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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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私家版マーチブラウン
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 コック・デ・レオンのセカンダリークイルをウイングにつかった私家版シルバー・マーチブラウン。

 特製パール・シルバーのギラギラ乱反射ボディと、
 全体的にダークトーンなウイング。
 メリハリの効いた色調のコントラストが「その気」にさせるのか?
 万能型小型ウエットフライとして効き目抜群の当社ベストセラーのひとつ。

 話しはすこし変わるんだけど、

 ことあるごとにドライフライ各種のご注文をくださって、
 いつもたいへんありがたくお世話になっているだけでなく、
 まだお会いしたことはないけれど仲良くしていただいている東北地方在住のお客さまが、
 このようなメールを送ってくださった。

 「じつはウエットフライやニンフにもすごく興味があって、
 挑戦してみたい気持ちはあるけれど、
 どうも敷居が高いといおうか、
 なんだかとても難しそうで躊躇してしまって、
 いつも結局ドライフライしかやらないっていうか、
 やれないんですよねえ……」
 との由。

 で、
 またちょい話しはズレるけど、

 この方に限らず、
 つねづね格別の御贔屓をいただいているお客さまへのお礼として、
 ものすごくささやかではあるけれど、
 ご注文いただいたフライを送るとき、
 じぶんのフライボックスから選んだフライなんかを、
 ちょっとしたオマケとして添えさせていただいたりしている。

 と、
 そんなオマケ選びがじぶんにとっても密かな愉しみにもなっている。

 そんなわけで、
 イタズラ心もあって、
 この方にはあえて、
 我が特製シルバーマーチブラウンを数本オマケとしてご注文品とともに送りつけ、
 メールでくそエラそうに講釈垂れた。

 「さいしょは竿もラインもリーダーもティペットもそのときつかっているドライフライの道具立てそのまんまでいいです。
 それで、
 ポイントの上流側にソ~ッと立って、
 このウエットフライを斜め下流に投げて、
 とくになんにも操作しないでダーッと扇状に流してみてください。
 流しきったらすぐ打ち返したりしないで、
 そこでひと呼吸おくのが大事なコツです。
 ブワーッと流れを横切ったフライを追ってきたサカナが、
 ここで喰いついてグググンッと勝手に向こうアワセでハリ掛かりします。
 そして、
 そのあとすぐピックアップしないでゆっくりリトリーブしながら手前までたぐってみてください。
 たぐっているときにもよくグググンッてかんじのアタリあります。
 そうしたら、
 またちょい下流に下がって同じこと繰り返してみてください。
 とにかく、
 こうやって釣るとアタリはグググンッてハッキリ手元に伝わりますので心配ご無用です」

 とか、

 「無理してやろうとせずに、
 イブニングで日が暮れてドライフライが見えなくなってからとか、
 渓流を釣りのぼって川沿いに下ってくるときとか、
 ドライフライのついでに機会があれば気楽にやってみてください」

 だの、

 「しつこいようですけど、
 最大のコツはな~んも難しく考えないで気楽にやってみることですよ」

 とか、

 「メンディングだのスイングだのターンだの、
 さいしょはイメージできなくてワッケわからんかもしれないけど、
 実際にウエットフライでサカナを何匹か釣ったりアタリの感触を体験すれば、
 …あ、なるほどこういうことか~…なんて頭じゃなくて身体で理解できますので、
 そんな小難しい用語群なんかおそるるに足りませんよ~」

 なんつって、
 ウエットフライの扉のまえでモジモジしている若い子羊クンを、
 オッチャンが言葉巧みに?そそのかし、
 そしてたぶらかしたったのだった。

 と、
 そんなメールを送ったのが今年の春。

 で!

 つい先日、
 いつものドライフライのご注文ではなく、
 な~んと、
 熱い想いが伝わるお手紙メールとともにウエットフライ各種のご注文、
 いただきました!感激大感謝。

 しかも!

 そのありがたいご注文メールには、
 すっばらしく見事なでっぷりヤマメの画像が添付されており、

 さらにしかも!

 水辺に横たわるそのヤマメのお口元に、
 我がシルバーマーチブラウンがキラリと光っておるではないですか!

