BIZENアングラ・アングラーズ
フライフイッシングとフライタイイングに関する話題など
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原典で原点を巻く。
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 生まれてはじめて巻いたフライのようなモノはブラウンハックル・ピーコック。
 小学5年か6年のころ。
 4年やったかなあ……、

 それがさあ、
 最初に巻いたのがコレだということは鮮烈に記憶にある。
 ハックルは毛バタキから採取した茶色のハックルだった。
 はっきりゆうて、
 いろんなニワトリの屑羽根が束になった昭和の時代の古式ゆかしい毛バタキこそ、
 ワイのハックル道楽の原点でっせ第一歩。

 それもキョーレツに記憶にあるんだけど、
 フライの道具はおろか、
 マテリアルなんてどこに売っているんだ?
 という五里霧中だったあの当時、
 ボディにつかったピーコックってどうやって入手したんだっけ?

 あれ?

 どうやったっけ?……うわ~ぜんぜん忘れてるわ~。

 まったく思い出せない。
 というジレンマがあったんだけど、

 話は脱線して先日、
 良きご縁がめぐって、
 ほとんどサカナ釣りに縁のない小中学生の男の子たち10数人のまえで、
 フライタイイングの実演を披露する機会があった。

 白紙も白紙まっさらな子供たちに向けて、
 …鳥の羽根や動物の毛をアイディアを凝らして釣りバリに縛りつけると、
 なななんと!ニセモノの虫が作れるんやで…どやスゴイやろ?

 というメッセージを伝えたい最初の一本にどんなフライを巻くか、
 なんちゅうても最初が肝心、
 いわば「つかみ」の「枕」の一本、
 アレかコレかと愉しく悩んだ末に選んだのがブラウンハックル・ピーコック。

 子供たちが見ているまえで、
 まず玉虫色のピーコックボディを巻いて、
 そして茶色のハックルを巻いて、
 ハックルがパラパラーッとファイバーをひろげたとき、
 「うわ~、虫みたい」
 とつぶやいてバイスの先端の一点に集中していた君の視線は、
 オッチャンをタイムカプセルに乗せてくれました。
 
 そのくだりは、
 いま出ている季刊フライフイッシャーズ誌の初連載にて、
 まな板の上の鯉の心境でガーッと勢いで書き殴ったので割愛するんだけど、

 その原稿を書いているとき、
 アッと思い出したんですよピーコックの入手先。

 あの当時、
 近所の釣り具屋さんでクジャクの尾羽根の芯がヘラブナ釣り専用のヘラ浮き用素材として、
 羽根付きのまま数本束ねて売られていたのだった。
 ヘラ浮き用なのでアイの部分はカットされていて、
 クイルの根元付近だが、
 小学生のおこずかいにもやさしい値段で、
 かつ一回買えばず~っとつかえるくらいの量があったのだった。

 が、
 野暮なことあえていうけど、
 そんな羽根は今ならつかわず捨てるところ。

 という道具立てで、
 ラジオペンチにフックを挟んで巻いていた。
 最初のブラウンハックル・ピーコックは、
 それっぽいものが完成するまでたっぷり丸一日がかり。

 疑問はとめどなく、
 悩みは尽きず、
 しかし興味もまたとめどなく尽きることもなく、

 中学にあがってメチャ興奮したのが家庭科で配られた「裁縫箱」
 あの当時、
 オレさまほど裁縫箱を愛してフル活用したやつはいないだろう。
 ただし家庭科以外で。


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 そんな初体験の一本から、
 もはや40年も経っちゃって……、
 
 ボディは、
 ブルーに染めたピーコック・アイ根元付近の光沢感に富んだ部分のハールを3本。

 リビングは、
 現在は生産されていない鈍く赤みがかった銅線。
 なんでもかのフランク・ソーヤーが愛用していたものがまさにこの銅線なんだとか。

 ハックルは、
 レッド・ジャングルフォウル(紅色野鶏)のネックハックル。

 スレッドは、
 もちろんゴッサマーのシルク。
 で、
 そのシルクに塗布したワックスは、
 なななななんと!あのモダン・フルドレスサーモンフライの旗手プライス・タナットの署名が添えられた、
 これまたなななんと!あのタナットでありながら、
 なんとマス用の素材とフックが収納されたタイイング箱から発見した固形ワックス!

