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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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Sir Moses の十戒
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 やればやるほど、
 あとからあとから色んな課題がでてくるフルドレス・サーモンフライの製作工程のなかで、
 もっとも難しいとおもうのは、
 もうなにをさておき、
 じぶんにとっては幅広なメタルのフラット・ティンセルをビシーッと隙間なく均一に巻くところ。

 一見なんのことはない作業にみえるけど、
 微妙なテーパーをかけたボディを太くすればするほどに、
 その難易度数は飛躍的にアップ。

 が、
 葉巻のように丸々としたボディ全体を、
 金のティンセルでくまなく覆うことができれば……、

 その存在感たるや、
 まるで金の延べ棒のよう。
 
 そしてそのうえに、
 フワッと柔らかな、
 自然の神秘を凝縮したような美しく可憐な小羽根を、
 一枚づつ慈しみながら、
 いくつもいくつも重ねていくと、
 このようなボディが出来あがる。

 たまらんもんがある。

 ああんもう大上段でゴメンねここは自画自賛させてネ。

 そしてそんなボディのうえに、
 でっかいグリーンマコウの肩羽根をドンと据えて、
 白黒マダラ模様が鮮烈なマンダリン・ダックを重ね、
 厳選に厳選を重ねたピンピンの特大コティンガをチークに添えて、
 ドキッとするほど長くて色濃いトッピングとホーンを巻き止めた。

 どれもこれも、
 このときのために大切に保管していた羽根たち。

 完成した姿を一刻も早く見たくて逸る気持ちをグッと抑えながら、
 ことさら慎重に進めてきた作業も、
 とうとう最後の工程となった。

 あとは黒のオストリッチをヘッドに巻いて、
 ウイングの余りのストークをカットしたら完成。

 なんだけど、
 ここで巻く手が止まってしまった。
 
 あんなに「はよ出来あがったところが見たい」と思っていたくせに、
 二日間このままの状態でひたすら眺めた。

 もしどこかやり直すならこれが最後のチャンス。
 ヘッドを巻いてしまうと、
 もう修正できない。
 これでよしとおもえるかどうか、
 何度も自問自答。
 
 そしてなにより、
 完成してしまうのが惜しいとおもった。

 だって、
 これから先、
 そっくりそのままコレと同じフライを巻けるときが来るとは思えないんだもの。

 あえて、
 一世一代のフライと言わせてください。

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 Sir Moses a.k.a Phoebus

 トラディショナルなフルフェザー・ウイングのサーモンフライのなかでは、
 個人的にフォルムも色調もネーミングも、
 なにもかも別格におもっている、
 チャテラーと並ぶタラハーン・コレクションの傑作。

 サイズはパートリッジのフック8/0よりもひとまわり大きく、
 かつロングシャンク。
 規格外かつ迫力満点の巨大さだ。

 一世一代なんて仰々しい大げさを言ったのは、
 この古典に指定されている激レア希少素材を、
 これから先、
 このサイズとこのクオリティのもので入手できるとは、
 時代的にも世情的にも、
 そして愉しみだからこそ公明正大でありたい自分の心情としても、
 またさらに下世話なことをいえば経済的にも、
 今後もうないだろうとおもうからだ。

 という、
 「いつか期が熟したら…」とずっと大切に仕舞いこんでいた、
 まさにあとがない貴重な素材を惜しげもなくズビズバつかっただけでなく……、

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 ゴールデンフェザントのトッピングとともに、
 フルドレス・サーモンフライにはぜったいに欠かすことのできない黒いオストリッチ。

 野暮丸出しでオストリッチに失礼なこというけど、
 はっきりゆうて、
 このフライにつかった他の素材からくらべたら、
 入手はきわめて容易かつ、
 どんだけお財布にやさしいことでしょう。 
 桁がひとつふたつ少ないですよ。

 写真のオストリッチにいたっては、
 大昔にお店を閉められたとあるプロショップのオーナーさんが、
 「コレ、もういらないから、たのむから在庫ひきとってくれ」って、
 どっさ~と束にして半ば強引に送りつけてきてくれたなかの一本。
 ぜんぶで何本あったか忘れたけど、
 色とりどりもてあますくらい大量。

 どれくらいの量かというと、
 友人にサンバ踊るお姉ちゃんがいたらプレゼントしたいくらい。
 宝塚歌劇団に寄付しよかとおもったくらい。
 そんなオストリッチの束のなかに紛れていた一本。

 で、
 ちょっと聞いてくれる?
 この一本を、
 15年くらいまえのフルドレス・サーモンフライ・タイイング超シロート駆け出し修行時代に、
 「あ、これ練習用にちょうどいいや」ものすごい軽い気持ちで気楽につかっておったわけです。
 バッツンバッツン切り刻んで無駄つかいしながら……。

 んで!
 バンバン巻いてガンガン練習して、
 片側のいいとこぜんぶつかいきって、
 反対側もガンガンつかって、
 なんだかさびしいかんじになってきて、
 ちょっと惜しいなって気分で、
 「ここらでちょっとほかのオストリッチもつかお」
 ここでようやくほかの黒いオストリッチを引っ張り出してみたところ……、