 パソコンの画面みながら、
 おもわず「やったあ!」ガッツポーズ。

 と、
 このようなアプローチを経て、
 ワタクシみごとに迷える子羊クンを釣りあげました。
 大物ですよ。
 ワッハッハと笑いが止まらん。

 ぶっちゃけ、
 じぶんがじぶんのフライでサカナ釣るのなんかよりも、
 じぶんのフライでお客さんを釣るほうが、
 はるかにうれしいモチベーション上昇イマジネーション向上やる気度数アップ。

 こんな幸せな仕事させてもろて、
 皆さんほんとにありがとうございます。

 で、

 ここからようやく話しの本筋なんだけど、

 ウエットフライ初心者の方に、
 なにゆえシルバーマーチブラウンを最初の一本としておススメしたかというと、

 これはあくまでも私見ではあるけれど、

 適度なヴォリューム感があって、
 いかにも虫っぽいフォルムながら、
 ティンセル・ボディのために水流の抵抗を受けにくい。
 そのため、
 着水と同時にスッと水を切るように水面下に沈んでくれて、
 そのまま安定した姿勢を保ちつづけることができる。
 なので、
 スイングさせているとき過度なドラッグや水流の抵抗がかかっても、
 フライが不自然に水面に浮きあがってしまったり、
 はたまた水中で回転したりすることがなく、
 どのように流しても一定の層をバランスの良い姿勢で泳がせやすい。

 というところがなによりの理由。

 つまり、
 ウエットフライの入門編として、
 ダウンストリームなアプローチでラインを張った状態でスイングさせる釣りには、
 シルバーマーチブラウンはとても扱いやすく理にかなっているようにおもう。

 このパターンが「釣れるウエットフライ」として昔から定番なのは、
 キラキラ光るとか虫っぽいとかいうフライのイメージ的な見映えにくわえて、
 どのような流れの状況でも安定してスイングさせやすいという、
 機能的なところがものすごく大きいようにおもっている。

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 転じてコチラ、
 エゾリスのファーをループダビングでファーハックル化させて、
 ボディ全体に毛羽立たせた状態で巻いたマーチブラウン。

 ものすごいヴォリューム。
 モッコモコ。

 吸水性と保水に優れたエゾリスのファーなので、
 このヴォリュームでもただちに水を吸って水面下に沈む。

 なんだけど、
 全体が毛羽立っているので、
 シルバーマーチブラウンの沈み方や流れ方とはまるで異なり、
 流水の抵抗をモロに受ける。

 これがミソ。

 フライを充分に沈めながらラインにじわっとテンションをかけて、
 やわらか~くソフトにスイングさせると、
 流れの抵抗を受けとめたフライがスーッと自然に上昇してくる。
 という、
 「縦のターン」を演出するにはうってつけ。

 またさらに、
 ナチュラルドリフトこそこのテのボサボサボディ・ウエットフライの真骨頂。
 ボディ全体が吸水して水に馴染んでいるので、
 そのぶん流れの抵抗がかかってゆっくりジワ~ッと流れてくれる。

 と、
 そのように流せれば、
 とうぜんサカナがフライをくわえている時間は長くなるし、
 サカナのアタリもより明確に伝わる。

 というわけで、
 ここでも難しく考えすぎないで、
 きわめて大雑把に、
 ティンセルやフロスなどをつかった細身で固いボディのウエットフライはスイングさせる釣りに向いていて、
 ボサボサに毛羽立ったヴォリュームのあるダビングボディのパターンはナチュラルドリフトな釣りに向いている、
 くらいのイメージで、
 ウエットフライ初挑戦に臨んでいただけますと、
 だいたい外さないんじゃないかな~とおもってます。
 
 190904 (3)3
 じぶんはぜんぜん詳しくないんだけど、
 この小説は文豪の一大出世作?なんですよね?

