BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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オホーツク便り
 本日の一本。
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 グレイフォックス・ヴァリアント Tied on TMC9300の10番。

 まず最初にホワイティング・ヒストリックのゴールデン・バジャーをノーマルサイズにハックリングしておいて、
 そこにコック・デ・レオンのサドルをフックのゲイプ幅の倍くらいの長さでハックリングしている。

 このように、
 複数のハックルをブレンドしてスタンダード・ハックリングするとき、
 意図的にそれぞれのハックル・ファイバーの長さを変えてハックリングすると、
 空気抵抗の軽減や着水時のバランス、
 水面に浮かんだときの安定感などなど、
 機能面でのメリットが多々あるだけでなく、
 ハックル・ファイバーが自律的に震えるような「絶妙な自然なうごき」や「ファジーな質感」
 それにハックルの透過光を誇張表現することができる。

 なにかといいことずくめ。

 むかしむかしの駆け出し時代、
 もっともらしい教科書やマニュアルを鵜呑みにして、
 二枚のハックル・ファイバーの長さを揃えるために、
 いちいちハックルゲージで測っていたころが微笑ましくも懐かしい。

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 と、
 そんな私家版グレイフォックス・ヴァリアントを一日中投げ倒していて、
 何匹かのニジマスを釣り、
 しとどに濡れそぼり、
 サカナのヌルなんかもこびりついたフライを、
 フロータントを何回も塗布しなおすのではなく、
 イッピキ釣るごとにフライをジャババとゆすいで軽く洗ったあと、
 ピッピと強めのフォルスキャストでフライの水気を切りながら、
 ハックルの表面張力だけでフライを水面に浮かべて釣りながら、
 水面に浮かぶフライを見て、
 「おっコレおもしれ~」とおもうことがあった。

 それがこの写真。

 レオンのファイバーが十二分に水を吸うことで、
 ファイバー同士がまとまって束になり、
 レオンのファイバーだけがまるでバンチウイングのようになって二股にわかれて突き立っているではないか。

 で、
 そのまわりをヒストリックスのノーマルなハックルがフワ~ッとひろがっていて、
 それらのファイバーがやさしく水面を抑えることで、
 たまらない姿勢とフォルムで浮いておるではありませんか……。

 これがまたメチャクチャいい感じ。

 くしくも、
 レオンのハックルがその特徴的なゴマダラ模様だけでなく、
 質感や特性の面でも、
 ノーマルなほかのニワトリのハックルとはまるで異なっていることを示唆する良い例になった。

 話が長くなるので割愛するけれど、
 「レオンのハックルは水を弾くのではなく水馴染みがすごく良い」
 というのを知っておくと、
 このハックルの旨味をさらに活かして活用することができる、
 というわけです。

 ハックルってすごい。
 これだけ自他ともに認めるハックル漬けの生活を送っていてもなお、
 新たな発見が泉のごとく湧いてくる。

 というウンチクはさておき、

 で、
 聞いてくれる?

 当地では久々の晴天夏空となったおとつい、
 こんな日はぜひともこのようなお洒落ドライフライズで釣りまくりたいなと、
 友人と二人して釣りに出かけたときのこと。

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 キレイな渓流でしょ?
 深い森のなかを流れているけれど、
 周囲は開けていてフライも投げやすく、
 上流を見上げれば釣りごころが浮き立つような「おいしそうなポイント」がず~っと連続している。

 「これはイケそう」と期待も膨らんだ。

 ところが、
 イザはりきってまいろうぞ、
 と川に下りて、
 とるもとりあえず目の前の「もういかにもなチャラ瀬」に立ち込んで、
 はやる気持ちでフライを数投してみて……、

 イヤ~な予感がした。

 川が砂利で埋まっている。
 傍目には絶好のポイントに見えても、
 近寄ってみればほぼ砂利底で埋まっている。

 このあたりの昨年の台風による水害が尋常ではなかったことがうかがえる。

 そして、
 肝心のサカナの反応がまったくない。
 なんにもない。
 パチャともこない。
 生命の気配がまるでない。

 ダーメだこりゃ……ってかんじ。

 で!
 これまででもっとも水深があって、
 かつ川底におおきな石が転がっていて、
 岩盤の割れ目なんかもあるポイントにさしかかった。

 明らかに、
 ここで反応がなかったらもうアカンやろこの川、
 というかんじの好ポイント。

 そのポイントに友人がフライを投げ入れて、
 たしか二投目だった。

 「来た!」
 バシッと竿が立てられてグイッと曲がった。

 川の規模からかんがえて、
 20~30センチほどの若ニジマスが掛ったのかとおもって、
 気楽な気分で「おお~やっぱココにはおったかあ」なんて友人の背後から声をかけたところ、

 グワーッと暴力的にのされまくり根元からグイーッと曲がる友人の竿、
 「え?なに?なんなの?」

 そしてふたりが見たものは、
 ジンクリアな浅い流れのなかでグワングワンと首を振る巨マスの雄々しきお姿。
 なんとお美しく神々しいことか。
 
 こ~れはでかい!!