 「ええい者ども、ひかえおろう!このお毛バリにつかった素材をどなたと心得よう……」

 とでも言いたいのかという、
 こねくりまわした末のエクスクルーシブっぷり満載な素材を惜しげもなくつかって、
 ブラウンハックル・ピーコックを丁寧に真心込めて巻いたけど5分もたたず完成した。

 40年の月日なのでございます。

 「な、クジャクの羽根って、こないして巻くとハエの胴体みたいに緑色に光るやろ?」
 「ニワトリの羽根をグルッと巻くと…ホラ見て!虫が羽ばたいてるみたいになるやろ?」

 どや?メッチャふしぎでおもろいやろ?手品みたいやろ?

 ブラウンハックル・ピーコックをはじめて巻いたとき、
 すなわちハックリング初体験のとき、
 じぶんがかんじた感想と感動をそのまんま言葉にして子供たちに力説させてもらった経験は、
 記憶の彼方の過去を懐かしむノスタルジーなかんじでなくて、
 ウオ~なんか一周グルッと回ってブラウンハックル・ピーコックがメチャ新鮮やんけコレあたらしくね?、
 みたいなかんじで再発見と学びの場になった。

 タイムマシンは過去の記憶を呼び覚ましながらも、
 そのじつ未来に旅立っておりました。

  
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 レッド・ジャングルフォウル。

 このニワトリのネックハックルをブラウンハックル・ピーコックのハックルにつかった

 なんでもニワトリ最古の品種。
 いわば、
 現在の品種改良されたすべてのニワトリのルーツなのだそう。

 ニワトリの原典ですな。

 羽毛恐竜←wiki

 太古の時代、
 こんなニワトリ型羽毛のどでかい恐竜がいたとしても、
 なんら不思議ではない。

 と、
 オウムや猛禽類やダチョウや雀などなどと比較して、
 ず~っと古代の面影を感じさせるニワトリやキジの羽根。

 白亜紀とかデボン期だっけ?
 恐竜がしのぎを削った時代には、
 ネックハックル一本のストークが全長1メートルくらいで、
 ファイバーの長さが30センチくらいあるようなコーチマンブラウンのハックルとかあった、
 かもしれませんね。

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 通常、
 どのようなニワトリの羽根も、
 サドルとネックの中間境目にあたるスペードハックルと呼ばれる部分のファイバーは、
 ファイバーが硬くて太くなっている。
 また、
 各部位と比較してファイバーに透明感があって太陽光に反射しやすい構造になっているようだ。
 
 たとえば、
 コック・デ・レオンの「サドル・スキン」に生えているスキン手前側の短いハックルがこの部位になる。

 紅色野鶏の全体の羽根のなかで、
 もっとも特徴的なのがこの部位。
 透明感というよりも、
 太陽光の角度によってファイバーがまるでガラスのような印象になって光をダイレクトに跳ね返し鋭くきらめいて反射している。
 また、
 この部位はレオンでもわかるとおり、
 ニワトリ全身の羽根のなかでもとくにファイバーが長いことがスペードハックル最大の特徴となるにも関わらず、
 紅色野鶏だけこの部位だけ妙にファイバーもストークも短い。
 無機質に感じる反射光とあいまって、
 まるで爬虫類のウロコのようだ。

 原典もまた、
 とても興味深くあたらしい。



 
あした道内えらい降るんやて?
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 このまえ、
 まだ知り合ったばかりの釣りともだち数人と話していたとき、
 釣行の際立ち寄るコンビニでかならず購入する昼ごはんはなにか?という話題になった。

 純粋にお好みの味としても、
 はたまたジンクス的縁起担ぎでもどちらでも可。

 まあオレもさ、
 赤飯のオニギリだギョニソ(魚肉ソーセージ)だカニカマだなんだとイロイロ渡り歩いたクチなんだけど、
 ここ近年、
 ハタと気づいてみればもはやコレがないと、
 ちゅーのがあるんやけど……、