 じぶんがまだ20代のころの多感な時代、
 この小説から伝わってくる、
 著者の剥き出しの赤裸々な情念というか、
 灼熱のマグマのような熱気を直球で受け止めてしまって、
 いてもたってもいられなくなったのをハッキリ憶えている。
 
 無我夢中で読みふけり感動し興奮しズドンと深くえぐられるように衝撃を受けただけでなく、
 「オレもなんか書きて~~~」なんつって若気の至り、
 じぶんでもワケがわからないままに奥底から創作意欲をメラメラ掻き立てられた、
 たくさんの名作群のひとつ。

 さいきん、
 なぜだかそんな懐かしい小説たちを無性に読みなおしたくなり、
 どこかすがるような気持ちでアレコレ手当たり次第に再読している日々。

 もはや2週間ほどまえの、
 シトシト雨が連日ふったりやんだりしていたとき、
 夜更けからこの本を読みはじめたらどうにも止まらなくなってしまって、
 読み終わったら白々と夜が明けてしまった。

 50代半ばにもなって、
 若いころに何度も読んで感銘を受けた本を久々に再読して、
 あのころとは受け止め方のちがいはあれど、
 なんだかもうどうしようもなくカーッと熱くなる気持ちに変わりはなく、
 根っこのところがすこしも変化していないところを再確認。
 それって、
 感性の維持というところで喜んでいいものなのか、
 なんら成長していないというところで嘆くべきなのか……。

 こうなると、
 もう寝ていられない。

 カッカと火照る気持ちをもてあましながら、
 そのくせ、
 そんなじぶんをどこか愛おしいとおもいながら、
 夜明けの川辺に立った。

 霧雨の朝。

 増水気味の流れ。

 条件はすこぶる良さげ。

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 ボディ全体にヒグマのちょっと特殊なファーを薄く毛羽立たせてダビング、
 そしてフライの喉元に赤いシールズファーをスロートハックルのように散らせた私家版マーチブラウン。

 つかったフックはTMC9300 の8番。

 軽いドライ用フックに巻いてあるのと、
 なによりもボディに巻いたヒグマのファーの不思議な浮力で、
 ちょっとやそっとでは沈まない仕様になっている。

 水面に浮いているあいだはドライフライとしてつかうし、
 沈んだらそのままウエットフライとしてつかう。
 ナチュラルに流してもつかうし、
 スイングにもつかう。

 今シーズンの初夏、
 このフライのボディにつかったヒグマのファーの特性を探るため、
 ヒゲナガの時期のイブニングにこのフライばかり集中的につかっていた。

 夕暮れがちかづいて、
 バンク際で羽化したてのヒゲナガにシビアにライズしているやつを狙って、
 まずドライフライとしてつかうじゃん。

 で、
 完全に日が暮れるころにはフライがしとどに濡れそぼり、
 サーフェイス・フィルムの下側にようやくぶら下がっている、
 みたいなかんじになるので、
 それをそのままスイングさせてスケーティング、
 あるいは竿先をブルブルふるわせながらフラッタリング。

 暗がりのなかで苦労していちいちフライを交換しないで、
 水面も水面下も狙えて、
 自然に流すのも動かすのも、
 ぜんぶ一本のフライで演出できると、
 時間に追われるイブニング・タイムにココロの余裕ができるのが、
 ものすごく有利。

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 と、
 そのようなフライを3Xのティペットに結んで、
 この白泡うずまく落ち込みに叩きつけてみた。

 何度も何度もビシビシ叩きつけた。

 さいしょはポカッと軽々水面に浮いていたフライが、
 白泡をたてて川底に巻き込む流れの筋にのり、
 スーッと水面下にもぐっていく。

 そのまま自然に流して、
 白泡の切れ目あたりまで流れたくらいで、
 かる~くラインをはってテンションをかけ、
 フライをフワ~ッとスイングさせつつ浮上させて……、

 というのをしつこくしつこく繰り返した。

 これ、
 ワタシの経験上の持論なんですけど、
 このような白泡ウズまく厚い流れに潜む夏の大物ニジマスは、
 もっとも確率の高い一投目で反応がなくても、
 ここぞという場所ではそこであきらめず、
 あのテこのテを駆使してアレコレとアプローチを変えながら、
 もうエエっちゅうくらいしつこく狙っていると、
 どうしてだかいきなりドーンと出ることがよくある。

 このような川のポイントを探って歩く釣りでは、
 浮かせるのにも沈めるのにも扱いやすく、
 どのようにでも都合よくつかえるフライを好んでつかうようになったのには、
 このような理由もある。

