FC2ブログ
BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
202101<<12345678910111213141516171819202122232425262728>>202103
チーム・ハッチマッチャーズ追憶
 もうだいぶまえ、
 このブログをはじめたころにも書いた記憶があるんだけど、
 
 じぶんがまだ北海道に移住してくるすこしまえ、
 富士山の裾野の街で暮らしていたころ、
 「チーム・ハッチマッチャーズ」っていう釣りチームを組んでいた。

 といっても、
 べつに肩肘張ってやっていたわけではなく、
 ものすごく気楽な遊びで。

 メンバーは、
 静岡県在住のエルモンひでおと、
 アカマダラみつぐ鉄壁タッグの二人組。

 そしてここに、
 東京の下町在住となるヒメヒラタのおリョウが加わると、
 
 三人そろって「チーム・小太り三兄弟」となった。

 ちょうど巷で「団子三兄弟」が流行っていたころのことだ。

 春になると、
 ヒメヒラタのおリョウが毎週のように我が家にやって来て数日間の滞在。
 近所の湧き水の川を拠点に、
 小太り三兄弟でつるんで尺アマゴのライズ求めて彷徨ったものだった。

 あのころみんな若かった。

 いまにしておもえば、
 30代後半から40代前半にかけてのあの時代は、
 まさに牧歌の時代だった。

 「小太り三兄弟」フォーエバーやでホンマ。

 と、
 そんな三兄弟での思い出もまた面白ストーリー満載。
 なんだけど、
 それを話しだすともうキリがないので、
 ここはひとまず棚上げしておこう。
 
 チーム・ハッチマッチャーズの主な活動は、
 フライフィッシングではなく、
 当時、
 空前のルアー・フィッシング・ブームもあって、
 静岡県の各地でおこなわれていた、
 いろんな釣り大会に参加することだった。
 
 堤防でアオリイカのエギング、
 砂浜からのサーフジギング、
 はたまた湖でのワカサギを餌にしたムーチングなどなど。

 そして我がチーム・ハッチマッチャーズ、
 どんな種目の釣り大会に参加してもいつも大活躍。

 かならずどちらかが上位に入賞するという奮闘ぶりだった。

 釣り新聞の大会結果発表欄の上位にいつも「チーム・ハッチマッチャーズ」の名前が載り、
 ときには表紙グラビアを飾ったりもした。

 そのたび、
 無邪気にキャッキャと喜んで「どんなもんじゃ」と周囲に言いふらした。

 と、
 そのように自慢すると、
 「ぼくら、ものすご釣りが上手やねん」
 と匂わせてる感があって鼻もちならないが、
 それはおおきな誤解だ。

 我々の勝利のいちばんの要因は、
 一にも二にも、
 「無欲」だったからだ。

 あのころ、
 来る日も来る日も、
 気まぐれで気難しい尺アマゴのライズにヤキモキと気をもみ、
 そしてカゲロウやトビケラの羽化状況に日々一喜一憂。
 それだけではなく、
 先行者との兼ね合いや軋轢、
 秘密のポイントの開拓と維持、

 いろんなことに神経をすり減らして対峙しなければならない尺アマゴのマッチ・ザ・ハッチの釣り。
 
 その果てに、
 ようやく釣れてくれたサカナは銀の延べ棒にも匹敵する美しさと価値ではあったけれど、
 その達成感と至福の満足感たるや尋常ならざるものがあったけれど、
 努力のわりに報われることの少ない、
 ヘビーでシビアでシリアスな釣り。

 毎日毎日そんな釣りばかりしていると疲れちゃうよ。

 だから釣り大会の日は、
 そういうのぜ~んぶ忘れてパーッとご陽気にハジけちゃおうぜ……、

 我こそは、
 とか、
 勝ちにいくぜ、
 とか、

 まして、
 他者よりもたくさん釣りたい大きいの釣りたい…なんて思いもしない。

 まったくもって気楽なお祭り気分での大会参加だった。

 日ごろ、
 袖すりあうことはまったくない、
 他ジャンルの釣り名人たちとの交流や、
 大会のワイワイガヤガヤの雰囲気、
 そんなこんなをおおいに愉しむために参加していた。

 だからオレたちは勝てたのだった。

 サカナ釣りの極意は「無心無欲にこそあり」

 この真理を身をもって痛感した、
 チーム・ハッチマッチャーズの釣り大会荒しだった。

 そして、
 あの当時はまったく考えもしなかったけれど、
 いまにしておもえば、
 エルモンひでおとアカマダラみつぐの釣りの相棒としての相性が、
 ものすごく良かったことも勝利の一要因だった。

 このふたりで大会に参加したからこそ、
 釣れたのだった。


 あれは、
 8月だったか9月だったか、
 とにかく暑い夏の日だった。

 芦の湖でトップウォータープラグ限定のブラックバス釣り大会がおこなわれることを聞きつけ、
 エルモンが大会主催事務局に問い合わせたところ、
 「トップで釣るのであればフライでも参加オッケー」とのこと。