 それ、
 言っちゃう?熱いよ語るよ、
 みたいな満を持した気分のときに、

 スキンヘッドに半そでが似合いまくりのオトコマエが毅然と言ったんだよ、

 「わたし、なによりもまずはマジックパールです」

 ちょいふるえがきた。
 ビシーッとキマってた。
 
 このヒト、
 タマゴわかってはる。

 長い旅路の果てに、
 ようやく同志に出会えた。

 そんな気持ちになりました。


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 我が家のご近所のおばあちゃんが、
 おうちの庭先で丹精込めて作られたイチゴ。

 まるで農作物でつくった庭園のようなキレイなお庭。
 「摘みたいだけ摘んでいくといいよ、なんせこんなにあるからねえ」
 とのお言葉に甘えて、
 大きなざるに摘みたいだけ摘んだら、
 そこにおばあちゃんが摘んだやつも山盛りドサーッと入れてくださって狂喜乱舞。

 「食べきれなかったらジャムにするといいよ」
 「そうします」
 
 余裕のよっちゃんで完食。

 メチャメチャメチャメチャメチャおいしかった。

 まだこんなにいっぱいあるのに、
 さいしょはこの皿にマッターホルンのようにイチゴが積みあがっていた。
 じぶんとしてははやすでにほとんど食べ終わって寂しいかんじ。

 それでハタと気がついて記念に写真に撮ったのだった。

 恍惚としながら夢見心地でむさぼった。

 イチゴたべてハイ。

 今年の夏はイチゴからはじまった。
 
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 そして今年のドライフライはイリジスティブルからはじまった。

 川通いの毎日、
 ニンフやウエットやソフトハックルな水面下の釣りの日々から、
 ある日いきなりハルゼミに切り替わった印象。

 かとおもいきや、
 その一方で、
 荒瀬を転がり流れる4番のイリジスティブル・ハルゼミ・カラーにドッバーンッとは対極の、
 えらいシリアスでディープな極上のマッチ・ザ・ハッチがひっそりと展開されており、
 どっちも狙うサカナはもちろん絶品ワイルドすぎてもうメロメロ。

 どないせえゆうねん。

 このあたりから、
 釣り呆けで日々のモロモロはもはやグデグデ。

 そんなわけでさいきん、
 独りで釣りに行くときは自分で簡単な弁当をこしらえて持参するようになった。

 前夜、
 ほんのり柔黄身に茹でたゆでタマゴを、
 ジップロックにしいたけの戻し汁とめんつゆ入れたやつに浸しておいて、
 それを河原で昼ごはんに食うとメチャうまい。

 なんちゃって煮抜きタマゴ。
 だいぶまえに函館の友人に教わったのだった。
 
 べつにコンビニでもいいし、
 というよりむしろコンビニでチャチャッと済ませたい。
 にもかかわらずなんで手弁当持参なのかというと、
 現在の我が家から釣り場に行くまでコンビニに寄っていると、
 えっらい遠回りになってしまうのだ。
 
 つまり、
 コンビニよりか釣り場のほうが家からずっと近い、
 それがいいのかわるいのか……。

 ちゅ~か、
 それがこのグデグデのすべての原因なのは明白だ。

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 齢50を越えてからの合言葉は「もう時間が経つのが早すぎて恐ろしい」

 もちろん、
 いまもその実感はなんらかわらないけれど、
 その一方で、
 もはやすでにしみじみ思い出すお盆のころの賑わいの懐かしさから、
 かんがえてみればまだ一カ月も経っていないのが不思議だ。
 わかるこのかんじ?

