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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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梅雨の晴れ間の大物自慢
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 つい先日、
 いつものように我が家に遊びに来てくれた、
 函館のいつもの吉田さんと笹尾さん。

 函館から高速道路をひたすら走って約7時間!
 深夜、
 皆さんが我が家に到着して、
 さあ明日はいずこの釣り場へ、
 という話題になったとき、
 現在の状況だとあの川が有望ですが、

 「じつはいま、このへんの釣り場の新規開拓に励んでいるのです」
 という雑談をすると、
 それじゃあ明日はぜひとも未知の釣り場に行ってみようじゃないですか、
 と吉田さん。

 はるばる7時間かけてやって来て、
 当たりか外れかどっちかの「賭け」を愉しんじゃう吉田さん。
 やっぱスゲ~なとおもった。

 その提案をコレ幸いに、
 かねてよりたいへん気にはなっていたものの、
 あまりにもヒグマの気配が濃厚過ぎて、
 独りで奥に入るのはさすがにちょっとな~、
 とおもっていた釣り場に三人で行ってみた。

 三人ならへっちゃらだ。

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 じぶんが函館に住んでいたころから、
 何度も三人で釣りにでかけていた。
 そのときからずっとおもっていたことがある。

 フツ~の規模の渓流を、
 三人がかりで抜きつ抜かれつ交互に釣りのぼっているにもかかわらず、
 負担を感じない丁度よいペースで、
 阿吽の呼吸でポイントをゆずり譲られしながら、
 お互いにまったくストレスをかんじないで、
 リラックスした気分で好き勝手に釣りに没頭できるのって、
 かなり稀有なことではなかろうか。

 そのようなお付き合いをさせていただいているので、
 お二人が帰られたあとは、
 いつもなんだかちょっぴりセンチな気分。

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 サイズはTMC9300 の8番。
 ボディはヒグマのアンダーファー。
 ハックルはヒグマのガードヘアーをハックリング。
 見た目ソフトハックル的なヒグマの毛だけで巻いたシンプルなフライ。

 名前は「キンクマ」
 姉妹品「クロクマ」と「チャクマ」もあります。

 フックシャンクにリードワイヤをグルグル巻きにしてウエイテッドにしたのと、
 ノーウエイトの2種類がある。
 ドライフライとしてもニンフとしてもウエットとしても、
 水面から川底までコレ一本で探っちゃう、
 どのようにでもつかえるファジー系。

 そんなフライをつかって……、
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 森の奥の小渓流でひっそりと暮らすオショロコマももちろん大好き。
 
 なんだけど、
 開けた渓流で、
 大胆に早瀬やプールのヒラキに出てきてバンバン餌食ってる、
 コンディション抜群のオショロコマはもう格別。

 萌え萌え。

 ヒグマの森を流れる川で、
 ヒグマの毛で巻いたフライをつかって、
 ヒグマの森の川で太古から命をつないできた美しいサカナを釣る。

 なんという贅沢な釣り。

 そんなとき、
 美しい渓をそぞろ歩きながら、
 優雅にほどほどに竿を振って、
 紳士にほどほどのサカナと戯れて満足。

 それでこそナチュラリストなフライフイッシャーマン。

 などとおもったら大間違いなのじゃ。

 無垢なコマっちゃんをズッコンバッコン釣りたい。

 ひとつのポイントで、
 まず「キンクマ」をドライフライとしてフロータント塗布してフツ~に流すやん、
 そんで首尾よくヒラキとか流芯脇で二~三匹釣れるとするやん。

 そっからが本番でっせ。

 濡れそぼってすぐ沈んじゃうようになってしまった「キンクマ」を、
 そのまま沈めて表層あるいは中層を流すと……、

 ハマるとここでゴンゴンくる。
 カイカン。

 ポイントの水深が浅いばあいは、
 ここらへんでゆるしたるけど……、

 ココはでかいのおるやろ~、
 とおもえる深場のポイントならば、
 ウエイト入りの「キンクマ」登場。

 落ち込みとかに叩きつけて、
 さらに深く沈めてしつこくねちっこく流す。

 水面から川底までぜんぶくまなく探って、
 「あんた根絶やしにする気?」
 くらいの勢いで夢中で釣っちゃう。

 なんかハマっちゃって、
 釣っても釣ってもまだ釣りたい、
 中毒みたいになるときがある。

 とはいえ、
 歳とったからなのか、
 醒めるのも早くなりましたけど……。

 それはさておき、

 このとき、
 フライを沈めるからといって、
 わざわざいちいちティペットやリーダーを変えたりはしません。
 ドライフライを結んでいたそのまんまのリーダー。
 なので、
 手軽にこまめに浮かせたり沈めたりできるというわけです。

