BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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遭遇
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 道南地方、
 落ち葉が川面を埋めはじめた初秋の小渓流にて。

 この日の体験での、
 この感動と静かな興奮を、
 いかにしてお伝えしようか……、
 と、
 誰にも聞かれてはいませんが、
 思いを巡らせております。

 おとつい、
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 こんな川でイワナ釣りを愉しんだ。

 紅葉間近の美しい森のなかを流れる、
 まるで箱庭みたいに穏やかな小渓流を、
 気心の知れた友人とふたり、
 なんだかんだと好き勝手しゃべりながら、
 ユル~イかんじで釣りのぼっていた。

 運悪く、
 釣りはじめてすぐにドシャ降りにちかい通り雨が降り、
 不用意にもカッパも用意してない。
 テンションはダダ下がり。

 そして寒い。
 涼しいんじゃなくて寒い。

 もしひとりだったら、
 ここで即撤収していた状況です。

 が、
 普段はとても落ち着いた穏やかな印象の、
 ぼくよりもひと回りほど人生の先輩の友人は、
 (けっこうのんびり釣りはるのかな~)とおもっていたら、
 カッパ着込んでノリノリでガンガンくるので、
 なんだか楽しくなってきて、

 じぶんもつられて、
 そうするとなんかノッてきて、
 ふたりでバンバン叩きのぼった。

 うれしいことに、
 雨もあがって陽が射しこんできた。

 ヤングなニジマスが数匹、
 4番ロッドをキュ~~ンと曲げてくれた。

 7フィート前後の4番。
 竹竿を愛でるには絶妙なスペックですね。
 このお気に入りの竹竿を、
 キレイな渓流で自在に操りながら釣る野性の尺ニジマス。
 これ、
 格別のフライフイッシング。

 川を釣りのぼってしばらくすると、
 ぼくらの目の前の上流に2羽のカワガラスが飛んできた。
 我々も狙いをつけていた上流の好ポイントにジャバッと飛びこんで、
 そのポイントの瀬頭の岩に飛び乗ると、
 ぴこんぴこんケツ振りながら忙しなくキョロキョロ。

 で、
 ぼくらがそこまで釣りのぼると、
 まるでそれを待っていたかのように、
 また次の好ポイントまで飛んで行って、
 ザババッと水飛沫をあげたりされた。

 その繰り返しが、
 もう延々つづく。

 それも、
 かならず!我々が狙いたい場所に着水して、
 その場所でバッチャバチャやりたい放題したのちに、
 岩に飛び乗ると、
 二羽でケツ振りまくり。

 実りの秋のおかげなのか、
 夏のころよりもさらにポテッとふくよかなカワガラス。
 なにやら二羽でちちくりあいつつも、
 つかず離れずケツ振ってる様子は、
 なかなかかわいらしい。

 かわいらしいねんけど、

 「あのクソカワガラス、挑発してますよ!」
 「あれ、なんかもう明らかに悪意をもってやってますよね~」

 いい加減マジイライラ……。

 かなりの時間、
 そのままカワガラスの妨害に悪態をつきながら釣りのぼって、

 とある地点にきた。
 いつものように、
 カワガラスがぼくらのすぐ上流のポイントに飛んで行って、
 ジャババッと着水したかとおもったら、

 そのカワガラスがいきなり、
 ものすごい慌てた様子で、
 すごい勢いで下流にいるぼくらのほうに向かって飛んできて、
 手を伸ばせば掴めるくらいのところ、
 ぼくをかすめるようにして下流に飛び去っていった。

 「やったあ、カワガラスのやつ、やっと下流に飛んで行きましたよ」
 と、
 ぼくのすぐ前を歩いていた友人に声をかけたその瞬間、

 あくまでも目測で距離10メートルほど、
 体感的には「目と鼻の先」の上流対岸にあった巨木の根元、
 カワガラスがUターンしていったところで、
 ドスドスッ!という音がして、
 非日常的な巨大さと重量感の真っ黒な生き物が、
 河原に転がるようにおどり出てきた。

 「あっ!クマッ!!」
 友人が声をだした。

 最初にまず感じたのは、
 とにかくものすごいオーラ。
 えもいわれぬ野性の「気」が、
 じぶんの身体全体にドーンとぶつかってくるような迫力だった。

 が、
 ぼくらはほんとに幸運だった。

 河原で瞬間とまってぼくらを見たクマは、
 あわてふためいた様子で、
 そのまま上流にむかって一直線に走ったかとおもうと、
 いきなりパッと向きを変え、
 対岸の森のなかに消えていった。
 ほんとに一瞬のできごとだった。

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 クマが消えていった地点に行ってみると、
 水が枯れたような沢があった。
 クマはきっと、
 この沢伝いに森の奥深くに逃げていったのだろう。

 友人とふたりして、
 しばらく放心状態で、
 クマが消えていった森の奥を眺めた。

 不思議と恐怖心はまったくない。
 
 まずなによりも、
 この地方の野山歩きに精通しており、
 ナタやスプレーで完全武装した友人がいたこと、
 それから、
 ぼくらに驚いたクマが河原に出てきたとき、
 「あ、なんか向こうのほうがビビッてはる」とハッキリ感じられたことで、
 恐怖をかんじるとかどうとかよりも、
 この瞬間を目と記憶にハッキリ焼きつけておかなければ!とおもった。

