとしてもウエットとしても、
 果てはウエイテッド・ニンフとしても、
 さらにはマッチ・ザ・ハッチ・パターンとしても、
 シークレット・ウエポン的必殺としてつかわれてきたレネゲイド。

 そのキー・ポイントは、
 見たまんまピーコック・ハールのボディと、
 そのボディ両端に茶色と白という対照的な色合いのハックルを配したことだろう。

 そしてレネゲイドの色調を見てハタと気がつくのは、
 そのフォルムはまったく異なるけれど、
 配色はあの不朽の名作フライ永遠のスタンダードの王様コーチマンとおなじではないか。

 いうなれば、
 コーチマンにつかわれた純白のダッククイル・ウイングを、
 きっとおそらくフライの耐久性や使い勝手を向上したい目論みで白いハックルに変更してみたけれど、
 それじゃあ肝心の茶色のハックルはどうすんべ?
 ってことになり、
 そうだイイことかんがえた、
 茶色のハックルはフライのオケツのところに巻きゃあいいじゃん……、

 と、
 そのような単純な思いつきだったのかもしれない、
 巻かれた当初はたんにコーチマンのヴァリエイションのひとつだったかもしれないレネゲイド。

 だが、
 「誰もが効くと認めざるを得ないコーチマンの黄金の配色」
 このフライの本質にさえ迫る不滅の色調を、
 このようにダブルハックルにアレンジしたことで、
 そこに写実的ではなく印象的な虫っぽさファジー感も強調されて……そりゃ釣れるって、
 効かないわけがないでしょ。

 ではなぜ、
 こんなにもシーンに浸透したフライの原作者や出自が不明なのか?

 これはもう「フライフイッシング七不思議」の筆頭としかいいようがない。

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 ちょっと話しは脱線して、
 通常の渓流にてドライやウエットとしてレネゲイドをつかうなら、
 個人的にこのように巻いてますヨ、
 というちょっとしたワンポイントを。

 まずレネゲイドのボディ末端にアクセントとして指定されている
 ゴールド・ティンセルのティップについて。

 オリジナルはフラットもしくはオーバルのティンセルをこの部分に数回巻くのが基本なんだけど、
 そうすると、
 このキラメキがものすごく目立つ。
 それがときとしてすごい違和感に映る。

 なので、
 個人的に安物のビニールなペラッペラのフラットティンセルを、
 フックシャンクにグルグル巻くのではなく、
 このようにスレッドで巻き止めるだけにして、
 その余りをボディ末端にほんのすこしだけ覗かせておく。

 こうすると、
 このヒカリモノが不自然にギラギラ輝きすぎるのではなく、
 あくまでも控えめにチラチラッとキラ見え。
 フライ全体に調和して、
 いかにも虫っぽく映る。

 また、
 ほとんど手間がかからないので巻くうえでの作業効率もあがる。

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 切れやすいピーコックハールの補強を施しているところ。

 ワイヤーやティンセルの類をリビングするのではなく、
 ピーコックのボディを巻きとめたら、
 ナノシルク・スレッドなどの切れにくいPE系スレッドを、
 ボビンをギューンと回して撚りをかけて細くして、
 ピーコックのボディのうえにほとんど無造作に一往復させてリビング状にグルグル巻きにしている。

 写真はスレッドをグル巻きしながらボディのうえを往復させたところだけど、
 こうしてみてもハール・ボディに変化は見えず巻いたことが分からないでしょ。
 しかもピーコックのボディが完全に固定されて最強の補強になっている。

 さらにしかもチョー簡単で手間要らず。

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 浮かせても沈めてもつかいたいレネゲイドのハックルには、
 なんてったって硬すぎず柔らかすぎないホワイティング・ヒーバートのヘンネックがぼくのお好み。

 ボディ末端の上部にほんのかすかに覗いている、
 金色のティンセルにもご注目を。
 こんなにちいさくチョロッとチラッと見えているだけで充分。
 このテのフライはモロ見えよりもチラリズムこそがミソ。