 「キンクマ」にいたっては、
 浮かせるのも沈めるのも自在なので、
 フライすら交換しない。

 下の写真は、
 コレ一本を数日間ず~っと使いつづけて、
 いったいぜんたい何十匹のコマっちゃんを釣ったのか、
 もう定かではない状態の「キンクマ」
 ボディにダビングしたヒグマの剛毛がバサバサ突き出してきて、
 それがまたいかにもムシの脚みたい。
 釣れば釣るほどに、
 どんどん釣れそ~な雰囲気を醸し出すのも「キンクマ」の特徴。

 そして、
 この「コマっちゃんにかじられまくったキンクマ」は、
 ワタシにさらなるシアワセと興奮を連れてきてくれたのであった。

 さ、
 以下イヤミな釣り自慢をくどくど延々語りまあ~す。

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 話しはちょいズレるんだけど、
 函館の皆さんが我が家に来られる数日まえ、

 遠来の友人の希望で、
 一発大物巨ニジマス狙いで川を案内していた。
 そして、
 その川のこの区間ではもっとも実績のある深瀬のポイントにやってきた。

 おりしも川はどこもかしこも大渇水。
 しかも真昼間。
 この状況でドーンと大物の可能性があるならば、
 自分の知るかぎりココしかない、
 とおもっていた超A級ポイント。

 なので、
 他のポイントは極力ほったらかしで好きなように釣ってもらっていたけれど、
 この場所は確実にいるはずなので
 「ここはちょっとアドバイスさせてね」と一言ことわってから、
 必殺のフライもわたして、
 太いティペットに変えてあげて、
 「あそこに投げて」だの、
 「こんどは向こうに投げてみて」だの、
 横に立って事細かに指示した。

 しかし反応はなし。

 そそくさと上流に向かおうとする友人に「もうちょい粘ったほうがいいよ」と声をかけて、
 ニンフの仕掛けに変えてあげて、
 もしアタリがきたら声に出すから安心しといてと励まして、
 いろんな流れの筋にニンフを沈めたんだけど……、

 反応はなし。

 ほとんどドライフライしかやったことのない友人はいまいち釣れる気がしないらしく……、

 疑心暗鬼丸出しの視線で、
 「ちょっとビゼンさんやってみてよ」
 「なんでやねん、オレがやってどうするねん」

 などといいつつ、
 さっきからティペットに結んでいた「キンクマ」を、
 白泡をたてて流れ込む落ち込みの流芯にぶつけるように叩きこんで、
 そのままリーダーにおもいきりスラックいれて弛ませて、
 フライを流れに揉ませながら深く沈めて……、

 そして、
 おおきく湾曲して流れるリーダーが完全に水中に沈んでいったとき、
 ブルッとリーダーが揺れるように震えた気がして……、

 半信半疑ながらグイッと力強くあわせてみれば……、

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 「な、おったやろ」

 とうそぶきつつ、
 あれだけフライを流したあとで出てくれるとは思いもしなかった。

 それも一投目で。
 
 下アゴしゃくれ系のオスのニジマス。
 しかもめちゃくちゃオトコマエ。

 落ち着きはらって対処いたしましたけれど、
 内心は万歳三唱スカーッと抜けまくりパーフェクト!
 ……あ~このイッピキでもう充分。これでガイドに徹することができるわい……
 などと溜飲下がりまくりの午後でございました。



 というようなことがあった10日後くらいに函館の皆さんがやってきて、
 初日はヒグマの気配プンプンの渓流に行って、
 じぶんもまだ釣ったことのなかった区間を三人で釣り歩いて、
 「キンクマ」投げまくって良型オショロコマの入れ食いを堪能。

 その夜、
 さて翌日の釣り場はどうしましょうか?
 となったとき、
 我が家の壁に貼ってある地図を眺めながら吉田さんが言った。

 「どうせならビゼンさんがまだ釣ったことのない川に行こうよ」

 さすがでございます。
 願ったりかなったりでございます。

 そして翌日、
 「この川のこのあたりが気になってたんですよ」
 なんて、
 ワクワクドキドキで勇んで川に降りてみれば……、

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 なんか、
 チャラッチャラの大渇水なんですけど。

 全体的にしょぼい。

 それでもフライを投じてみれば……、
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 どこに投げようとも、
 どのようにフライを流そうとも、
 新子ヤマベのピン子ちゃん軍団ピチピチパチャパチャ大猛攻。

 萎えまくり。
 
 この川、
 おもいきり外したかんじ?

