BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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Unfinished melody
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  Augustus Pablo - Unfinished Melody ← Album Version

  AUGUSTUS PABLO - Unfinished Melody [1976] ← Pre single version

 オーガスタス・パブロのアンフィニッシュド・メロディ邦題「未完の旋律」
 レゲエの世界ではとくに珍しいことではないが、
 アルバムに収められたテイクとシングルのテイクでは、
 曲のミックスがまるで異なっている。

 アメリカの大手レーベルからリリースされ世界中で聴かれることを念頭に置いたアルバムのほうは、
 パブロのメロディカを曲の全面に押し出しながら、
 誰かのハーモニーや金琴の音をオーバーダブしてゴージャスに飾った、
 フワフワとした夢見心地な作り。
 対して、
 ジャマイカ現地に向けて自ら運営するレーベルでリリースしたシングルのほうは、
 主役であるメロディカを曲の中心に据えながらも装飾を削ぎ落せるだけ削り取り、
 曲の心臓部分となるリズムをこそ最大限に強調させた力強いドラム&ベース・スタイル。
 
 どちらもこれがホンマモンのダブワイズ。
 どちらもおなじように素晴らしいとおもう。

 ひとつの曲を、
 ミックスやアレンジでまったく異なる印象に変えてしまう、
 ときにはミックスの妙によって聞き手に伝わってくるメッセージすら別のものに変えてしまう魔法の音楽。
 10代の頃よりそんな音楽が常に日常の生活のなかに溶け込んでいると、
 気がついたらこんなオトナの子になってしまいました、
 という例を以下に……、

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 先週の月曜日、
 渋谷サンスイにてやらせていただいたタイイング・デモの最終日、
 この日は「ウエットフライ」がテーマになっていた。
 事前にスタッフの方より、
 マリッドウイングやミックスド・ウイングなどサーモンフライのウイング造作のリクエストを戴いていたこともあり、
 当日はフルドレス・サーモンフライを簡素化した実戦向けのこのテのスタイルを紹介する心づもりで準備していた。
 んだけど、
 急きょ予定を変更した。

 三日間あったデモの会期中に、
 自分の心境が心変わりしちゃったのだった。

 ご参加いただいた方々の熱気に感化されて、
 だれよりもまず自分がノリノリになっちゃったのだった。

 かくして、
 レア素材のパーツは代用素材で充分に巻けるアイディアなどもご披露しながら、
 かの銘針「ジョック・スコット」をオリジナル・フォルムに忠実な完全フルドレッシングで、
 すべての工程をあますところなく解説しながら、
 一から十まで人様のまえで巻いてみようじゃないかと思い立ったのだった。

 当初はそのような予定はなかったので、
 最後の最後に巻き止めるホーン(触角)となる2本のマコウのファイバーを持参せず、
 やむなくこれをオミットしたのは痛恨の極み。
 だが、
 フックサイズ2/0 のブラインドアイ・サーモンフックをバイスにはさんで、
 ガットアイの取り付けから下巻きにつづき、
 ティップ~タグ~テイル~ボディ~ハックル~アンダーウイング~メインウイング~サイド~ルーフ~チーク~トッピング、
 そしてヘッドの成形に至るまで、
 もうなにからなにまでフルドレス・ジョックスコットの工程をぜ~~んぶ人様のまえで晒しちゃったの……。

 ドキドキハラハラの初体験初チャレンジでした。

 フライが無事に出来あがったときには、
 見てくださった皆さんよくぞここまでお付き合いくださいまして……、
 と、
 頭の下がるおもいだった。

 午前10時まえからはじめて、
 お昼休憩を1時間ほどとり、
 都合2回ほど約10分くらいのタバコ休憩をいただいて、
 フライが完成したのが午後2時すぎ。

 なので、
 フライを巻くのにかかった所要時間は実質3時間ほどだろうか。
 もちろん、
 ウイング各素材のファイバーをマリッドする作業や、
 ハックルや各種の素材をスキンから選び出す作業などもじっさいに巻く動作とおなじくらい重要。
 というわけで、
 こうした下ごしらえや下準備作業もまた実際にやりながらの3時間。
 そしてまた、
 この時間内はほぼ終始ず~っとしゃべりっぱなし。

 こうして巻いた3時間がフルドレス・ジョックスコットを巻く時間として長いのか短いのか、
 それは自分にはわからないし、
 まずそこに興味がない。

 が、
 その時間中ずっと集中力が途切れることもなく、
 むしろ自分も愉しみながら、
 というよりエラそうに解説しながらも、
 自分も学びながら巻くことができたのは、
 「こんなの、きっと退屈しちゃう方もいるだろうなあ」という不安に反して、
 ご参加くださった皆さんがグイグイ喰いついてくださっているのを、
 ヒシヒシ感じることができたからだ。
 
 おかげで、
 自分にとってこそ素晴らしい初体験となり、
 ほんとに充実した時間となった。

 なんとシアワセで、
 なんとありがたいことでしょうか。

 そして、
 ここで再度強調させていただきたいのは、
 もし自分が独りで家にこもって、
 このようなフルドレス・サーモンフライを巻くのならば、
 もっともっとも~~~~っと時間をかけて巻く。

