BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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林道にて
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 聞いてくれる?
 
 その日、
 「きょうはぜったいあの場所から川にはいって、
 あっちとあそこのポイントはこうやってああやって狙ったみたろ」

 などと、
 前夜から車中泊。
 その場所の入渓地点にほどちかいキャンプ場にて準備万端。

 さあ行くデ!

 と翌朝、
 といっても9時とか10時とか、
 かなりユルイ時間に馳せ参じてみれば……、

 「えええ~~マジ~~~チエッッッ!!

 一台分しかない入渓地点のスペースにクルマ、
 止まってまんがなガックリ。

 まあ、
 この時間だしな~、

 とおもいながら、
 さらに林道沿いにかなり上流までクルマを走らせて、
 木立が空き地にちょうどいい日陰をつくっているところに止めて、
 窓も全開にして森の風を浴びながら、
 きょうの釣りど~すっかな~とか逡巡しながらも、
 その空き地でコーヒー淹れて早々サンドイッチもくって、
 釣りもしてないのに、
 なんちゅうかくつろぎモードはいってしもて、

 盛夏のころの森のキラーたち、
 アブだのカだのブヨだのなんだの、
 ウザイ虫もいなくなって、
 陽射しは真夏の暴力的な暑さからすっかりやわらかくなって、
 透明な光に満ちた空気はすがすがしく、
 日陰にはいるととても快適。
 そこにですね、

 深い樹海の森から吹いてくる、
 純度の高い乾ききったそよ風が微風が、
 ソワソワ~とやさし~く肌をなでていくんですよ。

 もう堕ちていく~~。

 一〇〇〇〇〇〇ドルのそよ風。

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 と、
 そのような状態のとき、
 下流の方からクルマがドドド~ッと土埃をあげて走って来て、

 「あ、下にとまってたクルマや」

 とおもいながら見てたら目の前で止まった。

 で、
 なかから出てきたのはお爺ちゃん。

 どう見てもなんぼひいき目に見ても、
 むしろオジサンと呼ぶ方が失礼じゃないのか?、
 とおもうお爺ちゃん推定たぶんまず70代前後?。

 そのお爺ちゃんが、
 すごく気さくなかんじで「釣りですか~」というので、

 「そうですよ」

 「ちょっと聞きたいんですけど、この上流に沢あるでしょ、あそこから川に降りられますかね?」

 え?そんな無謀なことすんの?
 とおもいながら、

 「沢にかかってる橋のところから降りられますけど、川までだいぶ歩きますよ。落差もきついですよ。
 それよりもその沢の下流から直接川に降りられるところありますよ」
 と提案した。
 
 なんだけどお爺ちゃん、
 「そうなの、でも沢から降りられるんだったら、降りてみるよ。沢も歩いてみたいから」
 と、
 なんていうか精気ムンムンで言うの、

 「あの、下流のほう、どうでした?下流の沢のところにクルマ止めてたでしょ」
 「あ、クルマ見てたの?下流はねえ、ちいさいのだけど二匹つったよ。スプーンで」

 え?、

 「あの、ルアー釣りしてはるんですか?」
 「そ、ぼくルアー」

 たいへん失礼ながら、
 お見受けする御年齢から察するに、
 てっきりエサ釣りだと思いこんで話していたので、
 おどろいた。

 っていうか、
 エサ釣りであっても、
 けっこうな歩きと渡渉を繰り返すこの川なので、
 おどろくぞ。

 そしてハッ、
 とおもう。
 (…もしやこのお方、50年とも60年ともしれず、ニッポンのゲームフイッシングの歩みとともに、
 この北海道を釣り過ごされた…偉大な重鎮最長老…やんごとなきお方…レジェンドなのではないのかないのかないのか!!)

 ひょっとしたら、
 北海道の釣りの壮大な歴史ロマンがうかがえるかもしれない。
 あと、
 デキレバ現在の特選マル秘釣り場情報トカモキキタイナ……。

 という、
 畏敬の念と下心でもって、

 うやうやしく、
 かるく緊張しながら聞いてみた。

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 「あの、ルアーやられて、もう長いんですか?」

 「ううん、2年」

 え?、

 「去年からはじめたからさあ、ことしで2年目」

 (…え?そうなの、あの、こんなんいうたらなんやけど、ビギナーさんですやん…) 