 笹尾さんとともに、
 吉田さんに場所変えを提案してみたところ、

 「いや、せっかくだからここで釣りましょうよ」
 きっぱりおっしゃった。

 吉田さんのこの決断が、
 ワタクシのこの日の釣りをマンモス・メガ・ハッピーなものに変えてくれるとは、
 この時点では夢にもおもわず……、

 じぶんでこの川を提案しておきながら、
 むしろ内心、
 「ええ~、この川を釣りのぼるの~。萎えるなあ」

 流れはしょぼいし、
 釣れるサカナはみなピン子ちゃん。
 そのうえ蒸し蒸しと湿気ムンムンの不快な陽気。

 グデグデダラダラと、
 しばらく釣りのぼっていて……、

 この川にしては、
 ほんのすこし水深があって、
 支流の沢からの流れもドーッと流れ込んでいて、
 水量があるっちゃああるかも…それでもしょぼいかんじ。

 みたいなプールにさしかかったとき、
 前を歩いていた吉田さんが立ち止まって、
 流れのなかをジッと凝視しはじめた。

 (あ、サカナ見つけたな…)とおもって、
 「なんかいますか~?」
 なんつって近寄っていくと、
 「ホラ、あそこ……」
 と吉田さんが指さした方角の川底に、
 40センチほどのサカナが定位していた。

 きょうは手の平に納まるようなサカナしか釣っていないので、
 なんだかやたらとでっかく見えるぞ。

 しかし、
 この季節のこの状況で、
 こんな貧弱な流れにそぐわないような大きさのサカナがいるということは、
 アナタ…海からはるばる遡上してきはったんちゃうの?

 すごくあやしいぞ。

 「これ、チェリリンとちゃいます?」

 「ああ、そうかも。もうこんな上流にもあがってきてるんだねえ」

 チェリリンとは、
 チェリーなお名前のご法度マスのこと。

 おっきなサカナをみつけて、
 一瞬色めきたったけれど、
 なんだよチェリリンかよと意気消沈。

 ところが、
 ふたりでよ~く観察していると、
 どうもチェリリンにしては色とか影とかヒレの具合とか、
 なんかちがう。

 「やっぱこれ、ニジマスだよね」
 と吉田さん。
 「ですよね」
 とワタシ。

 即座に、
 「吉田さん、ぜひやってみてください」

 ところが、
 「いや、ここはビゼンさんがやりなよ」
 と吉田さん。

 この吉田さんの一言がワタシの運命を……以下略。

 川底に定位しているサカナの目前に沈めるために、
 さいしょはちょい重めのニンフを投げてみた。

 フライがチャポッと着水した瞬間、
 微動だにしなかったサカナがスパーッとフライにむかって一直線。
 「よっしゃ!」
 とときめいた瞬間、
 あろうことかサカナはフライの直前でUターン。
 そして元の位置に戻ってしまった。

 「だ~めだこりゃ」

 それでも立ち去り難く、
 しつこく狙っていると、
 その様子を背後でしばらく見守っていた吉田さんと笹尾さんが、
 こりゃダメだなと判断されたのか、

 「我々、上流に行ってるよ」
 「どうぞどうぞ~」
 なんつって、
 お二人が同時に河原を歩いた瞬間、
 目のまえの川底にいたはずのサカナが脱兎のごとく消えてしまった。

 二人とも気をつかって、
 水際から極力離れて歩き出したにもかかわらず……このありさま。

 なんたってこの超渇水。
 そりゃあサカナも神経質になるって。

 「ダメダメじゃん」

 と、
 そのつぎの瞬間、
 目のまえにいたやつよりもはるかにでっかくてぶっといのが、
 ズイ~ッと対岸沿いに泳いでいるのが視界に映った。
 そしてそのサカナは、
 対岸の倒木のエグレの奥にはいっていった。

 ドッキーン。

 あまりにおどろいて、
 しばらくそのまま立ちすくんでいると、
 その極太のサカナがソロ~ッとした様子でエグレから出てくるではないか。
 そして、
 またもやゆっくりプールの流れ込みのなかに消えていった。

