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今シーズン、
ハルゼミの流下時期から夏にかけてつかっていた、
セミ型テレストリアル系ビッグサイズのひとつ。
マシュマロ・ボディの内側に高浮力でソフトそしてヴォリュームがあり、
かつ淡い橙色のセミの腹色をした素材を仕込んである。
で、
湾曲したラバーレッグとともに、
ボディのクビレのところにコック・デ・レオンのチカブーをグルグルッとハックリング。
なんせ柔毛のフワフワ羽毛なので、
つかいはじめでボディがポッカリ浮いた状態だと、
水に接していない羽毛が微風にサッと撫でられただけで、
まるでセミの翅のようにフワフワブルブル自然に震える。
そして、
何度か打ち返して羽毛が水面膜にヘタッとはりつくと、
水面でセミの脚のように鈍重にウネウネ自然に揺れる。
そしてさらに、
フライが水を吸って水中に沈むと、
流水の抵抗を受けた羽毛がユラユラザワザワ自然になびく。
という、
ハックルが水面あるいは水中で勝手にふるえたり揺れたりなびいたりと、
素材の自律的なうごきの効果に期待した、
あざとい下心満載のフライの作例。
そのうえ、
水面高くポカッと浮いてもいいし、
逆にベチャッとボディ半沈みでかろうじて浮いててもいいし、
あるいはユラ~ッと水中に沈んじゃってもいいよ…そのまま流すから、
というような、
フライの体裁もアプローチの姿勢も、
ものすごくファジーなドライフライ?ソフトハックル?ニンフ?……。
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これがワイの最新最先端のケバリや~。
ハックルは鉄錆色のコックネックをひと巻き。
ウイングはレモンウッドダックを数本だけスッカスカに、
しかしフワ~ッと放射状に開いて拡げて……。
ボディはトドの毛をコッパーティンセルで捩じってダビング。
水分をたっぷり吸収するように、
細身のボディでもファーの量は多めでギッチギチにダビング。
そして透け濡れるとダビングボディのしたからティンセルが血管のように浮き出て見える。
ヘッドにもコッパーティンセルをひと巻き。
銅色に輝くダークヘンドリクソン8番ロングシャンク。
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フライを水面に浮かせるとか、
水面のフライが見えるようにとか、
フライが着水したとき水面でひっくり返らんように巻くとか、
ドライフライにはそんな制約があるからこそ、
いろいろ思い悩み考え試すおおきな愉しみがある。
が、
その一方で、
水面に浮いていてもいいし、
沈んだらなおよし。
という姿勢で、
そういう足枷から解放されると、
やれることや、
やってみたいことが、
とめどなくウワ~~~ッと湧いてでてきて収拾がつかない。
そして、
もはや古女房のような付き合いだったいつものカタチのフライたちが、
とても新しく斬新なものに映る。
巻くたびにときめく。
そしてそして、
本来はドライフライを浮かせるための素材だったコックハックルの旨味を、
水面膜の下にちょい沈めるだけで、
これほど濃く深くハックル熱が再燃するとは思いもしなかった。
とても痛快で健全な皮肉?
我が家のそこらじゅうに転がっている、
あったりまえの存在になっていたハックルやダビング材が、
まるで夢の玉手箱から飛び出してきたピカピカのオモチャのようだ。
すごく新鮮。
手にとって眺めているだけでイメージが膨らんでウワ~ッとなる。
まるで、
見るもの聞くものなんでも目新しくて光り輝いていた、
夢見る駆け出し時代に戻ってしまったかのようだ。
しかし、
あのころとは決定的にちがうことがある。
若かったころ、
口から手が出そうなほど焦がれる想いを抱きながらも、
あのハックルもこの素材も、
そんなものがどこにあるのかと、
ただ指をくわえて憧れているだけだったアレコレ、
だけでなく、
当時は思いもしなかったような絶品珍品さえも、
時の流れの魔法のおかげでじぶんが望んだものは、
いまや溢れんばかりになんでもある。
そのうえ、
門前の小僧なんとやら、
石のうえにも三年なんとやら、
時は流れ、
技術の深さも視点の広さもまた、
あのころとはなにもかもまったくちがう。
どないせえゆうねん?
フライフィッシングはおそろしい。