 こんな感覚は、
 ここに越してくるまで感じたことがなかった。

 日々、
 いろんな出来事とめまぐるしい変化と新たな発見があることの証だなとおもう。
 ヒトもサカナも土地も水辺も自然も濃ゆくて豊かだ。

 なので、
 いつも一日はあっというまだが、
 とても長い。

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 ゲンザイトテモシアワセ。



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 現在の我が家は、
 立地条件からして24時間大音量でぶっぱなそうが誰にも迷惑がかからない。

 そのうえ、
 もともと雑貨屋さんだった我が家の土間は構造的にレゲエに向いた重低音対応。
 クリアなベースの臨場感に満足が止まらない。

 THE IN CROWD Back a yard + version (1978 Cactus)

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 クロクマ・ウーリーワーム。

 これねえ……、


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 70年代アメリカ東部を代表するプロタイヤー、
 故ポール・ジョーゲンセンの「フェザーエクステンド・ガガンボ」と、
 フィリス・ディロン「人生は一回」
 ボクの持ってるのはコクソン・ミュージックシティのDist の80年代後半の再発盤。

 秘めやかな羽音を震わせながら、
 夏の水辺の草陰で群れ躍っていたガガンボが消え、
 夏の空気にかすかに秋の気配がそこはかとなく背後から、
 というころに台風がきてムシッと湿度があがったころ、
 やつらが空から降って来た。
 水辺にいると、
 ときとしてもう顔やら腕やら耳元でカサカサたかられて拷問…釣りどころやあらへんがなと退散したこともあった、
 無数の翅アリの集団飛行ならびに集団流下もおわり、
 家のまえの木々がいつのまにかほんのり色づいて……、

 あしたも釣りにいこかとおもたら天気予報は雨。
 ホンマやろなあ、
 いつもあてにして気にしてるけど、
 肝心なときいっこもあてになれへんやんけドナイシテクレルネンいつもご苦労様です。

 これから、
 今日の夕方摘んだばかりの枝豆をサッとゆがいて塩振っていただきます。




THE PERFECT" FLY REEL Size 2 7/8"
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 この春の引っ越しの直前、
 およそ9年住んだ函館生活最後の独創フルドレスサーモンフライと交換した。

 「なんだ~、そんなにこのリール憧れてたんですか。それならそう言ってくれればお餞別でプレゼントしたのに」
 たいへんありがたいけど、
 このリールだけはそれだとほんとに自分のものにならない。

 このリールは自分のものにしたかった。

 さいしょは、
 おっかなびっくり恐る恐る、
 まるで腫れ物に触るようにハンドルを回していた。

 けれどいつしか……、

 棚の奥に仕舞われたまま、
 長い眠りから目覚めたリールは、

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 ぼくのザ・パーフェクト。
 フライロッドをにぎる手元に視線がいくたびに満足。

 完璧。
 
北海サファリ
 ものすごい体験をした。

 おとつい、
 友人と二人ですこし遠出をして暗くなるまでみっちり釣って、
 帰宅するのは面倒だしたまには山奥で寝たいなとおもって、
 友人と別れてから釣り場の近所にあるキャンプ場跡みたいなところに行った。
 ひさしぶりだ。

 見事な名月の夜で、
 なぜか夜が更けると風が強くなった。
 月明かりに照らされて、
 影絵のようなシルエットになった山の木々がザワザワ揺れているのを、
 飽きずに眺めてからクルマに敷きっぱなしの万年シェラフにもぐってぐっすり寝た。

 翌朝、
 といっても正午まえくらい、
 太陽はカッカと照りつけ初夏をスルーしていまやいきなりの猛暑酷暑。
 当日の当地の気温35度越えて・・・なんやそれ?

 道の両側には背丈ほどもある雑草が生い茂っている。
 その向こうがわには広大な牧草地が広がっていて、
 そのはるか向こうが深い森の樹海につながっている山間の小道。
 周囲何キロかは民家もなんにもない。

 その小道を、
 ガンガンとレゲエを爆音で鳴らしながら、
 窓全開で風を受けて、
 チンタラチンタラテレッテレとゆっくりクルマ走らせていた。

 この日は、
 カンカン照りの真昼間にもかかわらず、
 道のカーブを曲がるたびに、
 小道でたむろしていた鹿やキツネやタヌキや兎の小動物オールスターズがワラワラ逃げまどい、
 「さすが北海サファリや」と愉快だった。

