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昨年の初冬のこと。
このバイスと、
何年ぶりかで再会したのは、
高知のお店だった。
その店のショーウインドウのVIPルーム、
いちばんいい場所に鎮座していた。
店主がとても大切にしている、
秘蔵のプライベート・コレクションであることは一目瞭然だった。
「このバイス、売り物なん?……」
ちょっと茶化すような気持ちで、
それでもいちおう聞いてみた。
ふた呼吸ほど間をおいて、
店主が言った。
「……いいよ、ビゼンさんが買うんだったら売るよ」
「マジで!ホンマにええの?」
「うん、いい。ビゼンさんにもらわれていくんだったら、
そのバイスも本望やき……」
「……おおきに…そのお言葉、
今回はありがたく頂戴いたします」
こうして、
長年しずかにあたためていた、
ちいさな物欲の夢のひとつが現実になった。
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「浦戸ドラゴン」
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UGP……。
「浦戸ジェネラル・プラクティショナー」
浦戸タイガーに浦戸ゴースト…ほかにもまだまだある……。
さいきんの自分が巻いたストリーマーたちは、
ほとんどすべて名前のアタマのところに、
高知県「浦戸湾」の名前を冠してしまう。
妄想と空想とあふれる夢がとまらない。
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「……というわけで、
とうとうあのバイス入手しちゃったんですよね~……」
「釣り道具でも羽根でもレコードでも……ほんっとに欲しいと思うものは、
その気持ちをず~っと暖めつづけていれば、
いつかあるときとつぜんに、
かならずかなうもの……っていうのは、
もはや自分のなかで確信になってる気がするっス」
先々週の日曜日、
ご近所の大先輩と釣りに行く車中にて、
そんな話しをした。
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そして先週の日曜日のあさ、
いつものようにピンポ~ンと呼び鈴が鳴って、
「おはようございます~。さあ行きましょ~」
玄関を開けると、
大先輩が「ハイこれ、プレゼント……」
悩ましいスタンプが押してある茶封筒から、
やさしい手触りをした濃紺のスエードでつくられた袋がでてきた。
そしてそのなかから……、
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「これって…マ、マジっすか?!」
「先週、バイスの話し聞いて、
それだったら…と思ってさあ、
ビゼンさんのところに嫁入りさせる気分でもってきた……」
「メッチャうれしいっす……そのお言葉、
今回はありがたく頂戴いたします」
「どうぞどうぞ…やっぱあのバイスにはこのツールでしょ」
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道具というものは、
よりよい作業性能と効率の良さをこそ求める、
機能美の世界であるという大原則に、
まったく異論はない。
「つかってナンボ……」
これがボクの道具に対する座右の銘。
しかし、
世の中には、
高い機能性や利便性を棚上げにして、
その道具自体の造形美、
そしてその道具が放っている独特のオーラ、
その道具にしかない唯一無二のムード……、
それらこそが、
その道具の存在価値のすべて、
と言いたくなるようなモノもある。
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使い勝手も、
耐久性も、
そうしたものはまったく期待しない。
ただそこにあるというだけで、
ただそれに触れて眺めているだけで、
たまらなくトキメク道具、
どうしようもなく気分が高揚する道具。
かわいくて、
たのしくて、
やさしくて、
あたたかくて、
どこまでもオシャレなツールたち……。
そしてボクのこの道具たちにはまた、
コレらを我が家に届けてくれた、
高知と函館の良き友の「きもち」がこもっている。
それこそが……、
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いっちばんうれしい!!