BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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解禁日
 先週の土曜日、
 いつもの吉田さんと釣りにでかけた。

 まる一日、
 釣りに没頭するのは、
 じつに3か月ぶりだ。

 そんなん、
 ここ数十年ありえへん。

 逆になんだか感慨深い。

 

 釣り場にむかう道中、
 小雨がぱらつきはじめた。
 イヤ~な天気だ。

 「あの、この天気だし、きょうはあっちの川にしませんか?」
 と、
 車の窓をたたく雨粒を見ながら、
 通い慣れたラクな川を、
 オズオズと提案した。

 が、
 「ナニ言ってんの、あの川に行くには今の季節しかチャンスないんだよ、
 なんたってバージンですよ、手つかず間違いなしなんだよ。きょうは雨天決行でいきましょう」

 「……はい……」
 
 即座に問答無用で却下されちゃった。

 合羽を着込んで山道をしばらく歩いて川に降り、
 しばらく川のなかを歩いて、
 川を渡って山の急斜面をよじのぼり、
 フキの葉っぱをかきわけながら、
 斜面を登ったり降りたりして上流目指して歩いた。

 川は、
 足元からスコーンと切り立った崖のした、
 はるか眼下を流れていて、
 高所恐怖症のボク…ちょびっとビビリんぐ。

 「ほんっとに命の危険はなしに降りられるんですよね?間違いないですよね?」

 「だ~いじょうぶ、な~んてことないから~」

 わざわざ「なんてことはない」と念を押すところが逆にシンパイ。

 吉田さんが「ちょっと危ないよ」と言ったところは、
 ぼくには「ものすごく怖かった」実績が何度かあるからだ。
 
 いくつか沢を横切って、
 何本めだったかの沢づたいに下降して、
 川原に出た。

 谷に降りたら、 
 雨がやんだ。

 よかった、
 ほんとによかった。

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 渓相はなだらかで、
 フラットな浅いプールとチャラ瀬が連続している。

 イワナはいっぱいいて、
 それがぜんぶ瀬やプールのヒラキのはらい出しギリギリの浅場に並んでいた。

 沢山いるのも考えものだ。

 どんなに用心してポイントに近寄っても、
 どこからともなく、
 そこらじゅうから、
 数匹のイワナがビュンビュン走り回って、
 狙っているポイント目指して遁走。

 といってイワナはスレているわけではなく、
 むしろ透明感さえ感じさせる無垢。

 うまくにじり寄ってヒラキにフライを流すと、
 流れに溶けこんで青灰色に見える魚体が、
 小砂利の川底からスワ~~~ッと浮いてきて、
 ゆ~っくりバクッと食った。
 デイドリーミングここに極まる…というかんじ。

 クイッと合わせて魚体がひるがえると、
 陽の光の加減なのか、
 あたりの風景に馴染んで溶けこんでいた魚体が、
 いきなり赤金色にギラギラッと鈍く輝くのが素晴らしくイイ。

 それで気がついた。

 いつのまにか、
 柔らかな陽の光が深い谷間にも差し込み、
 背後の森ではハルゼミしぐれのシャワシャワシャワーが降り注いでいる。

 イワナの反応はますます良くなった。

 水深が膝くらいもない浅いプールのヒラキに、
 良いサイズのイワナが3匹並んでいた。

 このポイントはボクの順番です。

 (よしよし、待っててね~)
 
 フライはまずまずのところに着水して、
 うまく最後尾に並んでいたイワナの鼻っ面目指して流れていく。
 もう確実に、
 どうしようもなく出るはずパクンと…。

 (さんびきゼ~~ンブ釣っちゃうゾ)

 と、
 おもったら、
 「あ~~~っ!こんなとこにタケノコい~~っぱい生えてるよ~~っ!」
 と、
 吉田さんが叫んで対岸のササ藪に駆け寄った。

 そのひょうしに、
 いままさにフライに向かって浮上しつつあったイワナ(エエさいず)が、
 バビューーーンッと走り去ってしまった。

 かるくイラッとしながら、
 こんどはやや上流の岩陰に寄り添うように定位しているのに狙いを変えて、
 「出るならココ」ってところをフライが通過しようとしたとき、
 
 「あのさ~~、ナイフとかもってない~~~?」
 対岸の笹をガサガサ揺らしながら吉田さんが言った。

 「もってませんっ!」

 その一瞬、
 フライから目を離したほんの一瞬を、
 まるで狙いすましたかのようにコポッとでた。

 ズボッとスッポ抜いた。

 と、
 そんだけワ~ワ~おさわがせしたあとで、
 三匹目を釣った。

 「タケノコ食べる?」
 「え?、くれるの?、食べる食べる~」
 かる~くイラッとしたくせに、
 たいへんありがたく収穫ぜんぶいただいた。

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 …うわ~スゲ~きれい。
 タラハーンズ・ワンダーみたい……とおもった。


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 タラハーンズ・ワンダー


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 フライをなくさない開けた川原、
 箱庭みたいな小砂利の流れにあふれるイワナ……、

 ちょっとさすがに釣りダレたころ、
 使いつづけたフライもこんなになった。

 ピーコックのコロッとしたボディがついていたころは、
 ナチュラルドリフトでガンガン来たけれど、
 ボディがなくなってからは、
 フライが水面に浮いていようが沈んでいようが、
 ビリビリ震わせたりツンツンしたほうが、
 反応は断然よかった。



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 午後おそく、
 吉田さんがこのサカナを釣ったころ、
 また空が暗くなって、
 小雨がパラついてきた。