 この小道は、
 深夜に走ろうものならいつも道のそこかしこオールスターズだらけでまともに走れないくらい。
 なので、
 個人的に北海サファリと呼んでいるお気に入りの山道なのだ。

 それはおいといて、
 「くっそあっち~」とウダりながらテレテレ走っていたとき、
 とあるカーブをまがると、
 そこにでっかい角が生えそろいはじめている雄シカが道の真ん中でボ~~~ッとしていた。
 ゆっくり近づくとノタノタッと雑草の茂みに消えた。
 ものすごい暑そうでグデグデで笑った。
 陽の光に反射して琥珀のように輝いている体毛にうっとり見惚れた。

 ケモノも鳥も虫もサカナも命あるものはすべて、
 陽の光の下でこそ本当の美しさを発揮する。
 
 これは、
 フライタイイングから学んだ自然界の摂理であり真実だと確信している。

 で、
 もうすっかり愉しくなって、
 弾んだ気持ちで
 「さあ次はなんや?」
 と期待しながらカーブをまがると、
 運転席側の茂みからなんと!ドドドッとヒグマが飛び出してきて道をわたり、
 一瞬で反対側の茂みに消えた。

 ほとんど徐行運転なので、
 いきなりの出現にもさほどあわてることなく、
 むしろすごい落ち着いていてキキッとブレーキを踏んでスピードをゆるめた。

 そのときは、
 それほど巨大には見えずまだ若いヒグマかなとおもった。

 とはいえ、
 でっかいケモノが草の茂みにド~ンと身体ごと飛び込んだように見えたのに、
 そういえば草がほとんど揺れていない。
 それがすごく印象的だった。

 で、
 森の王様の唐突なお出ましに超ラッキーやと大喜びしながら、
 「うおおおうっ」
 と興奮しつつ視線はクマが消えた方角に……、

 そしたらそのとき、
 視線とは反対側のヒグマが飛び出て来たほうの雑草の茂みのなかから、
 小さな黒いものがポーンと飛び出してくるのがチラッと視界を掠めた。

 ウワッ!とおどろいてメッチャ急ブレーキ。

 間一髪やった。
 ぶつからなくてほんとによかった。
 
 母グマのあとを追って飛び出してきた小熊が、
 クルマの真ん前で腰を抜かしたようになって、
 ペタッとへたり込んでしまった。

 そのときは、
 余裕しゃくしゃくで、
 「うわ~、びっくりしたやろな~、かわいそうに。はよお母さん追いかけていきや」
 みたいな慈悲と慈愛に満ち溢れていた。

 が、

 グギョギョ~~~~~~~~~~~~
 そんなかんじやった。
 いきなり小熊があらんかぎりの甲高い声で吠え叫んだんやわ。

 そのつぎの瞬間、
 バッサバサバサーッとぶっとい雑草をバッキバキなぎ倒して、
 骨の髄から怒り狂った形相の母グマがドンッ!と茂みのなかから躍り出てきた。
 そして小熊のまえで仁王立ちになって立ちはだかった。
 さっきあわてて道を渡っていったときにかんじた大きさどころではなく、
 立ち上がった母グマは大げさに言わせてもらうと3倍くらい巨大に映った。
 
 で、
 グワッとたちあがったヒグマの巨体がバーンと弾けるようにひるがえって、
 一瞬で運転席の側に母グマがせまってきた。
 それで、
 ボクを威嚇してる母グマを運転席からちょうど見下ろすようなカッコになった。
 全身の毛が逆立つようにふくらんでいて、
 ハラワタが揺れるというか心臓をギュッと握られるような重低音の唸り声がビリビリ周囲に響きわたった。
 まるで強靭で鋭利な武器のような犬歯?がズラッと並んで剥き出しになっており、
 歪んだ口元がブルブル震えていた。
 このときほんとに一瞬やとおもうけど目と目がビタッとかちあった。
 殺意のこもった視線と空気がのしかかってくるようだった。
 本気で「殺られる!」と本能の奥底で感じた。