 とまあ、
 そんなレネゲイドなんだけど、
 この名前の意味をひもとくと、

 Renegade(=反逆者、裏切り者)
 とくにキリスト教からイスラム教に転向改宗した背教者を指して、
 「この裏切り者め」と蔑んで呼ぶ言葉ならしい。
 
 モノモノしくも血なまぐさくキケンな響き。
 なんかよくわかんないけどヤバくね?というかんじ。

 で、
 ここからはワタクシ十八番でもあります夢想妄想が飛躍するわけですが、
 名も知らぬ原作者が、
 このフライにこのようなネーミングをしたのには、
 はたしてどのような意図があったのだろう?

 きっとおそらくこのフライが世に知られたであろう1900年代前半の時代、
 フライフイッシングは今とは比べ物にならないくらいに紳士であり名門であり厳格であり格式であり様式であった。
 (それが悪いということではまったくないので念のため)

 「あの由緒正しきコーチマンを、このように改悪するなんてけしからん!まかりならん!」
 という声があったにちがいない。
 ないわけがない。
 
 出る杭は打たれまくる、
 というのは世の常ヒトの常、
 というよりもかの時代はもっと陰険かつ辛辣だっただろうことは想像に難くない。
 それが証拠に歴史をひも解けばそのようなストーリーはいくつも見つかる。

 そしてレネゲイドという名前のフライ。

 「おまえらなあ、クッソ偉そうにくわえパイプでボロカスゆうてくれるけど、
 本家コーチマンよりこっちのほうがよっぽど巻き易くて丈夫でよう釣れるやんけ、
 伝統にがんじがらめに縛られる筋合いはないんじゃ~」

 「オレはなあ、フライフイッシングの反逆者なんじゃ~~!!」

 などという一幕があったのかどうかは知りません。

 しかし、
 巻き人不詳なこのフライに、
 この時代にこのような意味の名前が冠されているという、
 そのことにワタシはグッとくるのです。
 アレコレと想像を膨らませずにはいられないのです。
 浪漫ひとしおなのでございます。

 と、
 いまやお馴染みのフライというよりも、
 もはや時代に取り残されて忘れ去られそうになっている一本のフライ、
 しかしその一本のフライをとおして、
 歴史を知り想いを巡らせ想像を膨らませ、
 そこから創造の喜びや醍醐味をひろげてみれば、

 そのフライでたんにサカナを釣りあげるだけではなく、
 そこに至るまでの過程にも、
 たまらない「お楽しみ」があるということに共感していただける方に、
 ぜひともお勧めしたい本を一冊ご紹介です。

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 私の敬愛して止まないフライフイッシング・ヒストリアンでありイノベーターであり、
 そして今なお他の追従を許さない最高のフライフイッシング・ライターであらせられる、
 ダレル・マーティンの集大成的著書「フライフイッシャーのための図解付き辞典」

 辞典といっても、 
 月並みな底の浅い単語用語集ではありません。

 アルファベット順にさまざまな用語や事象を解説しているので、
 便宜上辞典という表記になっているけれど……、

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 しかしてその内容は、
 ダレル・マーティンおじさんの汲めど尽きない知識と経験の泉から、
 おもしろそうな事柄をランダムにしかし抜け目なく、
 歴史や古典から最新事情までを、 
 簡潔かつ面白く愉しく紹介しながら解説してくれている、
 フライフイッシングのトリビアの泉的な蘊蓄満載の肩の凝らないオモシロ本です。

 これがまたさあ、
 なんちゅうかたまらんくらい示唆に富んでいるしオシャレだし英語表現むずかしくないし、
 単純にめちゃくちゃおもしろい。

 2000年に刊行されて以降、
 もうず~っと手元に置いて愉しんでいるけれど、
 じぶんのそのときの経験や興味に応じていまだにこの本から発見と学びが見つかる。
 きっと、
 これからもず~っと色褪せずイロイロと学ばせてくれることでしょう。

 フライフイッシングの「深さ」をやさしく愉しく伝えてくれる本です。

 
Light Cahill Skank
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 イミテーション・ウッドダックっていうの知ってる?
 