 がっくりきたっていうわけやないけど、
 期待したぶん気が抜けた。

 そしてお爺ちゃんはつづけざまに、
 ぼくにこのような質問をされた。
 なんのくったくも感じさせないで。

 「あのさあ、下流の林道を出たところにおおきなフチあるでしょ。
 あそこに夕方はいってみようとおもうんだけど、スプーンで釣れるかなあ?」

 しかしなんちゅうか、
 お爺ちゃんは、
 ほんとこう素晴らしく天真爛漫なかんじで、
 ほんとルアー釣り楽しいんだろうな~って勢いで、
 ぼくに聞いてくるのね、
 「スプーンで釣れるかな~?」
 それがまたぼくにはスゴクかっこよく映ったし響いたんだよな~。

 そして、
 お爺ちゃん、
 スプーンが好きなんだな~とおもいながら、
 そして、
 ぼくのこともルアー釣り師だとおもってんだな~とおもいながら、

 「いいっすね、あそこのフチ深いから、重いスプーンでドーンと沈めてみたら、
 でかいのガツンとくるかもしれませんね」

 というと、
 「そ~れいいね!しかし、大物はどこに潜んでいるんだろうね。じゃ、沢のほう行ってくるから。いろいろありがとう!」

 元気いっぱい、
 はつらつなかんじで飛びだして行かれた。

 お爺ちゃんと話していたのは、
 たぶん10分くらいもなかったとおもう。

 でもなんかねえ、
 元気とパワーを注入してもろたかんじで、
 
 そのあとも爽やかな余韻にニコニコしててんけど、

 ハッ、
 とおもって、

 「あ~~~失敗した~~」

 と声に出た。

 そら、
 ものすごいレジェンドにも会いたい。

 でも、
 70代前後のルアー歴2年のビギナーさんて、
 ものすごくない?
 ものすごすぎへん?

 しかも、
 もうなんちゅうか、
 オレはルアー釣りに夢中だぜノリノリだぜ的オーラがビンビンやねんで。

 これぞオシャレっていうか素敵っていうか…、
 ホンモノの人生の勝ち組とは、
 こんなヒトのことをいうんだな~って初めて思わされたっていうか、

 あのとき、
 もうちょっとだけでも、
 なにかお話し聞かせていただきたかったな~、
 と心残りになった。

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 とはいっても、
 お爺ちゃんのおかげで、
 なんかこの日はずっとニコニコ。

 釣りごころには、
 「ここに存在していることに感謝」的な余裕がうまれ、
 森の精霊もピ~ヒャララ。
 ぼくは詩人になりました。

 この大自然を謳っちゃうよ。

 河原の石のあいだをノソノソ歩きながら、
 なんでかいつ見ても水際にむかって歩いていくピーコック色の甲羅のコイツらを見ては、

 「ああ、この恵みと滋養に満ち満ちた深い森こそが、星の数ほどのハムシどもを育ててくれて、
 そしてコイツらこそがまた、







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 この偉大なサカナを育ててくれるのだなあ……、

 輪廻転生に感謝

 と、
 邪念なく心の奥底からそのように感じられる日は、

 たいがいええのん釣れますねん。

 ちなみにこのマスを釣りあげたのは、
 お爺ちゃんが最初にはいっていた川の下流。
 
 お爺ちゃんに下流のどのポイントを攻めたのかザックリ聞きながら、
 (……ルアーだとアソコとアソコはやってないねんな……)
 と、
 「竿抜け」ポイントを計算高く把握しておいて、

 かつ、
 この川のこの時期、
 一日のうちでサカナの活性がいちばん高いとおもっている時間、
 ごっついのんが食事に出てくる確率がもっとも高いと信じている時間にそそくさと行って、
 狙いをつけていたピンスポットだけ慎重に狙って、
 釣ったってん。

 シャクレ顎のドスコイ・フルパワー・バリバリ全開いまが飛びごろ走りごろ、
 パワーも魚体もこの季節こそのフル・コンディション。

 取り込んだ際には、
 その魚体のオーラを浴びながら、
 「やったあ!」と声に出さずにいられない勲章ですね。


 

 


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 お日様が真上からサンサンと川面を照らす白昼の午後1時ごろ。

 チャラチャラのチャラ瀬を、
 まるでマッチの火が水面で燃えているかのように流れている、
 バーント・オレンジのハックルに萌える午後。
 
 すばらしく澄んだ釣りごころで、
 すばらしく美しい森と川のなかで、
 すばらしすぎるマスと出会う午後。

 まるで、
 なにもかもが、
 あらかじめ演出されていたのではないかとさえ思ってしまった、
 美しくゴージャスな白昼夢の午後でした。


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 帰路、
 とつぜん無性にこの曲が聴きたくなって、
 林道わきに車を止めてCDを探してかけた。
  The Heptones - Road of life

 万物の長に感謝、なんかわからんけど、いろんなものに感謝

 そんな気分で。




 
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