 もうひたすら大感動。
 そして、
 心の奥底から湧き出てくる、
 神々しい野性の生き物に対する畏怖の念。

 すごかった。
 なにもかもが。
 まごうことなき山の神々の長だった。

 いまもこの余韻に浸っている。
 眼を射るように鮮やかな漆黒の毛をなびかせて、
 あの巨体が、
 ぼくらの目の前を疾風のように駆け抜けていったあの光景。
 それはもうあまりに鮮烈で……。 

 「いや~、なんか、北海道の大自然に祝福してもらった気分ですわ~」
 と友人にいうと、
 「ほんとだね!素晴らしい体験だった!」
 と感極まった口調でおっしゃった。

 ビビリ倒すだけじゃなくて、
 この感動を共有できる友人と一緒に見れたことも、
 よろこびを倍増させてくれた。

 そのあと、
 なんだかふたりともノリにノッちゃって、
 ズンズン釣りのぼった。
 しかも、
 クマがカワガラスを追い払ってくれたのがよかったのか、
 どのポイントからもイワナたちがポンポン飛び出してくれて…、

 「ちょっと、その竿で釣ってみていいっすか?」
 「お、ぜひぜひ…」
 友人の愛竿をお借りして、
 イワナを釣りながらその感想でワイワイ盛りあがったりして……、

 やはりアレですね、
 あるていど空気抵抗のあるフライを、
 近距離でチョンッと投げてブレずにピタッとフワッと、
 ピンポイントにポチョッと落とせる竿はヒジョ~にカイカンですね。

 そんな竿は、
 たいていサカナの引きの感触もたまんないよね。
 曲がりくねる竿も乙だけど、
 イワナの引きが手元にクンクンクンクンダイレクトにくるのが好き。

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 まことに充実した、
 濃厚で贅沢な一日。

 すばらしかった。
 


 
 

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 そして、
 生まれてはじめての野性のカムイとご対面させてもらった、
 まさにそのときつかっていたフライがコレ。

 ヒグマのとある部分のアンダーファーをダビングしただけのシンプルなドライフライ。
 今シーズンもっとも突っ込んで、
 集中的につかっていたフライのひとつ。

 写真のフライはつかい込み過ぎて、
 もうボッサボサ。
 もはや当初の原型をなしていないけれど、
 ハリ先が鋭く活きているかぎり、
 まだまだイケル。
 というよりも、
 この状態の方がよっぽど効く。

 水面に浮かべると、
 何十匹ものイワナやニジマスたちにかじられて、
 ボサボサに毛羽立ったダビング・ボディが、
 サワサワとゆったりした動きで水流になびいている。

 その様子が、
 あのクマが疾走していたときの毛の動きを連想させた。

 なんと感慨深いことか。

 ぬわんちゃって、
 きょうは言わせて、
 なんちゅうてもワシいま吟遊詩人になってるから……。

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 というわけで、
 話しは変わるけれど、
  
 たとえば、
 林道や河原で、
 「いまさっき、ここを歩いたんだろうな~」と推察されるナマナマしい足跡とか、
 「いまさっき、ここできばってはってんな~」と推測される湯気が立っているようなウンコとか、

 あるいは、
 深山渓流にて、
 「この川のカーブのむこうに確実にいてはるしかも怒ってはる……」
 瀬音つんざく迫力で響いた重量級の唸り声とか、

 などなどなどなど、
 その気配や痕跡に遭遇する機会は過去幾度かあった。

 まことにお恥ずかしいかぎりだけど、
 そうした気配や痕跡にたいして、
 生意気にも慣れっこ気分になっていた反省も大いにある。

 そしてまた、
 このような釣り生活をつづけていると、
 きっといつかは実際にご対面する日がやってくるのかもしれない。
 
 むしろ、
 こんだけ行ってるのに、
 なんで会わないのであろうか?

 ぐらいに思っていた。

 で、
 こうしてご対面して赤裸々にまずおもったのは、

 おどろくほど俊敏なうごきと身のこなし。
 走ってるときの素早さもポーンと飛んで沢を登っていくときも、
 もうまるでネコ。

 あのキョ~レツな野性のオーラ爆裂の巨体が、
 あんなスピードで、
 怒り狂いながら突進してきたとしたら……、

 スプレー?
 ナタ?
 ぼくはむりむりむりむりむりむりむり…とても懐から武器出して構えるヒマというか、
 じぶんの運動能力精神力ではとても余裕ない。 

 なので、
 出会って防戦する装備でなく、
 「ぼく、ここにいてます。スイマセンけどどいていただけますか?」
 と、
 こちらの存在を先方にあらかじめお知らせしまくる方向を、
 今後はより強化するようにしたい。

 単独釣行では、
 まめに笛吹くとか、
 蚊のいない季節でも蚊取り線香炊くとか、
 河原にすわってなにかするときはタバコ吸うとか、
 そんな程度やけど。

 で、
 もひとつおもったのは、
 あんまり舐めてかかるのはすごくいただけないけど、
 ビビリすぎるのもいかがなものか?

 あんなんに襲われたらパニックになるのわかってるんだから、
 万が一のそのときすこしでも冷静に対処できるように、
 常に平常心も大事だな~とおもいました。

 いずれにせよ、
 あんなすごい生き物が生きていける自然に、
 こうして日常的に行けて、
 釣りができる幸運をかみしめつつ感謝しつつ、
 やおよろずの神さん今後ともひとつ、
 なにとぞよろしくおねがいいいたします。

 って、
 あらためてそんな気分です

 やっぱ北海道の自然パね~よスゲえなメチャすきマジ素晴らしい
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