BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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センチメンタル・リバー
 光陰矢のごとし…
 あっと気がつくと、
 もはや12年前の夏。
 今だ輝きが失せない思い出のヒトコマを……

 「そうか、ネバーシンク・リバーに行ってみたいのか、
 それじゃあとっておきの場所を教えてあげよう」

 と言ってくれたのは、
 ニューヨーク郊外で、
 ひとり細々とグラスロッドを作っていたお爺ちゃん。

 川へと降りる森の小道に、
 初夏の鮮やかな陽射しが降り注いでいる。
 それが木漏れ日となって木立に射し込み、
 いくつもの柔らかな光の筋が、
 緑のシダ草の絨毯のような地面に降り注いでいた。

 静かだ。

 川は、
 平瀬と浅いプールがつづく、
 大きくもなく小さくもない渓流だった。

 あこがれだった、
 キャッツキル・ドライフライ生誕の川は、
 中部地方あたりの里川のそれと、
 ほとんど同じようにぼくの目に映った。

 陽の光の具合や、
 川底や水の色の加減からなのか、
 ブルーダン色のハックルのフライがよく見えた。

 そんなことも、
 いちいち感動の対象だった。

 いちばん最初に結んだフライは、
 もちろんクイルゴードンの12番。

 当時の愛竿だったペイン100番に、
 「故郷に帰ってきたんだね…」
 などと語りかけてみたことなどを思い出すと、
 そのセンチな若さが、
 今はものすごく恥ずかしい。

 平瀬のいたるところから飛び出してきたブルックを釣り上げて、
 ハリを外して逃がそうと思って水の中で身体を支えると、
 背中の鱗が陽の光に反射して、
 まるで金粉をまぶしたようにキラキラ輝いて美しかった。

 水通しの良い瀬のヒラキには、
 大きくはないけれど乳白色の魚体のブラウンがいて、
 ネバーシンク・スケーターを躍らせると、
 ゴボッと追い喰いして、
 何匹かはアワセ切れした。

 ヘタクソやったなあ…今もやけど…。

 この川に惚れ込んで、
 この川を舞台にして、

 セオドア・ゴードンは、
 ひとり静かにアメリカ東部版ヒラタカゲロウを観察しながら、
 ピーコッククイルをむしってクイル・ゴードンを巻いた。

 それからすこしだけ時代がすすんで…、

 エド・ヒューイットは、
 この川で多くの良き仲間たちと豊かな釣り人生を分かち合いながら、
 フックにハックルをグルグル巻いて、
 ブラウン・バイビジブルやネバーシンク・スケーターを考案した。

 生き方はまるで違ったけれど、
 どちらの人生も、
 衰え知らずのフライへの情熱というところで、
 深く魅了される、
 敬愛してやまない先達ふたり。

 そんなひとたちが愛した川は、
 まるでデジャヴかと思うような、
 目にも心にも馴染んで映る渓流だった。

 んだけど……、

 夕暮れが近くなって、
 プール対岸の岩盤際で大きなライズ。
 待ってましたと、
 大きなホワイトウルフをぶち込むと、
 ガボンッと出て、
 リールがギ~~~ンッと鋭く鳴った。

 「うわっ!でかいっ」

 と思いきや、
 あがってきたのは、
 たいしてでかくもないスモールマウスバスだった。

 「スモールって、引きメッチャつええな~」

 歴史小渓流ロマンの旅には、
 オチまでついていた。
 悪くない……。

 豊かで美しく、
 やさしかった流れは、
 今もそのままでしょうか……。
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