 マラードのフランクフェザーをウッドダックのような色に染めたやつが、
 ドサッとバルクでパックされていて、
 お財布にヒジョ~にやさしい価格だけど、
 たいてい釣り具店の片隅でホコリかぶってるようなやつ。

 アレさあ、
 見た目は色もカタチもいかにもウッドダック風で、
 希少な本物をケチケチつかっている貧乏性としては、
 これで心おきなくバンチウイング巻き放題だと喜び勇んで購入してはみたものの、
 
 いざつかってみれば……、

 ご同好の皆様におかれましては、
 このガッカリ気分おおいに共感していただけるかとおもいますが、

 マラードとウッドダックの羽根の作りと質感はこんなにも違うものなのかと痛感させられるというか、
 「まあコレも勉強やな……」
 と、
 羽根でパンパンのバルク・パックはそのまま使われることは二度となくほったらかし。

 と、
 そんなキャッツキル・ドライフライ・マニアな皆さまにウルトラお役立ち情報です。

 イミテーション・ウッドダックにハックル・セパレーター擦り込んでバンチウイング巻いてみて……、

 なんと痛快なことでしょう。

 あのガッカリだったイミテーションが、
 元はマラードのフランクフェザーゆえにファイバー同士がくっついちゃって、
 ウイング材としてにっちもさっちもいかなかった見映えブチャイクが、

 こともあろうにセパレーター処理してウイングに巻くと、
 ま・る・でマンダリン・ウッドダックのフランクフェザーのような!
 こうなんちゅうか、
 絶妙な肉厚感のあるゴマダラのファイバーがパラッパラにフワ~ッとふくらんじゃってもう……、

 ニッッタァ~~てなりますよ。

 しかも!
 ワタクシと同様、
 きっと貴方のお手元にはほぼ使われていないイミテーションがパックにドサッとそのまんま……キャハ。

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 写真手前左から、
 クイルゴードンTMC5210#10 ウイングはレモン・ウッドダック。
 右、
 マーチブラウン風TMC905BL#10 ウイングはマンダリン・ウッドダック。

 そして、
 そのうしろのどでかいやつのウイングにつかっているのがセパレーター処理したイミテーションTMC905BLの4番。
 このような規格外サイズのキャッツキル風を巻くなら、
 特大サイズのフランクフェザーがたくさんパックされているイミテーション・ウッドダックは、
 もうまさにうってつけ。
 
 で、
 こんなキングコング・キャッツキル・スタイルをやねえ、
 通常サイズのように、
 サーフェイス・フィルムのうえに、
 まるで生まれたばかりのバンビがようやく爪先立っているかのような、
 危なげな、
 はかなげな、
 そんな弱弱しい浮き方で水面に浮かせたい for スレッスレ有名渓流。

 またそんなバランスでありながら、
 鳴門の渦さながらに荒ぶる深瀬に浮かべても、
 大波小波もなんのその、
 まるで水面膜にしがみつくように浮いてます~あの巨マスが喰いつくまでは……、

 みたいな確かな浮力がほしい、

 というところでいろいろナニしてんですが、
 
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 オーシャグネシー・ベンドっていうんだっけ?
 もともとはディーウイングやスペイフライなんかにつかうための、
 ロングシャンク・ラウンドべンドのサーモンフックの4番に巻いたワイの最新ライトケイヒル爆裂サイズ。

 ボディ、
 ムッチムチやろ?
 触ってみるとモッチモチやねんで。

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 で、
 この素材自体が水面に浮くんですわ~。

 キングコングサイズ・ドライフライ・タイイング・アドベンチャーまだまだやりたい放題し放題ですぅぅ~~~。
 
パラシュート系
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 コンドルの艶黒クイルをスレッドによじって巻いて、
 アリンコ型クビレ・ボディを形成。