 あんなのいるんだ……。

 そのとき、
 ふとひらめいたのだった。
 
 何十匹ものオショロコマにかじられてボディがボッサボサになっているだけでなく、
 彼らの怨念ものりうつっているかのようなボッロボロの「キンクマ」を、
 慎重に流れ込みに落として沈めてナチュラルに流してみた。
 
 ウエイトのはいったフライだと、
 着水音に怯えそうな気がしたからだ。
 そして、
 一気に川底に沈めるよりも、
 なるだけナチュラルに繊細に流したほうが良さげにおもえた。
 
 ダメ元でやってるけど、
 あんなごっついのいるんだったら、
 おもいついたことは全部ためしてみたいじゃん。

 そして、
 ちょうど流れ込みのヒラキのあたりにフライが流れていったとおもわれたとき、
 水中に突き刺さっているリーダーが、
 微かにククンッと……、

 「え?」
 とおもってグイッと竿を立てた瞬間、
 6フィート3インチ2~3番の短竿が有無を言わせないパワーでなぎ倒されて、
 まるで葦の茎をポキッと折り曲げたかのようになった。
 竿のバットというよりもグリップのところからお辞儀をしたまま動かない。
 動かせない。

 そのつぎの瞬間、
 グググググーーーンッ!と竿がのされて、
 ものすごいのがドッパーンと空中高く跳んだ。
 ドッボーンと水面に落ちて、
 ダッパーンッ!とプール中に水飛沫をまき散らした。
 そして、
 そのまま対岸の倒木めがけて力任せに疾走。
 ものすごい重量感。

 竿はもはや常にグリップのなかから曲がっている状態。
 どうにも止められません。

 しかも最悪なことに、
 つかっていたティペットは昨日からずっとつかっていて、
 そのまま結びっぱなしになっているフロロ5Xという体たらく。

 もう絶体絶命の負け戦。

 なので、
 どうせやられちゃうなら勝負や、
 なんておもって、
 倒木のエグレにサカナのアタマが突っ込まれる直前に、
 竿先が川辺の砂利にこすれそうなくらい竿を寝かせて荷重をかけプレッシャーをかけた。

 なんと幸運にも、
 そのおかげでサカナがいやがって向きを変えてくれた。

 よっしゃコレはひょっとしたらイケるかも。

 もう強気で攻めるしかありません。
 このような華奢な竿とイトで長期戦なんかしたら、
 いずれやられちゃうに決まってる。

 短期決戦あるのみ。

 サカナの走る方向とは逆に竿を寝かせて常にプレッシャーをかけつづけ、
 とにかく右に左に絶えず竿をうごかしながら、
 めまぐるしくサカナをひっぱる方向と向きと角度を変えつづけていると、
 パニックになってグオオーッとコチラ岸の浅場で魚体を激しくよじったサカナが、
 ついバランスをくずしたような横向き姿勢になった。

 このチャンスのがしてなるものか。

 いちかばちか、
 そのまま後ずさりしてサカナを強引に水際に引きずりあげた。
 その瞬間、
 リーダーのつなぎ目からティペットがブツッと切れた。

 間一髪。

 そして、
 まだまだぜんぜん疲れていなくて余力ありまくりの巨体が水際でドッパンドッパン跳ねまわり。
 取り込まれちゃって勝負がついたことにしばらく気がついていないようなかんじだった。

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 この貧弱な流れにいたとはおもえない、
 おそらく本流からのぼって来たのであろうメスのニジマス。

 ニシキゴイみたいな幅広の体高も、
 グッとひろがった横幅も、
 なにもかもボンボンのパンパンのパッツンパッツン。

 豊満という言葉がピッタリな熟女。

 でもねえ、
 このでっぷりしたお腹を、
 そっと指先で撫でてみれば、
 もうカッチカチの筋肉なんだよね。

 すげえや。

 20センチほどのオショロコマを釣るのにピッタリの竿でこのニジマス。

 ぼく……ほんとはとってもこわかった。

 半ば放心状態でこのニジマスを見つめるワタシにむかって、
 「いや~、これぞ執念だねえ」
 と吉田さん。

 吉田さんにいただいたそのお言葉、
 ワタシのこの夏の勲章です。
 
 「なんか、五月みどりみたいに熟しきった豊満ニジマスでしたね」
 というと、
 笹尾さんがプハッと吹きだしてウハハと笑った。

 そして、
 お二人は7時間かけて函館に帰っていった。

 また来てね。
  
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