 当時、
 数十本はあった我が家の黒いオストリッチの仔細を見てみれば、
 ない、
 まったくない、
 ぜんぜんない、
 ないったらない!
 このオストリッチに匹敵するクオリティのやつが……ない。

 こんなのいっくらでもあるとおもっていたのに、
 なんとしてもない。

 「ひょっとしてボク、えらいことしてしもたんとちゃうやろか?」

 無知ほど恐ろしいものはない。

 そしてはじまった、
 理想の黒いオストリッチを探し求める終わりなき旅。

 業者さんが「これ最高品質だから」と自信満々でおっしゃったのも大人買いした。
 たしかにすごく良いお品でした。
 これまで国内外問わず立ち寄ったショップに良さげなのがあれば、
 それも大人買いしました。
 それもたしかにそこそこ良いお品だった。

 きっと、
 なにも知らなければこれらのオストリッチで充分満足していたことでしょう。

 でも、
 知識も経験もほとんど白紙のスタート時点で、
 あろうことか「ぶっちぎりの最高クオリティ」を知ってしまった、
 というのはある意味とっても不幸。

 いまだ、
 最初の第一歩でつかったオストリッチを越えるどころか、
 肩を並べられるクオリティのものには出会えない。

 そんな稀有なオストリッチを、
 そうとは知らずぞんざいにバンバカ使い倒してしまったこの無念。

 この痛恨の想いなんとしよう……。

 深夜、
 このオストリッチのファイバーをそっとつまんで、
 いっぽ~ん、
 にほ~ん、
 さんぼ~ん、
 と女々しく数える切なくも恨めしい夜をいったい何度過ごしたことでしょう。
 無知な自分への怨念ひとしお。
 四谷怪談の番長皿屋敷のお岩さんもドン引きです。

 嗚呼無情、
 あっちゅうまに数えられちゃって、
 もうこんだけしかあらへんがな……。

 と、
 そんなオストリッチを「あまりに惜しくてもうつかえない」と封印してしまったのが、
 忘れもしない12年前のことでございました。

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 いま、
 封印を解いた。

 な、
 真っ黒やろ?
 ものすごい真っ黒やねん超ブラック。

 で、
 むっちゃ密度こゆいねんワッサワサ。
 しかもオストリッチのフリューにコシが感じられるねん。

 ほんで、
 グルグルっと巻くと、
 濡らしてもないのにフリューが勝手に後方になびいてビッシーッと整然と並んで、
 ビタッと逆三角形の理想形になるねん。

 だもんで、
 特大のコティンガやインディアンクロウやトウキャンの羽根が、
 ただでさえすんごい存在感やのに、
 さらにグワッと立体的に浮き出て迫ってくるように見えるねん。
 しかも、
 金色のボディがひときわビッカーッと引き立つねん。
 まさに相乗効果。

 そんなオストリッチつかうんやから、
 気合の入れ方も尋常やなくて、
 ウイング根元の下に巻き止めたインディアンクロウが、
 ありがちな体裁でウイングに覆われて隠れてしまうのではなく、
 この部分もはっきりくっきり見えるように腐心した。

 たかがオストリッチ、
 されどオストリッチ、
 最高のオストリッチ求めて三千里。

 希少エキゾチック・レア羽根素材探索の旅は、
 じぶんのなかではもう落ち着いた感がある。
 それよりも、
 いま我が家にある羽根たちを随時ぜんぶカタチにしていきたい、
 という焦燥感にも似た気持ち。

 な・ん・だ・け・ど、
 オストリッチ探索の旅はまだ終わってないのです。

 なぜなら、
 クラシック・スタンダードを巻くにせよ、
 フリー・スタイルではじけるにせよ、
 これがないとはじまらないからだ。

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 と、
 このオストリッチをバッサバサ気楽にカットしていたあのころ、
 フルドレス・タイイングにハマッたばかりのころ、
 まさかこんなのが自分でも作れるなんて夢にも思わんかった。
 
 そしてその緊張感や達成感を、
 ぞんぶんに愉しんだ。

 ドリームズ・カム・トゥルー。

 ボディ末端からヘッドの先っちょまで、
 深く満足。

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 グリーンマコウのメインウイングにのせた、
 マンダリンの黒いバーがあまりに鮮やかで鮮烈で、
 脳がクラックラする。

 見つめていると吸い込まれていきそうブラックホールみたい。

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 今年の早春から晩春にかけて、
 ずっとやりたかったことが存分にやりまくれて、
 ほんとに満たされ充実していた。
 いつも気持ちのどこかが高揚しているようだった。

 と、
 そんなおり、
 南国土佐からいつもの嬉しい春の便りが届きました。

 そろそろ、
 アドレナリンどばどばの引きこもりから気分をかえて、
 バカ長履いて、
 お外にでかけて、
 こんどは水辺でアドレナリンぶっぱなしたいところです。

 ひさびさの晴天に、
 釣りごころ疼き気持ちが逸る本日でした。

 これから風呂入ってニシン焼いてトマト食ってリールに新しいフライライン巻いて、
 そんでもって黒いオストリッチをふんだんにボディに巻いたでっかいヘビーウエイト・ニンフ巻くで~。

 なんちゅうても、
 諸事情により黒のオストリッチの大中小いずれも在庫ハンパないので使い放題です。
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