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BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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東京セイラン物語
 先月の19日から先週まで、
 仕事半分、
 所用半分で、
 東京と大阪のあっちこっちにずっと出かけておりました。

 長い長い出張でした。

200316 (4)4

 知る人ぞ知るフライタイイング用ハサミ made by 水谷理美容鋏製作所。

 かれこれ4年ほどまえに送っていただいた水谷さん製作のハサミを、
 ずっと愛用している。
 というか、
 つねに手元に置いて、
 もうず~~っと酷使につぐ酷使をかさねていた。
 それだけでなく、
 タイイングデモや車中泊釣行などでもいつも持ち歩いていた。
 いろんなところに一緒にでかけていた。

 先月のつるや釣具店恒例のハンドクラフト展にて、
 そんなワタシのハサミを水谷さんご本人に再見していただく機会を得た。

 もはやボロボロギザギザに削れくたびれているのに、
 なお働かされている気の毒なハサミの刃先を仔細観察しながら、
 水谷さんしばし絶句…、

 みたいな面持ち。

 嗚呼ココロがイタイ。

 …あの、
 「テメー、ハサミなめんじゃね~よ!」
 と怒鳴りつけてください。
 思う存分罵倒してくださって構いませんよ…、

 と、
 苦しまぎれに開き直った。
 
 やや沈黙のあと、
 水谷さんはおっしゃった。

 「ものすごいつかってくださってるのがよくわかります」

 ジェントルなお言葉ありがたく身に沁みました。
 
 そして、
 「……これ、いったん預からせていただいて研ぎ直させてください」
 と申し出てくださった。

 うれしい。

 先週、
 我が家に帰宅すると、
 そのタイミングを待っていたかのように、
 キレイに研ぎ直されたハサミが届いた。

 ご丁寧なお手紙も添えていただいて、
 長旅の疲れがどんなにかほぐれた。

 まるで新品のようにピカピカになったワタシのハサミ。

 眩しいぞ。

 こんどこそ、
 細心の注意を払って、
 慎重に、
 大切に、
 腫れものに触れるかのように、
 大事につかおうと、
 気分一新でおもった。

 けれど、

 最初の一本を巻き終えるころには、
 ピッカピカなんだけど、
 もはや手に指に馴染みつくしている、
 いつものあの感覚がたちまちよみがえって……、




 だって…道具なんだもの。


200316 (1)1

 ハンドクラフト展がおわった翌日すぐ、
 関西の実家に帰省した。
 
 「夕御飯のあとで寅やの羊羹たべる?東京の友人がお土産にって持たせてくれてん」

 「うわ~いいね~。どうせならお抹茶たてていただこうよ、シャカシャカして」

 と母がいった。

 けれど、
 その翌日の午後、
 じぶんが珈琲を淹れて、
 ふたりでBSチャンネルでやっていた古い邦画を観ながら羊羹をいただいた。

 おいしかった。

 その映画の核となるシーンのなかで、
 主人公と心優しいおばあさんが、
 とある山里の大きな古民家を舞台にして、
 おだやかに物語が進んでいく場面が何度もあった。

 じぶんは、
 その古民家が気になって気になってしかたなかった。

 なぜかというと、
 緑濃く生い茂る夏の場面も、
 白い雪が降りしきる冬の場面も、
 その古民家の窓や襖は、
 どうしてだかいつもすべて開け放たれていたのだ。

 なので、
 四季折々の野外の風景が、
 部屋のなかの登場人物の背後でいつも見えている演出になっていた。

 情感にあふれた映画のストーリー自体はとってもよかった。
 
 場面のなかで移りゆく季節を幻想的に表現することは、
 物語をさらに味わい深く印象づけるものとして、
 重要な役目をになっているのであろうことは理解できる。
 
 しかしだ、

 夏のシーンでは、
 「あんなに窓全開にしてたら、大中小のいろんな虫が侵入し放題やで。田舎なめてたら、おそろしいことになるで」

 冬のシーンになると、
 「あんなに窓開けっ放しにして、部屋のなか雪でベチャベチャになるやん。雪国なめてたら、えらいことになるで」

 いちいちツッコミをいれていると、

 「あんた、つくづくオホーツクのヒトになってんなあ」

 と、
 母がしみじみいった。

200316 (2)2

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200316 (5)5

 今年のハンドクラフト展にて、

 タイイングデモといおうか、
 実演販売といおうか、

 当日販売していたいくつかのマテリアルをつかって、
 このように巻くといいですよとか、
 こんなのが巻けますよとか、
 アレコレ実演タイイングをしたあと、

 そのマテリアルをご購入くださろうとする数人のお客さんが、
 お会計の順番をまってくださっていたとき、
 テンパりながら必死のパッチでお会計伝票をつけていると、
 唐突に、

 「うわ~キレイ」

 と可愛い声がした。

 顔をあげると、
 幼稚園かな?
 それとも小学校低学年?
 お会計の順番待ちをしてくださっていたお父様に連れられたチビッコお譲ちゃんが、
 我がブースに陳列していた、
 セイランの羽根を主役に巻いた特大フライを並べた額装の、
 ガラス面を指先で撫でていた。

 「えっ、ほんと!ありがとう!うれしいな~。ソレ、おじちゃんが作ったんだよ」

 というと、
 お譲ちゃんはサッと手をひっこめて、
 めいっぱいはにかむと、
 モジモジしながらお父様のうしろに隠れちゃった。

 無駄な予備知識も、
 余計な知恵も、
 固定観念も、
 既成概念も、
 な~んにもない、
 まっさらで正直な白紙の感性に響いてくれるなんて……おじちゃん無上の喜び。

 だって、
 それをこそ目指したいんだもの。


 200316 (6)6

 はばたけセイラン火の鳥グレートアーガス・フェザント。

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