 これから、
 今日これまで来た行程を引き返すのかとおもうと……、

 「いや~、たいしたことないよ、二時間かかんないよ」
 「そっすよね~、今日そんなに釣りのぼってないし……」

 まず、
 じぶんたちに暗示をかけた。

 勢いを増していく小雨が不気味。

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 雨でグチャグチャ、
 ズルッと滑りやすい泥土にビビリいらつきながら、
 フキに覆われた山の急斜面をヒイヒイハアハアのぼり、
 これからフキの葉っぱの下のルートを確認しながら、
 ひたすらフキまみれで歩こうかという矢先、

 「吉田さ~ん、記念にココで写真撮りましょうよ」

 というと、
 
 吉田さんは
 「ええ~~……」
 と、
 イヤそ~に言った。

 逆の立場ならボクも同じように言う。

 そしてこのあとすぐ、
 まえぶれもなくザバザバの土砂降りになった。

 一気にズブヌレ。

 こんなとこで……
 まだまだまだまだまだまだ先は長いのに……、

 っていうか、
 メガネが雨水やら汗やらなんやらワヤクチャで、
 な~~んも前が見えん。

 ズルズルの泥の土壁をズリ降りたら、
 そこはツルッツルの岩肌の沢で、
 ほんのチョイ先がエライ垂直のとても高い滝で、
 そこから沢水が一気にズドド~ッ眼下に落ちている。
 両岸は高い泥のかべ。
 そんなとこで、
 うえからしたからベッチャベチャに濡れそぼりながら、
 泥かべをあがるルートがわからなくなって……マジ涙目ウルウル。


 もうヤダこんなとこ……。

 たしかに、
 あのときかたくそうおもったけど……、


 無事にクルマの止めてある林道にたどりついて、
 ホッと一息してタバコに火をつけたとたん、

 もうぜ~~~んぶ、
 ニヤつく思い出に変わっているのは……ココロが健康な証拠です。

 クルマについたら、
 それを待っていたかのように雨がやんだ。

 なんでやねん?
 ってかんじだった。

 足跡ひとつなかった無垢の川は、
 これから瞬く間に、
 生い茂る木々とフキの葉に包み隠され、
 とりつくしまもない急峻な滝に守られて、
 これからまたひっそりと……。


 かえりみち、
 今シーズンは、
 きょうがボクにとっての解禁日だったんだな~と、
 そんなふうにおもった。
 釣り気分が、
 ゆっくり、
 じわじわと釣りゴコロを満たしていくようだ。




 3月のおわりごろ、
 やっぱり吉田さんに、
 「我々がしょげていては申し訳が立たないので、ここはひとつ、元気出して釣りに行きましょう!」
 と誘っていただいた。

 いちもにもなく同意して、
 かねてより調査しようと計画していた川へ行った。

 そのとき、
 「あ~、オレはまだダメだ~」
 とおもった。

 なんか、
 心ここにあらず。


 もし逆の立場なら、
 そんなことされたらはばったいので、
 喪に服すとか、
 義理立てするとか、
 そんな気なんかぜんぜんない。

 ないけど、
 やっぱり、

 もちろん、
 悲しみはおおきい。
 ってゆうか、
 ぶっちゃけはかりしれん。

 加藤さんは、
 ボクの「自分の持っているもの」を本気で認めてくれて、
 個性を欠点ではなく「持ち味」として本気で接してくれた、
 うまれてはじめての社会のオトナだった。

 十代のころ、
 そんなオトナがいるとは思ってもみなかった。

 そして、
 今にして思えば、
 案外ココが重要だったとおもうけど、
 さいしょのころはロクに口も聞いてもらえなかった。

 しかし……、

 若いころにありったけ注いでもらった親愛の情と、
 いただいたもの、
 おしえてもらったもの、
 たたきこまれたもの、
 もう三つ子の魂百までもだよ抜けねえよ……。
 
 なんだけど、
 なんにもお返ししませんでした。
 しようともしなかった。

 不義理ばかりした。

 その悔いをこそ、
 いまももてあましている。
 

 「またいつか……」はなにかと便利な言葉だ。
 でも、
 大人になると、
 その「またいつか……」を実現するためには、
 けっこうな「意志」がいる。

 そして、
 この歳になると、
 その「またいつか……」を実現したくても、
 もう出来ないことだってあり得る。

 などと、
 ことし47にもなろかゆうオトナが、
 今ごろゆうてたら世話ないか……。

 まあナンですね、
 してもいい後悔と、
 ぜったいしたくない後悔を見分ける術って、
 ものすごく大切やね。

 

 



 釣りからかえってきてメールをみると、
 額装したサーモンフライを送らせていただいたお客様から、
 無事に到着を知らせるメールが……。

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 ウッ・・・・・・・・・・か・か・か・感無量

 ほんとにありがとうございました。

 万感の想いひとしおで巻いたフライたちが、
 自分の知らない場所に飾られて、
 存じ上げない方々が見てくださる……このウレシハズカシの喜び……たまらんもんがありますねん。





110605(8)8.jpg
 
 みつぐ悶絶ハッピー

 この数カ月、
 フルドレスサーモンフライ・タイイングにはほんとに助けてもらっちゃった。
 なんか、
 すがるような気持ちで取り組んだ。
 良い経験と勉強になった。
 これからも末長く、
 そしてより深みと高みを目指す親密なお付き合い、
 どうぞよろしくね。

 
 タケノコは、
 皮ごとあぶって、
 簡単な酢味噌もつくって、
 皮剥いて酢味噌つけてむさぼった。

 フキまみれの山をあるいていたとき、
 ツーンと鼻についた草いきれの香りがした。
 あれとおんなじ味がしてオツだった。

 とてもとても良い一日。
 
 
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