 で、
 じぶんの立っている位置を刻々と変えながら、
 フライを投げる角度を変え流す筋を変え層を変え深さを変え動きを変えながら、
 ズーッと流しつづけてかれこれ20分くらいだったか、
 フライはまさに白泡の真下でモミクチャに流れているとき、
 かるくテンションがかかっているラインに、
 まるで水中のなにかが引っ掛かったような重みが微かに感じられた。

 春先から初夏の季節とちがって、
 この時期のニジマスのアタリは大物であればあるほどに、
 いつもものすごく微妙。

 「あっ」
 とおもってグイイッと竿をあおった。

 一瞬というかしばらくのあいだ、
 川底に根掛かりしたのかとおもった。

 けれど、
 フライは水面下ほとんど沈んでいないはず……。

 あれ?
 
 とおもった瞬間、
 ものすごいチカラでこの激流のなかをサカナが上流にむかって走りはじめた。

 しかも、
 どんどんどんどん加速していくではないか。

 厚い流速の流れなど意にも介さないような走りで、
 大小の岩がゴロゴロ転がっている荒瀬の川底を縫うように這うように、
 そして狂ったように走っていく。

 ここでいきなり方向転換されて、
 下流に向きを変えられたら……やられちゃう。

 はるか上流にある流れのゆるいプールまで一気に走ってくれたのは、
 ものすごい幸運だった。
 3Xの極太ティペットにモノをいわせて、
 ここで強引に勝負にでた。

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 真夏のニジマス。

 鼻先に、
 過去の激闘の痕であろう古傷があった。
 百戦錬磨のニジマス。

 めちゃくちゃウレシイ。

 6,3フィート5番の短竿、
 9フィートくらいしかない短いリーダー、
 そして3Xの太いティペット、
 という道具立てで釣れたので、
 なおさらドヤ顔チカラ一杯のガッツポーズ。

 なぜなら、
 流れを探るアプローチからサカナとのファイトまで、
 この道具ではなにからなにまで圧倒的に不利だから。

 勝負が不利であればあるほどに、
 その勝利の美酒は甘美。

 それをこそ味わいたくて……。

 
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 熟したトマトのようなホッペタの紅色が、
 筋肉質な尾びれの付け根にまで鮮明に走って浮き出ている。

 晴天の陽の光のしたで見たかった。

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 濃厚なグレイ色のヒグマのファーのあいだに、
 赤いシールズファーがしなだれがかって膨らみ、
 まるでボディに血管が走っているようだ。

 サカナを放して、
 そんなフライをボ~ッと眺めながら、
 川辺の岩に座って放心状態でタバコを吸っていると、
 徹夜明けの朝、
 もはや意識が朦朧としてきて、
 さっきまで身体中にみなぎっていたカッカとたぎる熱気が、
 シューッと音を立てるように抜けていった。

 完全燃焼だった大捕りモノの余韻と相まって、
 早々と、
 あっけなくガソリン切れました。

 ほんのちょいまえまで、
 このように高揚した気分の時ならば、
 一晩寝ないでそれから釣りしても、
 どうってことないはずだったのに……。

 なのになのに、
 無意味に年齢だけ重ねちゃってホンマにもう。

 あらがいようのない、
 このかんじ。

 さびしいことよのう……。
 ご自愛しなくっちゃ。

 帰路、
 クルマを運転しながら、
 高揚してるんだか朦朧としているんだか、
 もはや判然としない霧のかかったアタマのなかで、

 ……コック・デ・レオンのセカンダリークイルは、
 ルースターであれヘンであれ、
 ウエットフライのウイング素材として極めつけに扱いやすいクイルウイング素材のチャンピオン、
 なんて話しは以前に何度か書いたけれど、
 ガンガン使い倒してサカナを釣って、
 ウイングのファイバーがバラけてからがまたカッコよろしいでと、
 ファイバーの質感が絶妙でより良いフォルムがずっと保たれるので、
 そこがまた素晴らしいところでっせと……、

 そこのところも一言ぜひ書き足しときたいなあ、
 なんて思いついて、
 いざ書きはじめたら、
 アレもコレもとなって、
 延々こんなに書き綴っちゃったのだった。

 齢55歳(なんやその歳アホちゃうか)の誕生日だったこの日、
 過ぎゆく夏の思い出は重いで。





 
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