 で、
 母グマがグワッと身体を起こして、
 目と鼻の先までせまってきて、
 なんちゅうか鼻をつく臭いというか気配というか、
 「匂い」なのか「気」なのか、
 よくわからないケモノ臭が塊のようになってボクの鼻孔を突き抜け、
 脳天に直接ガッツーンとくるような圧力をモロに受けてウッとむせかえったのと、
 おもわずクルマをバックさせたのがほぼ同時やった。

 クルマの窓に手をかけようとした母グマが地面に手をついて、
 クルマを追いかけるような、
 追い払うようなそぶりで威嚇してきたけど、
 すぐ追いかけるのをやめてくれたので、
 10メートルかな?
 それ以上かも?
 もうわからん。
 けど、
 母グマの表情は鮮明にわかるくらいの距離で止まったんやわ。

 そしたら母グマがグワーッと立ちあがって、
 そのままこっちの様子をうかがってるというか、
 しばらく睨みあいになった。

 
 どのくらいそうしていたのか、
 もうそういう時間感覚がまったくなくなっていて、
 視線と意識は母グマの表情の変化だけに集中していて……、

 なんでかというと、
 あとからつくづくおもってんけど、
 母グマはこの間クルマそのものではなく、
 クルマのなかにいるボクをちゃんと認識していた。
 そして、
 ず~~っとボクのことを睨みつけてた。
 
 どうなるんや?

 とおもってからも、
 だいぶそのまま睨みあっていたようにおもうんやけど、
 あるとき、
 母グマの視線がチラッと動いたような、
 ボクから注意を逸らしたような、
 そんな一瞬があって「あっ」とおもったつぎの瞬間、
 それまでものすごい巨体で仁王立ちになっていた母グマが急にしぼんだようになって地面にパッと前足をついて跳ねあがると、
 忽然と視界から消えた。

 え?

 とおもったときには、
 牧草地帯を走り抜けて、
 はるか向こうの森のなかに脱兎のごとく駆けながら消えていく小グマと、
 そのあとをまるで宙を飛ぶようにグングン追いかけていく母グマの後ろ姿が見えた。

 いまになっておもうに、
 母グマは子供が安全な場所まで逃げるのを待っていたのかもしれない。
 で、
 それを確認したので無用な争いを避けてくれたのだろう。

 心臓がドッドッドッと早鐘のごとく鳴りやまず、
 汗ビッショリかいて、
 しばらくそのまま放心状態。

 かんがえてみれば、
 運転が下手でヘタレなじぶんが、
 この小道を後方確認もせずいきなりバックして走ってよくぞ何事もなく……、
 あらためて心底ホッとした。

 ってゆーか、
 ず~~~っと窓全開のまんまだったことに、
 落ち着いてから気がついた。

 そして、
 この間ずっとズッカンズッカン大音量で鳴り響いていたレゲエ・ミュージック。

 してみると、
 おそらくあの親子はレゲエを聴いた世界で初めての野性のヒグマなのか?、
 などと感慨深くもあったが、
 あの遭遇の最中、
 まったくなにも聴こえなかった。
 無音。
 まるで無音映画のコマ送りのように音のない場面が刻々変化していくような感覚。
 そしてそんな場面のひとつひとつが、
 ぼくの魂のなかに鮮烈に焼き付けられていった。
 とても非現実的……。
 そのなかで、
 子グマの悲鳴や母グマの唸り声と息遣いだけが激烈な存在感でぼくの耳と脳髄の奥に残響としてのこった。

 自分にも、
 そしてなによりもなによりもあの親子に、
 何事もなくてほんとによかった。

 一歩まちがえれば、
 大惨事になるところだったかもしれない。

 そうなったらあの親子がまず不幸になる。
 それはいやだ。

 そして、
 惨事になれば自分は自業自得としても、
 周囲の方々に迷惑と心配をかけてしまう。
 それだけは避けたい。

 だが、
 無事にやり過ごすことが出来て、
 それゆえにこの体験は一生忘れ得ない貴重で美しい思い出の財産として変換され、
 こうしてありのままを書き散らせる幸運に感謝したい。