 このビロードのようなケバケバに酔いしれまくった今シーズンでございました。
 
 ほんまエエわぁ虫やわぁゴージャス。

 猛禽類のクイル捩じりボディには、
 なんか中毒性があるような気がする。

 さながら、
 歌を忘れたカナリア…ならぬ、
 今年はダビングを忘れたカピパラ。

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 濡れてからがまた……、

 艶虫エロイど。



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 ヒカリモノもアレコレ一緒にねじって巻きました。

 コンドルの艶黒にあわせて、
 ホワイティング・ヒストリックのナチュラル・ブラックをパラッとハックリング。

 これはあくまで私見なんだけど、
 ヒストリックの効能書きを読んでいると、
 かの「ダービーダン」の系統をウンヌン……とありますが、
 元祖「ダービーダン」のネックハックルもかつて各色さんざん巻いて使い倒したうえで、
 あえて異を唱えるちゅうか、
 僭越ながら意見すると、
 元祖ダービーダンてハックルの裏がもっと白っぽくてマットな質感だった。
 もちろん、
 それが悪いってことではなくて、
 それが「味」であり特徴なんだけど、
 ヒストリックはダービーダンと比較してもっと透明感と透過性に富んでいて、
 発色がヴィヴィッドかつファイバーの根元付近のコシが効いてる。

 どっちかっていうと、
 ハリー・ダービーやチップ・スタッファらアメリカ東部産の、
 後期「アンダルシアン・コック」の質感に共通項があるような気がする。

 とくに、
 このようなナチュラル・ブラックなんかを見ると、
 その傾向がすごくかんじられる。

 あくまでもこれは個人的な印象なんだけどね。

 ナチュラル・ブラックといえば、
 むかしキャッツキル・ヴァレーの名物ハックル親父の釣り道具屋に、
 テっちゃんとヒガシ大先生と三人で買い物しに行ったんやけど、
 親父さんがカウンターの向こうからそ~っと真っ黒なネックのケイプ出してきて、
 「こんなんも、あるんやけど…」みたいなそぶりで自慢げにチラッと見せてくれたので、
 それ見た瞬間ガッと身を乗り出して「それ買う買う買う買う買う!」ゆうたら、
 「だめだめだめだめ!」といいながらサッと奥に仕舞われてしもた。

 非売品やて、
 見せるだけなんだって……。

 気持ちはわかるけど、
 せめて触らせてくれてもええやん…とおもった。

 天然の黒って、
 それぐらい希少だったんですよ。

 ヒストリックのナチュラル・ブラックいじくってると思い出して懐かしい一幕。

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 やっぱコックハックルの妙を堪能するなら、
 ライトタックルで10番とか12番くらいのフライで、
 つぎからつぎにサカナが飛び出してくれて余裕しゃくしゃくで、
 スタンダードからパラシュートからアレコレとっかえひっかえしてるときが、
 サイコーに浸れる。

 ゼイタクやわぁ。

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 トンビのセカンダリークイルのボディに、
 バンタム・ネックのグリズリーを5~6回転ハックリングしたのち、
 そこにグリズリー・パルド略してグリ・パルのサドルのグリズリー模様のところの超ロングなハックルを、
 一回転だけミックスして巻いたサイズ11番。

 必殺でっせ。

 そんな、
 グリ・パルの超ロングなハックルが、
 ブルンブルンと魅惑的かつ自律的に震え動く「パラッとハックリングしただけ系フライ」のインジケーターのてっぺんに、
 ジェル状の普通のフロータントをチョコンとつけたところ。

 んで、
 このようにフライを指先に引っかけたまんま、
 もう片方の人差し指でフロータントをチョイチョイと塗る……、
 のではなく、
 例えればインジケーターを前後左右にクリクリこするようなかんじで、
 フライ全体に激しめに擦り込みなはれ~。