 「ハッチマッチャーズ出るべ?」
 「もちろん!」

 しかし当日はまさに晴天ドピーカン、
 そして灼熱の炎天下。

 しかも舞台はあの激スレ聖地の芦の湖。

 トップでバスを釣るには、
 これ以上ないほどの悪条件がそろっていた。

 それでも、
 はるばる各地から集まったトップウォータープラグ中毒の兄ちゃん姉ちゃんたち数十人が、
 もはや煮えくりかえりそうな高水温の湖面にボートを浮かべた。

 我がチーム・ハッチマッチャーズ、
 ぜんぜん勇んでないので、
 ものすごモタモタしながら最後尾の出船。

 「オレが操船したるから、ヒデちんはバス探せや」
 「オッケー」

 釣れる気なんかまったくしないけど、
 湖岸に木立がせり出していて、
 なるべく陰になっている場所を探してボートをテレテレと走らせた。

 久々に操作するエレキモーターがことのほかたのしくて、
 釣り気分そっちのけでボートを操船していると、

 「いたっ!」
 エルモンが小さく叫んだ。

 「うっそマジで?」

 エルモンの指さす方向を凝視してみればアラびっくり仰天。

 木立の陰と陽の射す境界線のところに、
 イッピキのバスがボ~ッと定位しているではないか!

 しかもすごくいいサイズ。

 スゴイやんヤバイやんはよフライ投げるべ。

 「ビゼンさん、バスバグくれる?」
 「ええでえ。どれでも好きなんつかって」

 バスバグを詰め込んだ小さなタックルボックスを開けると、
 エルモンのやつ、
 各種各サイズたくさんあるバグバグのなかから、
 しばし迷って「これちょうだい」といって摘まみだしたのは、
 よりにもよって特大サイズのヴォリューム満点ファンシー度数高めのバスバグ。
 ラバーレッグがビロンビロン揺れてるアピール度数も特大のバスバグ。

 しかしこれから狙うのは、
 この炎天下で、
 このクリアな湖水で、
 障害物も何もないところでボ~ッとしている、
 見るからにやる気のなさそうな、
 そしていかにもスレッスレのブラックバス。

 ちょっとちょっとお…そのド派手フライじゃあのバスはなんぼなんでも釣れんやろ~と思いながら、
 これはオレがいただきやな…と確信して内心ニヤリ。

 そして、
 じぶんがティペットに結んだのは、
 ナチュラル感ムンムンのちっちゃなバス・マドラー。

 そう、
 70年代~80年代の黄金期、
 芦の湖のバスをフライで釣るなら「これぞ必殺必中」と謳われたあのバス・マドラー。
 当時、
 一世を風靡したバス・マドラー。
 を、
 さらにムシっぽく控えめにアレンジしたやつ。

 しかも、
 操船している者の特権、
 じぶんに有利な位置にシレ~ッとボートを寄せて、
 いっせいので同時にフライを投げた。

 そして、
 じぶんのバスマドラーはほとんどバスの目の前にヒタッと自然なかんじで静かに着水。
 かたや、
 エルモンの投げたド派手なバスバグは、
 そこからちょい離れたところにチャポッと水音を立てて着水。

 その瞬間、
 さっきまで微動だにせずボ~ッとしていたバスがユラ~ッとうごいた。

 エルモンの投げたバスバグの着水音のせいで、
 バスが警戒して逃げちゃうじゃんホンマにもう……。

 とおもってムッとした。

 しかしなんと!
 信じられないことがおこってしまったのだった。
 
 バスは、
 こともあろうに、
 オレ様の投げた、
 いかにもこの状況にふさわしいというか、
 それ反則じゃんと言いたいくらいリアルなフォルムで水面に浮かぶバスマドラーを一瞥すらせず、
 完全無視でその真下をくぐるように素通り。

 そして、
 ポッカ~ンと派手派手しく水面に浮かんでいるエルモンの投げたバスバグにむかって、
 ユラユラ~と泳ぎ寄ると、
 フワワ~ッと浮上してきて、
 バスバグの手前で一瞬ピタッと停止すると、
 バスのやつ、
 なにを思ったのかパフッと口を開けて、
 グワボッとバスバグを吸い込んでしまったではないかアンビリーバブルここに極めり。

 「き~~~た~~~!」

 「うっそマジで?」

 ドババババッ!はげしく飛び散る水飛沫。

 みごと捕りこんだのは、
 ボテ腹あっぱれポットベリーのナイスコンディション。
 しかも50センチちかいぞこれは!

