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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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セミセミセミシカ
 これは、
 一週間ほどまえに体験した実話であります。

 真夏日をおもわせる晴天好天がしばらくつづいていたけれど、
 それから一転。
 どんよりと曇って小雨交じりの鉛色の空、
 そして底冷えのする寒々しい天気になったころのこと。

 ワタクシは、
 ちょい山奥の川を独りで釣りのぼっておりました。

 午後おそく、
 両岸ともに雑草の生い茂る小高い崖にはさまれた区間にさしかかったころ、
 どうも妙なかんじがしてならない。

 瀬音のせせらぎの音、
 小鳥たちのさえずる声、
 木々が微風に揺れて葉っぱが擦れ合う音、
 そんな、
 いつもの自然の音のなかに、
 消え入るようなほどちいさく、
 しかし断続的に、
 なんだか、
 妙な不協和音が……背後の崖のうえから聞こえてくるような……しかし気のせいのような……、

 ペキッ、
 ポキッ、
 枯れた小枝を踏みしめたような微かな足音。

 ザザッ、
 ザザッ、
 風ではなく、
 何者かがクマザサの葉に擦れたような音。

 それらが、
 さっきからずっと、
 聞こえてくるような……。

 ペキッ……、
 ザザッ……、
 そのたびに、
 ちょっと、
 いや、
 だいぶビビりながら、
 ハッとなって背後の崖のうえを見あげるんだけど……、

190610 (1)1

 なんにも見えない、
 なんにもいない。

 気のせいやろか?

 しかしまたしばらくすると……、
 
 パキッ、
 ズザッ。

 これは気のせいじゃない。
 なにかがいる。
 ぜったいいる!

 そういえば昨年の夏、
 とあるダム湖畔で釣りをしているとき、
 背後の森のなかに潜んでいたらしい野性のミンクにつけ回されて、
 その足音にびびりまくった思い出がある(昨年の8月くらいの当ブログ参照)。

 でもねえ、
 今回のはちょっとちがう。
 ミンクごときの小動物がたてる足音とはだいぶちがう……気がする。

 音はとっても微かなんだけど、
 明らかに、
 確実に、
 うたがいようもなく、
 なにかとってもおっきな生き物が、
 抜き足差し足忍び足で……ぼくのあとをつけている……としかおもえない。

 ものすご~~~く、
 とっても、
 イヤだよ~~~ユルシテオネガイ。

 こんなとき、
 かんがえることはただひとつ。

 こんな釣り生活をおくっていれば、
 いつか、
 あのお方と、
 野外で、
 丸腰で、
 生身のまんま、
 ご対面してしまう……かもしれない。
 このような出会い方をしてしまう……かもしれない。

 そんなときが、
 とうとうやって来てしまった……かもしれない。

 おそるおそる、
 奥底からビビりたおしながら、

 背後の崖のうえを目を凝らしてジ~ッと凝視。

 そして凝視。

190610 (2)2

 わかった?
 いちばんうえの写真のどこかにも、
 コイツ写ってんだよね。

 擬態とは、
 まさにこのこと。

 こんなん、
 目のまえにいたとしても、
 その気になって探さないと、
 周囲の木々や草に完全に溶け込み紛れ込んでしまって、
 ちょっと見ただけではぜんっぜんわからんど。
 
 正体がわかったその瞬間、
 食べられちゃうかもしれない恐怖や、
 ぶち殺されるかもしれない恐怖とは、

 まったく別の、
 もっと得体のしれない、
 現実的ではない恐怖で、
 マジちびった。

 腰から下に力が入らなくなって、
 ガクンと砕け落ちそうだった。

 あのさ、
 シカって真正面からの姿を遠目に見ると、
 パッと見なんていうか、
 人間じゃないけど二本足で立ってる二足歩行のナニモノかに見えるんやで。

 「千と千尋の神隠し」あるやん、
 アレに黒装束の「アッ」しか言わん無表情なモノノケでてきたやん。
 得体のしれない恐怖でいっぱいになってたワタシの目には、
 あの感じ的な妖怪というか精霊というか……そういうものを連想せずにはいられなかったのだった。

 崖の上と下で、
 見つめあうエゾジカとワタシ。

 ぼくが「ウワッ」と声に出しておどろいて慌てふためいたとき、
 シカの野郎もズザッと一瞬ヤブのなかに消えかけたんだけど、
 またすぐ戻って来て、
 またもやジ~ッとコチラを見下ろしている。

 「どないしたん?なにしてるん?」
 「あっち行ってくれる?」

 心底ホッとして、
 声をかけた。

 シカはなんにも言わないけれど……、

 見つめあいながら、
 タバコに火をつけた。

 すると、
 シカの鼻がヒクッとなった。
 一瞬、
 顔をしかめたようにも見えた。

 愛煙家は、
 こんな場所でも肩身が狭い。

 気を取り直して晴々と釣り再開。
 
 するとまた背後でペキッザザッと微かな音がして、
 しばらくぼくのあとをつけていたようだけど、
 シカはいつのまにか消えていた。 

 なんだったんだ?

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 そのときつかっていたフライ。

 エゾジカの毛で巻いたエゾハルゼミなフライ。

 エゾシカに監視されながら、
 エゾシカの毛で巻いたフライで釣る。

 それをシュールというべきか、
 それとも浪漫というべきなのか……。

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 各メーカーいろんなタイプのフロータントをドサッと大人買いして、
 あれこれゴシゴシ擦り込みながらつかっている、
 ワタシの2019年度版ハルゼミ。

 コレ一本で、
 大中小特大幼魚あわせて、
 もはや何匹釣ったか定かではないけれど……、
 つかうたびに、
 いろんなフロータントをモミクチャに擦り込んでいるけれど……、

 まだまだぜんぜんイケるかんじ。

 それがどれだけウレシたのもしニヤけることかは、
 ディアヘアー系のフライをフロータント塗ってドライフライとして多用しておられる方なら、
 きっとわかってくださることでございましょう。

190610(5)5.jpg

 ちなみに、
 野山で生身ではぜったいお会いしたくはないお方の、
 とある部分のオケケをウイングにあしらったハルゼミも、
 お日さまの陽の光を浴びてギランギランと金色に輝いております。

 これが水面に浮かぶと、
 金色の後光に包まれて、
 なんだかとっても霊的で幻想的。
 ポ~ッと魂が抜けちゃうような夢見心地

 それがいきなりグワバッ!水飛沫けちらして炸裂。

 魂が、
 魂が、
 もっていかれちゃう~~~~。

 もちろんこちらにも、
 さまざまなフロータントを塗布して……、

190610(6)6.jpg

 そして、
 それだけでは飽き足らず、
 挙句の果てに……。

 瞑想中、
 じゃなくて迷走中……ですね?

 感動と刺激と発見に満ち満ちて、
 まことに濃厚な、
 こゆ~い初夏の毎日です。

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