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 がっつりしっかりゴシゴシ擦り込み終わった状態。

 はげしくクリクリしてもご安心ください。
 このテのフライならフォルムは崩れたりしません。

 ちゅうか、
 ハックルやテイルがよしんば乱れても、
 そのままつかっていればすぐ元に戻るし、
 それが気になるならフロータントをガッツリ擦り込んだあと、
 フッと強めに息を吹きかけるとか、
 フライの下からハックルごと指でスーッとしごくと元に戻ります。
 
 それよりも、
 インジケーターの根元やテイルの付け根にフロータントが充分擦り込まれているのが肝要。

 ここ近年、
 たいへんありがたいことに、
 道内各地の方々とご一緒させていただく機会も増えはじめ、
 とくにドップリとハマりはじめの興味津々のおっきなお友だちたちから、
 「ビゼンさんてフロータント一回つけたら、あとはほとんどつかわないよね~、でもフライがずっと浮いてるのはどうして?」
 という話題になることがままあるので、

 なんか、
 そんな特別なことをしてるつもりはなかったけれど、
 あらためてフロータント塗布な話題もご紹介してみました。

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 で、
 サカナを釣って逃がしたあとは、
 カッコよく渋めにシャバシャバっとフライをかるく洗って、
 フッとフライに息を吹きかけて、
 おもむろにピッピと強めのフォルスキャスト数回……そうやってフライの水気を切ってやると、

 状況にもよるけど、
 パラシュート・スタイルやキャッツキル系なら、
 このようにフロータント擦り込んでおくと、
 数匹くらいじゃいつもビクともしないでフライは軽々浮いてる。

 とまあ、
 そんなかんじで言葉悪く言えば「ものぐさ」でもある姿勢でドライフライを水面に浮かべてま~す。
 
ドライフライよもやま話
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 タイトルは「スーパーハッチ」
 はばたけキャッツキル・ジュエルズ

 とはいっても、
 歴代のオリジナル・レシピに従ったものは一本もない。
 ぜ~んぶ私家版キャッツキル・スタイル。
 
 つかったハックルもボディ素材も、
 それぞれ一本づつぜ~んぶちがうマニアック・カスタム仕様です。
 
 待ちに待っていただいたお客さんに、
 いつものようにひたすら平身低頭かつ深謝のていで送らせていただいたあと、
 この写真をしばらくパソコンの壁紙にして自分も毎日眺めていたのでした。 

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 ハックルの海にまぎれるヴァリアント系私家版スタイル。
 御大アート・フリックばりに、
 2Xショート・シャンクなフックにオーバーサイズ・ハックリング。 

 ロードアイランドレッドをつかったクイルボディのエビ茶色は、
 ランズ・パティキュラだけの素材にするのは、
 あまりにももったいない。

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 転じて、
 2Xロング・シャンク4番!に巻いた規格外サイズの私的マーチブラウン風。

 もはや、
 こうしたキングコング・サイズなスタンダード型は、
 気難しい巨マス狙いにおいて幾多の実績を誇る。
 ジョーダンでつかうのではなく、
 一撃必殺の存在に昇格して久しい。

 で、
 このバケモノ・マーチブラウンだが、
 ホワッホワのワシミミズク・プライマリークイルのボディと、
 グリズリーとファーネスをパラッとだけ巻いた柔らかなハックルを、
 ヒタ~ッと水面に張り付かせながら、
 沈みそうで沈まないていでベタッと浮かせるべく巻いておるわけですが、
 そしてそういう浮き方にこそ百戦錬磨たちはグッとくるんだな~と経験的に学んだわけですが、

 このサイズにこのハックルの貧弱なヴォリュームだと、
 まともにハックリングしただけでは、
 どうやってもものの数投で沈没必至。

 じゃあどうするかというと……、
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 パラッパラにうす~くハックリングしたコックハックルの根元に、
 ヘアーズイヤーのガードヘアをダビングするのではなく、
 コックハックルにミックスするように、
 ガードヘアが全面毛羽立った状態でハックリングしてみたのじゃ。