 かつて、
 これまで何度か遭遇したヒグマたちは、
 クルマのなかから見たときも河原で出会ったときも、
 すべて駆け逃げていく後ろ姿ばかりだった。
 もちろんそれらの体験も深く感動した。
 だが、
 本気で怒り狂ってパニックになったヒグマの表情をまじかでまざまざと見てしまった。
 あのときに感じた「人智叡智などかるく突き抜けた恐怖と畏怖の感動」の念を、
 最近ちょっと調子こいていた自分への戒めとして、
 けして忘れないようにしたい。
 自然のなかではいつも謙虚であろうとあらためて誓った。

 空気そのものが光り輝いているような、
 うんざりするほど透明な北国の夏空のした、
 白昼堂々のできごと。

 
つれづれ
 ささやかな暑気払いになりますかどうか。

 函館にいたころ、
 足しげく通っていた釣り場がある。
 そこに、
 お気に入りの車中泊スポットがあった。
 すばらしく雄大な景色が広がっているのに、
 誰とも会うことなく誰はばかることなく、
 寝泊まりできる山奥の小さな広場。

 広場のガードレールのむこう側は夏草生い茂る切り立った崖、
 そこから眼下に見わたす限り広大な樹海のパノラマ。
 小さな尾根が重なりあうように山並みが広がっている。

 これまで何日もここで車中泊しているけれど、
 ほかのクルマが来たことがあるのは一回。
 
 ヒトの気配がまったく感じられない大自然。
 そんなところにクルマでお手軽かつ快適にそして自由にお泊りできるっていうのがたまらなくゴージャス。
 すばらしい。

 昨年の初秋、
 いつものように函館から7時間かけてひた走り、
 夕方まだ明るいうちに到着。
 そして、
 見わたす限りの森深い山並みを舞台に繰り広げられる、
 ものすごいスケールの夕焼けを独り占めしながらゆっくり食事して、
 パジャマに着替えて歯磨きながらそのへんウロウロして、
 立ちションしてグッスリ熟睡。

 


 翌早朝未明、
 我慢に我慢を重ねたけれど耐えきれず、
 立ちションしようと寝ぼけまなこでクルマの外に出たら……、

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 じぶんのクルマの真ん前にコレ書いてあった。

 え?

 なんなん?

 どうゆうこと?
 
 なにしたん?

 この崖、
 降りたん?
 ほんで、
 探しにいったん?

 てゆーかココ、
 降りれるん?


 ちゅーかきのう、
 ここに来たとき、
 まだふつうに明るかったしそのへんウロウロもした。
 のに、
 なんでこんなデカデカしたのに気ィつかへんかったん?じぶん…。

 え?
 どゆこと??????

 え?
 
 だれ?
 
 え~~?
 なんなん?????

 クエスチョンがとめどなくいっぱい。

 わけがわからないだけに、
 そして場所が場所なだけに、
 あるいみホンマモンに会うよりも……、

 ワッケわからんのはやっぱビビるで~。

 それはそれとして、 
 わたし、
 この春この近所に引っ越してきたんですよ。



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 このリールの真骨頂は、
 なんといってもドラグ鳴らした逆転音。

 チィィィィィ~~~~ンなんつって、
 シルキーでなんともいえない耳触りの、
 快感を増幅させる乾いたクリック音にキュンとなる。

 くしくも、
 函館での9年間で培った方々との交わりのなかで学んだ、
 「清濁あわせ飲む」
 良くも悪くも陰陽善欲福貧、
 個人的にいろんなことがここに集約されることになったリール。

 あるいみ不遇でもあり、
 それでいながら幸運でもあったリール。

 安心してください、
 ドラグ鳴らしまくってます。




170709(3)3.jpg
 北海道のちいさな街の、
 そのまたちいさな地区に越してきて、
 はや2か月がたちました。




170709(8)8.jpg
 
 つい数日前まで、
 朝夕ストーヴを焚く日もあったというのに、
 季節はある日とつぜん、
 すっかりいきなり真夏になりました。

 お楽しみはこれからだ!

 というところですね?
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