 バレるな切れるなバレるな切れるなバレるな切れるなバレるな切れるな……、
 心のなかで念じるだけでは飽き足らず、

 そっちに走らせたらアカ~~~ン!
 竿をこっちがわに寝かせてひっぱるんや~~~!!
 サカナのアタマこっちに向けるんや~~~~~~~!!
 

 わたくし渾身の絶叫。

 もう大騒ぎ。

 かくしてサカナが無事に川岸に横たわったときには、
 なんでか自分までヒイヒイハアハア肩で息をしていた。

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 「やったあ~~!!」 

 すっっっばらしいベッピンさんの雌のニジマス。
 この川の中流下流にいるニジマスは、
 目の覚めるような深紅色のぶ厚いヒレが特徴なんだけど、
 そしてそれがたまらないんだけど、

 このベッピンさんの肉厚で幅広いヒレを彩る、
 楚々とした淡いピンク色のヒレもまたなんとも眩しく味わい深い。

 品が良いというか上品というか、
 なんなのこの完璧な美しさ。
 吐息がもれちゃう。

 で、
 数枚の写真を撮らせてもらって、
 まだまだ元気いっぱいのベッピンさんとお別れして、
 ホッペタがユルユルにゆるみまくっている友人に、

 「この上流のポイントも良さげだから、やんなよ」
 というと、

 「いや、ちょっとこの余韻に浸りたいんで、ぼく休憩します」
 だって。

 「ウハハハハハ、それは大事な時間やでえ」

 「じつは昨夜、きょうのためにバッタのフライを巻いてみたんですけど、
 それで釣れたので喜びと感動もひとしおなんですよ~」
 だって。

 「マジかよ~、そりゃなおのこと最高やんけ~」

 じつはこの釣りに向かう車中で、
 友人からこのところ仕事の対人関係に悩んでいて、
 夜あまり眠れなくなってしまって……、
 なんて話を聞いていて、
 それはしんどいなあと身につまされていた。

 それだけに、
 きょうはふたりで良い釣りしてとびっきりの一日を過ごしたかった。

 たったイッピキのニジマスによって、
 そのささやかな願いは見事かなえられて成就した。

 この一幕のあと、
 しばらくふたりで熱心に釣りのぼったけれど、
 やはりまったく生命反応はなかった。

 不思議な川だった。

 とうぜん帰りの車中では、
 この状況で釣れてくれたこのニジマスのことでおおいに盛りあがった。

 「それにしても、どうしてあのニジマスだけ釣れてくれたんですかね?」

 「それはやな~、あの子まいにち一生懸命がんばってるからきょうはご褒美あげるわよって、
 あのニジマスがおもってくれたんとちゃうか?」

 「まさにそんな釣れ方でしたねウハハ」
 
 「そやろ?」

 この一幕にはまだちょっとしたオチというか続きがあって、

 ちょうどこのとき、
 我が家の近所のべつの友人が、
 激務がつづいている最中に、
 不幸にもギックリ腰やらかしてしまって、
 まさしくふんだりけったり状態だった。

 で、
 それが気になっていたので、
 この夜お見舞いと様子うかがいの電話をしてみた。

 電話のむこうで「もう聞いてよ~最悪だよ~」なんて愚痴を聞いたあと、
 きょうの釣りのことを、
 おもしろおかしくチョッピリ盛って話した。

 「もうね~自分が釣るよりはるかに興奮しちゃって……ほんと最高の一日でした」

 すると、
 ウハハと笑いながら話しを聞いていた友人が、
 しみじみ言った。

 「いや~、さっきまで気分が腐ってたんだけど、いい話し聞けて、なんだか元気出てきた。ありがとね」
 だって。

 たったイッピキのニジマスが、
 3人のオッサンをハッピー気分の1日にしてくれた。

 これだよな、
 この気分だよな、
 ってつくづくおもった。
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