 で、
 この密集したガードヘアにジェル状フロータントをがっつり染み込ませておくと……、
 フライ自体のフォルムはスパースでファジーな印象にもかかわらず、

 これがまたポカッとたのもしく三点保持で水面にはりついて、
 さながら力なく水面に浮かぶバッタのごとく、
 荒瀬をドンブラコッコと流れよるんですわ~笑っちゃうヨ。

 とまあ、
 このような細工はほんの氷山の一角。

 規格外ビッグサイズのドライフライはとくに、
 まだまだやりたい放題の余地が盛りだくさん。
雑感
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 フックサイズはウエットフライ用の4番。

 全長で小指よりもやや短いくらい。
 そんなマグナムをライトタックルでも快適に投げられて、
 かつ水面でのバランスと姿勢が安定していて、
 さらにラクラク水面からひっぺがして軽快にピックアップできる、
 
 というところを目指して、

 キャスティング時の空気抵抗が悩みの種だったフロントハックルを細工したら、
 こうしたドスコイ・クラスのドライフライの泣き所だった水面での姿勢とバランスも飛躍的に改善されて、
 してやったり感満載だった。
 だけでなく、
 倒木のキワッキワや草の生い茂るバンク際ギリギリなど、
 奥に突っ込むのに躊躇したくなるピンを狙う際、
 立て巻きハックルのウィードレス効果を実感するというウレシイおまけ付きだった。
 
 そして、
 獣毛ウイングを扇状にバッサ~とひろげて巻き止め、
 かつ使用中にウイングがしぼまずそのフォルムが維持できるように、
 ウイング基部にプラットホーム(土台)を据えて、
 かつドッサ~と大量に巻きこんだ獣毛が抜け落ちないように、
 ヘッド基部にちいさな突起を突き出してストッパーにしたら、
 それが虫のアタマを連想させる生命感を醸し出してほど良いアクセントになるだけでなく、
 フラッタリングさせるときの引き波やピックアップ時のスムーズ感といった機能面でもうれしい効果を発揮した。

 さ~らに、
 ロイヤル・コーチマン型に巻いたボディは、
 ピーコックハールが濡れてもふっくらしたヴォリューム感が維持され、
 むしろ濡れてハールのフリューがつぶれてからこそ良い感じのフォルムになるように巻いてある。

 そしてまたさ~らに、
 計4枚のコックとヘンのハックル各色をハックリングしたフロントハックルは、
 こうしてLEDライトに照らして見ると黒っぽい印象なんだけど、
 陽の光に照らされればアラ不思議。
 なんともいえない透明感のある赤っぽい黒焦げ茶ビカリに変化。

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 ほらね、
 ゴンぶとアメマスの口元にご注目を……。

 ハックルっておもしろいね。

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 とまあ、
 このようにフライのすみずみ細部にわたるまで、
 こだわりとか目論見とか計算とか気分とかセンスとか、
 自分らしさを目いっぱい反映させたフライをティペットに結んで、
 かつ、
 ほんとに自分が気に入って心酔している血が通った道具をつかって、
 そのうえで、
 忘れられない水辺での興奮と感動のストーリーを経て、
 こういうサカナが釣れてくれる豊かな喜びやシアワセにばかり浸っていると、

 その甘美で秘めやかで麻薬的な蜜の味のまえには、

 効率と能率をこそ最優先して、
 何センチだ~とか、
 ナンビキ釣れた~とか、
 そういう結果だけを追い求めるドヤ顔作業は、
 ぶっちゃけどこか空しくなっちゃうんですよ。

 それだけだと、
 オレの心は満たされないコノ欲張りさんめ。

 もちろん、
 「愉しみと喜びをどこに求めるか」というのは各人の嗜好なので、
 それを否定するような野暮を言いたいわけでなく、

 ときとして、
 じぶんの進んでいきたい方向は、
 これからの時代にそぐわなくなるんかな~とか、
 一抹の寂しさを感じたり感じなかったり……。

 ま、
 小難しいことは考えず、
 己の快楽に忠実にあるしかないんですけど。

 座右の銘は「ケセラセラ」

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 唐突に、
 現在はどうしておられるのか知らないけれど、
 アメリカでは知る人ぞ知る人気プロ・タイヤーであらせられる、
 かの御大A.K.ベストが80年~90年代ころに販売していたハサミ。

 いまも販売しているのですか?