 それは、
 より丁寧に慎重に巻きたい、
 ということではまったくなく、
 こうしたフライを製作するならば、
 それを「巻く工程」にこそ愉しみを見出しているから。

 たんに完成を目指してひたすら巻く、
 というのではなく、
 ひとつの工程ごとをジックリ眺めながら、
 アレコレの妄想の翼をひろげて、
 夢想の天空に羽ばたきながら、
 スレッドひと巻きの快感にずっぽり浸りつつ、
 完成してしまうのを惜しむようにゆっくり巻きたい。

 つまり、

 フライフイッシングの愉しみとは、
 サカナを漁獲するという結果だけでなく、
 そこに至るまでのアプローチにこそ本当の喜びや感動があるように、

 ぼくはフルドレス・サーモンフライ・タイイングの愉しみを、
 完成したフライを愛でるというところはもちろん、
 そのフライを巻くアプローチにもおおいに求めているし、
 そこのところにこそ無限の悦楽を見出している。

 というわけです。

 カイカンを貪ることにかけては、
 ものすご~く貪欲なワタシです。

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 写真上から順に、

 「Bucher」
 「Green Highlander」
 「Silver Gray」

 往年の有名スタンダード・フルドレス・サーモンフライ3選。
 いちおうケルソンやタナットが提唱した正統レシピに準じてはいるけれど……、

 迷走しちゃったんだよねえ。

 ボディハックルにつかったのは、
 すべてコック・デ・レオンのサドルハックル。
 など、
 各フライの随所に微笑ましいちっさなアレンジもあるんですけど、

 それよりもなによりも、

 これらのスタンダードを巻くうえで目指したかったのは、
 古典オリジナルのレシピやフォルムに従いながらも、
 一見するとスタンダード・フライにはまったく見えないんだけど、
 ヨクヨク見てみれば……なんだお馴染みの有名パターンじゃん……というような、
 あるいみ「だまし絵」的アプローチ。

 まずはマリッド・ウイングに細工を凝らしてみる。
 ウイング素材はオリジナル指定の色とおなじなんだけど、
 各種各色の配色と配置を色の濃淡を組み合わせつつ、
 オリジナルのウイング造作とはその印象をガラリと変えてみた。
 そして、
 そんなウイングのカーブ形状のフォルムを3本それぞれ微妙に変えてみた。
 さらに、
 あとはいずれも二枚三枚とぶ厚くハックリングしたスロートハックルや、
 バッサバサに毛羽立たせたシールズファーのボディとそのテーパー加減、
 などなどをガッツリ際立たせて立体感をもたせ、
 クラシック風情というよりも、
 どことなくポップでモダンな色柄模様が醸し出されるように腐心してみた。
 
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 と、
 そんなイタズラっ子スタンダード3本の色調とムードをより強調するべく、
 お花畑でお花を摘む無垢な乙女の気分で、
 お羽根を1枚1枚づつ手漉きの黒和紙にはりつけて……、

 ああんキ・レ・イ……、
 オッチャンおもわず夢みる少女に大変身、
 おもいきってとっておきのお気に入り浮世絵切手も貼りつけちゃおうっと……、

 すると、
 どうしてだか、
 なんでなのか、
 大英帝国華やかかりし時代の文化遺産だったはずのフルドレス・サーモンフライたちが、
 「和」の雰囲気にじつにしっくり馴染んで見える。
 それがとても不思議。
 額職人さんのセンスが光る渋い虫喰いフレームや、
 ピーコックの背中のタマムシ色の羽根などとあいまって、
 そこはかとなく「いにしえの和」の華美が漂ってくるような……。

 すごく満足。

 もちろん、
 いつも明確な目的があり、
 完成予想図ははっきりとしたイメージで脳内にあって、
 それをこそ目指して作っておるわけですが、

 いざ出来あがってみれば、
 いつもそんな目論見とはまるでちがうものが出来あがる。

 自然の羽根が創り出す小宇宙は、
 その世界のひろがりも、
 美しさも、
 なにもかも、
 もういつだって自分の予想をいともたやすく越えてしまう。

 そこがたまらない。

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 サイドウイングに据えた、
 フラミンゴのピンク地に映える一輪の鮮やかな紅色と、
 アンダーウイングの「墨色」を対比させたくて……、

 瑠璃色と赤紫を基調にしたストライプなウイングを引き立て役に飾ってみた私家版フリースタイル。

 まるでハックルのように毛羽立たせた淡いピンクのシールズファーが、
 スロートハックル部分にちかづくにつれ、
 血のような赤に変化しているボディの隙間から、
 ホワイティング社十八番のダイド・シェル・ピンク(貝殻ピンク)のボディハックルがチラ見え。

 ほんのり火照ったあでやか艶姿。
 ほんによろしおすなあ……。
 
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 しかし、
 なんでオレはこうもピンク色が好きなのか?



 
 
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