 すぐさま大会事務局に携帯で電話。

 「おっきいの釣れました!」

 「うっそマジでえ?」

 事務局長さんが電話口で素っ頓狂な声で叫んだ。

 「すぐそちらに向かいます!計量するからサカナをネットにいれて待っててください!」

 我々のボートまでフルスロットルでスッ飛んできた事務局のひと、
 ネットにいれたバスを見て開口一番、

 「うっそマジでえ?」

 芦の湖にて、
 これほどまでに「うっそマジでえ?」の声が飛び交った日があっただろうか?

 そして大会の結果発表。
 エルモンひでお他者の追従を許さずブッチギリで完全優勝。

 なぜならこの日、
 じぶんも含めてエルモン以外の数十名全員が完全ボウズ。
 なおかつみ~んな反応すら皆無という暗澹たる結果だった。

 だが、
 ここで声を大にして言いたい。

 この日この大会で真にリスペクトすべきは、
 トップで釣るには笑っちゃうほど最低の悪条件にもかかわらず、
 ひたすらどでかいトップウォータープラグを投げつづけ、
 「このプラグでこそバスを釣りたい」
 こだわりつづけた数十名の参加者の皆さん全員だ。

 それでこそトップウォーター中毒の面目躍如。

210215 (1)1

 そしてコレが、
 あの日エルモンがつかったバスバグとまったくおなじもの。

 一見すると、
 シッポも飾りも目玉もない、
 シンプルで単純な、
 古めかしいディアヘアー・バグといった体裁だが、

210215 (2)2

 バサッとV字状にトリミングしたボディ上部の、
 エッジのところから太めのラバーレッグが4対、
 上方向を向くようにセットされている。

 なので、
 ラバーが緩く曲線状のアーチを描くようになって、
 ボディから突き出ている。

 そして、
 V字カットなボディ形状のため、
 まるで氷山のような浮き方でボディの大半が水面下にめり込むように沈んで、
 このラバーレッグが突き出ている部分で、
 ちょうど水面ギリギリに浮くことになる。

 すると、
 ラバーレッグの付け根が水面に没するのではなく、
 水面に張り付くように浮く。

 あくまでも私見だが、
 レバーレッグはこのような角度と体裁にセットするのが、
 もっとも敏感に、
 そして自然に、
 かつ自律的に、
 ユララ~ンと揺れてくれるようにおもっている。

 つまり、
 ポップ音などの動きで誘うというよりも、
 ラバーレッグの揺れや振動でその気にさせるのを目論んだバスバグ作例というわけ。

 これには元ネタがあって、
 この大会の数か月まえ、
 ヒメヒラタのおリョウとふたりして、
 半野生化したニジマスや大イワナが多数入れてある、
 とある湧き水のプライベートポンドにて、
 一日中いろんな実験をしながら釣り遊んだときのこと。

 おりしもその当時、
 我々のマイブームのひとつはフォームをつかったテレストリアル系のタイイングだった。

 その日、
 じぶんはそのころ捏造したばかりの「オレノチェルノ」と名付けた私家版チェルノブイリ・アントをつかっていた。

 いっぽうヒメヒラタはコマーシャルフライで販売されている定番チェルノをつかって、
 まったくおなじポイントに投げ入れてみたとき、
 どういうわけなのか、
 我がオレノチェルノのほうにばかり大中小のマスがものすごく鋭く反応してくれたのだった。

 フライのフォルムも浮き方も、
 それほど大差ないように見えるけれど、
 これはいったいどういうわけなのか?

 そして得た考察のひとつは、
 コマーシャルフライのほうは教科書通りフォームのくびれのところにラバーレッグをスレッドで巻き止めたいつものスタイル。
 かたやオレノチェルノはラバーレッグをフォームボディに貫通させて固定した独特の体裁。

 ラバーレッグの巻き止め方による、
 ラバーの揺れや振動の微妙な違いが、
 そのときの効果の差になったのではないか……、

 そんな、
 いろんな示唆に富んだイメージの膨らむ釣りの経験がすごく痛快で印象的だった。
 なので、
 ブラックバスのトップウォータープラグ大会をまえにして、
 夢想妄想の風呂敷をひろげながら巻いたのがコレだった。

 そのときはまさか、
 じぶんが実践するまえに、
 よりにもよってエルモンにやられちゃうとは夢にも思わず……。

 そしてなんといっても、
 じぶんがつかうために巻いておきながら、
 あの日の状況ではド派手過ぎて、
 とてもつかう気にはなれなかったこのバスバグを選んだエルモンひでおの釣りセンス…おそるべし。

 のちのち、
 現在のじぶんのフライタイイングに対するアプローチに、
 ひとかたならぬ影響を与えてくれた、
 いまだに鮮烈に記憶している一幕のお話しでございました。

210215 (3)3
 
 ちなみに、
 オレノチェルノのほうは、
 当ブログの過去記事にて、
 道内各地のニジマス釣り体験とともに、
 だいぶまえに取りあげまくってます。

 この話し後編につづく。


 
copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.