 ハサミの脇のところにニードルも装備されているんだぜ。

 なんだけど、
 見てわかるとおり、
 現在の高品質ハイエンドな高級ハサミと同列おなじ土俵では語れない、
 あえて言葉悪く言えば「小中学校の家庭科の裁縫箱」のお裁縫セットですよ。

 じゃあ、
 使っていないかというとその逆で、
 ここ近年とくにものすごく使用頻度の高いハサミのひとつ。

 たとえば車中泊の遠征釣行で、
 クルマのなかやホテルなどにて、
 深夜とか雨の日とか時間つぶしの戯れにフライを巻いてみようとか、
 期待感で胸いっぱい明日の釣りのためのフライを巻くとか、
 そんな贅沢な独りの時間のお供にはなんてったってこのハサミが気分。

 あったかいんだよね、
 このハサミ。

 「A.K.sタイイングツール」なんてカッコイイ刻印もはいってるしさ。

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 と、
 このA.K.ベストの活躍がよく見聞された、
 80年代~90年代のアメリカのフライフイッシング事情といえば、
 まずスパークルダンを筆頭格にして、
 良くも悪くも効率重視の、
 化学繊維の特性にたよりきったようなフライが続々誕生した。

 そしてそこにCDCフェザーが加わって、
 さらに簡素かつ画一化されたようなフライが右ならえするようにズラ~ッと横並びに並んでいた。

 などと書いているじぶんもまた、
 勇んでその列にくわわった。

 その渦中にあって、
 A.Kベストの巻いていたフライは、
 クイルボディとヘンハックルのウイングを素材の核にして巻いた、
 最先端とは一線を画するようなフライだった。

 当時の最新に浮かれきっていた視線で見れば、
 ぶっちゃけ時代に取り残された感さえもあった。

 にもかかわらず、
 フライフイッシングのショーなどでは、
 なみいる有名著名最先端タイヤー連がズラリと並んでいるタイイングデモのなかでも、
 彼のブースの前だけはいつも常に人だかりでごったがえしていたそうだ。

 

 その理由と秘密の一端を、
 じぶんはこの映像から垣間見れたようにおもう。

 彼のタイイング・デモはピープルズ・チョイスだとおもった。

 じぶんも時としてタイイングデモなんて仰々しくも人前で恥を晒す立場として、
 他人様のタイイングを拝見するときには、
 そこから実用的ななにかを学ぶというよりも、
 巻いている方がどのように解説しながら物事を伝えるのか、
 というところにこそ興味があり学びがある。

 そうした視線からみれば、
 多からず少なすぎない解説の言葉数、
 なによりもその言葉の明解かつ簡潔さ、
 そしてそこにおもわずトキメいて共感するような装飾句を挿入するおしゃれ言葉テクニック。
 そんな語りの間とタイミング、
 見ている方の視線をフライを巻く手元に集中させてしまう天性のエンターテイメント性、
 なによりも「フライを巻くことは難しくないよ愉しいよ」という一貫したメッセージ。
 さらに、
 親しみやすい容姿から口調や声の響きまで、
 これがプロの仕事なんだな~と、
 今さらながら、
 というより今だからようやくわかった気がする。

 フライタイイングの愉しさや創作の喜びを万人に伝えるプロとして、
 別格中の別格のプロタイヤーにあらためて敬意と尊敬をこめて……。


  
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